Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Alkali-activated materials」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
In-situ analysis reveals the calcium ion paradox: Delayed passivation yet enhanced durability of rebar in concrete
鉄筋コンクリートの耐久性は、内部の鉄筋表面に形成されるナノスケールの不働態皮膜(PF)に大きく依存します。この皮膜は、鉄筋の錆を防ぎ、構造物の長期的な健全性を保つ上で極めて重要です。しかし、不働態皮膜はその本質的な不安定性や従来の分析技術の限界から、組成や形成メカニズムの詳細はこれまで不明瞭でした。この課題を解決するため、〇〇大学の研究チームは、高感度な表面X線回折法(GIXRD)と電気化学分析を組み合わせた「その場(in-situ)」分析技術を導入。コンクリート間隙溶液中の主要な陽イオン(ナトリウム、カリウム、カルシウム)が不働態皮膜の組成、形成速度、反応メカニズム、そして耐食性に与える影響を詳細に調査し、長年の疑問に科学的な知見をもたらしました。
研究チームは、pH 12.5のアルカリ性溶液中で純鉄の不働態皮膜形成を調べ、各陽イオンがそれぞれ異なる組成の皮膜を形成することを発見しました。具体的には、ナトリウムイオン環境下ではNa₃Fe₅O₉、カリウムイオン環境下ではK₆Fe₂O₆、そしてカルシウムイオン環境下ではCaFe₂O₄が、主要な皮膜成分として同定されました。また、皮膜の形成速度論も陽イオンの種類によって大きく異なり、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム溶液中では48時間で皮膜が完成するのに対し、水酸化カルシウム溶液中では120時間と大幅に長い時間を要しました。これは陽イオンごとに異なる反応経路を辿るためと考えられます。しかし、特筆すべきは、この形成速度の遅さとは裏腹に、カルシウムイオン由来の不働態皮膜が、他の陽イオン由来の皮膜と比較して顕著に優れた耐食性を示すという「カルシウムイオンのパラドックス」を発見した点です。耐食性は、水酸化カルシウム溶液由来の皮膜が最も高く、次いで水酸化ナトリウム、水酸化カリウム溶液の順でした。
本研究は、カルシウムイオンが関与する不働態皮膜の「形成遅延と耐久性向上」という、これまで理解が困難であった現象の根底にあるメカニズムを、世界で初めて体系的に解明した点で極めて高い新規性を持っています。この成果は、鉄筋コンクリートの長期的な劣化挙動を深く理解するための不可欠な知見をもたらし、コンクリート構造物の持続可能性を高める上で重要な示唆を与えます。これにより、コンクリートの配合最適化や、より長寿命なインフラ構造物の設計・建設に貢献し、社会基盤の安全と安心を支える上で重要な一歩となるでしょう。
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Effect of silane-grafted aluminum sol on the early-age strength of calcium sulfoaluminate cement for rapid repair
既存のコンクリートインフラは、経年劣化や自然災害により急速な修復が求められる場面が増加しており、構造物の安全性を速やかに回復させるための高機能な補修材料の開発が喫緊の課題となっています。特に、早期に高い強度を発現し、短期間での供用再開を可能にする材料は、緊急修復や重要インフラの維持管理において不可欠です。こうした背景のもと、従来の材料では対応が困難だった迅速な補修ニーズに応えるべく、カルシウムスルホアルミネート(CSA)セメントの早期強度を飛躍的に向上させる新たな技術が開発されました。
この度、研究チームは、急硬性に優れるCSAセメントのペーストに、シラン修飾アルミニウムゾル(AS)を複合化させることで、その早期強度を大幅に高めることに成功しました。実験の結果、加水分解されたシランがアルカリ性の水溶液中でASの分散性を向上させるだけでなく、セメント硬化過程で生成される水酸化カルシウム(CH)とポゾラン反応を起こし、二次的なケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)ゲルを生成することが明らかになりました。この相互作用がセメントマトリックスの緻密化に寄与します。具体的には、シラン対ASの質量比を1:6としたシラン修飾ASを1.0 wt%添加した場合、AS単独で添加した場合と比較して、材料の機械的特性が劇的に向上することが確認されました。硬化6時間後の圧縮強度は72.9%、1日後では57.9%、そして3日後でも38.8%もの向上が見られました。また、引張強度においても顕著な改善が認められ、6時間後で15.5%、1日後で50.4%、3日後には85.3%もの増加を達成しています。
これらの驚異的な早期強度向上は、シラン修飾ASの添加がセメント内部構造に与える影響に起因しています。詳細な分析により、シラン修飾ASが相互に連結した針状のエトリンガイト(AFt)の骨格をより緻密にし、内部構造を強化することが判明しました。これにより、硬化6時間後において、材料の総気孔率は37.5%、最も可能性の高い気孔径は34.7%それぞれ減少し、緻密な組織が形成されたことが実証されました。このような内部構造の最適化が、早期における高い圧縮強度と引張強度をもたらす根底にあるメカニズムとして特定されています。
本研究で開発されたシラン修飾アルミニウムゾル複合CSAセメントは、その優れた早期機械的特性により、緊急を要するインフラ修復や、構造的完全性の迅速な回復が不可欠な緊急建設プロジェクトにおいて、極めて有望な候補となり得ます。短時間での高強度発現は、交通規制期間の短縮や早期の供用再開を可能にし、社会経済活動への影響を最小限に抑えることに貢献します。この革新的な材料は、現代社会が直面するインフラ維持管理の課題に対し、持続可能かつ効率的な解決策を提供するものとして、今後の実用化が大いに期待されます。
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Aging of steel slag-modified styrene-butadiene-styrene/crumb rubber asphalt mastic: Mechanism of steel slag on the evolution of asphalt microstructure
近年、インフラ整備において資源の有効活用と環境負荷低減の観点から、製鉄プロセスから生じる副産物である鉄鋼スラグが、アスファルト舗装材料として広く利用されています。しかし、その長期的な性能、特にアスファルトの劣化挙動やそれに鉄鋼スラグが与える影響については、十分に解明されているとは言えず、舗装の耐久性や安全性確保のためには詳細な研究が求められていました。
この課題に対し、最新の研究では、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)とゴム粉末で改質されたアスファルトマスチックに、鉄鋼スラグ粉末(SSP)を添加した場合の劣化挙動とそのメカニズムが詳細に分析されました。レオロジー試験、緩和特性温度分析、UV-可視分光法、蛍光顕微鏡(FM)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)といった多角的な手法を用いることで、SSPがアスファルトマスチックの短期、紫外線(UV)、および長期にわたる劣化を著しく促進するという負の影響を持つことが明らかになりました。具体的には、劣化後のマスチックは弾性応答が大幅に増加し、緩和特性温度の半値幅も増大する一方で、温度感度や粘性散逸能力が低下することが判明しました。FTIR分析からは、アスファルトの軽質成分が酸化し(CO結合の特性ピークが増加)、同時にSBS改質材のポリマー鎖(C=C結合の特性ピークが消失)が切断されていることが示されました。さらに、FM分析では、UV劣化や長期劣化後に改質材によって形成されていた架橋ネットワーク構造が消失していることが確認されました。これらの現象の背景には、SSPに含まれる酸化鉄(Fe2O3)や酸化チタン(TiO2)などの活性成分が、アスファルトマスチックのUV劣化を促進する可能性が示唆されています。加えて、SSPの高い比重がアスファルトの相分離を悪化させ、酸素の拡散を加速させることで、改質材が本来持つ劣化防止効果を著しく弱め、アスファルトマスチック全体の劣化を加速させているという、複合的なメカニズムが解明されました。
本研究で得られた知見は、鉄鋼スラグを配合したアスファルト混合物の耐久性設計において極めて重要な意味を持ちます。これまで見過ごされがちであった鉄鋼スラグの劣化促進効果と、その詳細なメカニズムを明らかにしたことは、将来的な材料開発や配合設計において、劣化防止性能の相乗的最適化に向けた具体的な指針と理論的基盤を提供するものです。これにより、鉄鋼スラグを安全かつ効果的に利用しながら、より長寿命で持続可能なアスファルト舗装技術の発展に貢献することが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)