Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Local bond-slip behavior and mechanisms of steel fiber-UHPC matrix interface modified by nano-engineering
超高性能コンクリート(UHPC)は、その卓越した強度と耐久性から次世代の建設材料として注目を集めています。その高い性能を支える重要な要素の一つが、内部に補強材として添加される鋼繊維とコンクリートマトリックス間の界面における接着性能です。この界面の性能は、UHPC全体の機械的挙動、特に引張特性や破壊挙動を大きく左右するため、その強化が材料設計上の鍵となります。近年、この界面性能を向上させる技術としてナノエンジニアリングが有望視されていますが、ナノ材料を導入したUHPCにおける鋼繊維の局所的な接着滑り挙動については、複雑な微細構造や、繊維とマトリックスの弾性率の違いに起因する界面での応力分布の不均一性などにより、その詳細なメカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。この理解のギャップが、ナノエンジニアリングを最大限に活用し、UHPCの性能をさらに高める上での課題となっていました。
この課題に対し、本研究は引抜き試験、微細構造特性評価、理論モデリング、そして数値シミュレーションという多角的な手法を組み合わせることで、鋼繊維とナノエンジニアリングUHPCマトリックス界面における接着強化のメカニズムを深く掘り下げました。その結果、ナノフィラーが接着強化に寄与する二つの異なるメカニズム、すなわち「界面ナノ修飾効果」と「遷移帯ナノ修飾効果」を初めて明確に特定しました。界面ナノ修飾効果は界面そのものの化学的・物理的性質を改善し、遷移帯ナノ修飾効果は鋼繊維周囲の比較的脆弱な領域である遷移帯の微細構造を緻密化するものです。さらに、ナノフィラーと鋼繊維の相対的なサイズスケールが、界面におけるナノフィラーの濃縮度や希釈度を支配し、これらが遷移帯の修飾効果に大きく影響を与えることを明らかにしました。これらの複合的なメカニズムが相乗的に作用することで、界面接着強度は著しく向上し、過去に報告された全ての研究結果を上回る11.73 MPaという画期的なピーク値を達成しました。これは、ナノエンジニアリングによるUHPC界面強化の新たな可能性を示すものです。
本研究で得られたこれらのメカニズム的知見に基づき、接着滑りの構成モデルを新たに導出しました。このモデルは、ナノエンジニアリングがUHPCの強度と耐久性を飛躍的に向上させる可能性を裏付ける一方で、その代償として材料の延性が低下する可能性も示唆しています。これは、ナノスケールの改質が材料の脆性挙動に影響を与えるという重要なトレードオフを示しており、将来的にナノエンジニアリングUHPCを設計・実用化する上で極めて重要な考慮事項となります。本研究は、鋼繊維-UHPC界面の接着挙動に関する深い理解を提供し、ナノエンジニアリングによるUHPC性能向上に向けた設計指針を与えるものです。今後、延性低下という課題を克服しつつ、強度と耐久性を最大限に引き出すためのナノ材料の最適化や複合化に関するさらなる研究が期待され、より高性能で持続可能な次世代のコンクリート材料の実現に大きく貢献するでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
High-temperature calcination of phosphogypsum for partial replacement of magnesium sulfate in magnesium oxysulfate cement
リン酸製造工程で大量に発生する副産物であるリン酸石膏は、その処理と管理が長年の環境課題となっており、持続可能な社会の実現に向けた有効活用が喫緊の課題となっています。この未利用資源には、環境汚染のリスクを伴う有害物質が含まれることもあり、安全かつ大規模なリサイクル技術の確立が求められています。こうした背景の中、近年注目を集めているのが、優れた強度と環境適合性を持つマグネシアオキシサルフェートセメント(MOSC)です。本研究は、このリン酸石膏をMOSCの原料として活用することで、環境負荷の低減と資源循環の促進を目指しました。
研究チームは、リン酸石膏を特定の温度で焼成する前処理に着目し、その焼成リン酸石膏をMOSCの主要成分である硫酸マグネシウム七水和物の一部代替材として配合した場合のセメント特性を詳細に調査しました。その結果、特筆すべきことに、150℃で焼成したリン酸石膏を硫酸マグネシウム七水和物の10%まで代替材として配合することで、セメントの良好な作業性を維持しつつ、圧縮強度も損なわれないことが判明しました。さらに、この最適な焼成条件と配合比率においては、MOSCの吸水率が顕著に低下し、耐水性が向上するという重要な改良効果が確認されました。X線回折(XRD)分析により、適切な熱処理がセメント組織内で耐水性に関わる「517相」の形成を促進し、同時に水酸化マグネシウムの含有量を減少させることが、耐水性向上のメカニズムの一端であることが示唆されました。また、焼成プロセスがリン酸石膏中の有害元素を効果的に固定化する能力も実証され、特にリンとフッ素の安定化効率は91%以上にも達することが確認されました。
これらの画期的な成果は、これまで環境負荷の要因であったリン酸石膏を、高性能建材の原料として大規模にリサイクル・利用するための実現可能な道筋を示すものです。焼成処理によってセメント特性の向上と有害元素の固定化が同時に達成されることは、産業廃棄物の環境負荷低減と資源の有効活用という二重の課題解決に貢献します。本研究は、建設材料分野における持続可能な開発目標の達成に向けた重要な一歩となるだけでなく、環境に優しく耐久性の高い新たな建材の開発と普及に大きく寄与するものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Phase composition and structural evolution in water-driven carbonation process of low-calcium Portland cement
地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、CO2排出量が多い産業の一つであるセメント業界では、排出削減に向けた革新的な技術開発が求められています。その中でも、セメント材料そのものにCO2を化学的に固定化する「炭酸化」プロセスは、CO2を貯留し利用する有望なアプローチとして注目されています。特に、低カルシウムポルトランドセメント(LCPC)は、その組成特性から高いCO2固定能力を持つ可能性を秘めていますが、炭酸化効率を決定づける「水」のメカニズム的な役割については、これまで体系的な理解が不足していました。この水の役割を深く解明することは、LCPCを用いたCO2固定技術の最適化、ひいてはセメント産業の脱炭素化を実現する上で不可欠な要素となっています。
こうした背景を受け、最新の研究では、LCPCの炭酸化プロセスにおける水の詳細なメカニズム的役割が、水セメント比(w/c)を0.1、0.15、0.2と厳密に制御しながら体系的に調査されました。研究チームは、炭酸化に伴う発熱モニタリング、熱重量分析、定量的X線回折、さらには29Si/1H核磁気共鳴(NMR)分光法といった高度な分析手法を駆使し、水分含有量が低カルシウム鉱物の炭酸化反応速度や、反応生成物の形成メカニズムに与える影響を詳細に解明しました。その結果、LCPCの炭酸化においては、炭酸カルシウム(CaCO3)とシリカゲルが主要な反応生成物であることが確認されました。特に注目すべきは、水セメント比によって生成される炭酸カルシウムの結晶形が変化する点です。w/cが0.1の場合、生成するCaCO3は主に準安定なバテライト結晶として存在しましたが、w/cが0.15を超えると、主に安定な方解石の形で生成されることが判明しました。そして、本研究は**水セメント比0.15がLCPCの炭酸化において最適な性能を示すことを見出し、24時間でセメント重量の21.88%に相当する高いCO2吸収率を達成しました。**この最適なw/c比は、初期段階でのカルシウムイオン(Ca2+)とケイ素イオン(Si4+)の溶解バランスを整え、炭酸化反応が進行する微細環境を最適化することが、LCPCの相組成と微細構造に良い影響を与えていると結論付けられました。また、シリカゲルの重合度もw/cの増加とともに減少し、その水分含有量は炭酸化時間と共に変化することも明らかにされました。
これらの詳細な知見は、LCPCの炭酸化プロセスにおける水の臨界的な役割を明確に解き明かし、そのメカニズムを深く理解するための理論的基盤を構築しました。本研究で得られた成果は、セメント産業におけるCO2排出量削減に直結する次世代のCO2固定技術、特に高性能な炭素隔離技術の開発を加速させる上で極めて重要です。LCPCの炭酸化プロセスをより効率的かつ大規模に適用するための指針となり、持続可能な社会の実現と地球温暖化対策への大きな貢献が期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)