AIニュース|2025-11-14 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


A quantitative study of phase assemblage in cement-fly ash-slag ternary systems using machine learning-assisted BSE-EDS image analysis

持続可能な社会の実現に向け、建設分野では産業副産物の有効活用が喫緊の課題となっています。特に、セメントにフライアッシュや高炉スラグといった副産物を配合した多成分セメント材料は、資源循環を促進し環境負荷を低減する上で極めて重要です。しかし、これらの複雑な組成を持つ材料が水と反応する「水和反応」において、内部でどのような化学種(相)が生成し、どのように微細構造が変化していくのかを、時間的変化を含めて正確に追跡することは、材料の不均一性や既存の評価手法の限界から困難を伴っていました。その結果、これらのサステナブルなセメント材料の性能を最大限に引き出し、品質を保証するための詳細なメカニズム理解が不足している現状がありました。

こうした背景の中、この度発表された研究は、セメント-フライアッシュ-スラグ三元系の水和反応における元素移動、相の進化、微細構造発達を、より高精度かつ自動で定量的に解析する画期的な手法を提示しました。本研究では、走査型電子顕微鏡による後方散乱電子(BSE)像とエネルギー分散型X線分光法(EDS)を組み合わせた画像解析フレームワークを開発。このフレームワークは、先進的な画像処理、教師なしクラスタリング、スーパーピクセルセグメンテーションといった機械学習アルゴリズムを統合することで相識別精度を飛躍的に向上させました。これにより、原材料から反応生成物に至るまでの相組成と微細構造の変化を、より高い正確性で捉えることを可能にします。開発された手法は、セメント材料の相含有量定量化において、既存の著名なモデルであるVCCTLおよびCemGEMSとの間で良好な一致を示すことが検証されており、その信頼性が裏付けられています。

この研究成果は、多成分セメント材料の微細構造評価における「パラダイムシフト」をもたらすものとして、その意義は極めて大きいと言えます。水和反応の複雑なプロセスを、より正確かつ自動で解明できるようになったことは、持続可能な建設材料の開発において、基礎研究から応用、品質管理に至るまで多岐にわたる分野に計り知れない恩恵をもたらすでしょう。例えば、最適な配合設計、長期耐久性予測、新たな産業副産物の適用性評価など、革新的な進展が期待されます。本研究が確立した多モード微細構造評価の新しいアプローチは、資源効率と環境性能を両立させた次世代建設材料開発を加速させ、持続可能な社会の実現に大きく貢献するものと確信されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Multi-agent collaboration for knowledge-guided data-driven design of ultra-high-performance concrete (UHPC) incorporating solid wastes

近年、コンクリートの設計において、廃棄物の有効活用や脱炭素化への貢献を目指し、データ駆動型アプローチが注目されています。しかし、コンクリート材料の複雑な特性に関する専門知識が欠如している場合、その設計の汎用性や信頼性は限定的となる課題がありました。この課題を克服するため、専門知識を構造化して表現する知識グラフの活用が期待されていますが、従来の知識グラフは手作業での構築が主流であり、その非効率性や大規模な情報への対応の難しさが実用化を阻んでいました。

こうした背景に対し、本研究は知識誘導型のデータ駆動設計を合理化する「多エージェント協調フレームワーク」を開発しました。このフレームワークは、コンクリート設計に関連する多様なタスクを複数の専門エージェントに分散させ、それぞれが自律的に協調しながら作業を進めることで効率性を高めます。特に重要なのは、大規模言語モデル(LLM)を基盤としたアプローチを導入することで、コンクリートに関する広範な文献やデータから必要な知識を自動的に抽出し、知識グラフを構築するプロセスを劇的に効率化した点です。本フレームワークは、廃棄物を活用したグリーン超高性能コンクリート(UHPC)の設計とそのための知識グラフの自動生成に適用されました。この多エージェント協調によるUHPC設計と、LLMを活用した知識グラフ構築のためのUHPC知識の自動抽出こそが、本研究の主要な新規性であり、これまでの課題であった手動構築の非効率性を根本的に解決するものです。

その結果、このフレームワークは、コンクリートの専門知識をUHPCのデータ駆動型設計に効果的に統合できることを示しました。これにより、機械学習が導き出す設計案が、単なるデータ上の相関に留まらず、物理的・化学的メカニズムに基づいた明確な根拠を持つものとして解釈できるようになり、設計の信頼性が飛躍的に向上します。本研究は、純粋なデータ駆動型設計から、専門知識に裏打ちされた「知識誘導型設計」への重要な転換点となり、廃棄物利用を前提とした環境負荷の低い次世代の複合材料、特に超高性能コンクリートの設計・開発を大きく加速させるものと期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Thermal and sound insulation characteristics of CNT infused ultra-high-strength lightweight concrete (UHSLC)

現代建築では、構造強度だけでなく、優れた断熱性や遮音性、環境負荷の低減といった多機能性が求められています。特に、エネルギー消費削減と二酸化炭素排出抑制は喫緊の課題です。超高強度軽量コンクリート(UHSLC)は高い強度と軽量性で注目されますが、断熱・遮音性の付与が課題でした。従来のコンクリートでは強度と他性能の両立が難しく、新たな材料開発が待望されています。本研究は、ナノマテリアルと先進的な繊維材料を複合化することで、この課題を克服し、多機能な高性能建材の実現を目指しました。

本研究は、カーボンナノチューブ(CNT)と、鋼繊維およびポリエチレン(PE)繊維を複合化した超高強度軽量コンクリート(UHSLC)の断熱・遮音特性を詳細に調査しました。0.05重量パーセントのCNTと1体積パーセントの繊維(鋼、PE、またはその組み合わせ)を配合したUHSLC混合物を調製し、その物性を評価。CNTの添加は細孔構造を改善し気孔率を低下させ、圧縮強度と引張強度を顕著に向上させることが判明しました。特に、CNTと鋼繊維の併用試料は最高の圧縮強度を記録し、鋼・PE繊維ハイブリッド配合試料では最適なひずみ容量が確認されています。また、PE繊維の導入は総気孔率と連続気孔率を増加させ、UHSLCの吸音特性を効果的に向上させました。熱伝導率は、中空マイクロ球とPE繊維の低熱伝導率により、全てのUHSLC試料で約0.600 W/m·Kという低い値に維持。全試料が1600 kg/m3以下の密度で軽量性を保ちつつ、52.2 MPa m3/tを超える高い強度を達成し、多機能化と高性能化の両立が実証されました。

本研究の成果は、CNTを配合したUHSLCが、高い機械的強度と優れた断熱・遮音性能を兼ね備えた画期的な複合材料であることを示唆します。これにより、建築物のエネルギー効率が大幅に向上し、暖房・冷房に必要なエネルギー消費量や運用段階での二酸化炭素排出量が大きく削減される可能性があります。軽量性、高強度、多機能を同時に実現するこの材料は、迅速な施工が求められるモジュール型建設や、環境負荷低減が重視されるプロジェクトにおいて、構造体の軽量化と高性能化に大きく貢献すると期待されます。本研究は、持続可能な社会の実現に向けた建材開発において、高性能化と環境配慮を両立させる新たな道筋を提示し、未来の建築技術に革新をもたらす重要な一歩となるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)