AIニュース|2025-12-13 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


Advanced modelling of moisture transport process in unsaturated cementitious materials considering multi-modal pore size distributions

セメント系材料の耐久性や性能は、内部での水分輸送プロセスと密接に関連しています。材料内部への水分浸透は、凍結融解劣化やアルカリシリカ反応といった様々な劣化現象の原因となり、その長期的な安定性を確保する上で水分輸送メカニズムの正確な理解は不可欠です。この水分輸送は材料の細孔構造に強く依存することが知られていますが、その複雑な特性、特に複数のピークを持つ「多峰性細孔径分布」が水分挙動に及ぼす影響を包括的に捉える従来のモデルは不十分でした。そのため、より精緻なモデルの開発が求められていました。

この課題に対し、本研究は不飽和セメント系材料における水分輸送プロセスを高度にモデリングする新たなアプローチを提案しました。まず、細孔構造の特徴と水蒸気吸着等温線の関係を定量的に確立するため、新規な細孔スケール解析を実施しました。その知見に基づき、多峰性の対数正規細孔径分布を考慮した微細構造ベースの水分輸送予測モデルを開発しました。特に、脱着プロセス中に細孔閉塞効果によってトラップされる水の画分を特徴づける、ピーク細孔径に強く依存する新しいS字型関数の導入が本研究の画期的な革新です。これにより、これまでのモデルでは見過ごされがちであった複雑な水分挙動の精緻な把握が可能となりました。開発されたモデルは、細孔閉塞とキャビテーション(空洞化)メカニズムの両方を考慮に入れ、水蒸気吸着等温線、相対透水係数、さらには吸着および脱着中の材料内部における水分分布を予測します。これらの予測結果は実験データと良好に一致し、モデルの高い信頼性を裏付けています。また、従来の単一モード細孔径分布モデルと比較して、多峰性モデルが水分輸送挙動をより包括的に表現できることも示されました。

本研究によって、緻密な細孔構造を持つ材料ほど、同じ相対湿度下でより高い水分飽和度を示すことが明らかになりました。これは、材料設計において細孔構造の制御が水分輸送特性に直接影響を与えることを示唆します。細孔スケールでのミクロなメカニズムと、マクロスケールでの輸送現象を橋渡しするこの高度な数値アプローチは、セメント系材料の水分輸送をより深く理解するための強力なツールとなります。この成果は、コンクリート構造物の長期耐久性評価の精度向上、より高性能で持続可能な建材やインフラ材料の開発、そしてそれらの寿命予測の精度向上に大きく貢献するものと期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Revealing the relationships between transport properties and microstructure characteristics in low-clinker binders before and after carbonation

地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、セメント製造時に大量に排出される二酸化炭素の削減は、建築・土木分野の重要なテーマです。この課題解決のため、ポルトランドセメントのクリンカー使用量を減らし、フライアッシュや高炉スラグなどの補助セメント系材料(SCMs)を組み合わせた低クリンカー結合材の開発が進んでいます。これらの革新的な材料の長期的な耐久性を正確に評価するには、材料内部での水分や酸素、塩化物イオンといった物質の移動特性、すなわち質量輸送特性を深く理解することが不可欠です。しかし、大気中の二酸化炭素との反応で材料の微細構造が変化する「炭酸化」が、多種多様なSCMsを含む低クリンカー結合材の質量輸送特性にどのように影響するか、その基礎的なメカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。

本研究は、ポルトランドセメントと様々な低クリンカー結合材を用いたモルタルについて、炭酸化前後の質量輸送特性(吸着率、酸素透過性、塩化物浸透など)と微細構造特性(細孔径分布、空隙連結因子など)の関係を詳細に分析しました。その結果、炭酸化前のモルタルでは、SCMsの種類が細孔構造や輸送媒体との相互作用に複雑な影響を与えるため、輸送特性と微細構造の間に一般的な相関はすぐには見出せませんでしたが、空隙率に加え輸送メカニズムに基づいた材料係数を考慮することで、強い相関が得られることを明らかにしました。特筆すべきは、炭酸化されたモルタルにおいて、SCMsの添加による微細構造の違いが「均質化」されることで、全ての質量輸送メカニズムにおいて、輸送特性と微細構造パラメーターの間に「一般的な相関」が見出されたことです。この均質化作用により、空隙連結性、バルク導電率、臨界/しきい値細孔径を総空隙率の関数として扱えることが示されました。

本研究の成果は、低クリンカー結合材を用いたコンクリートの耐久性評価と設計に画期的な知見をもたらします。炭酸化による微細構造と物質輸送の変化メカニズムの深い理解は、コンクリート構造物の長期性能予測の精度を向上させます。特に、炭酸化後のコンクリートにおいて、セメントの種類に依存しない汎用的な質量輸送モデルの開発が可能になるという発見は、今後の材料開発や標準化に大きな影響を与えるでしょう。これにより、低クリンカー結合材の性能評価が効率化され、持続可能な建築・土木分野への移行を加速し、コンクリート産業におけるCO2排出量削減目標の達成に大きく貢献することが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Utilization of granite sludge in the production of low carbon cement composites after coupled mechanical and CO2 activation (CMCA)

産業活動の拡大に伴い、多量の産業副産物が排出され、その処理と有効活用は世界的な課題となっています。特に、御影石スラッジ(GS)は石材産業から排出される代表的な固形廃棄物であり、適切に処理されない場合、深刻な環境汚染を引き起こし、貴重な資源の無駄遣いにもつながっています。同時に、今日の建設産業においては、地球温暖化対策の一環として、大量の二酸化炭素を排出する従来のセメント製造プロセスに代わる、低炭素かつ高性能な建材の開発が喫緊の課題となっています。このような背景のもと、本研究は御影石スラッジを有効活用し、環境負荷を低減しながら、優れた性能を持つ新しい低炭素セメントの開発を目指しました。

本研究では、この御影石スラッジの課題を解決するため、機械的活性化と結合機械・CO2活性化(CMCA)という二つのメカノケミカル処理法を導入し、特にCMCA処理を施した御影石スラッジをセメント複合材料に利用するという新規なアプローチを採用しました。このCMCA処理を施した御影石スラッジを配合したセメントは、早期および後期において顕著な圧縮強度向上を示しました。具体的には、材齢1日で5.5 MPa、28日で38.19 MPaという高い強度を達成し、さらに少量のケイ酸ナトリウムを加えることで、1日で5.87 MPa、28日で39.76 MPaへと強度がさらに向上しました。この性能向上は、物理的および化学的な相乗効果によって説明されます。物理的側面では、CMCA処理により粒子が1〜10マイクロメートルの範囲に微細化され、比表面積が大幅に増加した結果、水和反応の初期段階で多数の核生成サイトが提供され、反応が加速されます。化学的側面では、CMCAプロセスを通じて高反応性の準安定炭酸カルシウムが生成され、これがセメント全体の水和反応を促進する強力な核生成効果を発揮します。また、この高活性な粒子表面はC-S-Hゲル(セメントの主要な強度発現相)の形成を加速させるだけでなく、生成された準安定炭酸カルシウムはセメント中のアルミン酸塩と直接反応し、McやHcといった追加の補強相を生成することで、複合材料の強度向上に寄与します。ケイ酸ナトリウムの添加は、生成されるシリカゲルがポゾラン活性を持つことで、水酸化カルシウムとの二次水和反応を促進し、C-S-Hゲルをさらに生成するとともに、全体の水和反応を加速し、圧縮強度を一層向上させる効果をもたらしています。

本研究で確立された、御影石スラッジをCMCA処理して低炭素セメントに応用するこの技術は、産業固形廃棄物の有効利用という資源循環型社会への貢献と、セメント製造に伴う炭素排出量の削減という環境負荷低減の二重の意義を持つものです。廃棄物という認識から脱却し、高付加価値な建設材料へと転換させるこのアプローチは、資源の有効活用と環境保護を両立させる持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となります。この革新的な方法は、産業廃棄物利用および低炭素セメント生産において幅広い応用展望を開き、環境面で顕著な利益と資源利用の大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)