Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Polyalphaolefin as a potential modifying agent for hard asphalt cement: Physical, rheological, and chemical characterization
高負荷交通に耐えうる舗装インフラの構築は、現代社会において極めて重要な課題です。特に、大型車両の通行が集中する道路や空港の滑走路では、舗装材料に高い耐久性と柔軟性が求められます。しかし、現状の硬質アスファルトバインダー、例えばAC20-30グレードは、その高い硬度ゆえに、施工時の作業性が悪く、低温でのひび割れや度重なる車両荷重による疲労破壊といった問題を引き起こしやすいという欠点がありました。これらの性能を改善するためには改質剤の導入が不可欠でしたが、その効果と経済性を両立させる新たなソリューションが求められていました。
こうした背景のもと、最近の研究では、合成オレフィン系潤滑油であるポリアルファオレフィン(PAO)が、硬質アスファルトバインダーの性能を飛躍的に向上させる可能性が示されました。本研究では、AC20-30アスファルトにPAOを2重量%から10重量%の範囲で混合し、その物理的、レオロジー的、化学的特性を広範に評価しました。具体的には、針入度、延性、軟化点、回転粘度といった基本的な物性に加え、リニア振幅掃引(LAS)試験による疲労性能、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)による化学構造、走査型電子顕微鏡(SEM)による微細構造の変化を詳細に分析しています。その結果、PAOの添加はアスファルトの剛性を着実に低下させ、柔軟性を大幅に高めることが明らかになりました。特筆すべきは、全てのPAO改質アスファルトが、高性能基準であるAASHTO M332 Grade E仕様を満たしたことです。さらに、LAS試験では疲労性能の劇的な向上が確認され、特に10%のPAOを添加したアスファルトは、未改質のものに比べて5%ひずみ時の疲労寿命が18倍にも達しました。
これらの物性向上は、化学的および形態学的な変化によって裏付けられています。FTIR分析ではPAOの組み込みに伴う脂肪族および不飽和官能基の増加が、SEM観察ではより連続的で密度の低い微細構造への移行が確認されました。本研究では、低温での柔軟性、疲労抵抗性、高温でのレオロジー特性といった複数の性能指標において最適なバランスを提供するPAO添加量は6重量%であると特定しています。加えて、経済性の観点からも、PAO改質アスファルトは優れた利点を示します。10重量%のPAOを添加した場合でも、その製造コストは既存の高性能アスファルトバインダーであるAC40-50を下回ることが示されており、実用化に向けた経済的な実現可能性が強く支持されました。以上の結果は、PAOが単に柔軟性を向上させるだけでなく、疲労抵抗性も同時に高める「デュアルパーパス」改質剤として極めて効果的に機能することを示しています。PAOを用いることで、高負荷舗装用途におけるアスファルトバインダーの性能を、実用的かつ費用対効果の高い方法で強化することが可能になり、将来の高耐久性・高機能性舗装インフラの実現に向け、新たな道筋を切り開くものとして大いに期待されます。
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The dissolution of fly ashes in undersaturated alkaline solutions
フライアッシュは、石炭火力発電所の副産物でありながら、そのポゾラン反応性からセメント系材料の補足セメント材料(SCM)として世界中で広く活用されている。セメントへの混合は、材料の耐久性向上、資源有効活用、さらには二酸化炭素排出量削減にも貢献すると期待される。しかし、フライアッシュがセメント系材料中で示す性能は、主に高アルカリ性環境下での溶解挙動とそれに続く化学反応性に大きく依存する。特に、セメントペースト中の溶液は高pHかつ未飽和状態にあり、この複雑な条件下でのフライアッシュの溶解メカニズムの詳細は、効率的な利用促進、性能予測、長期耐久性評価において不可欠であるものの、これまで十分に解明されていなかった。
こうした背景のもと、本研究はセメント系材料の実環境を模倣した高アルカリ性未飽和条件下(pH 12.4〜13.8、温度25〜60℃)において、広範な種類のフライアッシュ(クラスCおよびクラスFをそれぞれ8種類)の溶解挙動を詳細に調査し、セメント産業に資する新規知見を得た。具体的には、クラスCフライアッシュではケイ素(Si)よりもアルミニウム(Al)が優先的に溶解する傾向が明確に観察され、Ca含有量の少ないフライアッシュではSiとAlがほぼ等量で溶解する「等量溶解」が確認された。溶解抑制要因として、クラスCフライアッシュでは溶液中のSiが、クラスFフライアッシュではCaとAlがそれぞれ溶解を妨げることが示された。また、アルカリの種類も溶解速度に影響し、同濃度であれば水酸化ナトリウム(NaOH)が水酸化カリウム(KOH)よりもクラスFフライアッシュを速く溶解させた。溶解速度は初期段階ではテトラヘドラあたりの非架橋酸素量、長期では反応性AlおよびSi含有量と相関することも判明した。さらに、希薄溶液中での溶解データは25℃におけるセメント系混合物(R3混合物)の反応範囲と良好な一致を示し、40℃および60℃での反応では、希薄溶液中での溶解度がセメント混合物中での反応性よりも大きいことも示された。
本研究で得られたこれらの知見は、フライアッシュの複雑な溶解メカニズムに関する理解を深める。アルカリの種類、溶液組成、温度、そしてフライアッシュの化学的特性が溶解挙動に与える影響を定量的に解明した点は、学術的・実用的に大きな進歩をもたらすと言える。これらのデータは、セメント系材料におけるフライアッシュの長期的な反応性をより正確に予測し、材料の性能を最適化するための基礎情報として極めて価値が高い。最終的に、本研究の成果は、フライアッシュの特性を最大限に引き出した持続可能な建設材料の開発に貢献し、資源の有効活用と環境負荷低減に向けた技術革新を加速させる可能性を秘めている。
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How does the crystal structure of MgO influence the hydration rate, phase composition, and performance of clay-based magnesium silicate hydrate cements?
マグネシア(MgO)ベースセメント(MBCs)は、二酸化炭素排出量削減に貢献する持続可能な代替セメントとして期待されています。しかし、その水和速度や最終性能のばらつきが実用化への課題となっており、これは前駆体であるマグネシア(MgO)の結晶構造がセメント性能に与える影響が十分に理解されてこなかったことに起因します。既存研究では、MgO調製に500°Cから1000°Cという幅広い焼成温度が用いられ、結果として形態や反応性に大きな違いを持つMgO粉末が生成されていました。本研究は、この課題に対し、MgO結晶構造がMBCs性能に与える影響の解明を目的とします。
本研究では、含水炭酸マグネシウムとブルース石という異なる前駆体から、より低い焼成温度域(350°C~600°C)で調製されたMgOの結晶構造と形態が、MBCsの水和経路に与える影響を詳細に調査しました。初期水和動力学の解析では、水酸化物由来MgOを用いたMBCsは焼成温度の上昇とともに初期溶解度が増加する一方、炭酸塩由来MgOを用いたMBCsは高温で休止期を示す対照的な挙動が明らかに。X線回折(XRD)による結晶子サイズ進化分析では、水酸化物由来MgOがMgO(111)反射の完全な消失と水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)(0001)ピークの同時出現を示すのに対し、炭酸塩由来MgOは(111)面を保持し、サイズ減少がわずかに留まるという構造変化の違いが観察されました。これらの構造的差異は機械的性能にも相関し、特に炭酸塩由来MgOを450°Cで調製したMBCsは、参照セメントと比較して圧縮強度が25%向上し、浸漬後の膨張率が0.16%という優れた耐水性を示すことが実証されました。これは、MgOの前駆体と焼成温度が結晶構造、ひいてはセメントの水和挙動と性能に深く影響することを示しています。
これらの知見は、MgOの結晶構造がMBCsの水和経路と最終性能を決定する極めて重要な因子であることを浮き彫りにしました。学術的意義に加え、持続可能なセメント産業の発展に貢献します。具体的には、従来の高温焼成よりも低い温度(350°C~600°C)でのMgO調製でも高性能なセメントを製造できる可能性を示し、製造におけるエネルギー消費と二酸化炭素排出量の大幅な削減に寄与します。また、特定の結晶構造を持つMgOがセメントの強度や耐久性(耐水性)を向上させることを示したことで、将来の高性能かつ環境負荷の低い代替セメント材料の設計や製造プロセスの最適化に向けた明確な指針を提供します。本成果は、より安定した高性能な次世代セメント材料の開発を加速させ、建設産業の持続可能性目標達成に貢献すると期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)