AIニュース|2026-01-03 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


Advanced modelling of moisture transport process in unsaturated cementitious materials considering multi-modal pore size distributions

コンクリートに代表されるセメント系材料の長期的な耐久性や性能は、材料内部の水分挙動に大きく左右されます。特に、不飽和状態におけるセメント系材料中の水分の浸透や移動は、凍害、塩害、アルカリ骨材反応といった劣化現象の進行に直結するため、そのメカニズムを正確に理解し予測することが不可欠です。これまで、この水分挙動は材料の微細な空隙構造と密接に関連していることが知られていましたが、従来のモデルでは空隙の分布を単純化して扱ったり、材料が乾燥する過程で水が空隙に閉じ込められる「空隙閉塞効果」や、空隙が複数種類の径を持つ「マルチモーダル分布」を示すといった複雑な特性を十分に考慮できていませんでした。こうした背景から、より詳細な微細構造情報を組み込んだ、高度な水分輸送モデルの開発が求められていました。

本研究は、こうした課題に対し、セメント系材料の微細構造と水分挙動の関係を深掘りする新たなアプローチを提示しています。具体的には、空隙スケールでの詳細な解析を通じて、空隙構造の特性と水蒸気吸着等温線の関係を定量的に確立することに成功しました。最大の新規性は、材料内部の空隙径が複数のピークを持つ「マルチモーダル対数正規分布」を示すという現実的な特性をモデルに組み込んだ点にあります。さらに、脱着過程における空隙閉塞効果によって空隙に捕捉される水の割合を、材料のピーク空隙径に強く依存する新しい「S字関数」として導入しました。これにより、空隙閉塞メカニズムとキャビテーションメカニズムの両方を考慮した、微細構造に基づく水分輸送予測モデルを開発しました。開発されたモデルは、水蒸気吸着等温線、相対透過率、および吸着・脱着時の内部水分分布を予測することができ、これらの予測結果は様々な実験データと高い精度で一致することが検証されました。

本研究で得られた知見は、セメント系材料の水分輸送挙動に関する理解を大きく前進させます。例えば、空隙構造がより密な材料は、同じ相対湿度下でより高い飽和度を保持することや、従来の単一ピーク空隙径分布モデルに比べ、本研究で採用されたマルチモーダル空隙径分布モデルが、材料の水分輸送挙動をはるかに包括的かつ正確に表現できることが明らかになりました。この成果は、空隙スケールでの物理メカニズムをマクロスケールでの輸送モデリングと効果的に結びつけることで、セメント系材料の水分輸送現象を解明するための高度な数値解析手法を提供するものです。これにより、将来的にコンクリート構造物の設計や材料選定において、その耐久性や寿命をより正確に予測し、最適化するための重要な基盤技術となることが期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Wind-driven carbonation process of steel slag under low moisture content

2026年1月、セメント・コンクリート複合材料分野の専門誌に、製鋼スラグの炭酸化プロセスにおける画期的な研究成果が発表されました。鉄鋼生産で発生する製鋼スラグは、セメント材料の代替品として期待される資源であり、その炭酸化は大気中の二酸化炭素を固定し、環境負荷低減に貢献する重要なプロセスです。しかし、従来の湿式炭酸化法は、プロセスに大量の水資源を消費するという大きな課題を抱えており、これが実用化への障壁となっていました。今回、研究チームは、この水消費量の問題を克服するため、低水分条件下で製鋼スラグを炭酸化する新たな技術を開発しました。

本研究で提案された「風力駆動・懸濁炭酸化(WSC)」技術は、従来の湿式炭酸化法と比較して、わずか2〜3%という極めて少ない水の使用量で、同等の炭酸化レベルの約85%を達成することに成功しました。これは、水資源の制約が厳しい地域での適用可能性を大きく広げる画期的な進歩と言えます。さらに、低水分環境下での炭酸化プロセスは、生成される炭酸カルシウムの結晶性を低減させ、セメント系材料の性能に悪影響を及ぼしがちな高分子シリカリッチ相の形成を抑制するという、微視的なレベルでの重要な知見をもたらしました。これらの構造変化は、ヘミカルボアルミネートやモノカルボアルミネートといった、セメント材料の強度発現に寄与する化合物の生成量を増加させ、結果として、より緻密な微細構造と優れた機械的強度を持つセメント系材料の実現に繋がることを実証しています。

加えて、WSCルートにおける炭酸カルシウムのin-situ形成と、それが粒子表面で凝集し大きな粒子を形成するメカニズムは、セメントペーストの作業性に直結する流動性の向上に顕著な効果をもたらしました。具体的には、セメントの一部を15%のWSC処理製鋼スラグで置き換えた場合、ペーストの流動性は12%向上することが確認されました。これに対し、未処理のスラグや従来の湿式炭酸化スラグを用いた場合には、それぞれ13%および16%の流動性低下が見られたことからも、WSC技術の優位性は明らかです。この研究成果は、製鋼スラグの有効利用と二酸化炭素固定化の効率を大幅に高めるだけでなく、水資源の保全、そして高機能かつ持続可能なセメント系材料の開発に大きく貢献するものであり、今後の建設産業や資源循環システムに革新をもたらす可能性を秘めています。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Development of core-shell lightweight aggregate with carbon nanotube towards high elastic modulus: experiment and modeling

現代の建設技術において、軽量性と高い構造性能を両立する材料の開発は極めて重要な課題です。軽量コンクリート(LWC)は、自重軽減、運搬コスト削減、耐震性能向上といった多くの利点から期待される材料である一方で、従来の軽量骨材(LWA)の低い強度と弾性率が、LWCの高性能化と広範な適用を妨げる主要因となっていました。高い応力がかかる構造物では、軽量性と強度・弾性率の両立が不可欠であり、このトレードオフを打破する革新的な技術が求められていました。

このような背景のもと、本研究では、軽量なコア材を炭素ナノチューブ(CNT)強化セメント水和物シェルで覆う「コアシェル構造」の軽量骨材を開発しました。この新しい骨材は、0.3%というごく少量のCNTを添加するだけで、軽量骨材の気孔率を97%以上も大幅に低減させ、その結果、この骨材を用いた軽量コンクリートの弾性率を31.7%向上させることに成功しました。研究チームは、高度な分析手法とシミュレーションを組み合わせ、CNTがセメント水和物シェルを強化するメカニズムを詳細に解明しました。実験の結果、CNTは水和の核生成には限定的だが水和プロセスをわずかに促進し、特に水和生成物の緻密な充填と相互連結した細孔の形状・体積最適化を通じて、シェルとその周辺の界面移行帯(骨材とセメントペーストの接合部)を大幅に強化することが示されました。シミュレーションからは、高弾性率の達成には、シェルと周囲のセメントマトリックス間に多層的な相乗効果を確立することが鍵であり、これは均一かつ緻密に分散したCNT-セメント複合材料が応力集中を効果的に緩和することによって実現されることが明らかになりました。

本研究は、炭素ナノチューブの並外れた特性を活かし、軽量骨材の細孔分布を精緻に制御し、コアシェル構造がマトリックス内で受ける応力分布を最適化する革新的なアプローチを提示しました。この成果は、高強度・高弾性率軽量コンクリートの実用化を大きく加速させるものです。軽量化による建設コスト削減、施工性向上、環境負荷低減といった多面的なメリットを享受できるだけでなく、高層建築物や長大橋梁など、極めて高い性能が要求される分野での軽量コンクリートの適用範囲を飛躍的に広げることが期待されます。本研究は、持続可能な社会の実現に向けた次世代建設材料開発における重要な一歩となるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)