Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Alkali-activated materials」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Experimental and numerical study of microencapsulated PCM effects on hydration and mechanical behaviour of alkali-activated slag-fly ash binders
近年、地球温暖化対策とエネルギー効率化は喫緊の課題であり、建築分野では省エネルギー性能の高い建材開発が強く求められています。セメント質材料は、水和時の発熱制御や熱慣性向上による室温安定化が望まれます。高炉スラグやフライアッシュといった産業副産物活用のアルカリ活性セメント質材料(AGFM)は、環境負荷低減と高性能化で注目されています。しかし、AGFMに熱エネルギー貯蔵機能を持つ相変化材料(PCM)を付与した場合の、水和、機械的強度、熱貯蔵性能といった複合的挙動の解明と理論的裏付けがこれまで不十分でした。
本研究では、高炉スラグ70%とフライアッシュ30%からなるAGFMに、適合性の高いマイクロカプセル化相変化材料(MPCM)を導入し、その熱貯蔵能力と材料特性への影響を実験的、数値的に評価しました。MPCM含有サンプルは水和熱、圧縮強度、蓄熱・放熱挙動が分析され、温度調整実験ではMPCMが温度変動を効果的に緩和すると実証されました。具体的には、制御加熱時には周囲温度を低く、自然冷却時にはより高く維持する能力が確認され、省エネ建築材料として重要です。さらに、見かけの熱容量法に基づき、複合ペーストの水和反応速度-温度場-相変化の多場連成モデルを確立。このモデルは実験データと高い整合性を示し(最大全体誤差3.5%未満、最大ピーク温度誤差1.6%未満)、複合材料の挙動を正確に予測する理論的基盤を確立しました。
本研究の成果は、優れた温度調整能力を持つMPCM含有AGFMが、次世代の省エネ建築材料として大きな可能性を秘めていることを示唆します。この材料は、冷暖房負荷低減、建築物のエネルギー消費量削減、居住空間の快適性向上に貢献し、産業副産物の有効活用は持続可能な建築への道を拓きます。また、構築された高精度な多場連成モデルは、今後の材料設計や性能最適化のための強力なツールとなり、多様な環境下での挙動予測や新たな複合材料開発に理論的裏付けを提供します。本研究は、未来のゼロエネルギービルディングやスマートビルディング実現に向けた重要な一歩です。
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Development and evaluation of a novel fructose-based bio-adhesive for plywood applications
木材を主原料とする合板や木質パネルは、建築材料などに不可欠ですが、その製造に用いられる接着剤は長らく環境や健康上の懸念を抱えてきました。特に、広く普及しているホルムアルデヒド系接着剤は、揮発性有機化合物(VOC)排出が室内空気質の悪化やアレルギーの原因となるため、世界中で代替材料の開発が喫緊の課題です。こうした背景から、木質パネル産業は、安全かつ持続可能な代替接着剤の探索に注力し、バイオマス由来の環境配慮型接着剤の研究が活発化しています。
この度発表された研究では、フルクトースを主原料とし、ホルムアルデヒドを一切使用しない新規の合板用接着剤「PP/FAT」が開発され、その優れた性能が実証されました。この接着剤は、天然由来の糖であるフルクトースを基盤に、リン酸二水素アンモニウム(ADP)とトルエン-4-スルホン酸(TsOH)を触媒、ピーナッツプロテイン(PP)を充填剤、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を硬化剤として配合されています。研究チームは、フルクトースとADPの質量比80対20、TsOH 10%、固形分80重量%といった最適化された条件下で90度3時間合成した樹脂を、PPと4対1で混合し、さらに5%のMDIを加えることで、高い接着性能を発揮する接着剤の調製に成功しました。このPP/FAT接着剤を用いた三層合板は、150度10分間の熱圧着により、乾燥せん断強度1.02 MPa、湿潤せん断強度0.97 MPaを達成。これは中国の工業規格GB/T 9846–2015の基準値(0.7 MPa以上)を大きく上回る結果です。既存のホルムアルデヒド系接着剤に匹敵する、あるいは凌駕する実用レベルの性能を持つことが示されました。
接着剤の高性能を支える化学的なメカニズムも詳細に解明されています。合成プロセスでは、ADPとTsOHの触媒作用によりフルクトースがフラン化合物へと効率的に変換されます。続く硬化プロセスでは、充填剤のピーナッツプロテインが糖類とその誘導体とメイラード反応を起こし、硬化剤のMDIは、糖類とその誘導体の水酸基、あるいはピーナッツプロテインの水酸基やアミノ基と付加反応を進行させます。これらの反応を通じて、カルバメート結合や尿素結合といった強固な化学結合が形成され、最終的にベンゼン環とジメチルエーテル架橋を主鎖とする不溶性の高分子ネットワークが構築されます。この強固なネットワーク構造が、接着剤の高いせん断強度と耐水性をもたらすことが明らかにされました。
本研究で開発されたフルクトースベースのホルムアルデヒドフリー接着剤は、環境と健康への懸念を払拭し、高性能を実現する画期的な材料であり、合板産業における持続可能性に向けた新たな道筋を示しています。バイオマス由来の安価な原料であるフルクトースやピーナッツプロテインといった農産物副産物を活用することで、接着剤製造における石油資源への依存度を低減し、カーボンニュートラルな社会の実現にも貢献が期待されます。この技術は、木質パネル産業全体に大きな変革をもたらし、安全でエコフレンドリーな建材の普及を加速させる可能性を秘めています。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Differences on symmetric/asymmetric low-cycle fatigue performance of thin Fe-SMA and structural steel plates
近年、土木工学分野において、鉄系形状記憶合金(Fe-SMA)が新しい高性能材料として注目を集めており、構造物の耐震性能を飛躍的に向上させる有望なアプローチとして期待されています。しかしながら、この革新的な材料が薄板として用いられた際の機械的特性、特に繰り返し荷重に対する挙動は、詳細な解明が求められていました。本研究は、薄いFe-SMAプレートが対称および非対称の低サイクル疲労(LCF)荷重プロトコル下でどのような性能を示すかを詳細に調査し、一般的な構造用鋼であるQ235および高強度鋼Q550と比較することを目的としました。特に、薄板に特有の座屈破壊を抑制し、安定した繰り返し挙動を正確に評価するために、本研究では新たに座屈防止装置を設計しました。この装置によって、従来の薄板試験では困難であった安定したヒステリシスループの観察が可能となり、Fe-SMAの真の性能を引き出すことに成功しています。
27のLCF試験片と9の静的引張試験片を用いた大規模な実験の結果、Fe-SMAは既存の構造用鋼と比較して著しく大きな強度硬化効果を示すことが明らかになりました。これは、Fe-SMAが卓越した耐震応用ポテンシャルを持つことを強く示唆しています。エネルギー散逸能力の面では、Fe-SMAは1サイクルあたりの最大エネルギー散逸が0.166 J/mm³に達し、これはQ235の2.77倍、Q550の1.52倍という驚異的な値です。さらに、総エネルギー散逸容量においても、Fe-SMAは従来の鋼材の5.84倍から14.8倍もの性能を発揮しました。LCF寿命に至っては、Fe-SMAはQ235の4.8倍から23倍、Q550の5.2倍から30.7倍という圧倒的な耐久性を示し、その優れたエネルギー散逸能力と疲労耐性を裏付けています。興味深いことに、圧縮ひずみがない非対称LCF負荷はFe-SMAにとって最も不利なプロトコルであり、圧縮応力状態からの除荷後の残留ひずみがQ235の1.13倍から1.59倍になることが判明しましたが、全体としてはFe-SMAの優れた性能が際立つ結果となりました。
これらの包括的な知見は、Fe-SMAが持つ卓越した機械的特性と低サイクル疲労に対する高い耐性を明確に示しています。特に、その高い強度硬化効果、驚異的なエネルギー散逸能力、そして長寿命性は、地震に対する構造物の安全性を根本から向上させる可能性を秘めています。本研究の結果は、Fe-SMAが次世代の高度な耐震構造物において極めて有望な役割を担うことを強く示唆しており、将来の実用化に向けて重要な一歩となるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)