AIニュース|2025-12-24 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 2 本の要点をまとめました。


Inducing the formation of organic-inorganic carbonated composites via extracellular polymeric substances (EPS)-modified carbonation in low-calcium CO2 sequestration materials

地球温暖化対策としてCO2排出量削減が喫緊の課題となる中、排出されたCO2を効果的に回収・貯留する技術の開発が進められています。中でも、CO2を鉱物として固定する炭酸化技術は、長期的な安定性と安全性から注目を集めています。しかし、この技術の普及には、炭酸化効率の向上や、より幅広い材料への適用が求められており、特にカルシウム含有量の少ない材料を用いた炭酸化反応の促進は、その技術的課題の一つとされてきました。また、微生物を利用した炭酸化手法も検討されてきましたが、関与する酵素の活性が不安定であるという課題が実用化を妨げていました。

このような背景のもと、本研究は、細菌が分泌する多糖類やタンパク質からなる高分子化合物「細胞外多糖類(Extracellular Polymeric Substances, EPS)」に着目し、低カルシウムCO2固定材料の炭酸化プロセスへの応用と、その改質効果を調査しました。実験の結果、EPSを添加することで、炭酸化サンプルの圧縮強度が未添加時の2.21 MPaから32.90 MPaへと劇的に向上し、炭酸化度も4.44 wt%から11.51 wt%へと大幅に高まることが明らかになりました。この劇的な改善は、EPS中の酸性アミノ酸がカルシウムイオンの溶出促進と自由水吸着の働きを持つためと考えられます。これにより、EPSが炭酸カルシウムの核生成サイトを数多く提供し、アモルファス炭酸カルシウム(ACC)がその場で生成されることを誘導。結果として有機-無機炭酸化複合材料が形成され、材料の細孔構造の最適化と効率的なCO2固定が達成されました。

本研究で示されたEPSを用いた炭酸化技術は、従来の微生物を利用した手法が抱えていた酵素活性の不安定性という大きな課題を克服するものです。安定した高分子化合物であるEPSを用いることで、より信頼性が高く、制御しやすい炭酸化プロセスが実現可能となります。これは、低カルシウムCO2固定材料の効率的利用を促進し、建材分野をはじめとする多様な産業廃棄物からのCO2固定に応用できる可能性を拓く画期的な成果と言えます。持続可能な社会の実現へ向けて、CO2排出量削減と資源循環を両立させる新たな技術として、その今後の発展が期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


The influence of vanadium titanium slag and blast furnace slag on the properties of cement-based materials: Fluidity, mechanical properties, and hydration

産業廃棄物であるバナジウムチタン鉱滓(VTS)は、その効果的な再利用が困難であり、特にセメント系材料への応用においては、その物性に与える影響が十分に解明されていないことが長年の課題となっています。地球規模での持続可能な社会の構築が叫ばれる中、こうした未利用資源の有効活用は喫緊の課題であり、その解決策を見出すための科学的なアプローチが強く求められています。

こうした背景のもと、本研究はVTSのセメント系材料への応用可能性を深く掘り下げるため、高炉スラグ(BFS)との比較を通じて、VTSがセメントの流動性、機械的特性、および水和挙動に与える影響を詳細に解析しました。X線蛍光分析(XRF)、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)などの手法を駆使し、VTSとBFSの化学組成、形態、そしてポルトランドセメントとの水和挙動を比較。特に活動度補償法を用いることで、水和活動度の向上メカニズムを探求した点が特筆されます。その結果、VTSとBFSは主要な化学組成と形態において類似性を示すものの、VTSは高いチタン(Ti)含有量を持ち、そのTiが主にペロブスカイトとして存在することで、スラグの結晶度を高めていることが明らかになりました。この高結晶性VTSをセメント系材料に配合すると、流動性にはBFS配合と大きな差が出ない一方で、機械的特性の顕著な低下が確認されました。さらに、VTSはセメントの水和を阻害し、水和熱放出を抑制する効果があることも判明。長期水和および微細構造の分析からは、VTSの高い結晶度が水和生成物の形成を妨げ、微細構造の緻密化を阻害し、結果として空隙率を増加させるメカニズムが示されました。興味深いのは、BFSをVTSの代替として使用する場合の影響です。少量のBFS置換では、VTS由来の過剰なTiがスラグとセメントの両方の水和を阻害する傾向が見られましたが、BFSの置換率が増加するにつれて、反応性の高いアモルファス相が増加し、同時にTi含有量が減少するため、複合セメント系材料の水和活動度が改善されることが明らかになりました。これは、VTSの悪影響をBFSが相殺し、あるいは部分的に補償しうる可能性を示唆しています。

本研究は、これまで利用が困難であったVTSをセメント系材料へ応用する際の具体的な課題と、そのメカニズムを明確に解明した点で大きな新規性を持つと言えるでしょう。特に、VTS中の高チタン含有量と高結晶度がセメント水和に与える悪影響を科学的に裏付けたことは、VTSの再利用戦略を立案する上で極めて重要な知見となります。得られた結果は、VTS単独での利用の難しさを示す一方で、BFSのような他のスラグと組み合わせることで、その水和活動度と物性を改善できる可能性を示唆しています。これは、産業廃棄物の有効活用という観点から、持続可能な建設材料の開発に向けた新たな道筋を開くものと期待されます。今後は、最適な配合比率の特定や、実際の建設現場での適用可能性の検証が課題となるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)