Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
The effect of high temperature, freeze-thaw cycles, and chloride attack on the smart properties of CNTs modified cement-based composites
現代社会において、橋梁や高層ビルなどのコンクリート構造物の健全性維持は極めて重要であり、その劣化を早期に検知するヘルスモニタリング技術の確立が求められています。近年注目を集める「CNTs修飾セメント系複合材料(CNTs/CC)」は、優れた機械的特性に加え、ピエゾ抵抗や高感度といった「スマート特性」を示すことから、次世代のコンクリート構造物ヘルスモニタリングセンサーとしての大きな可能性を秘めています。しかし、コンクリート構造物が晒される高温、厳しい凍結融解サイクル、塩化物による腐食といった特殊環境下でのCNTs/CCの性能安定性と信頼性を確保することは喫緊の課題であり、これらの過酷な環境がスマート特性に与える影響の詳細はこれまで十分に解明されていませんでした。
本研究は、この課題に対し、CNTs/CCの導電性およびスマート特性が、過酷な特殊環境下でどのように変化するかを体系的に評価した点に新規性があります。具体的には、CNTs/CCサンプルを高温(200℃~600℃)、凍結融解サイクル(50~150回)、塩化物攻撃(30~180日)といった多様な条件下に曝露し、その機械的特性、導電性、およびスマート特性(摩擦抵抗変化率: FCR、ひずみ感度)を詳細に分析しました。重要な発見は、高温および凍結融解サイクルに曝されたCNTs/CCが、機械的特性の劣化を示す一方で、スマート特性は顕著に向上したことです。特に600℃の高温処理後には、摩擦抵抗変化率(FCR)とひずみ感度が大幅に増加し、FCRは例えば10 MPaの繰り返し圧縮荷重下で室温(25℃)において22.37%から44.89%へと顕著に向上しました。また、凍結融解サイクルの増加も、圧縮、引張、曲げといった様々な荷重下でのFCRを著しく高めることが示されています。一方、塩化物攻撃については、長期間の曝露後、CNTs/CCの微細構造がより密になり機械的特性は改善されたものの、スマート特性への影響は比較的小さいことが判明しました。これらの結果は、特殊環境がCNTs/CCの内部構造や導電ネットワークに与える影響が、その「スマート」な振る舞いを意外な形で強化し得る可能性を示唆しています。
本研究で得られた成果は、高温や凍結融解といった特殊環境下におけるCNTs/CCの性能適応性を根本的に明らかにするものです。機械的劣化とスマート特性の向上が同時に起こり得るという発見は、過酷な環境下でのコンクリート構造物ヘルスモニタリングのセンサー設計において、新たな視点と可能性を提示します。特定の環境条件下でのセンサーの感度向上を逆手に取ることで、より信頼性の高いモニタリングシステムを構築できる可能性を示唆しており、これはCNTs/CCの長期的かつ実用的な応用を大きく促進する重要な一歩となります。将来的には、本研究で解明されたCNTs/CCの環境適応メカニズムに基づき、過酷な条件下でもその能力を最大限に発揮できるような、次世代のスマートコンクリート材料の開発が加速されるものと期待されます。
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Design and optimization of eco-friendly cement grout modified with bagasse ash and nano-silica for semi-flexible pavements using RSM
現代社会において、道路や橋梁などのインフラ整備は経済活動を支える上で不可欠ですが、その建設プロセスが環境に与える負荷は看過できない問題となっています。特に、セメントの製造は大量のエネルギーを消費し、二酸化炭素排出の主要な発生源の一つであるため、より持続可能で環境に優しい建設材料への転換が喫緊の課題とされています。半たわみ性舗装に用いられるセメントグラウトも例外ではなく、その性能を維持しつつ環境負荷を低減する技術が強く求められてきました。従来の普通ポルトランドセメント(OPC)に代わる代替材料の開発は、資源の有効活用と地球温暖化対策の両面から、建設業界全体の持続可能性を高める上で極めて重要なテーマです。
このような背景のもと、本研究は、半たわみ性舗装向けのセメントグラウトにおいて、環境負荷を低減しつつ性能を向上させる新たなアプローチを提案しました。セメントの一部を農業廃棄物であるサトウキビバガス灰(SBA)とナノシリカ(NS)で置換する手法を探求しています。研究では、SBAとNSの配合がグラウトの物性(フロー特性、圧縮強度)および微細構造に与える影響を詳細に評価し、最適な配合を見出しました。その結果、SBAを10%、NSを1%、さらに高性能減水剤(SP)を1%配合したグラウトが優れた性能を示すことが明らかになりました。この最適化された配合では、28日間の養生後、圧縮強度が参照グラウトと比較して18%向上し、フロー特性や収縮抵抗性も改善されました。また、走査型電子顕微鏡(SEM)やエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いた微細構造解析では、SBAとNSの相互作用がグラウトの緻密化、空隙率の低減、そして有効な相形成を促進していることが科学的に裏付けられました。さらに、応答曲面法(RSM)を用いた分析によっても、結果の信頼性が高く評価されました。
本研究は、サトウキビバガス灰がセメントの有望な代替材料であることを実証し、持続可能な建設への大きな一歩を記しました。セメント使用量の削減は、二酸化炭素排出量の低減に直結し、同時にこれまで廃棄物となっていた農業副産物を高付加価値な建設材料として再利用することを可能にします。これは資源の循環利用を促進し、環境負荷の低いインフラ開発に大きく貢献します。さらに、SBAとNSの複合的な利用はグラウトの耐久性を向上させ、長期的な維持管理コスト削減にも繋がるため、環境面・経済面双方に大きな意義を持ちます。本技術は、脱炭素社会の実現と持続可能な社会基盤の構築に向けた具体的な解決策の一つとして、今後の建設業界において重要な役割を果たすことが期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Development of calcium sulfoaluminate-belite cements for the encapsulation of radioactive waste
放射性廃棄物の安全かつ長期的な固化・封じ込めは、原子力利用における極めて重要な課題であり、特に将来的に発生が想定される高レベルの放射性廃棄物に対応するためには、固化材の性能と信頼性の一層の向上が求められています。従来のセメント系固化材は広く用いられていますが、固化プロセス中に発生する水和熱や、固化後の長期的な安定性には課題が残されています。こうした背景のもと、優れた耐久性や環境負荷の低減が期待されるカルシウムスルホアルミネート・ベライト(CSA)セメントが、次世代の放射性廃棄物固化材としての可能性を秘めているとして注目を集めています。本研究は、このCSAセメントが、将来のより高活性な放射性廃棄物処理プロセスにおいて、その封じ込め能力をいかに強化し得るかを実証・評価することを目的としています。
本研究の新規性は、CSAセメントの高レベル放射性廃棄物封じ込めへの適用可能性を、実用スケールに近い厳格な条件下で評価した点にあります。研究チームはまず、市販のCSAクリンカーを用いて3Lスケールでの予備試験を実施しました。その後、英国で放射性スラリー廃棄物の固化に一般的に用いられる「ドラム内混合(IDM)」手法と装置を応用し、500Lスケールへと試験規模を大幅に拡大しています。このプロセスでは、石膏添加量、水・固形物比、混合剪断レジームといった配合条件を広範囲にわたって検討しました。特筆すべきは、廃棄物材料、添加剤、補助セメント材料、充填剤を一切加えず、純粋なCSAセメントのみで試験を実施したことです。これは、廃棄物が混入する場合に比べてセメントの水和反応による発熱が最大となる「境界条件」を作り出すことで、主要な強度発現相であるエトリンガイトの挙動を厳密に評価し、固化システムの最悪シナリオにおける安全性を確立する狙いがありました。
28日および90日の養生期間を経て得られた分析結果によると、異なる水和発熱プロファイルに晒された製品間においても、最終的な相組成に顕著な違いは見られませんでした。これは、CSAセメントが初期の高温条件下でも安定した硬化体構造を形成する高い潜在能力を持つことを示唆しています。一方で、500Lスケールで発生した極めて高い発熱温度は、500Lスケール製品の構造に一部影響を及ぼしたものの、処理特性自体は異なる混合スケール間で一貫しており、高発熱の影響を受けない条件下では良好な物理的特性が得られることが確認されました。これらの知見は、CSAセメントが将来のより高レベルな放射性廃棄物の安全かつ効率的な封じ込めを強化するための有望な選択肢であることを示唆しており、実用化に向けたさらなる研究の進展が期待されます。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)