Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Study of the effect of CaO activator on the properties of cement-based composite materials that incorporate ferrous extraction tailings of nickel slag
ニッケルスラグから鉄を抽出した際に生じる尾鉱(FETNS)は、その大量発生から産業廃棄物としての処理が課題となっています。一方で、セメント系複合材料への再利用は、資源の有効活用と環境負荷低減に繋がるため、世界的に注目されています。しかし、FETNSは一般的に反応性が低く、そのままではセメントの一部代替材として使用する際に材料の性能を十分に引き出せないという問題がありました。こうした背景から、本研究は酸化カルシウム(CaO)を活性化剤として用いることで、FETNSの反応性を高め、セメント系複合材料の性能を改善する可能性について詳細な検討を行いました。
本研究では、セメントの一部をFETNSに0%から30%までの割合で置き換え、CaOを添加しない群(FC群)とCaOを添加した群(FCC群)の双方について、その特性を比較分析しました。凝結時間、自己収縮、乾燥収縮、圧縮強度といった基本的な物理的特性に加え、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM-EDS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、熱重量分析(TG-DTG)、水和熱測定、低磁場核磁気共鳴(LF NMR)、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)といった多角的な分析手法を駆使し、水和反応生成物、細孔構造、および溶出挙動を詳細に解明しました。その結果、CaOの添加はFETNSの初期反応性を顕著に向上させることが判明し、例えばFCC群では初期凝結時間と最終凝結時間がFC群に比べてそれぞれ約46%と51%短縮されました。特に、FETNSを25%含有させた複合材料において、3日圧縮強度がFC群よりも42.06%も大幅に向上するなど、早期強度発現に極めて有効であることが示されました。一方で、3日および28日における乾燥収縮と自己収縮はFCC群で増加傾向を示しましたが、硬化時間の経過とともに両群間の収縮差は徐々に減少しました。また、CaOの添加はペーストの健全性に対してわずかな悪影響を及ぼすことも確認されました。微視的観察からは、CaOが水和反応を促進し、水和生成物の形成を活発化させることで、内部構造の緻密化に寄与していることが明らかになりました。
今回の研究で最も注目すべきは、環境負荷低減への貢献です。溶出試験の結果、CaOが特定の金属元素を中和し、N-A-S-HやC-A-S-Hといったゲルの形成を促進するとともに、CrやMnなどの重金属の溶出を効果的に抑制し、その含有量を規制値をはるかに下回るレベルまで低減できることが実証されました。これは、産業廃棄物であるニッケルスラグ尾鉱を建設材料として安全かつ持続的に利用するための重要な技術的ブレークスルーを意味します。本研究の成果は、大量の産業廃棄物を高付加価値な建材へと転換する道を開き、資源循環型社会の実現と環境負荷の低減に大きく貢献するものと期待されます。今後、収縮や健全性といった課題に対するさらなる改善策が検討されれば、その実用化が加速することでしょう。
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Introducing cement composite agents during printing process to enhance the 3D-printed concrete interfaces between layers and filaments
建設分野における革新技術として期待される3Dプリントコンクリート(3DPC)は、複雑な構造物を迅速に構築できる可能性を秘めていますが、その実用化には課題も残ります。特に、積層構造によって生じる層間や、押し出されたコンクリートフィラメント間の界面欠陥は、構造全体の強度不足や異方性の原因となり、耐久性や信頼性の確保を困難にしていました。この界面欠陥は、3DPCの性能を制限する重要な要因として、その解決策が強く求められていました。
こうした背景のもと、最新の研究では、この界面欠陥を克服し、3DPCの構造性能を向上させる画期的な手法が提案されました。研究チームは、膨張材(EA)を配合したセメント複合剤に着目し、これを3Dプリント工程中に導入する3つの新しいアプローチを開発しました。具体的には、(1) 層間界面にスラリースを塗布、(2) フィラメント間のチャネル空隙に事前充填、そして (3) これら二つの方法の組み合わせです。複合剤中のEAの添加量も詳細に検討され、圧縮試験、直接引張試験、X線CTスキャン、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた多角的な検証が行われました。
検証の結果、最も顕著な効果を示したのは、層間スラリース塗布とフィラメント間空隙充填を組み合わせた第三の方法でした。この手法を適用することで、3DPCの圧縮強度は対照群と比較して最大136.1%向上し、異方性を示すパラメータも0.22から0.03へと劇的に低減されました。また、引張試験においても、EA添加量9%の複合剤を第三の方法で適用した場合、フィラメント間の結合強度が180%も向上することが示されました。これらの機械的強度向上は、複合剤が内部空隙を充填し、EAの水和で生成されるAFt(エトリンガイト)が界面結合剤として機能し、微細スケールでの構造的連続性を強化したためと解明されました。これにより、3DPC全体の異方性が緩和され、均質性が高まることが明らかになりました。
今回の研究で開発された新しい複合剤の導入手法は、これまで3DPCの大きな障壁となっていた界面欠陥と異方性という根本的な問題に、効果的かつ持続的な解決策をもたらすものです。この技術は、3DPC構造物の機械的性能と信頼性を大幅に向上させるだけでなく、建設分野における応用範囲を飛躍的に拡大する可能性を秘めています。より堅牢で耐久性の高い3DPC構造物の実現に貢献し、持続可能な建設プロセスの推進において重要な役割を果たすことが期待されます。
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The Rate-Dependent Fiber-Matrix Interface in Ultra High-Performance Fiber Reinforced Concrete: Interface Property Determination
超高性能繊維強化コンクリート(UHP-FRC)に代表される繊維強化セメント系複合材料(FRCCs)は、その優れた機械的特性から建設分野での応用が期待されています。これらの材料の衝撃や爆発など動的な状況下での挙動を正確に評価し、最適な材料設計に繋げるためには、内部に存在する繊維とセメントマトリックス間の界面特性が高速な負荷に対してどのように応答するか、すなわち「速度依存性の繊維-マトリックス界面」の特性を詳細に理解し、定量化することが不可欠です。しかしながら、これまで主流であった単一または複数繊維の引抜き試験を直接実施する従来の手法では、FRCCs内部における繊維のランダムな分散、不規則な亀裂の発生、それに伴う繊維の傾斜や埋込み長さの不規則な変動といった複合的な要因が界面挙動に与える影響を正確に捉え、定量的に評価することが困難であり、動的特性評価における長年の課題となっていました。
本研究は、このような従来の試験手法が抱える限界を克服するため、画期的なアプローチを導入しました。具体的には、新たに開発されたマルチスケール格子モデルと高度な最適化アルゴリズムを組み合わせた独自の「逆解析手順」を用いることで、複合材料中にランダムに分布する繊維の動的な引抜き挙動を、これまでにない高精度で捕捉することに成功しました。この数値モデルは、マイクロスケールにおける繊維-マトリックス界面の速度依存的な特性を詳細に組み込みながら、FRCCs全体のメソスケールでの応答をシミュレートする能力を持ちます。これにより、従来の直接的な実験では捉えきれなかった、複雑な内部挙動を数値的に解明することが可能となりました。特に、この逆解析によって導き出されたひずみ硬化型セメント系複合材料における強化繊維の速度依存性挙動は、実際の実験結果と高い整合性を示しており、提案手法の妥当性と信頼性を強く裏付けています。
本研究がもたらした新たな知見は、超高性能繊維強化セメント系複合材料の設計と性能評価において極めて重要な意義を持ちます。得られた結果は、複合材料内部における複数の繊維の束化(バンドル化)や、繊維の傾斜が材料の全体的な挙動に及ぼす影響について、新たな洞察を提供するものです。具体的には、解析によって、単一の繊維を引抜く場合と比較して、複数のランダムな方向に配向した繊維が存在する場合の方が、セメントマトリックスの剥離(マトリックス剥離)がより顕著に発生することが明らかになり、これは実験的な観察結果とも一致しています。さらに、繊維の引抜き挙動が、試験片全体の変位速度そのものよりも、材料内部で発生する主要な亀裂の伝播速度によって強く支配されるという重要な発見もなされました。これらの知見は、今後、超高性能繊維強化セメント系複合材料の耐衝撃性や耐爆性など、動的な環境下での性能を正確に予測し、より堅牢で高性能な材料を開発するための基盤となるものであり、建設材料分野における大きな進展が期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)