AIニュース|2025-11-27 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


The influencing rules of (NS@KH570)@PCE modified nano-silica on the properties of cement-based materials

ナノシリカ(NS)は、コンクリートの硫酸塩抵抗性を高める上で非常に効果的な材料として広く認識されています。しかし、その極めて高い比表面積は、粒子同士の凝集を引き起こしやすく、また吸湿性も高いため、セメント系材料中で本来期待される性能向上効果が十分に発揮されないという課題を抱えていました。このため、ナノシリカをいかに効率的に分散させ、その機能を最大限に引き出すかが、高性能なセメント系材料を開発する上で重要な研究課題となっていました。

このような背景のもと、本研究はナノシリカの分散性向上と機能化に向け、化学ブレンド法を用いてコアシェル構造を持つ二種類の改質ナノシリカを開発しました。一つは、ナノシリカ表面の水酸基とポリカルボン酸系減水剤(PCE)のカルボキシル基を縮合反応させることで形成された「NS@PCE」コアシェル構造です。もう一つは、ナノシリカ表面をまずγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KH570)で修飾し「NS@KH570」中間層を構築した後、PCEのカルボキシル基とKH570加水分解生成物の活性基を縮合反応させることで得られる「(NS@KH570)@PCE」という二重層グラフト構造です。これらの改質ナノシリカの構造特性と、それがセメント系材料の物性に与える影響メカニズムを、様々なマクロ・ミクロ特性評価技術により体系的に検証しました。その結果、両コアシェル構造ともナノシリカの分散性を大幅に向上させることが明らかになりましたが、特に(NS@KH570)@PCEはセメントのアルカリ環境下において、より優れた安定性を示すことが確認されました。

機能的に改質されたナノシリカは、セメント系材料の特性に多岐にわたる好影響をもたらします。具体的には、流動性などのレオロジー特性を最適化し、強度や靭性を含む機械的特性を著しく向上させるとともに、吸水性を効果的に低減させることが示されました。これらのマクロな特性改善は、詳細な相分析と微細構造解析により、そのメカニズムが解明されました。改質ナノシリカはセメントの水和プロセスを促進し、水和生成物であるC-S-Hゲル(カルシウムシリケート水和物ゲル)の生成量を増加させます。さらに、セメントペースト内部の細孔構造を微細化することで、全体的な緻密性を高め、結果としてセメント系材料の総合的な性能向上を実現していることが突き止められました。

本研究は、ナノシリカの凝集という課題を革新的なコアシェル構造によって克服し、その潜在能力を最大限に引き出す新たな道筋を示しました。ナノ二酸化ケイ素の機能的改質とセメント系材料への効率的な応用において、極めて実用的かつ革新的なソリューションを提供し、将来的に高性能で耐久性に優れた次世代コンクリート材料開発に大きく貢献することが期待されます。

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Investigation of damage mechanism of sawdust-magnesium oxychloride cement composites under uniaxial compressive load using AE and DIC techniques

おがくずを原料とする酸化マグネシウムセメント複合材料(SMOCC)は、低炭素で環境負荷が低い持続可能な建築材料として近年注目を集めています。低層建築物の耐力構造への適用拡大を目指す上で、その損傷進化や亀裂発生メカニズムを単軸圧縮荷重下で詳細に理解することは不可欠です。本研究は、この重要な課題に対し、ひずみ速度とおがくず含有量という二つの主要な実験変数を設定し、SMOCCの損傷メカニズムを包括的に解明することを目指しました。

本研究では、材料の損傷メカニズムを深く掘り下げるため、エネルギー進化解析、アコースティックエミッション(AE)法、デジタル画像相関法(DIC)といった先進的な技術を多角的に組み合わせました。特に注目されるのは、亀裂のタイプとその割合を定量的に評価するために、ガウス混合モデル-サポートベクターマシン(GMM-SVM)という機械学習手法を導入した点です。さらに、おがくずがSMOCCの内部構造に与える影響を明らかにするため、水銀圧入法(MIP)や走査型電子顕微鏡(SEM)による分析も行われました。これらの多様な分析手法を統合することで、SMOCCの複雑な破壊挙動とその要因を精密に特定することに成功しています。

研究の結果、SMOCCの機械的特性がひずみ速度とおがくず含有量によって大きく変化することが明らかになりました。ひずみ速度が増加するとピーク応力は向上するものの、ピークひずみは減少し、材料が脆性破壊を起こしやすくなる傾向が示されました。一方で、おがくず含有量の増加はこれとは逆の影響をもたらし、材料の延性を高め、脆性破壊のリスクを低減することが判明しました。特に、おがくず含有量75%のSMOCCは、内部の細孔構造が小さく、結合力が強化されていることがMIPおよびSEM分析により確認され、これにより高いひずみ速度においても優れた亀裂抵抗性と延性を発揮することが示されています。GMM-SVM分析とDICひずみ雲マップは、荷重下での亀裂の発生と進展プロセスを視覚的かつ定量的に捉え、引張亀裂の割合がひずみ速度とおがくず含有量に負の相関を示すことも解明されました。

これらの知見は、SMOCCの損傷メカニズムに関する理解を飛躍的に深めるものであり、持続可能な建築材料の設計と最適化に極めて重要な指針を与えます。本研究で確立された多角的な評価手法と得られた詳細なデータは、SMOCCが将来的に低層建築物の耐力構造としてより広範に適用されるための技術的基盤を強化し、地球環境に配慮した建設産業の発展に大きく貢献するものと期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Quantifying anisotropic chloride diffusion coefficients of interfacial transition zone in concrete

コンクリートは社会インフラを支える基幹材料ですが、その耐久性を脅かす最大の要因の一つが「塩害」です。海砂や凍結防止剤などに含まれる塩化物イオンがコンクリート内部に浸透し、鉄筋を腐食させることで構造物の劣化を加速させます。この塩化物イオンの浸透経路として特に注目されてきたのが、セメントペーストと骨材の間に存在する微細な領域「界面遷移帯(Interfacial Transition Zone: ITZ)」です。ITZはセメントペースト本体と比較して多孔性が高く、塩化物イオンの主要な拡散経路となると考えられてきましたが、その微細なスケールが、ITZにおける塩化物イオン拡散係数や詳細な細孔構造の実験的測定を極めて困難にしてきました。結果として、ITZの細孔連結性と塩化物拡散係数との定量的な関係は未だ確立されておらず、コンクリートの塩害劣化メカニズムの包括的な理解を妨げる大きな課題となっていました。

このような背景のもと、最新の研究では、この困難な課題に実験的かつモデル解析的にアプローチし、ITZの塩化物拡散特性の解明に成功しました。研究チームは、実際のコンクリート使用条件を忠実にシミュレートする自然拡散法と、制御された環境下で特性を評価できる人工骨材を組み合わせることで、ITZにおける塩化物イオン拡散係数を実験的に直接測定するという画期的な手法を確立しました。さらに、セメントの水和プロセスに基づいた3次元細孔構造モデルを構築し、ITZの詳細な細孔連結性を解析することで、実験結果と理論的考察を結びつけることに成功しました。これにより、これまでブラックボックスとされてきたITZの物理的特性と拡散挙動の定量的な関係性を、初めて具体的なデータとモデルによって解き明かすことに道筋をつけました。

今回の研究により、ITZにおける塩化物イオン拡散係数が、セメントペースト本体の約5倍から10倍に達するという驚くべき事実が明らかになりました。これは、ITZが塩化物イオンの浸透においていかに重要な役割を果たすかを明確に示しています。さらに重要な発見は、ITZにおける塩化物イオン拡散が「異方性」を示すということです。具体的には、骨材界面に平行な方向で非常に高い細孔連結性が確認され、その結果としてこの方向で大きな拡散係数を持つことが判明しました。この骨材界面に沿った高効率な拡散経路こそが、ITZがセメントペーストと異なる独特な拡散挙動を示す主要な理由であり、拡散係数と多孔度の間に明確な線形関係があることによってその理論的裏付けも得られました。これらの画期的な知見は、コンクリートの塩害劣化メカニズムに対する理解を飛躍的に深めるだけでなく、将来的には、より耐久性の高い、例えば塩害に強いコンクリート材料の設計や配合開発における重要な指針となることが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)