Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 2 本の要点をまとめました。
Improving the mechanical properties of cement paste with carbonated blast furnace slag by tailoring CaCO3 polymorphs and increasing carbonation degree
建設業界において、セメント生産に伴う二酸化炭素排出量の削減は喫緊の課題です。高炉スラグなどの補助セメント系材料(SCM)を炭酸化処理し、CO2固定とセメント使用量削減を図る手法が有望視される一方、実用化には複数の課題が残されていました。具体的には、炭酸化によってSCM表面に形成される炭酸カルシウム(CaCO3)層がポゾラン反応を阻害する可能性、生成される方解石やアラゴナイトといったCaCO3結晶多形がコンクリート性能に与える影響、そしてSCMの炭酸化度を高めた際の機械的・長期特性への影響が未解明であったためです。
本研究は、低炭素コンクリートでの炭酸化SCM利用最適化に向け、これらの課題解決に取り組みました。高炉スラグを対象に湿式炭酸化処理を行い、CaCO3の結晶多形(23±2℃で方解石、60℃でアラゴナイトを生成)と炭酸化度(3%, 6%, 9%)を精密に制御。この炭酸化スラグをセメントペーストのセメント量30%と置換し、ポゾラン反応性や機械的性能への影響を評価しました。
その結果、低炭素コンクリート実用化に向けた重要な知見が得られました。炭酸化度6%で高炉スラグのポゾラン反応性が向上し、セメントペースト性能に好影響を与えると判明。CaCO3結晶多形も強度特性に大きく影響すると確認され、アラゴナイトが表面に生成されたスラグは1日強度を23%向上させ、曲げ強度は70%もの大幅な改善が見られました。一方、方解石が表面に生成されたスラグは28日強度を17%向上させています。また、炭酸化度9%ではセメントペーストの自己収縮が15%低減されることも明らかに。これらの発見は、炭酸化度とCaCO3結晶多形の種類を適切に調整することで、セメントペーストの早期強度、長期強度、曲げ強度、収縮特性といった複数の重要な機械的特性の最適化を示唆します。
本研究成果は、高炉スラグなどを用いた低炭素コンクリートの性能向上と普及に貢献します。炭酸化度とCaCO3結晶多形を精密に制御する技術は、コンクリートのCO2排出量を削減しつつ機械的特性を向上させる新たな設計指針を提供し、セメント産業の脱炭素化と、高性能かつ環境負荷の低い建設材料の実現に大きく貢献するでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Preparation of early strength concrete using all solid waste-based cement: Strength formation mechanism and carbon footprint evaluation
セメント産業は、その製造プロセスにおける膨大なエネルギー消費と石灰石の焼成に伴う二酸化炭素排出により、地球温暖化の主要な要因の一つとされています。同時に、石炭ボタやカーバイドスラッジ、脱硫石膏といった産業廃棄物の適切な処理は、環境問題として喫緊の課題であり、その有効活用が求められています。本研究は、これらセメント産業が抱える高炭素排出量と、固体廃棄物処理という二つの喫緊の課題に対し、革新的な解決策を提示するものです。
具体的には、石炭ボタ、カーバイドスラッジ、脱硫石膏といった未利用の固体廃棄物を100%原料とする「全固体廃棄物由来セメント(ASWBC)」を開発し、これを用いた早強コンクリートの特性評価と環境負荷削減効果を体系的に分析しました。開発されたASWBCコンクリートは、既存のセメントを上回る優れた性能を示し、特に初期強度の発現が著しく、打設後わずか6時間で35.01 MPaという高い圧縮強度を達成しました。これは、従来のサルフォアルミネートセメント(SAC)コンクリートと比較して48.6%もの向上に相当します。さらに、その強度発展は持続的であり、28日後には54.84 MPaに達する優れた特性を発揮します。この卓越した性能は、主成分であるC4A3S̄の急速な水和によってエトリンガイトやアルミニウムゲルが生成され、緻密な微細構造が早期に構築されることに起因します。加えて、その後のC2Sの水和によりC-S-Hゲルが形成され、コンクリート内部の細孔構造がさらに洗練されることで、強度向上に貢献していることが微細構造解析によって明らかになりました。
環境負荷の観点からも、ASWBCコンクリートは画期的な成果を上げています。その製造プロセスにおける二酸化炭素排出量は、一般的な普通ポルトランドセメント(OPC)と比較して29.04%もの大幅な削減を達成しました。この劇的な排出量削減は主に三つのメカニズムによるものです。第一に、セメント原料として天然資源である石灰石を固体廃棄物で完全に代替することで、石灰石の焼成時に発生する二酸化炭素排出がゼロになります。第二に、ASWBCは従来のセメントよりも低温での焼成が可能であるため、石炭消費量を38.9%削減できます。第三に、コンクリートの養生期間を従来の28日間から3日間の自然養生に短縮できるため、養生にかかるエネルギー消費を大幅に抑制できます。これらの要因により、単位強度・単位質量あたりの炭素排出量(C0 = 3.66 kg/MPa・t)も算定され、OPCと比較して45.1%も最適化されるという顕著な環境性能を実現しました。
本研究は、高性能な建設材料の開発と、産業廃棄物の有効活用、そして地球温暖化対策という、現代社会が抱える複数の課題を一挙に解決する画期的な技術的道筋を示しました。これは、建設材料産業において、持続可能な資源循環型社会の実現に向けた強力な一歩となるものであり、未来のインフラ整備における高性能かつ低炭素なソリューションを提供すると期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)