AIニュース|2025-12-10 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


Development of Polyurethane-Shelled Microcapsules using Membrane Emulsification for Self-Sealing Cementitious Applications

社会インフラに不可欠なセメント系材料は、微細なひび割れや欠陥からの水の浸入が内部の腐食や劣化を招きます。こうした課題に対し、材料自身が損傷を修復する「自己修復(自己治癒)」技術の研究が進められており、特に、材料中に組み込んだマイクロカプセルがひび割れ時に破裂し、内部の修復剤を放出する「カプセルベースの自己修復システム」は有望視されています。しかし、従来のカプセルベースの手法では、カプセルの安定性、セメント材料中での均一な分布と確実な修復剤放出、さらには実用化に向けたスケーラブルで費用対効果の高い製造方法の確立には多くの技術的課題が残されていました。

本研究では、セメント系材料の自己修復に向け、市販されている高性能撥水剤Sikagard®-705Lを内包するポリウレタンシェル型マイクロカプセルを開発しました。カプセルの製造には膜乳化法と界面重合法を組み合わせ、生産流量、安定剤濃度、シェル組成といった製造パラメータを詳細に調整することで、カプセルのサイズとその分布を精密に制御・最適化し、製造条件とカプセル特性の関係性を深めました。製造されたマイクロカプセルは、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)によるシェル形態の観察、熱重量分析による熱安定性の評価、そして経時的な安定性確認など、多角的な特性評価を実施しました。さらに、自己修復効果は、吸水試験、ひび割れや切断を施したセメント表面の接触角測定、SEMおよびマイクロCTを用いたカプセルの破裂状況とセメント材料中での均一な分布確認によって検証されました。その結果、平均300マイクロメートル幅のひび割れモルタル試験片において、マイクロカプセルの組み込みと機械的な破裂により、ひび割れが効果的に自己修復されることを実証。この研究は、サイズ制御と単分散な分布を持つカプセルを生成し、セメント系材料の自己修復を可能にする新たなプラットフォームを確立したと言えます。

本研究で開発されたマイクロカプセルは、セメント系材料の長期耐久性向上に大きく貢献する可能性を秘めています。水の浸入による腐食・劣化という社会インフラの主要課題に対し、内包する撥水剤を効果的に作用させることで、その解決策を提示しました。サイズを精密に制御し、単分散性を持つカプセルの製造プラットフォーム確立は、自己修復技術の実用化を加速する重要な一歩であり、将来的に橋梁、トンネル、建物といったコンクリート構造物の長寿命化とそれに伴う維持管理コストの大幅な削減に繋がり、持続可能な社会インフラ構築への革新的なブレークスルーが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Methodology for surface defect assessment in 3D concrete printing using computer-vision and ultrasonic testing considering structural build-up

近年、建設業界において3Dコンクリート印刷(3DCP)技術への期待が高まっていますが、高品質な構造物を安定して構築するためには、積層プロセスにおける課題解決が不可欠です。特に、連続するコンクリート層の間に生じる時間遅延や、コンクリート混合物のレオロジー特性が、層間の結合強度や構造全体の機械的性能に大きく影響を及ぼすことが知られています。従来の品質評価手法は、破壊的な試験や限られた範囲での評価に留まることが多く、積層中のコンクリート品質をリアルタイムかつ非破壊的に評価し、その影響因子を定量的に把握する技術が求められていました。このような背景の中、本研究は、層の積み重ね方と材料特性が3DCP構造物の品質に及ぼす影響を包括的に解明し、より信頼性の高い構築を実現するための新たな評価手法を提案するものです。

本研究の最も重要な新規性は、3Dコンクリート印刷における層間時間差と混合物のレオロジー特性が、界面の健全性と機械的性能に与える複合的な影響を、コンピュータビジョンと非破壊超音波検査を組み合わせた画期的な手法で定量的に評価した点にあります。研究では、異なる石灰石の細かさを持つ2種類のコンクリート混合物を使用し、0分、2分、5分という異なる層間遅延時間を設けて単一壁の積層体を作製しました。これらの積層体に対し、表面欠陥の画像解析、層ごとにS波速度をマッピングする超音波検査、および28日圧縮強度試験を実施。その結果、層間遅延時間と積層高さの増加に伴い欠陥密度が上昇し、例えば、より細かい石灰石を用いた混合物では、5分遅延の上層部で欠陥密度が14.5%に達する一方で、0分遅延では2%以下に抑えられることが判明しました。また、S波速度は0分遅延時の2,100~2,150 m/sから5分遅延時には1,800~1,870 m/sへと低下し、これに呼応して圧縮強度も50 MPaから25~30 MPaへと大幅に減少することが明らかになりました。これらの知見に基づき、本研究は、層間欠陥を最小限に抑えるための実用的な堆積降伏応力範囲として1,100~1,500 Paを特定するとともに、層ごとのS波モニタリングが鉛直方向の剛性勾配を敏感に捉える、実行可能なプロセス制御指標となることを実証しました。

本研究の成果は、3Dコンクリート印刷技術の産業利用を加速させ、建設現場での品質保証体制を大きく強化する上で極めて重要な意義を持ちます。層間遅延時間と材料特性の最適な組み合わせを具体的に特定したことで、積層体の欠陥発生を効果的に抑制し、設計通りの機械的性能を持つ構造物を構築するための明確な指針が提供されます。特に、超音波S波速度マッピングという非破壊的かつ層ごとの評価手法が、大規模な積層構造物の構築プロセスにおいて、構造内部の品質変動をリアルタイムで監視し、プロセスを能動的に制御するための強力なツールとなり得ることを示した点は、今後の3DCP技術開発において画期的な一歩と言えます。これにより、建設現場における品質管理の効率化が大幅に進み、3DCPによる構造物の安全性と耐久性の向上に貢献することが期待されます。将来的には、この非破壊評価手法が3DCPの自動化された品質保証システムの基盤となり、高層ビルや複雑なインフラ構造物など、より多様で大規模な建築物への3DCPの適用を促進する可能性を秘めていると言えるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Unveiling the structural build-up 3D printable cement-based materials: From small amplitude oscillatory shear (SAOS) to extensional (SAOE) rheological workflows

近年、セメント系材料を用いた積層造形、いわゆる3Dコンクリートプリンティングは、建設分野における革新的な技術として注目を集めています。しかし、この技術の実用化には、積層中の構造安定性を正確に予測するという大きな課題が残されていました。従来の安定性モデルは、材料のせん断試験から得られるレオロジー特性(材料の変形・流動特性)に基づく数値シミュレーションに依存していましたが、これは時間とともに変化する材料の挙動を十分に捉えきれず、結果として構造物の臨界破壊高さを過大評価してしまうという問題がありました。この不正確さは、3Dプリンティングによる大規模構造物の設計・施工において、安全性確保と効率的な運用を阻害する要因となっていたのです。

本研究は、この構造安定性予測における根本的な課題に対し、革新的なアプローチを提示しています。その核となるのは、フレッシュなセメント系印刷材料の「引張粘弾性特性」を「微小振幅引張振動試験(SAOE)」によって直接測定するという新しい手法です。SAOE試験は、積層中の材料が垂直方向の荷重を受けた際に示す純粋な可逆的挙動、すなわち積層に伴う圧縮・引張に対する弾性的な応答を極めて正確に捉え、層堆積中の構造応答特性評価の精度を大幅に向上させます。この手法に基づき、セメント系印刷材料の引張貯蔵弾性率の時間依存的進化を予測する2パラメータ構造化モデルが開発されました。さらに、せん断粘弾性特性と引張粘弾性特性の間の関係を「トラウトン比」を用いて詳細に分析することで、既存のせん断測定から引張特性を近似できる可能性も示唆しています。また、実践的な応用を見据え、「無限レンガ」および「層圧着」という二つの具体的な積層戦略に特化した安定性基準も提案され、ケーススタディを通じてその実用性が検証されました。これらの手法は、従来のせん断試験だけでは捉えきれなかった材料の時間依存的な特性を解明し、より精緻な安定性予測を可能にするものです。

このように、本研究は3Dコンクリートプリンティングにおける粘弾性特性の測定とモデリングに関する既存の手法を根本から見直し、新たな高精度評価法を確立することで、積層造形における安定性予測の主要な制約を克服しました。引張粘弾性挙動を直接的に捉える新たな視点と、それに基づいた構造化モデルおよび安定性基準の提案は、建設可能な構造物の高さや複雑さを評価する「構築可能性評価」に画期的な洞察をもたらします。本研究の成果は、より安全で効率的な3Dプリンティング施工の実現に貢献し、建設産業における革新的な進歩を促す重要な基盤となるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)