Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Alkali-activated materials」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Ageing impact of hydrated lime in bitumen-filler mastics using infrared spectroscopy
アスファルト舗装の劣化は、道路インフラの維持管理における普遍的な課題であり、その主要因の一つが、主成分である瀝青の酸化劣化です。瀝青の酸化は、カルボニル基やスルホキシド基などの官能基の形成を伴い、舗装材料の硬化や脆化を促進し、損傷を引き起こします。水酸化カルシウム(HL)が劣化抑制に有効であることは経験的に知られていましたが、その分子レベルでの化学的な作用メカニズムは十分に解明されていませんでした。本研究は、アスファルト劣化メカニズムの理解を深めるため、瀝青マスティック中の水酸化カルシウムが誘発する化学構造変化を詳細に解析し、耐久性向上に資する新たな知見を提供することを目的としました。
本研究では、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)という高度な分析手法を用い、水酸化カルシウム(HL)を添加した瀝青マスティックと、対照の石灰石フィラー(LF)を添加したマスティックの構造的・組成的な変化を詳細に追跡しました。フィラーの種類、含有量に加え、未劣化状態から短期劣化(TFOT)、長期劣化(PAV 20時間および40時間)まで、様々な劣化条件を網羅的に評価しました。その結果、水酸化カルシウムは、FTIRスペクトルにおいてピーク強度の顕著な増加や600~2000 cm⁻¹の範囲で新たなピークの形成を誘発することが明らかになりました。これらの化学構造変化はあらゆる劣化条件下で一貫して観察され、水酸化カルシウムが瀝青中の官能基と非常に強い相互作用を持つことを示唆しています。特に、結合比分析により、水酸化カルシウムがアスファルトの酸化指標となるカルボニル基やスルホキシド基に対して顕著な安定化効果を発揮し、石灰石フィラーと比較して優れた抗劣化性能を示すことが確認されました。さらに、酸化速度の評価からは、水酸化カルシウムが特に長期劣化条件下で劣化の進行速度を大幅に低減する能力があることが実証されました。これらの成果は、水酸化カルシウムが劣化を抑制する具体的な化学的メカニズムを分子レベルで初めて明らかにし、「活性フィラー」としての側面を持つことを強く示しています。
本研究の知見は、アスファルト材料科学の分野において極めて重要な意義を持ちます。水酸化カルシウムが瀝青の耐久性を向上させる「活性フィラー」であるという役割を化学的証拠に基づいて裏付けたことは、長寿命で持続可能なアスファルト舗装材料の開発に直結し、道路インフラのライフサイクルコスト削減や環境負荷低減に貢献します。これにより、アスファルトの性能設計においてより効果的な添加剤の選択と最適化が可能になります。また、本研究はフーリエ変換赤外分光法が、瀝青とフィラー間の化学的相互作用や劣化挙動を評価するための、迅速かつ信頼性の高いツールとして非常に有効であることを示しました。これは、新たなアスファルト混合物の品質管理や開発効率化に寄与します。今後は、これらの分子レベルの理解を基盤として、過酷な環境下でも性能を維持できる次世代のアスファルト舗装技術の確立に向けた研究開発が進むことが期待されます。
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Enhancing concrete conductivity with recycled carbon fibers: A study on material and environmental variables
現代インフラの発展に伴い、自己診断やセンシング機能など、電気特性を兼ね備えた多機能スマートコンクリートへの期待が高まっています。しかし、その実用化には製造コストや材料調達といった課題が存在します。本研究は、これらの課題に対し、廃棄物として排出される再生炭素繊維(RCF)をコンクリートに統合することで、経済的に実現可能な高導電性コンクリート(RCFC)の開発を目指しました。RCFの活用は、高機能材料としての特性付与に加え、資源の有効活用と環境負荷の低減にも貢献する画期的なアプローチと言えます。
本研究では、RCFCの導電率に影響を及ぼす様々な要因を体系的に調査しました。具体的には、RCFの種類、長さ(6mm、12mm、18mm)、体積添加量(0%から0.6%まで)、養生期間(1日から28日まで)、水分含有量(0%から100%)、さらには温度(20℃から100℃まで)といった広範な材料および環境変数を詳細に検証しています。また、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、RCFC内部における導電メカニズムの解明も試みました。その結果、RCFの添加量を増やすことでRCFCの抵抗率が大幅に低下することが明らかになりました。特に、長いRCFを用いると、より少ない添加量で導電性が急激に向上する「パーコレーション閾値」に到達することも判明しました。興味深いことに、同量のRCFを添加した場合でも、養生期間が長くなるにつれて抵抗率が増加する傾向が見られました。一方で、水分含有量や温度の上昇はRCFCの抵抗率を減少させることが示されましたが、パーコレーション閾値に達したコンクリートでは、これらの環境要因に対する導電率の感度が著しく低減されることが確認されました。SEMによる観察からは、RCFがコンクリートマトリックス内で互いに重なり合い、連続的な導電性ネットワークを形成している様子が捉えられ、これが電気特性の向上に寄与していることが裏付けられました。
本研究成果は、持続可能な社会の実現に向けた画期的な一歩となります。再生炭素繊維という廃棄物を高機能な建材へと昇華させることで、資源の有効活用と環境負荷の低減に貢献します。さらに、RCFCの導電性に対する様々な材料・環境変数の影響を包括的に解明したことは、将来的に自己診断機能を持つスマートコンクリートや、凍結防止、電磁波シールドといった高度な機能を持つインフラ材料を設計・開発する上で不可欠な基礎データとなります。特に、パーコレーション閾値達成後の環境変化に対する導電率の安定性は、実環境下での信頼性確保に極めて重要な知見です。この経済的かつ高性能なRCFCの開発は、次世代インフラの構築に大きな可能性を拓くものと期待されます。
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Laboratory study on the fracture resistance, moisture susceptibility, and marshall stability of hot mix asphalt mixtures containing parafiber, micro-silica, and hydrated lime
近年、交通量の増加とそれに伴う道路舗装への負荷増大は、様々な損傷の多発と維持管理コストの上昇を招き、深刻な課題となっています。特に、冬季の厳しい気象条件に見舞われる寒冷地域では、劣化が加速される傾向にあり、舗装の耐久性向上策の確立は喫緊の課題です。こうした背景のもと、本研究は、熱間アスファルト混合物(HMA)の性能を改善するため、パラファイバー(PF)、マイクロシリカ(MS)、および水和石灰(HL)という3つの添加剤がHMAの挙動に与える複合的な影響を詳細に調査し、舗装に最高の性能を付与する最適な添加剤の組み合わせを特定することを目的としました。
研究ではまず、Marshall安定度試験を通じて、各添加剤がHMAの安定性に与える影響を評価し、それぞれの最適な配合比率を決定しました。その後、これらの最適化された添加剤を含むHMAサンプルと、添加剤を含まないコントロールサンプルに対し、Marshall安定度試験、間接引張強度(ITS)試験、半円曲げ(SCB)試験を実施。これにより、混合物の安定性、耐湿性、そして低温条件下での亀裂抵抗性を多角的に評価したほか、容積特性と機械的特性も詳細に分析されました。その結果、PF、MS、HLを添加剤としてHMAに導入することで、Marshall安定度、密度、アスファルト充填率(VFA)、耐湿性、および破壊靭性が顕著に向上することが明らかになりました。一方で、フロー値、骨材間隙率(VMA)、空気間隙率(Va)、および破壊時の伸びは減少しました。特に、1.5%のパラファイバーを添加したHMAサンプルが、全ての試験サンプルの中で最も高い耐湿性、低温亀裂抵抗性、そして塑性流動への抵抗性を示し、これに次いで、これら全ての添加剤を組み合わせたサンプルも優れた性能を発揮しました。
本研究で得られた知見は、アスファルト混合物の特性を、安定性、耐久性、耐湿性、低温亀裂抵抗性といった多岐にわたる側面から効果的に改善するための具体的な指針をエンジニアに提供するものです。これにより、将来的な道路舗装における亀裂発生やその他の損傷のリスクを大幅に低減し、舗装の長寿命化と維持管理コストの削減に貢献することが期待されます。特に、交通負荷が高く、厳しい気象条件下にある地域での舗装設計において、本研究の成果は実践的な応用価値が高いと言えるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)