Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Utilizing carbide slag to improve the hydration kinetics and microstructure of limestone calcined clay cement systems
地球規模での気候変動対策が喫緊の課題となる中、世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約7%を占めるとされるセメント産業における低炭素化は重要なテーマです。普通ポルトランドセメント(OPC)の代替として、その主成分であるクリンカーの使用量を大幅に削減できる石灰石焼成粘土セメント(LC3)が有望視されています。LC3はCO2排出量を大幅に低減できる可能性を秘める一方で、従来のLC3はOPCに比べて初期強度が低く、また長期的に水酸化カルシウム(CH)が不足するため、建設工期の遅延や構造物の長期耐久性低下の懸念が課題とされてきました。LC3の広範な実用化には、これらの問題解決が不可欠でした。
本研究は、LC3が抱える初期強度不足と耐久性に関する課題を克服するため、産業副産物であるカーバイドスラッグ(CS)から得られる水酸化カルシウム(CH)の有効活用に着目しました。LC3システムに追加のCHを4%、8%、12%の割合で配合し、その水和挙動、微細構造、機械的性能、耐久性への影響を詳細に分析しました。その結果、8%のCH添加がLC3システムの性能を劇的に改善することが明らかになりました。追加されたCHは、焼成粘土の反応性を向上させ、ポゾラン反応を促進することで、水和生成物であるC-A-S-H(カルシウム-アルミニウム-ケイ酸塩-水和物)ゲルの組成を最適化し、より緻密なマトリックス形成と良好な細孔構造をもたらしました。これにより、LC3-8CHシステムは、従来のLC3と比較して、初期および長期の両期間で優れた圧縮強度を発揮し、OPCに匹敵するレベルを達成。従来のLC3の主要な制約であった初期強度不足という課題を解決する画期的な成果です。一方で、CHを12%と過剰に添加した場合、多孔質な微細構造を招き、機械的性能が低下することも判明し、CHの最適な添加量がLC3の性能を最大化する上で極めて重要であることが示されました。
本研究の成果は、低クリンカーLC3システムの性能を最適化する上で、制御された水酸化カルシウムの添加、特に産業副産物であるカーバイドスラッグ由来のCHを8%配合することの大きな可能性を明確に示しました。この知見は、LC3システムに関する既存研究に新たな学術的貢献をするだけでなく、カーバイドスラッグという廃棄物を有効活用し、資源循環型社会の実現に寄与します。初期強度と長期耐久性の問題を解決したLC3は、セメント産業におけるCO2排出量削減目標達成に大きく貢献し、持続可能な社会基盤整備に不可欠な次世代型建材としての実用化を加速させるものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Properties of green ultra-high performance sulfoaluminate cement concrete incorporating recycled sand under sustained low temperature curing
近年、建設分野では環境負荷低減と高性能化の両立が喫緊の課題となっており、特に寒冷地での土木構造物の建設や補修においては、低温環境下でのコンクリートの性能維持が大きな障壁となっています。従来のコンクリートは、低温条件下では水和反応が著しく遅延し、強度発現が大幅に低下するため、厳冬期の施工には多大なコストと工期延長を伴う凍結防止対策が必要でした。こうした課題に対し、優れた強度と耐久性を持つ超高性能コンクリート(UHPC)の利用が期待されていますが、さらに環境配慮型材料を取り入れ、極低温下での詳細な性能評価が求められていました。本研究は、リサイクル砂を配合したグリーン超高性能硫アルミン酸セメントコンクリート(GS-UHPC)を新たに開発し、その低温養生下における特性を包括的に評価することで、寒冷地建設の新たな可能性を探ったものです。
研究では、GS-UHPCを20℃から-10℃までの広範囲な温度条件下で養生し、凝結時間、水和挙動、細孔構造、微細形態、そして圧縮・曲げ強度といった力学性能を多角的に分析しました。特に、デジタル画像相関法(DIC)やアコースティックエミッション(AE)といった高度な手法を援用し、材料内部の挙動を詳細に解析しています。その結果、GS-UHPCは低温環境下においても速硬特性を維持し、凝結時間に大きな影響を受けないことが明らかになりました。一方で、水和速度と水和度は温度低下とともに漸減し、微細構造の劣化が見られましたが、特筆すべきは、極低温の-5℃や-10℃といった環境下でも、養生時間の延長とともに水和反応が継続し、微細構造が徐々に改善に向かうことです。これに伴い、GS-UHPCは低温下で機械的強度、靭性、耐ひび割れ性が低下するものの、養生開始からわずか4時間および3日間で実用的な初期強度を迅速に発現し、その後も時間とともに安定した強度向上を示すことが確認されました。例えば、-10℃の環境下であっても、GS-UHPCは4時間で圧縮強度15.1MPa、曲げ強度5.89MPa、3日間で圧縮強度31.4MPa、曲げ強度8.32MPaに達し、28日後にはそれぞれ62.2MPa、12.14MPaの強度を達成しています。これは、20℃養生時の28日圧縮強度121.1MPa、曲げ強度19.36MPaと比較すれば低下はするものの、極低温下でのコンクリートとしては非常に優れた性能です。
これらの知見は、リサイクル材料を活用しつつも、過酷な寒冷地環境下で迅速な強度発現と持続的な性能向上を両立するGS-UHPCの独特な低温性能を明確に示しています。本材料は、寒冷地における土木構造物の建設や緊急補修作業において、工期の大幅な短縮、凍結融解への対応といった品質確保、さらには環境負荷の低減をも可能にする画期的なソリューションを提供する可能性を秘めています。今後、GS-UHPCの実用化が進めば、厳しい気象条件下でのインフラ整備の効率化と長寿命化に大きく貢献し、持続可能な社会の実現に寄与するでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Sustainable and smart: Piezoresistive cement mortar with conductive polyaniline-modified recycled plastics
プラスチック廃棄物の問題が深刻化する中、建設分野における再生資源の活用は持続可能な社会構築に不可欠です。しかし、セメント複合材料の骨材として再生プラスチックを直接利用すると、一般的に材料強度の低下や電気伝導性の損失といった性能劣化が課題でした。これにより、再生プラスチック骨材の汎用性は限定され、さらに構造物の状態を自己診断する「スマート建築材料」への機能付与も困難でした。このように、廃棄プラスチックの有効活用と、建築材料の高性能化・多機能化という両目標を達成する技術の開発が強く求められていました。
こうした課題に対し、最新の研究が画期的な解決策を提示しました。この研究では、導電性高分子ポリアニリンを廃棄プラスチックの表面にコーティングするという独創的な手法を採用。特筆すべきは、わずか1分という短時間で完了するマイクロ波処理を用いることで、最小限の高分子量で安定した導電性皮膜を効率的に形成した点です。このポリアニリン修飾再生プラスチックをセメントモルタルの骨材として用いることで、強度低下の緩和、細孔構造の改善、水の吸水性を約3分の1に減少させるといった物理的特性の向上を実現しました。さらに、電気的特性も飛躍的に向上し、従来のモルタルと比較して抵抗率を1桁低減させることに成功。圧縮荷重下で抵抗率の分数変化(FCR)が約12%という高い値を示し、構造物のひずみや損傷を電気信号として検知できる「ピエゾ抵抗特性」(自己検知機能)を具備していることが明らかになりました。これらの優れた性能は、ポリアニリンコーティングがセメント材料と骨材の界面移行帯(ITZ)の多孔性を35%減少させたことに起因すると示唆され、そのCO2排出量もごくわずかで環境負荷低減に貢献します。
これらの画期的な成果は、廃棄プラスチックという資源を、高機能かつ持続可能な建築材料へと転換する強力な一歩となります。本技術は、環境への配慮と機能性を兼ね備えた「エコフレンドリーでスマートな」建築材料の実現を加速させ、将来のスマートシティ構築やインフラの構造ヘルスモニタリングといった幅広い応用が期待されます。費用対効果にも優れるこのポリアニリン修飾再生プラスチックは、建設業界における廃棄物問題の解決に貢献しつつ、新たな価値を創造する可能性を秘めており、持続可能な社会の実現に向けた重要なマイルストーンとなるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)