Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Geopolymer」に関連する新着論文 1 本の要点をまとめました。
The impact of fly ash on self-healing of slag-based engineered geopolymer composites
持続可能な社会の実現が求められる現代において、建設分野では、セメントに代わる低炭素材料の開発や、構造物の長寿命化技術の確立が喫緊の課題となっている。この課題解決の一助として期待されているのが、産業廃棄物である高炉スラグなどを原料とするジオポリマー複合材料である。特に、ひび割れが生じても自己修復する能力を持つエンジニアードジオポリマー複合材料(EGCs)は、構造物の耐久性向上やメンテナンスコスト削減に大きく貢献すると見込まれている。しかし、その自己治癒メカニズム、特に材料配合が性能に与える影響については未解明な点が多かった。実用化のためには、多様な環境条件下での挙動を詳細に理解することが不可欠である。
本研究は、スラグを主成分とするEGCsに添加するフライアッシュ(石炭燃焼副産物)の配合量が、自己治癒挙動に与える影響を詳細に検証した。その結果、フライアッシュの配合量が自己治癒性能に著しい影響を与えるだけでなく、自己治癒の最適条件が環境によって大きく異なることが判明した。具体的には、乾湿サイクル環境下ではフライアッシュ低配合のEGCsが、10%塩化ナトリウム水溶液中ではフライアッシュ高配合の材料が、それぞれ優れた自己治癒能力を示した。この性能差は、各環境で形成される治癒生成物の種類や量、そしてその形成メカニズムの違いに起因すると結論付けられた。さらに重要な発見として、特定の配合(Mix4)において、肉眼でひび割れが完全に閉塞していないにもかかわらず、材料が初期ひずみ容量の150%に相当する「拡張ひずみ容量」を示すことが確認された。この現象は、機械的特性の回復と、ひび割れの物理的な閉塞という二つの「治癒」が、異なるメカニズムによって支配されていることを明確に示唆する。すなわち、機械的特性の回復は繊維とマトリックス界面における少量の治癒生成物によって駆動されるのに対し、ひび割れの閉塞にはひび割れ内部に広範かつ大量の治癒生成物が蓄積されることが不可欠である、という本質的な違いが解明された。
本研究で得られた知見は、EGCsの自己治癒メカニズムに関する理解を大きく前進させるものであり、その学術的意義は極めて大きい。特に、環境条件に応じたフライアッシュの最適配合の特定と、機械的特性回復とひび割れ治癒が異なる要件を持つという発見は、今後の高性能材料設計に新たな指針を与える。これにより、特定の利用環境や要求機能に応じて、最適なフライアッシュ配合の自己治癒型ジオポリマー複合材料を設計・開発することが可能となる。これは、建設分野における資源循環の推進とインフラの長寿命化に貢献し、持続可能な社会の実現に向けた実用的な材料技術の発展を加速させるものとして、その社会的、経済的意義も計り知れない。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)