Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Alkali-activated materials」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Multiscale investigation into the performance degradation of the asphalt mastic-aggregate systems under solution erosion: A molecular dynamics simulation and experimental analysis
アスファルト舗装は社会インフラの基盤をなすものですが、塩水やアルカリ溶液といった浸食性溶液に晒されることで性能が低下し、その耐久性維持が世界的な課題となっています。特にアスファルトマスチックと骨材の界面における多尺度的な劣化メカニズムの全体像はこれまで不明瞭であり、ナノスケールからマクロスケールまでを繋ぐ包括的な理解が求められていました。本研究は、この課題に対し、舗装システムの性能劣化を多角的に解明し、耐久性向上に資するメカニズム的枠組みの構築を目指しました。
本研究は、ナノスケールの分子動力学(MD)シミュレーションと、バインダー接着強度(BBS)試験や間接引張(IDT)試験などのマクロスケール実験を組み合わせた、多尺度アプローチを採用しました。MDシミュレーションによるナノレベルの解析から、損傷メカニズムはイオンと界面の相互作用様式に依存し、塩溶液中では静電的物理吸着が優勢であった一方、アルカリ溶液中ではアスファルト極性成分との電気化学反応が界面電荷分布を変化させ、結合強度を根本的に弱める、より積極的な損傷経路を発見しました。この結果、アルカリ溶液が最も高いナノスケールでの反応性を示すことが分かりました。マクロスケール実験はこれらのナノスケールメカニズムを検証し、高温がイオン輸送と界面剥離を促進することも確認しました。また、「スケール効果」という重要な発見がありました。これはナノスケールの相互作用がマクロスケールでは非比例的に現れ、マスチックでは溶液誘発性の硬化、混合物では剥離による軟化という異なる支配的挙動を引き起こす現象で、特にアルカリ溶液中で顕著に観察されました。
これらのナノスケールとマクロスケールの知見をメカニズム的に統合することで、本研究はアスファルトマスチック-骨材システムの溶液浸食損傷を評価するための計算と実験を組み合わせた有効なアプローチを確立しました。この成果は、アスファルト舗装の劣化挙動理解を深め、より耐久性の高い舗装材料の設計や、浸食性溶液耐性を考慮した維持管理戦略の策定に不可欠な知見を提供します。これにより、舗装の長寿命化と維持管理コスト削減に大きく貢献することが期待されます。
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Molecular-level study of moisture sensitivity in SBS-modified salt-storing filler asphalt mastic based on molecular dynamics
アスファルト舗装の耐久性は、アスファルトと骨材を結合するアスファルトマスチックの水分感受性、すなわち水分浸入による剥離や劣化が主要因の一つである。特に、Styrene-Butadiene-Styrene(SBS)改質アスファルトが広く用いられる現代において、SBS改質マスチックが塩含有フィラーや水と分子レベルでいかに相互作用し、水分感受性に影響を与えるか、その詳細なメカニズムは未解明な点が多かった。本研究は、分子動力学(MD)シミュレーションを用い、この複合システムにおける分子レベルの構造挙動と水分感受性メカニズムを詳細に解析し、耐久性の高いアスファルト舗装設計に資する知見の獲得を目指した。
本研究では、NaCl含有フィラーとSBS改質アスファルトマスチックの分子モデルを構築し、乾燥・湿潤環境下で分子動力学シミュレーションを実施。エネルギー特性、自由体積、成分分布、水素結合の進化といった多角的な観点から構造特性を分析した。また、アスファルトと炭酸カルシウム骨材の界面モデルを異なるフィラー/アスファルト比(F/A)で構築し、水分存在下での接着・剥離性能も評価した。その結果、SBS改質アスファルトマスチックは高い構造安定性と強い水分子吸着能力を持つことが判明。F/A比の増加によりマスチック構造は緻密化し、自由体積率(FFV)と水分子拡散能力は一度減少し、その後増加する複雑な傾向を示した。水分存在下では、水分子同士(W–W)や水とシリカ(W–S)間の水素結合が顕著に増加し、特に二酸化ケイ素(SiO₂)関連界面に集中することが明らかになった。界面エネルギー分析では、SBS改質マスチックが炭酸カルシウム骨材に対し全F/A比で高い接着仕事とエネルギー比(ER)を示し、強力な接着力を有する一方、この優位性は高F/A比で低下する傾向が示唆された。
本研究で得られた分子レベルの知見は、アスファルト舗装の水分感受性低減と耐久性向上に向けた材料設計に極めて重要な指針を提供する。SBS改質アスファルトマスチックの水分子吸着能力、構造安定性、骨材との接着メカニズムの詳細な理解は、フィラーの種類や配合比率を最適化する上で科学的根拠となる。高F/A比での接着優位性低下という発見は、マスチックの配合設計に新たな視点をもたらし、より精密な材料選択や配合調整の必要性を示唆する。これにより、将来的に過酷な気象条件下でも長期にわたり性能を維持できる次世代アスファルト舗装材料の開発が加速され、道路インフラの長寿命化と維持管理コスト削減に大きく貢献することが期待される。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Investigation on interlaminar shear property of AFRP laminates with different fiber treatments and AE-based damage pattern recognition
近年の航空宇宙、自動車、建設といった幅広い分野において、軽量かつ高強度なアラミド繊維強化プラスチック(AFRP)ラミネートの利用が拡大しています。しかし、その性能を最大限に引き出すためには、材料の界面特性が極めて重要であり、層間での損傷メカニズムを正確に理解し、評価する技術の確立が喫緊の課題とされていました。特に、荷重下での材料内部の損傷開始点や進展過程を非破壊で、かつリアルタイムに把握することは、従来の試験方法では困難であり、より精密な損傷評価手法の開発が求められていました。
このような背景のもと、最新の研究では、二方向性AFRPラミネートの層間せん断性能と損傷メカニズムを詳細に解明する画期的なアプローチが採用されました。本研究では、音響放出(AE)モニタリングを併用した短梁せん断試験を実施し、荷重プロセス中のAE信号パラメータの特性に基づき、損傷パターンの認識と損傷の進展解析を行いました。その結果、層間損傷プロセスが「マトリックス亀裂」「界面剥離/層間剥離」「繊維破断」という三つの明確なモードから構成されることを特定。さらに、異なる損傷メカニズムに対応するAE信号の相対累積ヒット数という新たな指標を提案し、この指標を負荷増分曲線と組み合わせることで、層間損傷の開始点、その後の進展、そして最終的な破壊点を効果的に特定する手法を確立しました。この革新的な手法を用いることで、様々なアラミド繊維織物処理を施したAFRPラミネートの層間せん断性能を詳細に比較分析し、さらに動的粘弾性分析(DMA)や吸水試験を組み合わせることで、界面特性に影響を及ぼす潜在的な要因の解明にも成功しています。
今回の研究成果は、AFRPラミネートの設計と製造プロセスに重要な示唆を与えるものです。具体的には、アラミド繊維(AF)表面の油剤を水洗いによって除去することで、ラミネートの層間せん断強度が12.20%向上することが実証されました。これは、繊維表面処理が複合材料の界面接着強度に大きく影響することを示唆しており、材料設計における新たな最適化指針となります。一方で、小分子エポキシサイジング剤で繊維織物を事前にコーティングすると、樹脂の繊維への浸潤が阻害され、結果として界面結合強度が低下することも明らかになりました。本研究で提案されたAEベースの損傷評価手法は、AFRPに限らず、広範な複合材料の損傷診断、品質管理、さらには構造健全性モニタリングへと応用される可能性を秘めています。これらの知見は、より高性能で信頼性の高い複合材料構造の開発を促進し、関連産業の持続的な発展に大きく貢献するものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)