Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Alkali-activated materials」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Research on multi-scale damage behavior and structural evolution of hardened cement paste by high-power nanosecond pulsed laser: Based on laser flux range in airport pavement engineering
飛行場滑走路の舗装において、セメントペーストは重要な構成要素である一方で、粗骨材や細骨材に比べて熱安定性が低いことから、高出力レーザークリーニング技術を適用する際の主要な検討対象とされています。近年、メンテナンス技術としてレーザー利用への関心が高まる中、セメントペーストがナノ秒パルスレーザーとどのように相互作用し、その結果どのような多尺度(マクロ・メソ・ミクロ)な構造変化や機械的特性の変化が生じるのかを深く理解することは、技術の安全かつ効果的な応用を促進する上で不可欠です。本研究は、1064 nmのナノ秒パルスレーザーとセメントペーストの相互作用を根本的に解明し、空港舗装工学におけるクリーニング機能に基づいたレーザーエネルギー密度範囲と、セメントペーストの組成進化、多尺度損傷、および機械的特性との相関関係を詳細に探求することを目的としました。
研究の結果、レーザー注入量が0~8 J/cm²の範囲では、セメントペーストの巨視的な形態損傷や全体的な機械的特性の顕著な低下は見られませんでしたが、微視的なレベルでは重要な変化が誘発されることが明らかになりました。具体的には、レーザーの影響を受けた表面層のマイクロメートル領域から水蒸気や二酸化炭素が放出され、水和ケイ酸カルシウム(C-S-H)の脱水や水酸化カルシウムの分解が生じます。これにより、網状構造の形成や、大きなゲル細孔(LGP)の崩壊が観察されました。さらに、局所的な機械的特性(ナノインデンテーション弾性率や硬度)の低下、および0~50 nmの細孔割合の減少と50~100 nmの細孔割合の増加といった細孔構造の変化も確認されました。一方、レーザーエネルギー密度が8 J/cm²を超えると、より明らかな形態損傷が生じ、セメントペースト表面は灰色から赤褐色へと変色します。この赤褐色物質の挙動は、レーザーの照射条件に大きく依存することも判明しました。低光スポット重なり率の場合には、赤褐色物質は直接粉砕され「破壊的進化」を辿るのに対し、高光スポット重なり率では滑らかな膜へと変化する「非破壊的進化」を示すことが確認されました。特に、16 J/cm²で赤褐色物質が最大に達し、未水和セメント粒子とC-S-Hの不均一な熱収縮により表面に柱状構造が形成されることが観測されました。XRDおよびラマン分光法による分析では、この深褐色物質がα-FeOOHとCaFe5O7であることが特定されました。
これらの多尺度にわたる詳細な損傷挙動と構造進化の解明は、飛行場滑走路や広範な道路工学におけるレーザークリーニング技術の実用化を大きく前進させる上で重要な基礎情報を提供します。本研究の成果は、セメントペーストに対するレーザーの最適なパラメータ設定を可能にし、損傷を最小限に抑えつつ効率的な表面クリーニングを実現するための技術開発に貢献することで、レーザー技術の空港舗装および道路インフラメンテナンスへの安全かつ効果的な応用を促進する重要な参照データとなるでしょう。
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Moisture stability enhancement of phosphogypsum filled asphalt mortar based on hydrophobic solubility reduction treatment
道路舗装材料として利用されるリン酸石膏(PG)は、その利用拡大が期待される一方で、水に曝露されると溶解・軟化しやすく、舗装の耐久性を低下させるという深刻な課題を抱えていました。この問題は、舗装の早期劣化やメンテナンスコストの増加に直結するため、その解決が喫緊の課題とされていました。従来のリン酸石膏充填アスファルト舗装は、水分による劣化メカニズムが完全には解明されておらず、効果的な対策が求められていたのです。
このような背景のもと、本研究では、道路用リン酸石膏の耐水性を根本的に改善するため、疎水化・脱溶解処理を施した改質リン酸石膏に着目し、その充填アスファルトモルタルの性能を多角的に評価しました。研究チームは、動的せん断レオメーター(DSR)を用いて浸漬時間に応じたモルタルのレオロジー特性を詳細に分析し、X線CTスキャンによって浸漬前後の微細構造変化を可視化しました。さらに、微小熱量測定により異なる液体中の充填材の発熱挙動を評価し、分子動力学シミュレーションを通じて充填材粒子とアスファルトの界面における相互作用メカニズムを解明することで、疎水化・脱溶解処理による耐水性向上の根源的なメカニズムを探りました。
その結果、表面疎水化処理を施したリン酸石膏(SPG)を用いることで、アスファルトモルタルの耐水性と界面特性が飛躍的に向上することが実証されました。具体的には、従来のリン酸石膏を用いたモルタルと比較して、SPGを充填したアスファルトモルタル(SPG-AM)は、粘度-温度指数が39.49%向上し、クリープ回復率が96.46%も低減しました。また、水による充填材粒子の損失率も68%抑制されることが明らかになりました。界面性能においては、SPGの表面自由エネルギーが65.26%減少し、湿潤熱が26.04%低減する一方で、アスファルトとの付着仕事は11.15%増加しました。これらの物理的・化学的特性の改善に加え、分子動力学シミュレーションからは、SPG-AMの界面遷移ゾーンが従来のPG-AMの6.46倍も厚くなることが示されました。この強化された静電的適合性によって、水分侵入とアスファルト膜の剥離が効果的に抑制され、モルタル全体の耐久性が大幅に向上することが確認されたのです。
これらの画期的な知見は、リン酸石膏を道路工学材料として広く応用するための強固な理論的基盤を提供します。本研究で示された疎水化・脱溶解処理技術は、リン酸石膏を低コストで高耐久な道路舗装材として活用する道を拓き、廃棄物の有効利用促進と持続可能なインフラ構築に大きく貢献するものです。将来的に、この技術が実用化されれば、環境負荷の低減と舗装インフラの長寿命化が同時に実現され、道路建設・維持管理における新たな選択肢として重要な役割を果たすことが期待されます。
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Basic oxygen furnace (BOF) slag cementitious binder activated by Na4EDTA
鉄鋼生産において大量に発生する転炉スラグ(BOFスラグ)は、その組成中にセメントの主成分に類似した水硬性鉱物であるベライト(C2S)やブラウンミラライト(C2(A,F))を含むことから、セメント系材料としての有効利用が期待されています。しかし、これらの潜在的に反応性を持つ鉱物相が存在するにもかかわらず、転炉スラグ自体の水和反応性は極めて低く、単独での利用や高性能なセメント代替材としての活用には課題がありました。このため、未利用資源である転炉スラグの価値を高め、持続可能な社会の実現に貢献するためには、その反応性を劇的に向上させる新たな技術の開発が喫緊の課題とされていました。
このような背景のもと、本研究では転炉スラグの低い反応性を克服するため、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(Na4EDTA)を新たな水和活性剤として提案し、その効果とメカニズムを詳細に検証しました。実験の結果、Na4EDTAが転炉スラグの水和反応を飛躍的に促進し、単独で高性能なセメント系結合材として機能することを発見しました。具体的には、4.8重量%のNa4EDTAを添加することで、通常は反応しにくいブラウンミラライトがわずか1日以内にほぼ完全に反応し、ベライトの水和も特に初期段階で著しく促進されることが明らかになりました。この強力な反応促進効果により、生成された結合材は28日後の圧縮強度が38.8 MPaに達し、参照試料の8.6 MPaと比較して大幅な強度向上と空隙率の低減が実現されました。主要な水和生成物としてはハイドロガーネットとC-S-Hゲルが確認され、活性剤であるEDTAの一部はハイドロタルサイトのような層状複水酸化物(LDHs)構造に取り込まれる可能性も示唆されており、EDTA4-のキレート機構がこの反応促進に深く関与していると考察されています。
この画期的な研究成果は、これまで産業廃棄物として扱われることの多かった転炉スラグを、単独で高い性能を発揮するセメント系結合材へと転換させる可能性を示しました。転炉スラグの有効活用は、天然資源の消費削減と廃棄物排出量の抑制に大きく貢献し、持続可能な資源循環型社会の実現に向けた重要な一歩となります。また、開発された結合材は優れた機械的特性を持つだけでなく、重金属の浸出がオランダの法的基準を大きく下回ることも確認されており、環境安全性にも優れています。これにより、建築・土木分野における幅広い用途での実用化が期待され、将来的にはセメント製造におけるCO2排出量の削減にも寄与しうる、環境負荷低減型の革新的な材料技術としての展開が注目されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)