Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
Mechanistic insights into lattice activation in improving high-temperature performance of alkali-activated fly ash geopolymers
地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、建設分野における二酸化炭素排出量削減は喫緊の課題であり、特にセメント産業の低炭素化が求められています。従来のポルトランドセメントの代替として、産業廃棄物であるフライアッシュを原料とするアルカリ活性化ジオポリマー(AAFA)は、低炭素かつ資源循環型の材料として期待を集めています。しかし、AAFAの普及には、火災時や高温環境下での構造物の安全性確保のため、その耐熱性向上という大きな課題が残されていました。特に、高温環境下では構造的完全性が損なわれやすく、その克服が急務とされていました。
このような背景のもと、本研究はAAFAの高温性能を飛躍的に向上させる新たなアプローチとして、「格子活性化」法を提案し、そのメカニズムと効果を詳細に解明しました。本研究では、格子活性化プロセス中に生成する上澄み液と沈殿物の微細構造や形態を分析しました。さらに、調製されたAAFAスラリーを高温に曝露し、ナノ構造、化学組成、細孔構造の進化を詳細に評価しました。その結果、従来のAAFAでは利用が困難であったフライアッシュ中のムライトや石英といった結晶相の構造が、格子活性化によって効果的に変化し、特にムライトの83%が非晶質相へと効率的に変換されることが明らかになりました。この結晶相の活性化と非晶質化こそが、AAFAの耐熱性向上に不可欠な役割を果たすことを示しています。実際に、格子活性化法で調製されたAAFAは、1000℃の高温に曝露された後でも、従来法と比較して残存圧縮強度が73.4%も増加し、43.7MPaという優れた性能を維持することが実証されました。研究では、格子活性化がムライトを活性化する具体的なメカニズムと、重合プロセスにおける上澄み液および沈殿物の寄与についても深く掘り下げ、その複雑な化学反応経路を明らかにしています。
これらの包括的な知見は、格子活性化法がフライアッシュ中の結晶性および非晶質性成分の利用効率を格段に高め、同時にゲル構造の熱安定性を向上させることで、AAFAの高温性能を劇的に最適化できることを明確に示しています。本研究は、地球規模での炭素排出量削減が求められる現代において、熱耐久性に優れ、環境負荷の低い次世代セメント系材料の開発に、極めて重要な新たな道筋を提示するものです。また、アルカリ活性化材料の分野における革新的な戦略としての格子活性化の大きな潜在能力を強調しており、将来的な高性能・低炭素建材の実用化に向けた基礎を築くものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Elucidating the effects and mechanisms of OTES@silica nano capsules on water resistance and compressive strength of cement paste
コンクリートをはじめとするセメント系材料は、現代社会のインフラ構築に不可欠な素材ですが、その吸水性という課題は、材料の耐久性低下や劣化を招く要因として長年認識されてきました。この吸水性を低減させるため、疎水性剤をセメント材料に混ぜ込む手法が検討されてきましたが、従来の直接添加方式では、セメントの水和反応が阻害され、結果として材料の圧縮強度が著しく低下するという深刻な問題がありました。吸水率の低減と機械的強度の維持・向上という相反する性能を両立させる技術の開発が、喫緊の課題として求められていました。
このような背景のもと、本研究では、n-オクチルトリエトキシシラン(OTES)を核とし、シリカを殻とする新規な徐放性ナノカプセル「OTES@シリカナノカプセル(OTES@SC)」を開発しました。このカプセルはOTESを70.0%という高い割合で内包し、数日間にわたってOTESを継続的に放出する特性を持ちます。OTES@SCをセメントペーストに添加することで、既存のセメント粒子表面だけでなく、水和の進行によって新たに形成される表面にもOTESが均一かつ継続的に供給されます。OTESを直接添加した場合には、水和中に疎水性層が不均一化し消失する傾向が見られましたが、OTES@SCでは28日後も数分子層の薄く均一な疎水性層が維持されることが確認されました。この薄く均一な層は、クリンカーの反応サイトの一部が正常に水和することを可能にし、OTESによる水和阻害効果を大幅に軽減します。さらに、カプセルのシェルを構成するナノサイズのシリカは、それ自体がセメントの水和を促進するポゾラン効果を発揮し、細孔構造の緻密化にも寄与しました。これらの複合的なメカニズムが、ペーストの水和度向上と細孔構造の緻密化をもたらしました。
OTES@SCの導入は、セメント系材料の性能を画期的に向上させるものです。本研究では、OTES@SCを0.5 wt%の量で添加した硬化セメントペーストにおいて、吸水率を約70.6%も低減させることに成功しました。特筆すべきは、吸水率の低減と同時に、圧縮強度が約17.4%向上した点です。これは、従来の疎水性剤の課題であった強度低下を克服し、むしろ強度向上を達成した画期的な成果と言えます。水和促進と細孔構造の緻密化、そして均一な疎水性層の形成というメカニズムが、吸水率の劇的な低減と圧縮強度の顕著な向上を両立させました。本成果は、耐久性に優れ、長寿命化が期待される高性能セメント系材料の開発に大きく貢献するものであり、高品質で持続可能なインフラ構築への応用が期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Fiber-matrix interface enhancement in engineered geopolymer composites using cellulose nanofibers based on in-situ polymerization
持続可能な社会の実現に向け、環境負荷の低い建材の開発は喫緊の課題となっています。その中で、セメントの使用量を削減し、産業廃棄物などを原料とするエンジニアードジオポリマー複合材料(EGC)は、次世代のグリーン建材として大きな期待が寄せられています。しかし、EGCの高性能化には、内部に組み込まれる繊維とジオポリマーマトリックス間の界面接着をいかに強化するかが重要な課題として残されていました。従来の技術では、この界面制御が難しく、材料全体の性能向上を阻む要因となっていました。
このような背景のもと、本研究はEGCの界面接着強化に向けた革新的なアプローチを提示しています。自己集合性セルロースナノファイバー(SCNF)のin-situ重合に着目し、凍結融解法を用いてセルロースオリゴマーをアルカリ溶液に導入しました。これにより、EGCの養生過程においてSCNFの自己集合とジオポリマー化が同時に進行するという独自のプロセスを実現しています。この同時進行により、材料内部に相互浸透型の有機-無機ネットワークが効率的に形成され、繊維とマトリックス間の物理的架橋と化学結合の両面が飛躍的に強化されることが、詳細な微細構造解析によって裏付けられました。
特に注目すべきは、SCNF導入による界面特性の劇的な改善です。単一繊維引抜試験の結果、SCNFは摩擦結合を18.6%増加させ、さらに化学結合エネルギーを657%という驚異的な数値で向上させることが明らかになりました。一方で、PVA繊維のスリップ硬化係数βは68.6%減少するという二重効果も確認されています。これらの界面レベルでの強化は、EGC全体の巨視的な機械的特性にも大きく寄与し、最適なSCNF含有量0.5 wt%において、圧縮強度が46.3%、引張強度が44.2%、ひずみ容量が32.6%、エネルギー吸収が93.1%と、いずれも大幅な性能向上を達成しました。
本研究の成果は、高性能ジオポリマー複合材料の開発に直接的かつ定量的な根拠を提供するものです。SCNFとin-situ重合を組み合わせた独自の手法は、EGCの界面特性を飛躍的に向上させ、結果として強度、耐久性、靭性といった主要な機械的特性を大幅に改善することを示しました。これらの知見は、環境負荷の低い次世代の建設材料の開発を加速させ、持続可能な社会の実現に大きく貢献するものと期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)