AIニュース|2025-12-31 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


4D quantification of C-(A)-S-H and Mg-Al LDH phase alterations and microstructural evolution during accelerated carbonation of alkali-activated slag pastes

現代社会において、建築材料の持続可能性は喫緊の課題であり、特にセメント製造時に排出される大量の二酸化炭素(CO2)の削減が強く求められています。こうした背景から、高炉スラグなどの産業廃棄物を有効活用し、CO2排出量を大幅に抑制できる「アルカリ活性スラグペースト」が次世代のセメント代替材料として大きな注目を集めています。しかし、その長期的な性能、とりわけ大気中のCO2との反応による「炭酸化」が材料に与える影響については、まだ十分に解明されていない点が少なくありません。炭酸化は、材料内部の水和物相を変化させ、微細構造を改変することで、強度低下や耐久性劣化を引き起こす重要な要因であり、このメカニズムを深く理解することは、アルカリ活性スラグペーストの実用化と普及に不可欠です。

この課題に対し、本研究はアルカリ活性スラグペーストの促進炭酸化過程における水和物相および微細構造のダイナミックな変化を、「4次元(4D)的定量分析」という革新的なアプローチを用いて詳細に明らかにしました。従来の2次元的な観察や特定の時点での分析では捉えきれなかった、時間とともに進行する複雑な相変化や微細構造の進化を、3次元空間に時間軸を加えることで、包括的かつ定量的に追跡した点が本研究の最大の新規性です。具体的には、セメント材料の主要な強度発現相であるC-(A)-S-H(カルシウム-(アルミニウム)-シリケート水和物)や、スラグ系材料に含まれるMg-Al LDH(マグネシウム-アルミニウム層状複水酸化物)といった重要な水和物相が、炭酸化によってどのように分解・変質し、新たな炭酸塩が生成されるのかを、その化学的変化と同時に微細構造の改変(例えば、孔隙構造の変化や材料密度の変化)を、動的かつ数値的に把握することに成功しました。これにより、炭酸化が材料内部でどのように開始され、どの相がどれだけ影響を受け、それが全体構造にどのように波及するのかを、これまでにない高精度で解明しています。

本研究で得られた知見は、アルカリ活性スラグペーストの炭酸化劣化メカニズムに関する科学的理解を飛躍的に深めるものであり、同材料の促進炭酸化条件下での長期的な挙動をより正確に予測することを可能にします。これにより、炭酸化に対する抵抗性を高めるための材料設計指針の確立に直接的に貢献し、配合の最適化や活性剤の選択、養生条件の調整など、より耐久性の高いアルカリ活性スラグコンクリートの開発に不可欠な基礎データを提供します。最終的には、環境負荷の低い次世代建築材料の実用化と普及を加速させ、建築物の長寿命化とライフサイクル全体での環境負荷低減に大きく寄与することで、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Experimental investigation of hygro-thermo-fracture couplings in cement paste with mineral fillers via micro-scale splitting tests

現代社会の基盤を支えるコンクリート構造物は、温度や湿度の変動といった厳しい環境条件に常に晒されています。これらの環境因子は材料内部の物理化学的な変化を引き起こし、最終的にはひび割れや破壊といった形で構造物の性能を低下させます。特に、湿度と温度が複合的に作用する環境下では、材料の劣化挙動は非常に複雑であり、その詳細なメカニズムは未解明な点が多く残されていました。また、近年ではセメントペーストの性能向上や資源循環の観点から、フライアッシュや石灰石微粉末などの鉱物性フィラーが広く利用されていますが、これらフィラーの添加が複合的な環境負荷下におけるセメントペーストの破壊挙動に与える影響、特に微細構造レベルでの連成挙動については、従来の巨視的な研究だけでは十分な知見が得られていませんでした。

このような背景の中、本研究は、セメントペースト、特に鉱物性フィラーを添加したセメントペーストにおける「湿度」「温度」、そして「破壊」の三つの要素がどのように相互に作用し、連成するのかを、画期的な「マイクロスケール引張り試験(splitting tests)」を用いて実験的に解明しようと試みています。従来の研究が主に巨視的なスケールで個別の因子を評価してきたのに対し、本研究は微細構造レベルでの連成挙動に焦点を当てることで、これまでのアプローチでは見過ごされてきた材料内部の複雑なメカニズムを明らかにしました。鉱物性フィラーの添加が、この湿度・温度・破壊の連成挙動にどのような影響を与えるかを微視的に評価することで、材料設計における新たな知見を提供するものです。

本研究で得られた成果は、コンクリート構造物の長期的な耐久性評価と寿命予測の精度向上に大きく貢献します。湿度と温度の変動が激しい過酷な環境下におけるコンクリートの劣化・破壊メカニズムの理解を深めることは、社会インフラの安全性向上に不可欠です。また、鉱物性フィラーの最適な選定や配合設計に新たな指針を与え、より高性能で耐久性の高い、かつ持続可能なセメント系材料の開発を促進します。ひいては、将来的なひび割れ発生の予測や予防的な維持管理技術の発展にも繋がり、社会全体の経済的な維持管理とインフラのレジリエンス強化に貢献することが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Influence of fiber surface modification on morphology and properties of cement/malva fibers composites

近年、地球環境問題への意識の高まりとともに、建築分野においても持続可能な材料への転換が喫緊の課題となっています。特に、セメントは製造過程で大量の二酸化炭素を排出することから、その使用量削減や代替材料の開発が世界的に求められています。こうした背景から、再生可能な天然資源である植物繊維をセメント材料に複合化することで、環境負荷を低減しつつ材料性能を向上させる研究が活発に進められてきました。しかし、植物繊維は本来、セメントマトリックスとの親和性が低く、十分な界面接着性が得られにくいこと、また高い吸水性やセメントの強アルカリ環境下での劣化といった課題を抱えており、これが複合材料の実用化を阻む要因となっていました。多種多様な植物繊維の中でも、マルバ繊維はその特性からセメント複合材料への応用が期待されていますが、これらの課題を克服するための革新的なアプローチが不可欠とされてきました。

このような状況の中、本研究は、マルバ繊維を用いたセメント複合材料の性能向上を目指し、その繊維表面改質が材料の形態および特性に及ぼす影響を包括的に解明しました。研究では、マルバ繊維の表面を特定の化学的または物理的処理によって改質することで、セメントマトリックスとの界面接着性を劇的に改善する手法を探求。改質されたマルバ繊維とセメントペーストがより強固に結合し、複合材料内部における応力伝達効率が高まるメカニズムが詳細に分析されています。具体的には、表面改質が複合材料の微細構造、例えば繊維とマトリックス間の空隙率や結合状態にどのような変化をもたらし、それが最終的に材料の圧縮強度、曲げ強度、吸水性といった物理的・機械的特性にどう影響するかを体系的に評価しています。この成果は、従来の天然繊維複合材料が抱えていた性能限界を打破し、実用レベルでの高性能化を実現する上で画期的な知見を提供します。

本研究で確立されたマルバ繊維の表面改質技術は、高性能かつ環境負荷の低いセメント複合材料の実用化に向けた重要な一歩となります。再生可能な植物繊維を有効活用することで、建築分野における二酸化炭素排出量の削減に貢献するとともに、天然資源の持続可能な利用を促進します。さらに、マルバ繊維の可能性を最大限に引き出すことで、従来のセメント材料に代わる新たな建材オプションを提供し、持続可能な都市開発やインフラ整備に貢献することが期待されます。この技術は、農業廃棄物や未利用資源のアップサイクルを通じた循環型社会の実現にも寄与し、経済的価値と環境的価値を両立させる次世代の建築材料開発を加速させるものとして、その学術的および産業的意義は極めて大きいと言えるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)