Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Functionalization of lightweight two-stage concrete composite (LTSCC) for thermal energy storage
近年、地球規模での環境意識の高まりとエネルギーコストの変動を背景に、建築物のエネルギー効率向上は喫緊の課題となっています。その解決策の一つとして、建築材料であるコンクリートに相変化材料(PCM)を組み込み、熱エネルギー貯蔵機能を持たせることで、室内の温度変動を抑制し、冷暖房負荷を低減する技術が注目されています。しかし、従来のPCM組み込み手法では、PCMを保持する担体の製造工程での損傷や、コンクリート練り混ぜ時の材料分離といった問題が頻繁に発生し、その実用化を阻む大きな障壁となっていました。これらの課題は、PCMの潜在的な性能を十分に引き出すことを困難にし、高機能な建材の開発を遅らせる要因となっていたのです。
このような状況を打破するため、本研究は、軽量二段階コンクリート複合材(LTSCC)に熱エネルギー貯蔵機能を付与する新しいアプローチを提案しました。具体的には、PCMを内部に物理的に充填した発泡ガラス骨材(PFGA)を用いることで、従来のPCM担体の損傷や分離の問題を根本的に解消しています。この製造プロセスでは、まずPCMを保持したPFGAを事前に型枠等に配置し、その上から高流動性の軽量スラリーを浸透させることでLTSCCを製造します。この独自の手法により、PCMがコンクリート内部に均一かつ安定して分散され、その機能性を最大限に引き出すことが可能になりました。PFGAの体積比を調整することで、多様な強度要件に対応できるLTSCCの製造が可能となり、材料設計の自由度も向上しています。
開発された機能性LTSCCの性能評価では、高い構造性能と優れた熱特性を両立することが実証されました。例えば、28日圧縮強度は最大52.6 MPaに達し、その際の気乾密度は2077.6 kg/m3と軽量性を維持しながら、熱伝導率は1.547 W/(m·K)を下回る優れた断熱性を示しています。特に、室内モデル実験では、PFGAを組み込んだLTSCCが優れた温度調節性能を発揮し、室内温度差を約10℃まで大幅に削減できることが明らかになりました。これは、冷暖房エネルギーの大幅な節約に直結する重要な成果です。さらに、360回の熱サイクル試験という厳格な長期信頼性評価を実施した結果、幾何学的、機械的、熱的特性が安定していることが確認され、わずかな特性変化の主な原因が自己乾燥であると特定されました。このことは、材料の根本的な劣化ではなく、長期使用における安定性を強く示唆しています。総合的なレーダーチャート分析では、軽量性、強度、熱エネルギー貯蔵性能のバランスが最も優れるPFGAの最適体積比が2/3であることも特定されました。
本研究で開発された機能性LTSCCは、従来の課題を克服し、軽量性、高強度、優れた温度調節性能、そして長期安定性を兼ね備えた革新的な建築材料として、その実用化に大きな一歩を踏み出しました。この技術は、建築物の省エネルギー化と快適な室内環境の実現に大きく貢献し、持続可能な社会の構築に向けた次世代の建築材料として、広範な応用が期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Impact of the slaking method on the mineralogy of natural hydraulic limes and its effects on mortar mechanical properties
天然水硬性石灰(NHL)は、その優れた耐久性と環境への負荷の低さから、歴史的建造物の修復や持続可能な現代建築において注目される材料です。このNHLの製造過程における重要な工程の一つが、生石灰を水と反応させる「水和(slaking)」です。しかし、この水和方法の違いがNHLの鉱物組成、ひいてはその最終的なモルタルとしての機械的特性にどのような影響を与えるかについては、これまで十分に解明されていませんでした。この知識のギャップは、NHLの品質管理や性能向上を阻む要因となっており、より効率的で信頼性の高い製造プロセスの開発が求められていました。
このような背景のもと、本研究は水和方法の違いが天然水硬性石灰の鉱物学的変化に与える影響を詳細に調査し、その成果がモルタルの機械的強度に及ぼす効果を評価しました。研究では、従来の製造プロセスで用いられる「能動的水和」、すなわち生石灰に水と酸化カルシウムを1:1の割合で添加する方法と、新しいアプローチである「受動的水和」という二つの異なる水和方法を比較しました。受動的水和では、生石灰を相対湿度60±5%および80±5%の環境に曝すことで水和を促し、この際の石灰の鉱物学的進化はX線回折定量的相解析(XRD QPA)によって精密にモニタリングされました。その結果、相対湿度が60%を超える環境下での受動的水和は、生石灰の主成分である酸化カルシウム(CaO)を水酸化カルシウム(Ca(OH)2)へと完全に変換させることを明らかにしました。さらに驚くべきは、この方法で得られた天然水硬性石灰を用いたモルタルが、従来の能動的水和によって製造されたものと同等か、あるいはわずかに向上した機械的強度を示すことが判明した点です。
この発見は、天然水硬性石灰の製造プロセスに新たな可能性をもたらすものです。受動的水和という手法は、従来の能動的水和に比べて、水の使用量を削減し、製造プロセスの簡素化や省エネルギー化に貢献する潜在力を秘めています。また、湿度管理によって品質を安定させつつ、同等以上の性能を持つ天然水硬性石灰を生産できるという知見は、建築材料としてのNHLの信頼性と競争力を高めるでしょう。本研究の成果は、持続可能な建築材料の開発を加速させ、より環境に優しく高性能な建築物への需要が高まる現代において、天然水硬性石灰の適用範囲を拡大し、その普及を促進する重要な一歩となることが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Carbonation of ettringite and monosulfate: Product evolution, microstructure, and comparison
地球温暖化対策として二酸化炭素(CO2)の排出削減が喫緊の課題となる中、排出されたCO2を回収・貯留・利用するCCUS(Carbon Capture, Utilization, and Storage)技術への期待が高まっています。特に、セメント系材料を用いたCO2の固定化は、その膨大な利用量から大きな可能性を秘めています。次世代の低炭素セメントとして注目されるカルシウムスルホアルミネート(CSA)セメントは、製造時のCO2排出量が少なく、CCUSとの相乗効果が期待されています。しかし、CSAセメントの主要な水和生成物であるエトリンガイト(AFt)とモノサルフェート(AFm)がCO2とどのように反応し、固定化に寄与するのか、その詳細な炭酸化メカニズムについては未解明な点が多かったのが実情です。
この課題に対し、最新の研究では、純粋なAFtおよびAFm鉱物を用いて、それぞれの炭酸化プロセスと生成物を系統的に比較分析しました。その結果、両相ともに炭酸化が進行するにつれてpH、粒子のサイズ、含有量が減少し、総細孔容積が増加するという共通の傾向が確認されました。しかし、炭酸化メカニズムには明確な違いがあることが明らかになりました。エトリンガイト(AFt)の炭酸化は比較的迅速に進行し、結晶性の高い方解石と豊富な板状の石膏を形成するとともに、細孔容積が均一に分布する特徴が見られました。一方、モノサルフェート(AFm)の炭酸化はより緩やかに進み、主にバテライトや非晶質の炭酸カルシウムといった多量の炭酸カルシウムを生成します。石膏はAFmの場合、炭酸化の後期段階で二次的に角柱状の形態で形成されることが示されました。さらに重要な発見として、従来考えられていた結晶性や微結晶性の水酸化アルミニウム(AH3)は形成されず、X線回折や熱分析などの多角的な手法により、炭酸化によって生じるAH3がアモルファス(非晶質)であることが確認されました。このアモルファスAH3は、炭酸化の進行とともにその含有量と無秩序度が増加していくことも、透過型電子顕微鏡や核磁気共鳴分析によって詳細に解明されました。
本研究は、AFtとAFmというCSAセメントの主要な水和生成物がCO2と反応する際の異なる挙動と、炭酸化によって生じる非晶質の水酸化アルミニウムの微細構造を初めて詳細に明らかにしました。これらの基礎的な知見は、CSAセメントシステムにおけるCO2固定化メカニズムの理解を飛躍的に深めるものです。将来的に、この知識はCSAセメントを用いたCCUS技術の設計最適化や、その実用化を加速するための重要な基盤となることが期待されます。低炭素社会の実現に向けたセメント材料の活用において、新たな道筋を示す画期的な研究成果と言えるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)