Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Geopolymer」に関連する新着論文 2 本の要点をまとめました。
Experimental validation of a phase-field damage model for quasi-brittle fracture and damage evolution in geopolymer concrete under varying curing conditions
近年、持続可能な社会の実現に向け、建設分野における環境負荷低減は喫緊の課題となっています。その中で、通常のポルトランドセメントに代わる低炭素型材料として、ジオポリマーコンクリート(GPC)が大きな注目を集めています。GPCは、製造過程で大量の二酸化炭素を排出するセメントを使用せず、産業廃棄物などを原料とすることで、炭素排出量を大幅に削減する可能性を秘めています。GPCの優れた環境性能は各方面から期待されていますが、その特性、特に養生条件が材料の機械的特性や耐久性に与える影響については研究が進められてきたものの、構造物の安全性に直結する破壊挙動に与える影響については十分に解明されていませんでした。GPCを建築構造物に応用する上で、その破壊特性を正確に理解し、予測することは、構造物の安全性と長期的な信頼性を確保するために不可欠です。
こうした背景のもと、このほど学術誌に掲載された論文では、GPCの準脆性破壊挙動に与える様々な養生条件や配合比(アルカリ溶液と前駆体比、AS/P)の影響を詳細に調査し、そのメカニズムの解明に挑みました。本研究の特筆すべき点は、詳細な実験的検証と、高度な数値シミュレーション手法である「相場-凝集域結合法(PF-CZM)」を組み合わせた点にあります。研究チームは、異なる湿度条件下(相対湿度45%、65%、95%)および配合比のGPCに対して、ノッチ付き梁を用いた3点曲げ試験を実施し、破壊靭性や破壊エネルギーといった重要な破壊特性を定量的に評価しました。さらに、これらの実験結果を基にPF-CZMモデルを構築し、単調荷重下でのGPCの荷重-開口変位曲線(CMOD)応答やき裂の伝播パターンを高い精度で再現できることを実証しました。これにより、複雑なGPCの破壊現象を予測するための強力なツールが確立されたと言えます。
実験結果から明らかになったのは、GPCの破壊抵抗が養生湿度に大きく依存するという事実です。具体的には、養生湿度が低下するにつれてGPCの破壊抵抗は減少し、相対湿度45%で養生した場合、95%で養生した場合と比較して破壊エネルギーが15.35%も低下することが判明しました。これは、GPCの現場での施工・養生管理が、その構造性能に極めて重要な影響を与えることを示唆しています。本研究で確立されたPF-CZMモデルは、GPCの破壊挙動を正確に予測する上で極めて有効であることが確認され、その信頼性は実験データによって裏付けられました。これらの知見は、環境負荷の低いGPCを持続可能な建設材料として社会実装していく上で、その構造性能と耐久性を向上させるための具体的な指針を与えるものです。今後、GPCのさらなる応用展開や、より堅牢で環境に優しい建築構造物の設計に大きく貢献することが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Synergistic activation mechanism of full-solid-waste-based geopolymer: Unraveling hydration behavior and microstructure evolution from red mud, phosphogypsum and calcium carbide slag
現代社会において、セメント製造に伴う大量の二酸化炭素排出量の削減は、建築材料産業が直面する喫緊の課題です。同時に、高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの産業副産物に加え、赤泥、リン石膏、炭化カルシウムスラッジといった多様な固形廃棄物の効果的な再利用も不可欠となっています。これらの課題に応えるため、低炭素かつ環境負荷の低い代替バインダーとしてジオポリマーが注目されていますが、複数の固形廃棄物を複合的に活用し、その相乗効果を最大限に引き出すメカニズムの解明は、依然として重要な研究テーマでした。
本研究は、セメント産業のCO2排出削減と複数固形廃棄物の相乗的価値向上を目指し、赤泥(RM)、リン石膏(PG)、炭化カルシウムスラッジ(CS)を活性剤、高炉スラグ微粉末(GGBS)とフライアッシュ(FA)を前駆体とする「完全固形廃棄物由来のジオポリマー」を開発しました。従来のジオポリマー研究における二元活性化が抱える強度発現の課題を克服するため、本研究は三元活性剤システムの詳細な相乗作用メカニズムを解明。GGBS/FA比率や活性剤添加量が反応と性能に与える影響も評価しました。
微細構造解析から、三元RM-PG-CSシステムでは各活性剤が明確な役割を果たすことが判明しました。炭化カルシウムスラッジ(CS)は水酸化物イオン(OH−)とカルシウムイオン(Ca2+)を供給して前駆体の溶解を促進し、赤泥(RM)はナトリウムイオン(Na+)を導入してN−A−S−Hゲルの形成を助長。そしてリン石膏(PG)がエトリンガイト(AFt)の適切な析出を調整します。これらの相乗作用により、適度なAFt結晶がC−(A)−S−HゲルとN−A−S−Hゲルと緻密に絡み合い、強固な結晶-ゲル複合微細構造を形成。最適な配合では28日圧縮強度25.3 MPaを達成しました。ただし、過剰な活性剤はケイ素-酸素やアルミニウム-酸素結合の解重合を阻害し後期強度向上を妨げ、特に過剰なPGはAFt/石膏の過剰結晶化と微細亀裂を誘発するリスクが指摘されています。
本研究は、複数の固形廃棄物から低炭素バインダーを製造するためのメカニズム的基盤と実践的な経路を提供しました。開発されたジオポリマーシステムは、単位強度あたりのCO2排出量を87.4%削減できる可能性を秘めており、持続可能な建築材料分野における画期的な進展と言えます。この成果は、環境負荷の低減と資源循環型社会の実現に大きく貢献するものです。今後、廃棄物の種類や配合比率がジオポリマーのレオロジー特性やマクロな物理的性質に与える影響を体系的に定量化することが、さらなる実用化に向けた次なる研究課題となるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)