Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Influence of Wet Joints on the Shrinkage Effects in Steel-UHPC Composite Bridge Decks: Monitoring and Parametric Analysis
UHPC (超高性能コンクリート) は、その優れた引張強度と高い耐久性から、次世代の橋梁床版における鋼材との複合構造に用いられるオーバーレイ材として注目されています。しかし、UHPC特有の大きな乾燥収縮は、鋼材との界面に予期せぬ二次応力を発生させ、構造全体の健全性に影響を及ぼす可能性があります。特に、施工時にUHPCセグメント間を結合するために使用される「ウェットジョイント」は、その複雑な機械的特性から、二次応力の評価と抑制を困難にしています。これまでのところ、このような複合システムにおけるジョイント部での収縮誘発応力に関する詳細な研究は少なく、その根本的なメカニズムはほとんど解明されていませんでした。
この課題に対し、今回の研究では、ウェットジョイントを有する鋼-UHPC複合橋梁床版における収縮効果のメカニズム解明を目指し、綿密な実験と数値解析が実施されました。具体的には、4体のセグメント複合桁試験体を製作し、静的な収縮効果モニタリングを通じて、UHPCの収縮誘発ひずみ分布パターンがジョイントの有無によって明確に異なることを実証しました。さらに、数値シミュレーションを駆使し、UHPCの打設時期の年齢差、ジョイントの形状、および補強比率が複合システムに与える影響を多角的に分析しました。その結果、長方形およびダブテール型ジョイントは、接触面積の増加とせん断抵抗の向上により、界面における引張応力を低減できることが明らかになりました。また、ジョイント部での引張破壊を防ぐためには、セグメント間の打設時間の臨界制限が2日以内であることが特定されました。一方で、補強比率が高まると収縮誘発二次応力が増加するものの、鋼板や溶接スタッドが応力に寄与する度合いは減少するという、設計上重要な知見も得られました。
本研究で得られた成果は、UHPC複合システムにおけるウェットジョイントの収縮メカニズムに関する基礎的な理解を大きく前進させるものです。これにより、将来の橋梁建設におけるウェットジョイントの設計最適化や、より効果的な施工方法の開発に不可欠な指針が提供されます。最終的には、UHPC複合橋梁床版の長期的な安全性と耐久性の向上に貢献し、次世代インフラ構築への道を拓くものと期待されます。
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Insights into the carbonation behavior of polymorphs of Ca2SiO4 (C2S): the role of calcination temperature
## 焼成温度がケイ酸二カルシウムのCO2吸収能力に与える影響を解明:次世代セメント開発への新たな指針
ポルトランドセメントの主要構成鉱物であるケイ酸二カルシウム(Ca2SiO4、C2S)は、CO2を吸収して硬化する炭酸化挙動を示し、持続可能なセメント開発の鍵を握る素材として注目されています。しかし、従来のC2Sは1400℃を超える高温で合成されるのが一般的であり、この高温処理がC2S本来の優れた炭酸化性能を損なう可能性が指摘されてきました。具体的には、高温処理されたC2SはCO2吸収能力の低下が見られるものの、その詳細なメカニズムはこれまで不明瞭であったため、高性能なC2Sを製造するためのボトルネックとなっていました。CO2排出削減が喫緊の課題である現代において、この性能低下メカニズムの解明は、環境負荷の低いセメント材料開発に向けた重要な知見が求められていました。
このような背景のもと、本研究はC2Sの焼成温度がその炭酸化挙動に及ぼす影響を、600℃から1400℃という幅広い温度範囲で詳細に調査し、その根底にあるメカニズムを解明しました。結果として、高温での焼成がC2Sの炭酸化反応性およびCO2吸収量を顕著に低下させることを明らかにしました。この性能低下の主な要因は、高温焼成による粒子径の増大、形態の繊維状から粒子状への変化、およびそれに伴う比表面積の著しい減少にあることを特定。さらに、低温で焼成されたC2Sが高い反応性を示す背景には、材料内部に存在する結晶欠陥が大きく寄与していることを突き止めました。また、焼成温度の上昇に伴うメソ多孔性の減少、結晶サイズの増大、欠陥の消失、さらにはβ-C2Sからγ-C2Sへの相転移といった結晶構造や微細構造の変化が、炭酸化反応性に複合的に影響を及ぼし、最終的に生成される炭酸カルシウムの多形や形態にも影響を与えることを包括的に解明しました。
本研究で得られた知見は、セメント産業におけるCO2排出削減という喫緊の課題に対し、具体的な解決策を提示する上で極めて重要な意義を持ちます。特に、C2Sの低温合成がその炭酸化性能を最大限に引き出す鍵であることを明らかにしたことで、製造過程でのエネルギー消費を抑えつつ、CO2吸収能力に優れた低カルシウムセメントを開発するための具体的な指針が提供されます。焼成温度がC2Sの粒子特性、結晶構造、欠陥密度にどのように影響し、それが炭酸化性能にどのように連結するのかというメカニズムの深い理解は、今後、従来のセメント製造プロセスを抜本的に見直し、より環境負荷の低い「次世代セメント」の設計と実用化に向けた道を拓くものとして、持続可能な社会の実現に向けた材料科学分野における重要な貢献が期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
New insights into linear-nonlinear tensile creep mechanisms of UHPC: Stress level-dependent creep-active site transitions
超高性能コンクリート(UHPC)は、その卓越した強度と耐久性により、今日のインフラや建築分野で画期的な材料として注目されています。しかし、材料に荷重がかかり続けることで時間とともに変形が進行する「クリープ」現象、特に引張クリープは、構造物の長期的な性能と安全性に影響を与える重要な課題です。これまで、UHPCの引張クリープの微視的な起源や、変形が線形から非線形へと移行するメカニズムについては、十分に解明されていませんでした。このような背景の中、2025年12月発行予定の新たな研究が、この複雑な現象に光を当て、UHPCの長期的な挙動を理解するための画期的な知見を提供しました。
本研究は、「クリープ活性サイト」と呼ばれる、クリープ挙動を支配する高ひずみ微細領域に着目し、様々な応力レベル下でのUHPCの引張クリープメカニズムを多尺度で詳細に解明しました。解析の結果、クリープ活性サイトの分布と進化が応力レベルに強く依存することが明らかになりました。具体的には、応力レベルが30%以下の低応力域では、クリープ活性サイトは試料全体にランダムに分布し、C-S-Hゲルの滑りによってマトリックス部と、界面遷移帯(ITZ)やマクロスケール欠陥といった弱ゾーンとが同期した変形を示しました。しかし、応力レベルが40%から60%へと増加すると、クリープ活性サイトは60~800ナノメートル幅のマイクロクラックに局所化し始め、弱ゾーンでのひずみ蓄積速度がマトリックス部を上回るようになることが示されました。さらに、応力レベルが70%を超えると、ITZやマクロスケール欠陥におけるひずみ集中が激化し、最終的には破壊が支配的な非線形クリープへと移行することが突き止められました。この発見は、従来のC-S-Hゲル滑りメカニズムとマイクロクラック理論を統合し、線形から非線形への引張クリープ挙動の発展が、応力レベルに応じて変化するクリープ活性サイトの遷移に起因するという、統一的な説明を初めて提示するものです。
今回の研究成果は、UHPCの長期的な引張クリープ挙動に対する深い理解をもたらし、その設計と応用において重要な意義を持ちます。応力レベルに応じたクリープメカニズムの明確化は、UHPCを用いた構造物のより精緻な設計を可能にし、特にひび割れ発生の抑制や耐久性の向上に貢献します。これにより、予測困難であった非線形クリープ挙動の正確な予測を可能にし、安全確保のための新たな評価基準や、次世代材料開発の具体的な指針を提供するものです。インフラ、建築、防災といった多岐にわたる分野でUHPCの信頼性と応用範囲を拡大し、持続可能な社会基盤の構築に不可欠な、次世代コンクリート技術のさらなる進展に寄与すると期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)