著者名:須田 裕哉1・田中 洋介2・佐伯 竜彦3
論文タイトル:C-S-Hの組成と物理的性質に関する基礎的研究
掲載誌名:土木学会論文集E
出版年:2010
巻数:66
ページ範囲:528-544
研究の背景と動機
C-S-Hは、セメント系結合材の主要な水和物であり、その組成と性質はコンクリートの性能に大きな影響を及ぼす。しかし、C-S-Hの組成と物理的性質、さらに両者の関係については十分に明らかにされていない。
既存研究では、C-S-Hの組成式はCpSHqのように表記され、pおよびqはそれぞれCaO/SiO2モル比(C/S比)、H2O/SiO2モル比(H/S比)と呼ばれる。これらの研究は、材料の種類や配合がC-S-Hの組成に影響を与えることを示しているものの、C-S-Hの組成と物理的性質の関係については詳細な分析が不足していた。
解決できたこと
本研究では、合成C-S-Hおよび種々の材料・配合の水和試料を用いて、C-S-Hの組成および密度と比表面積を測定した。その結果、以下のことが明らかになった。
- C-S-HのH/S比は、材料・配合に依らずC/S比に比例する。
- 密度および比表面積も材料・配合に依らず、C/S比と比例関係にある。
特に、C-S-HのC/S比とH/S比の間には、広範囲にわたって直線関係があることが確認された。この関係は、材料・配合・養生条件が変化しても同一の式で表されるため、C-S-Hの組成と性質を予測する上で重要な知見となる。
研究の貢献
須田らは、C-S-Hの組成と物理的性質の関係を明らかにするために、合成C-S-Hと様々な材料・配合の水和試料を用いて実験を行った。その結果、C/S比とH/S比、密度、比表面積の間に明確な比例関係があることを発見した。
実世界への応用と影響
本研究の結果は、コンクリートの性能予測や設計に役立つだけでなく、セメント系材料の耐久性向上や環境負荷低減にも貢献する可能性を秘めている。例えば、C-S-Hの組成を制御することで、コンクリートの強度や耐久性を向上させることができる。また、C-S-Hの比表面積を制御することで、コンクリートの吸水性や透水性を制御できる。
今後の展望と未解決の課題(Unknown)
本研究では、C-S-Hの組成と密度、比表面積の関係について詳細な分析を行ったが、未定量の水和物も含めたより詳細な検討が必要である。また、混和材を用いた場合に生成するC-S-HのC/S比の測定手法は、未だ確立されておらず、C/S比の測定精度の向上も今後更なる検討が必要である。
学術的位置づけと読者へのインパクト
本研究は、C-S-Hの組成と物理的性質の関係を明らかにした画期的な研究であり、コンクリート科学分野における新たな知見をもたらす。本研究成果は、コンクリートの性能向上や耐久性評価に大きく貢献するだけでなく、セメント系材料の開発や環境負荷低減にも重要な役割を果たすと期待される。
本記事は学術論文の要約であり、原著作者および出版社の権利を尊重しています。詳細な情報や正確な引用については、原論文を参照してください。