AIニュース|2025-12-23 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


Structure and properties of thaumasite and its aqueous interfaces revealed by molecular dynamics simulations

現代社会の基盤を支えるコンクリート構造物の耐久性維持は、建設分野における喫緊の課題の一つです。特に、水中の硫酸イオンがコンクリートに浸入することで引き起こされる「硫酸塩劣化」は、構造物の寿命を著しく短縮させる深刻な現象として知られています。この劣化プロセスにおいて、タウマサイト(Thaumasite)とエトリンガイト(Ettringite)という特定の鉱物が主要な役割を果たすことが示唆されてきましたが、これらの物質がどのように生成し、コンクリート内部で劣化を進行させるのか、その原子・分子レベルでの詳細なメカニズムには、依然として多くの未解明な点が残されていました。劣化現象の根本原因を深く理解することは、より耐久性の高いコンクリート材料の開発や、既存構造物の維持管理戦略の最適化に不可欠とされていました。

このような背景のもと、最新の分子動力学シミュレーション技術を駆使した本研究は、タウマサイトの構造と特性、そして水との界面における挙動を原子レベルで詳細に解明することに成功しました。具体的には、古典的分子動力学シミュレーションと高精度なClayFF-MOH力場を組み合わせることで、タウマサイトの構造、振動特性、機械的強度、熱力学的安定性といった多岐にわたる物性を定量的に評価しました。これらのシミュレーション結果は、既存の実験データや高精度な量子力学計算とも良好な一致を示し、本研究で得られた知見の信頼性を強く裏付けています。さらに、経路積分分子動力学シミュレーションを導入することで、タウマサイト結晶内部の水素結合の構造とダイナミクスを、これまでになく詳細に解析することが可能となりました。加えて、タウマサイトとエトリンガイトそれぞれの主要な結晶面である(1 0 0)面および(0 0 1)面における鉱物-水界面のシミュレーションを実施し、その比較を通じて固体-水界面エネルギーを算出。この詳細な解析により、両鉱物の原子スケールでの溶解メカニズムに関する新たな洞察が得られました。特筆すべきは、シミュレーション結果が、エトリンガイトの表面上でタウマサイトがエピタキシャル成長する可能性を示唆している点であり、これはコンクリートの硫酸塩劣化が進行する新たなメカニズムを解明する上で極めて重要な発見と言えます。

本研究によって得られたタウマサイトおよびエトリンガイトの構造、物性、そして水との界面挙動に関する原子・分子レベルでの包括的な知見は、コンクリートの硫酸塩劣化という複雑な現象の根本的な理解を飛躍的に深めるものです。特に、これらの鉱物の生成、溶解、そしてエピタキシャル成長といったメカニズムに関する新たな洞察は、劣化を効果的に抑制するための新しいアプローチや、より耐久性の高いセメント系材料を設計するための具体的な指針を提供し得るものです。将来的には、これらの科学的理解が、橋梁やトンネル、ダムといった重要なインフラ構造物の長寿命化、ひいては維持管理コストの削減に貢献し、持続可能な社会の実現に大きく寄与することが期待されます。

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Chloride transport, binding, and microstructure in alkali-activated concrete with different types of precursor combinations

地球温暖化対策としてCO2排出量削減が求められる中、産業副産物を原料とするアルカリ活性コンクリート(AAC)は、ポルトランドセメントの代替として注目されています。これは、製造時のCO2排出量を大幅に削減できる環境配慮型コンクリートとして期待されていますが、その長期的な耐久性、特にコンクリート構造物の主要な劣化要因である塩化物イオンに対する抵抗性の詳細なメカニズムは未解明でした。AACは使用される前駆体(原料)の種類が多岐にわたるため、塩化物イオンの輸送・結合挙動が複雑であり、その性能を正確に評価するための信頼性の高い試験方法の確立も喫緊の課題となっていました。

このような背景のもと、本研究はアルカリ活性コンクリートの塩化物抵抗性とその微細構造との関連性を詳細に調査し、評価手法とメカニズムに新たな知見をもたらしました。まず、AACの塩化物抵抗性を効率的かつ信頼性高く評価するため、修正された急速塩化物浸透試験(10V)を検証し、その有効性を確認しました。さらに、従来の塩化物プロファイル測定法に加え、新開発のマイクロX線蛍光(μXRF)プロファイル法を導入し、このμXRF技術が、AACの塩化物イオン分布を極めて高い空間分解能と信頼性で測定できることを実証しました。異なる前駆体組み合わせを持つ6種類のAAC混合物を評価した結果、高炉スラグの含有量が同じ混合物であっても、焼成ボーキサイト尾鉱ともみ殻灰を組み合わせた前駆体を使用した場合、フライアッシュを前駆体とする場合と比較して、コンクリートの多孔性が増加し、塩化物抵抗性が著しく低下することが判明しました。最も重要な発見として、本研究で用いたすべてのAACにおける塩化物結合が、ポルトランドセメント系とは異なり、主に物理的かつ可逆的であることを明らかにしました。これは、AACの塩化物劣化メカニズムを理解する上で極めて不可欠な洞察となりました。

本研究は、アルカリ活性コンクリートの塩化物抵抗性に関する基礎的な理解を深め、その性能評価と材料設計に不可欠な知見を提供します。特に、前駆体の選択がAACの耐久性に大きく影響することを示したことで、持続可能な高性能AACを開発・設計する上での重要な指針となります。塩化物結合メカニズムの違いの解明は、AACの長期耐久性予測と材料改良に新たな視点をもたらします。また、μXRF法を用いた精密な分析手法の確立は、今後のAACの研究開発における標準的な評価ツールとして期待され、より効果的な材料設計や品質管理に貢献します。これらの成果は、二酸化炭素排出量の削減に貢献する環境配慮型コンクリートの実用化と普及を加速させ、持続可能な社会実現に寄与するものと期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


In-situ monitoring bacteria-based crack sealing process in mortar

コンクリートのひび割れは構造物の耐久性を損ねるため、近年、バクテリアを利用した自己治癒コンクリートが注目されている。しかし、これまでの技術では、バクテリアが生成する生体沈殿物がひび割れの表面に偏り、深部での形成が不十分であった。この不均一な沈殿分布が修復後の強度回復を限定的にし、その根本原因の解明が課題だった。2025年12月発行予定の論文「In-situ monitoring bacteria-based crack sealing process in mortar」は、モルタル中のひび割れ内部でのバクテリアによる封止プロセスをその場で詳細に監視する研究を行った。本研究は、胞子をひび割れの異なる深さ(表面層5mm、深層25mm)に埋め込み、生体沈殿物の分布に影響する主要因解明を目的とした。

研究の結果、胞子を25mmの深部に埋め込んだ供試体では、封止深さが平均7.93mmと、5mmの深さに埋め込んだ場合の4.67mmよりも有意に深かった。この深さの違いは、ひび割れ内部のpH分布と酸素供給の動態に起因する。表面層(pH 9-11.5)の胞子は約1日で速やかに発芽し、活発な酸素消費によって周辺が急速に酸素欠乏に陥った。これによりひび割れの開口部は42日と比較的早く閉鎖されたが、酸素不足のため沈殿は深部に到達せず、封止深さは限定的だった。一方、深部(pH 12-12.5)の胞子は約3日と発芽に時間を要したが、ひび割れが56日まで完全に閉鎖されずに開いた状態が続いたことで酸素が深部へ拡散しやすくなり、より深い部分まで沈殿が形成された。このメカニズムは、pH分布が胞子発芽を誘発し、酸素欠乏が増幅することで生体沈着物が不均一に分布するという因果関係を明確に示した。

最大の新規性は、「ひび割れ封止幅」と「ひび割れ封止深さ」の間に「空間的競争効果」が存在することを世界で初めて明らかにした点にある。これは、表面での急速な封止が深部への酸素供給を遮断し、結果として深さ方向への沈殿形成を阻害する現象である。本研究は、ひび割れ内部の物理化学的環境、pHによる層状の胞子発芽、ウレアーゼ活性回復、不均一沈着の因果関係を明らかにした。これらの知見は、自己治癒コンクリートのバクテリア配置、栄養源供給、封止メカニズム制御の開発に貢献する。本研究は、自己治癒性能を向上させ、耐久性の高いコンクリート構造物の実現に寄与するものと期待される。

— **文字数:** 890字

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)