Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Interfacial bonding properties between steel fiber and cement paste containing SiO2 nanoparticles: Experimental and numerical investigation
近年、インフラや建築分野において、高強度と高靭性を両立する高性能材料への需要が高まる中、鋼繊維補強コンクリート(SFRC)はその有効な選択肢として注目されています。しかし、SFRCの性能は、補強材である鋼繊維とセメントマトリックス間の界面結合特性に大きく左右されるため、その最適化は長年の課題でした。特に、近年注目されるナノ材料、中でもナノ二酸化ケイ素(NS)粒子がセメントマトリックスの微細構造改善に有効であることが知られていますが、多量の鋼繊維が配置されたシステムにおいて、NSが繊維配置とどのように複合的に作用し、界面結合に影響を与えるのかは十分に解明されていませんでした。このような背景から、本研究は、鋼繊維の配置とナノ材料によるマトリックス改質が界面結合特性に及ぼす複雑な相互作用を体系的に解明し、より高性能なSFRCの設計指針を確立することを目指しました。
本研究は、二重鋼繊維とNS含有セメントペーストの界面結合性能およびその複合効果を実験的・数値的に詳細に調査し、これまでの不明瞭な点を大きく解前する重要な成果を上げています。特に、繊維間隔とNS含有量との間の動的な結合法則、およびそれらが界面結合挙動に与える相乗的なメカニズムを定量的に明らかにしました。フックエンド型鋼繊維を用いた場合、繊維間隔が6mmを超える場合はNS含有量1%が最適である一方、6mm未満の場合は3%のNSがより効果的であるという、繊維配置に応じた最適なNS配合比率を特定しました。驚くべきことに、8mmの繊維間隔と1%のNSを組み合わせることで、界面結合強度は11.02 MPaに達し、これはNSを含まない通常のセメントペーストと比較して45%もの大幅な向上を示すことが実証されました。さらに、多繊維システムにおける「繊維間隔」「NS含有量」「硬化時間」の三要素が相互に作用するメカニズムを初めて解明しました。繊維間隔が界面結合性能に与える影響は応力場の重畳効果によるものであり、NSで改質されたマトリックスでは8mmが最適間隔となる放物線状のトレンドを示すことが明らかになりました。これらの知見は、鋼繊維の配置とナノ改質によるマトリックス強化の相乗的な挙動について、これまでにない定量的な理解を提供するものです。
これらの画期的な発見は、高耐久性と優れた界面結合容量を持つ高性能鋼繊維補強コンクリートの設計を最適化するための貴重な指針となります。本研究で得られた知見を応用することで、従来のSFRCの性能限界を打破し、より効率的で信頼性の高い次世代のインフラ材料や建築材料の開発を加速させることが期待されます。特に、特定の用途や環境条件に応じて、最適な繊維間隔とナノ粒子の配合を精密に設計できる道筋が示されたことは、建設分野における材料科学の大きな進歩を意味し、持続可能でレジリエントな社会の実現に貢献する可能性を秘めています。
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Performance of heterogeneous cement-based stabilized soft clay under cyclic freeze-thaw environments
地盤改良に広く用いられるセメント系軟弱粘土固化材(CBSC)は、その長期的な性能維持が社会インフラの安全性と持続可能性に直結する重要な課題です。しかし、CBSCは本来、セメントの水和生成物、粘土鉱物、シルト、砂などが複雑に混じり合った多相の不均一な材料であるにもかかわらず、これまでの研究では、凍結融解環境下における劣化メカニズムを解明する際、材料を均質な単相として単純化して扱ってきました。このアプローチでは、材料内部の異なる相間での相互作用や熱挙動の違いが十分に考慮されず、凍結融解による正確な劣化過程の理解が妨げられていました。特に、寒冷地など凍結融解が繰り返される環境下でのCBSCの耐久性評価には、この不均一性を考慮した詳細なメカニズム解明が不可欠とされていました。
この課題に対し、本研究ではCBSCを不均一な多相材料として捉え直し、凍結融解環境下での性能劣化メカニズムを多角的に解明しました。具体的には、マクロスケールでの一軸圧縮強度試験と、メソスケールでの工業用CTスキャンを組み合わせることで、CBSCの内部構造とその構成相を詳細に特定。その結果、CBSCは水和生成物と微細鉱物の凝集体、土壌凝集体、そしてシルトや砂の画分といった複数の異なる相で構成されていることが確認されました。さらに、温度伝導、熱伝導率、収縮・膨張試験を実施し、凍結融解サイクル下におけるCBSCの熱応答特性を包括的に評価しました。これらの詳細な分析により、凍結融解環境下におけるCBSCの長期性能劣化の主因が、材料内部に発生する「温度勾配効果」であることが明らかになりました。すなわち、CBSCの同じ相内であっても熱応答が不均一であることに加え、異なる相間でも熱応答に差があるため、これが温度クラック(ひび割れ)の発生を引き起こします。これらの温度クラックはCBSC全体の熱伝導率を低下させ、その結果、温度勾配がさらに増大し、最終的に材料の完全な破壊へとつながるという、一連の劣化メカニズムが解明されました。
本研究は、CBSCの凍結融解環境下における劣化メカニズムに関する既存の知見を飛躍的に深化させるものです。これまで見過ごされてきた多相材料としての特性と、それに起因する温度勾配効果の重要性を明らかにした点で、学術的に大きな貢献があります。また、この成果は、地盤構造物の設計や維持管理において、凍結融解に対する耐久性を向上させるための具体的な技術的指針を提供します。例えば、CBSCの配合設計段階で各構成相の熱応答性を考慮したり、温度勾配を抑制するような工法を検討したりすることで、インフラ構造物の長期的な安全性と持続可能性に貢献し、メンテナンスコストの削減や資源の有効活用にも繋がることが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Effect of SCM and superplasticizer on excessive paste thickness and properties of concrete
現代の建設材料において、打設時の流動性や作業性といったフレッシュ性状と、硬化後の強度や耐久性といった力学特性を両立させる最適な配合設計は、構造物の品質と寿命を左右する上で極めて重要である。特に高性能コンクリート(HPC)は、その優れた性能から多岐にわたる構造物に応用が広がっているが、セメントに加え、フライアッシュや高炉スラグといった補足セメント質材料(SCM)や高性能AE減水剤など多様な材料が用いられるため、これらの材料が複雑に相互作用し、最適な配合を見出すことが常に課題となっている。これまで、SCMの種類や置換率、高性能AE減水剤の添加量については多くの研究がなされてきたが、これらの材料配合がコンクリート中の微細な「過剰ペースト厚さ」にどう影響し、それが最終的な性能にどう反映されるかについては、包括的な検討が不足していた。
このような背景のもと、本研究はSCM(フライアッシュ、高炉スラグ)および高性能AE減水剤の含有量変動が、コンクリート中の「過剰ペースト厚さ」を介して高性能コンクリートのフレッシュ性状および硬化後の力学特性に与える影響を詳細に検証した。試験結果から、高性能AE減水剤を添加しない場合でも過剰ペースト厚さがスランプフロー性やフロー保持性に大きく影響を与えることが示され、その重要性が明確に提示された。また、降伏応力は主に高性能AE減水剤の有無に左右される一方、塑性粘度は過剰ペースト厚さに強く依存するという、レオロジー特性における各要因の役割分担が明らかにされた。さらに、フライアッシュの添加は高性能コンクリートのレオロジー特性をわずかに改善する傾向があるものの、その効果は高性能AE減水剤の存在によって変化することも判明した。硬化後の特性に関しては、過剰ペースト厚さが最適な点までは強度発現にプラスの影響を与えることが確認され、ペースト厚さだけでなく高性能AE減水剤も強度に寄与する重要性が示唆された。セメントをフライアッシュに置換すると圧縮強度がわずかに低下する一方、高炉スラグの置換は圧縮強度にプラスの効果をもたらすことも観察された。興味深いことに、過剰ペースト厚さは摩耗、塩化物浸透、中性化といった環境要因には顕著な影響を与えないことも判明した。
本研究の成果は、高性能コンクリートの配合設計において、これまで個別の材料に着目してきた研究に加えて、「過剰ペースト厚さ」という新たな設計パラメータ導入の重要性を実証する画期的なものである。この知見は、高性能AE減水剤やSCMの最適な組み合わせを検討する際に、フレッシュ性状と硬化後の性能をより精緻にコントロールするための新たな指針を提供する。過剰ペースト厚さを適切に管理することで、打設時の作業性に優れ、かつ硬化後に所望の強度と耐久性を発揮する高性能コンクリートを、より効率的かつ安定的に製造することが可能になる。これにより、建設プロジェクトにおける材料の無駄削減、品質向上、コスト最適化に貢献し、長期的なインフラ構造物の維持管理負荷軽減にも寄与するため、持続可能な社会基盤構築に向けた大きな一歩となることが期待される。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)