Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Alkali-activated materials」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Subzero-cured OPC–CSA mortars incorporating shell-derived CaO and carbon nanofibers: Strength, freeze–thaw durability, and resistance to chloride ingress
寒冷地におけるコンクリート構造物の建設と維持は、氷点下での養生が初期水和を阻害し、凍結防止剤としての塩分暴露が劣化を加速させるという二重の課題に常に直面しています。これに加えて、今日の建設業界は、低炭素排出と資源の循環利用という喫緊の目標達成を同時に求められています。従来のセメント系材料ではこれらの要求を満たすことが困難であるため、新たな材料技術の開発が不可欠とされています。このような背景の下、本研究は、普通ポルトランドセメントとカルシウムスルホアルミネートセメント(OPC-CSA)を混合したモルタルを対象に、貝殻由来の酸化カルシウム(CaO)とカーボンナノファイバー(CNF)を複合的に配合し、氷点下養生環境下での強度、耐久性、および塩化物浸透抵抗性を詳細に評価しました。
研究では、20℃で6時間前養生した後、−10℃で養生されたOPC:CSA比率4:1のモルタル試料について、CNF、CaO、またはその両方を添加した場合の性能変化を検証しました。機械的強度試験、急速凍結融解サイクル試験、非定常塩化物移動(NSSCM)試験に加え、水銀圧入法(MIP)、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた微細構造解析が行われました。その結果、CNFまたはCaOの単独添加はいずれも氷点下養生下での初期強度向上に寄与することが明らかになりました。特に注目すべきは、セメントに対して2質量%のCaOと体積比0.3%のCNFを併用したC2F3配合が、強度と耐久性の両面で最も優れたバランスを示すという発見です。この配合では、28日圧縮強度が制御材の14.9 MPaから33.2 MPaへと約123%増加し、塩化物拡散係数(D nssm)も制御材の20.2 × 10⁻¹² m²·s⁻¹から9.74 × 10⁻¹² m²·s⁻¹へと約52%低減されました。微細構造解析からは、CNFがナノ充填効果や繊維の架橋・引き抜きを通じて細孔構造を緻密化すること、適度なCaOが早期の発熱とアルカリ性上昇により水和反応を促進することが確認されました。一方で、過剰なCaOは結晶粗大化やマイクロクラック、マクロ細孔形成を招き、性能を低下させることも示唆されています。凍結融解耐久性では、CNF単独配合が長期的な性能維持に優れる一方で、特定のCaO配合は短期的に制御材を上回るものの、長期安定性には課題があることが分かりました。
本研究の成果は、寒冷地におけるコンクリート構造物の性能向上と耐久性強化に貢献する画期的なアプローチを提示しています。貝殻廃棄物から生成されたCaOの利用は、建設産業における循環型材料の導入を促進し、持続可能な社会への移行に寄与します。さらに、この革新的な複合材料は、氷点下環境下での施工における新たな低炭素設計の可能性を拓きます。具体的に推奨される2質量%のCaOと0.3%のCNFの複合配合は、冬季施工の仕様書や寒冷地での実用的なアプリケーションに対する貴重な指針を提供し、将来のインフラ建設における重要な一歩となるでしょう。
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Chloride transport, binding, and microstructure in alkali-activated concrete with different types of precursor combinations
持続可能な社会の実現に向け、従来のセメントに代わる低環境負荷型コンクリートとして、アルカリ活性コンクリート(AAC)の開発が世界的に進められています。産業廃棄物などを原料とするAACは、製造時の二酸化炭素排出量を大幅に削減できる点が大きな魅力です。しかし、海洋構造物や融雪剤が使用される地域など、塩害リスクの高い環境下でAACを安全に利用するためには、その耐久性、特に塩化物イオンに対する抵抗性に関する詳細な理解と、それを正確に評価する手法の確立が不可欠でした。本研究は、この課題に応えるべく、AACの塩化物抵抗性とその微細構造を詳細に調査し、信頼性の高い評価手法を検証することを目的にしています。
研究チームはまず、AACに特化した塩化物浸透評価手法として、改良型高速塩化物浸透試験(10V印加)の妥当性を検証するとともに、新たに開発したマイクロX線蛍光(μXRF)プロファイル法を導入し、従来の測定法と比較しました。異なるプレカーサー(原料)を組み合わせた6種類のAACについて、機械的強度や塩化物拡散係数などを評価した結果、複数の重要な知見が得られました。第一に、プレカーサーの種類がAACの塩化物抵抗性に大きく影響することが判明しました。例えば、フライアッシュを用いたAACと比較して、焼成ボーキサイト尾鉱と籾殻灰を組み合わせたプレカーサーでは、材料の多孔性が増加し、塩化物抵抗性が著しく低下することが示されました。これは、原料選択がAACの耐久性に直結することを示唆しています。第二に、AACにおける塩化物結合のメカニズムが、従来のポルトランドセメントとは根本的に異なることが明らかになりました。AACでは塩化物イオンが主に物理的に結合し、その結合は可逆的であることが示唆されました。これは、化学的に固定されるポルトランドセメントとは対照的で、AACの塩化物挙動を理解する上で極めて重要な発見です。さらに、μXRF技術がAAC内部の塩化物分布を高い空間分解能で信頼性高くプロファイルできることが実証され、詳細分析への道を開きました。
本研究で得られた知見は、アルカリ活性コンクリートの性能評価、特に塩化物抵抗性に関する理解を大きく深化させるものです。プレカーサーの選定がAACの長期耐久性に決定的な影響を与えることを明確にした点は、持続可能なコンクリートの設計と開発において極めて重要な指針となります。また、AAC特有の塩化物結合メカニズムの解明は、材料設計における新たな視点を提供し、塩害環境下での性能最適化のための基礎的知識を確立しました。μXRFのような先進分析技術の検証は、今後の材料研究における評価手法の高度化に貢献するでしょう。これらの成果は、環境負荷低減と優れた耐久性を兼ね備えたAACの実用化を加速させ、社会インフラの持続可能性向上に大きく寄与するものと期待されます。
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Effect of air-entraining agent on fluidity and hydration activity of modified magnesium slag-based cemented filling material
現代の鉱業現場において、坑道の埋め戻しや空洞充填に用いられる改質マグネシウムスラグ系セメント充填材(MMSCF)は、その利用拡大が期待される重要な材料です。しかし、MMSCFスラリーの流動性不足は長年の課題であり、特に骨材の沈降は充填パイプの詰まりや破裂といった深刻なトラブルを引き起こし、作業の安全性と効率性を著しく損ねていました。このような背景から、MMSCFの流動性を効果的に改善し、安定した充填作業を実現するための技術開発が喫緊の課題とされていました。本研究は、この問題に対し、空気連行剤(AEA)の添加がMMSCFの流動性と水和活性に与える影響を詳細に解析し、実用的な解決策を見出すことを目的としました。
本研究の新規性は、改質ロジンポリエーテル(MRP)、アビエチン酸ナトリウム(SA)、トリテルペンサポニン(SY-5)という特性の異なる3種類のAEAに着目し、それらの種類と最適な含有量がMMSCFスラリーの流動性、機械的特性、さらには水和活性に及ぼす影響を包括的に評価した点にあります。研究チームは、微細なレオロジー試験から一軸圧縮強度試験に至るまで多角的に性能を分析しました。さらに、水和熱測定、X線回折(XRD)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、走査型電子顕微鏡(SEM)、核磁気共鳴(NMR)といった高度な分析手法を駆使し、AEAがMMSCFの微細構造と水和反応メカニズムにどのように作用し、その特性を変化させるのかを詳細に解明しました。
実験の結果、SA、SY-5、MRP(いずれも0.1%の含有量)といった空気連行剤を添加することで、充填スラリーの降伏応力と塑性粘度が顕著に低減され、その流動性が大幅に改善されることが示されました。これにより、充填パイプの閉塞リスク低減とスムーズな輸送が可能になります。さらに、適切な量のAEAを添加することで、充填材の機械的特性、特に圧縮強度が飛躍的に向上することも判明しました。具体的には、MRPを0.1%、SAを0.5%、SY-5を0.3%添加した試料では、28日養生後の圧縮強度がそれぞれ46.61%、127.36%、60.88%増加するという優れた結果が得られました。メカニズム解析では、SAの添加がMMSCFの水和誘導時間を劇的に短縮し、セメント系全体の発熱速度を加速させる効果が明らかになりました。AEAは分散したゲル化粒子の水和反応を促進し、エトリンガイト(AFt)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、C-S-Hゲルといったゲル生成物の増加を促します。これらのゲルが試料内部の空隙を充填することで細孔構造が最適化され、材料の強度向上に寄与していることが突き止められました。
本研究は、適切な種類のAEAを最適な量で利用することで、MMSCFスラリーの流動性向上と充填材の機械的強度強化という、従来両立が困難とされてきた二つの性能を同時に達成できることを実証しました。この画期的な知見は、鉱山充填における安全性の向上と作業効率化に大きく貢献するものです。さらに、AEAが水和反応と微細構造に与える影響に関する深い理解は、将来的なセメント系材料の性能設計における重要な基礎データとなり、持続可能な資源開発技術の発展に寄与するものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)