Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Carbon sequestration in cementitious composites containing two-step thermochemically activated biochar
地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、建設産業はセメント製造に伴う大量の二酸化炭素(CO2)排出が課題となっています。この課題解決に向け、CO2を吸収・固定化する「炭素隔離技術」の導入が模索されており、その中でもバイオマスを炭化した「バイオ炭」をセメント材料に活用する研究が注目されています。しかし、バイオ炭の特性がセメントの性能に与える影響は複雑であり、その最大限の可能性を引き出すためには、構造や特性の精密な制御が不可欠でした。
このような背景のもと、最新の研究が、バイオ炭を二段階の熱化学的手法で活性化することで、セメント材料のCO2隔離能力と工学的性能を同時に飛躍的に向上させる新たなアプローチを提示しました。本研究では、単なる熱処理を施したバイオ炭(TTBC)と、水酸化カリウム(KOH)を用いた活性化処理を施したバイオ炭(KBC)の二種類に着目。TTBCが主に芳香族性でミクロ孔(2nm未満)を持つ一方、KBCはマクロ孔(50nm超)が豊富で酸素含有官能基を多く含むという、それぞれの構造的特徴を詳細に分析しました。特に、750℃でKOH活性化されたKBCは、高い表面積(190~237 m²/g)、特異な構造的無秩序性、そして豊富な酸素リッチ官能基を有していることが判明しました。これらの特性が、セメントの水和反応を劇的に加速させ、TTBCや低温で処理されたKBCを用いた場合に比べ、セメントペーストの総水和度を30~51%も向上させるという驚くべき結果をもたらしました。さらに、KOH活性化はバイオ炭の炭素燃焼を促進し、メソ孔およびマクロ孔の多孔性を著しく増加させます。これにより、CO2がバイオ炭内部に効率的に拡散するための新たな経路が形成され、TTBCに比べてCO2隔離能力が17~45%も向上することが示されました。
この優れたCO2隔離能力は、バイオ炭とKOHの比率を1:2から1:4へと高めることでさらに増加し、セメント材料内の小型・中型毛細管孔容積を40~71%削減することに貢献します。その結果、セメント複合材料の1日強度が16~37%、そして1年後の長期強度が22~45%という顕著な向上を達成しました。特筆すべきは、KOH活性化プロセスに由来する残留カリウムが、セメント硬化体中でポートランダイト結晶の肥大化を促し、これにより全体の収縮を15~38%軽減するという新たな知見です。この収縮抑制効果は、活性化バイオ炭を用いたセメント系材料の長期的な安定性と耐久性を大幅に高めることに寄与します。本研究で確立された二段階熱化学的活性化プロセスは、単にCO2を捕捉するだけでなく、セメント材料本来の性能(強度、安定性、耐久性)を同時に強化するという画期的なブレークスルーであり、持続可能な建設材料の開発に向けた強力な一歩となるでしょう。将来的には、この技術がセメント産業の脱炭素化を加速し、環境負荷の低い次世代型建設材料の実用化に大きく貢献すると期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Valorising bio-waste mussel shells in LC3 Systems: Hydration and mechanical performance
地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、セメント製造に伴う大量の二酸化炭素排出を抑制する技術として、石灰石焼成粘土セメント(LC3)が有望視されています。しかし、既存のLC3は、その主要成分の一つである石灰石(方解石)の反応性が比較的低く、コンクリートの初期強度が低下するという内在的な課題を抱えています。この欠点は、セメントクリンカーの削減を阻害し、LC3のさらなる普及に向けた大きな障壁となっていました。低炭素かつ高性能な建設材料の開発には、この課題の克服が不可欠です。
このような背景のもと、本研究はLC3システムの性能向上を目指し、広く入手可能なバイオ廃棄物であるムール貝の殻に着目しました。ムール貝の殻粉末(MSP)は、通常の石灰石を構成する方解石よりも反応性の高い多形である霰石(アラゴナイト)を豊富に含むことが知られています。研究チームは、このMSPをLC3システムにおける石灰石の代替として導入したMSPベースLC3(m-LC3)を開発し、その水和挙動と機械的性能を詳細に分析しました。その結果、MSP由来の有機マトリックスは水和の誘導期間をやや延長させますが、アルカリ環境下で反応性の高い霰石相が徐々に放出され、初期水和段階でヘミカーボアルミネートやモノカーボアルミネートがLC3よりも多量に形成されることが確認されました。
この水和生成物の増加は、顕著な初期強度向上に直結しました。具体的には、m-LC3は硫酸塩調整なしの場合で1日強度がLC3と比較して130%も向上し、硫酸塩調整ありの場合でも58%の向上が見られました。これにより、LC3の初期強度低下という課題が大幅に改善されます。水和後期段階では、メタカオリンとのポゾラン反応により水酸化カルシウム(ポートランダイト)濃度が減少し、霰石の放出は減速しましたが、28日強度でもm-LC3はLC3をわずかに上回り、長期的な性能維持の可能性も示唆されました。
本研究で開発されたm-LC3は、低CO2バインダーとしてのLC3の特性を維持しつつ、廃棄物であるムール貝の殻を未利用資源として活用し、セメントの性能向上とカーボンフットプリントの削減を同時に実現する画期的な技術です。この成果は、低炭素でありながら高性能なセメントの大規模利用を促進し、持続可能な社会の構築に大きく貢献するものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Production of carbonates calcined clay cement composites via CO2-assisted vigorous stirring
建設業界において、二酸化炭素排出量の削減は喫緊の課題であり、その解決策の一つとして石灰石・焼成粘土セメント(LC3)が注目を集めています。LC3は、セメントクリンカーの使用量を大幅に削減することで、製造時のCO2排出量を抑制する画期的な技術ですが、クリンカー置換率の高さゆえに、特に初期段階での圧縮強度が低いという課題を抱えていました。これは、施工後の構造物安定性や工期に影響を及ぼす可能性があります。こうした背景のもと、最新の研究では、このLC3の弱点を克服し、さらに高い性能を持つ次世代セメント材料の開発に成功しました。それが、CO2を利用した活発攪拌(CAVS)処理によって製造される、炭酸塩活性化焼成粘土セメントシステム「C4」です。
本研究で開発されたC4は、従来のセメント製造プロセスとは一線を画す革新的な手法を採用しています。具体的には、メタカオリン(MK)とカーバイドスラッジ(CS)という材料を、CO2を供給しながら激しく攪拌する「CO2-assisted vigorous stirring (CAVS)」と呼ばれる前処理を施した後、セメントと混合するという二段階プロセスで製造されます。このCAVSプロセスが、材料の特性を劇的に変化させる鍵となります。その効果は、圧縮強度において顕著に現れました。C4は、LC3と比較して、材齢1日での圧縮強度が300%以上、28日後でも60%以上向上するという驚異的な性能を示しています。さらに特筆すべきは、C4の圧縮強度が普通ポルトランドセメント(OPC)をも凌駕する点です。具体的には、材齢1日で12.7%、28日で8.6%高い強度を達成しており、これは既存の高性能セメント材料と比較しても、その優位性を示すものです。
このC4が示す卓越した性能は、CAVSプロセスが材料にもたらす多角的な変化に起因します。CAVS処理は、材料粒子の微細化、構造修飾、そして相転移を促し、セメントの水和反応を加速させる核生成サイトとなるC-(A)-S-H(カルシウム・アルミニウム・シリケート水和物)の形成を促進します。また、CAVSプロセスはメタカオリンの表面積を増加させ、反応に必要な活性サイトをより多く生成することで、その反応性を大幅に向上させます。さらに、カーバイドスラッジからCO2炭酸化によって生成される炭酸カルシウムが、石灰石中のカルサイトと比較して高い反応性を示し、モノカーボネートの沈殿を促進することも強度向上に寄与しています。これらの複合的なメカニズムが、より緻密な微細構造の形成を促し、結果としてC4の劇的な圧縮強度向上と高性能化を実現しました。この画期的なセメント技術は、環境負荷の低減と高性能化を両立させ、持続可能な社会を支える建築・建設分野に多大な貢献をもたらすものとして、その実用化が強く期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)