Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Alkali-activated materials」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Mechanical performance of TRUHPC composites under freeze-thaw cycles
寒冷地におけるコンクリート構造物は、凍結融解サイクル(FTC)による劣化が深刻な課題です。繰り返される水の凍結と融解は、従来のコンクリートに微細なひび割れを生じさせ、強度低下や剥離を招いてきました。近年、卓越した強度と耐久性を持つ超高強度コンクリート(UHPC)をテキスタイルで補強したテキスタイル強化超高強度コンクリート(TRUHPC)が、その高性能性から次世代の建設材料として注目されています。しかし、この革新的な複合材料が、厳冬期における凍結融解環境下でどのような長期的な性能を発揮するのか、そのメカニズムを含め詳細な耐久性評価はこれまで十分に行われていませんでした。特に、材料内部の構成要素が凍結融解によってどのように相互作用し、全体性能に影響を与えるかを解明することが喫緊の課題とされていました。
本研究は、TRUHPC複合材料の凍結融解サイクル下における機械的性能と微細構造変化を多角的に分析しました。具体的には、UHPCマトリックスの機械的特性、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)グリッドとマトリックス界面の接着性、TRUHPCプレート全体の引張特性を評価。さらに、熱重量分析、水銀圧入ポロシメトリー、走査型電子顕微鏡を用いて微細構造変化を定量・定性的に調査しました。その結果、凍結融解初期(100サイクル後)では、再水和生成物が主にスチール繊維とマトリックスの界面遷移帯(ITZ)に蓄積し、微細構造が緻密化することで、マトリックスの曲げ強度が約52.9%も向上し、TRUHPC複合材料の引張特性も一時的に改善されるという予想外の発見がありました。しかし、サイクル数の増加に伴う凍害の進行と、スチール繊維およびCFRPグリッドとマトリックスの各界面での応力集中増大により、曲げ強度や引張強度は最終的に低下することも判明しました。特筆すべきは、ハイブリッド繊維UHPCマトリックスの圧縮強度が、700サイクルもの過酷な凍結融解後でもほぼ一定を保った点です。
本研究で得られた知見は、TRUHPC複合材料が凍結融解環境下で示す複雑な挙動、すなわち初期の性能向上と長期的な劣化メカニズムを詳細に解明した点で、学術的にも実用的にも極めて重要な意義を持ちます。特に、凍結融解サイクルが増加しても圧縮強度が維持されるという発見は、TRUHPCが凍結融解環境下においても基本的な構造安定性を保持する可能性を示唆しています。この成果は、寒冷地におけるTRUHPCの適用可能性を評価するための基盤データを提供し、高性能コンクリート構造物の設計基準の最適化や、より耐久性の高い材料開発への貢献が期待されます。将来的には、本研究の成果が、土木・建築分野におけるインフラの長寿命化を実現し、厳しい自然環境下でも安全かつ持続可能な社会基盤の構築に寄与するでしょう。
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High performance natural seawater coral sand ECC (HP-NSCS-ECC) in coastal conditions: Experimental characterization, microstructure, and sustainability
近年、世界的に沿岸部や海洋におけるインフラ整備が加速する中、これらの構造物は塩害、波浪、地震といった極めて過酷な環境に晒されており、その耐久性確保が喫緊の課題となっています。従来のコンクリートは圧縮強度に優れるものの、引張強度や延性が低く、ひび割れが生じやすいという本質的な弱点を抱えていました。これが構造物の早期劣化や維持管理コストの増大に繋がっており、特に海洋構造物では塩化物イオンの浸透による鉄筋腐食が深刻な問題です。この課題を克服するため、高い延性とひび割れ制御能力を持つエンジニアードセメンタイト複合材料(ECC)が注目されてきましたが、さらなる性能向上に加え、資源の有効活用による持続可能性の追求が求められていました。
このような背景のもと、本研究は、革新的な高性能天然海水サンゴ砂エンジニアードセメンタイト複合材料(HP-NSCS-ECC)の開発とその特性評価に成功しました。この新材料は、沿岸地域で豊富に入手可能なサンゴ砂を骨材として利用し、練り混ぜ水には海水を用いることで、従来のシリカ砂ECCが抱える資源・環境面での課題を克服します。HP-NSCS-ECCは、卓越した機械的性能を示し、究極引張ひずみが8~10%と従来のシリカ砂ECCの2倍以上に達し、引張強度10 MPa超、圧縮強度90 MPa以上と高強度を両立します。ひび割れ幅は80 µm未満に厳密に制御され、シリカ砂ECCと比較して約35%の削減を達成し、過酷な海洋環境下での長期耐久性に大きく寄与します。海水混合は水和熱を約18%増加させ、ピーク到達時間を9時間早め、水和反応の促進とマトリックスの高密度化を示唆しました。海水養生下では、空気養生で観測される約3000 µɛの収縮ひずみが解消され、自己応力効果による有益な作用も確認されています。さらに、シリカ砂ECCに比べ約40~50%低い自由塩化物イオン濃度を示し、塩化物浸透に対する優れた耐性が実証されました。微細構造解析からは、サンゴ砂の特有な形状と海水中のイオンが、より緻密な水和生成物の形成と、繊維とマトリックス間のより強力な相互作用を促進していることが明らかになり、わずか1.5%のPE繊維で優れたひずみ硬化挙動を実現しました。
このHP-NSCS-ECCは、高強度、卓越した延性、収縮緩和、そして優れた耐久性を統合した、海洋および離島建設のための堅牢かつ持続可能な材料フレームワークを提案するものです。現地で調達可能なサンゴ砂と海水を利用することで、資源の輸送コストや環境負荷を大幅に削減し、建設プロジェクト全体の持続可能性を高めます。この新材料の導入は、オフショアインフラの耐用年数を飛躍的に延長し、長期的なメンテナンスコストを大幅に削減する可能性を秘めています。本研究の成果は、将来の沿岸・海洋インフラ開発におけるゲームチェンジャーとなり、より安全で持続可能な社会基盤の構築に大きく貢献するものと期待されます。
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Research on carbon capture and storage of cold bonded lightweight aggregate from incineration bottom ash
建設分野における二酸化炭素(CO2)貯留技術は、地球温暖化対策の喫緊の課題としてその開発が加速しています。しかしながら、従来の建設製品へのCO2貯留には、高濃度のCO2供給や加圧条件といった特殊な環境が不可欠であり、これに伴う高いエネルギー消費と製造コストが実用化への大きな障壁となっていました。また、都市ごみ焼却炉底灰(MSWIBA)をはじめとする大量の産業副産物の処理も、持続可能な社会構築に向けた重要な課題です。こうした背景の中、高エネルギーを要しない、より経済的かつ環境負荷の低いCO2貯留技術、そして同時に廃棄物資源の有効活用を実現する革新的なアプローチが求められています。
本研究は、この課題に応えるべく、都市ごみ焼却炉底灰を主原料とし、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、普通ポルトランドセメントを結合材として用いた「冷間固化軽量骨材(CBLAs)」の製造とそのCO2捕捉・貯留性能に着目しました。特に、既存技術の弱点であった高エネルギー消費を避けるため、特殊な設備を必要としない自然環境下での炭酸化プロセスを検証した点が新規性として挙げられます。研究チームは、CBLAsのCO2貯蔵容量、捕捉効率、炭酸化による物理的・機械的特性の変化、微細構造の分析、さらには重金属の溶出挙動、そして製品のカーボンフットプリントを包括的に評価しました。
その結果、CBLAsは最大で49.9 g/kgという高いCO2捕捉能力を持つことが明らかになりました。特筆すべきは、セメントを使用しないCBLAsにおいても12.2 g/kgのCO2を吸収できる点です。フライアッシュと高炉スラグ微粉末を配合したCBLAsは、わずか7日間という短期間で自然環境下において完全に炭酸化されることも確認されました。炭酸化後には、吸水率が6.8~13.3%減少する一方で、かさ密度や見かけ密度はわずかに増加し、同時に機械的強度が向上することが示されました。具体的には、単粒子破砕強度が2.8~7.9%増の1.78~3.48 MPaに、円柱圧縮強度が3.5~8.3%増の4.71~8.32 MPaに達し、建設材料としての性能改善に寄与することが示唆されました。微細構造の解析からは、細孔内での炭酸塩の沈殿が確認され、これが気孔率の低減と構造の緻密化に繋がっていることが裏付けられました。さらに、重金属の溶出量はすべての試料で規制値を下回り、環境安全性が確認されました。最も注目すべき成果の一つは、セメントフリーCBLAsの地球温暖化係数(GWP)が、従来の116.03 kg CO2-eqから62.26 kg CO2-eqへと、ほぼ半減することです。
これらの結果は、都市ごみ焼却炉底灰や他の産業副産物から製造される冷間固化軽量骨材が、建設材料におけるCO2の捕捉、貯留、有効利用を実現するための、極めて持続可能かつ経済的な新たな道筋を示すものです。本技術は、高コスト・高エネルギーという従来の課題を克服し、廃棄物の高付加価値化とCO2排出量削減を両立させることで、資源循環型社会の構築に大きく貢献すると期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)