AIニュース|2026-01-08 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


Impact of synthetic C-S-H-GO seeds on hydration kinetics and pore structure evolution of cement pastes

セメントは現代社会に不可欠な建設材料ですが、その硬化プロセスは比較的時間がかかり、特に初期の強度発現や微細構造の制御は、建設工期の短縮や材料性能向上において重要な課題とされています。これまで、セメントの主要な水和生成物であるケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)のナノ粒子が、結晶核として機能し、水和反応を促進することが知られていました。このナノC-S-Hを改質することで、その分散性や機械的特性をさらに高め、セメントの性能向上に繋げられる可能性が探求されてきました。

このような背景のもと、本研究では、ナノC-S-Hをグラフェン酸化物(GO)で改質した新しいシード材料、「ナノC-S-H-GO(CG)シード」を開発し、そのセメント水和特性への影響を詳細に解析しました。CGシードは、核生成と成長を分離する独自の合成手法によって調製されています。多角的な分析の結果、C-S-Hマトリックス内へのGOのインターカレーションが、C-S-Hの結晶度を著しく向上させ、高分子化された凝集性のC-S-H構造の形成を促進することが明らかになりました。CGシードの添加は、セメントの水和動力学を飛躍的に加速させ、水和反応のメカニズムを従来のNG-I-DからNG-Dへとシフトさせる効果をもたらしました。このメカニズム変化により、セメントペーストの1日での圧縮強度および曲げ強度が大幅に向上することが確認されています。さらに、CGは初期に形成される花びら状の水和生成物の、より安定な棒状結晶への変換を加速させる作用も持ちます。特筆すべきは、CGがエトリンガイト(AFt)とC-S-Hゲルの間で「橋渡し」のような役割を果たすことで、ゲル細孔の割合を0.8%から2.1%増加させ、より緻密な微細構造形成に寄与することです。電気化学インピーダンス分光法(EIS)を用いた分析でも、CGの含有量と養生期間の増加に伴い、細孔の連結性が低下し、セメント材料がより緻密な内部構造を持つようになることが裏付けられました。

これらの革新的な発見は、CGシードがセメント系材料の早期強度発現と微細構造制御を可能にする、極めて効果的な硬化促進剤としての大きな潜在能力を秘めていることを示唆しています。建設現場における工期の大幅な短縮や、より高い耐久性を持つセメント材料の開発に道を拓くものとして、このCGシードの実用化は、今後の建築・土木分野に計り知れない恩恵をもたらすものと期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Hydration kinetics and mechanism of cement pastes with PEGylated cellulose nanocrystals

高性能・超高性能コンクリートに代表される低水セメント比のセメント系材料は、その優れた機械的特性と耐久性から現代の建設分野において不可欠な素材となっています。しかしながら、これらの材料はその配合特性上、流動性の確保が難しく、またセメントの水和反応が不十分かつ不均一に進行するという本質的な課題を抱えています。この問題は、材料の施工性を損なうだけでなく、本来持つべき潜在的な性能を十分に発揮させることができない要因となっていました。

このような背景のもと、最新の研究では、セメント材料の流動性と水和性能を改善する新たなアプローチが提示されました。本研究では、ポリエチレングリコール(PEG)をセルロースナノクリスタル(CNC)にグラフト化した「PCNC」(PEGylated cellulose nanocrystal)という新規材料を合成し、これをセメントペーストに添加することでその特性変化を詳細に分析しました。実験の結果、PCNCはセメントの水和反応を促進し、より完全かつ均一な水和を達成することが明らかにされました。そのメカニズムとしては、ショートサーキット拡散、核形成、そして立体障害が複合的に作用し、水和生成物の均一な成長を促していることが解明されました。これにより、純粋なセメントペーストや従来のCNC改質セメントペーストと比較して、性能向上が確認されています。具体的には、最適添加量である0.1%のPCNCを添加したセメントペーストでは、流動性が10.73%向上し、28日圧縮強度が30.63%もの大幅な増加を示しました。特に、PCNCがセメントの水和を改善する具体的なメカニズムモデルを初めて提案した点は、学術的に極めて重要です。

このPCNCの導入は、高性能セメント系材料の製造・施工における長年の課題を克服し、そのポテンシャルを最大限に引き出す画期的な解決策となる可能性を秘めています。本技術は、より優れた耐久性と施工性を持つコンクリート材料の開発を加速させ、ひいては持続可能な社会インフラの構築に大きく貢献することが期待されます。建設分野における材料科学の新たな地平を切り開く研究成果として、その将来的な応用展開に注目が集まります。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


The role of internally incorporated nano-silica in the hydration behavior of limestone calcined clay cement (LC3) with varying meta-kaolinite contents

セメントの製造は、世界の二酸化炭素排出量の大きな割合を占めることから、その環境負荷低減は喫緊の課題とされています。この課題への有望な解決策として、従来のポルトランドセメントと比較してクリンカー使用量を大幅に削減できる石灰石焼成粘土セメント(LC3)が注目を集めています。LC3はCO2排出量を抑制しつつ同等の性能を達成できる可能性を秘める一方、その性能を最大限に引き出し、さらなる高機能化と実用化を進めるためには、材料の微細な挙動や添加物が及ぼす影響について、より深い理解が不可欠とされていました。

この背景のもと、最新の研究では、ナノシリカ(NS)とメタカオリン(MK)がLC3ペーストの水和挙動、機械的性能、そして微細構造に与える相乗効果について、実験的に包括的な調査が行われました。本研究の成果は、LC3の改質メカニズムに新たな光を当て、その性能最適化に向けた重要な知見を提供しています。具体的には、ナノシリカは核生成効果とポゾラン反応により初期水和を加速させ、メタカオリンはC-(A)-S-Hゲルやカルボアルミネート相の形成を最適化することが明らかになりました。実験の結果、ナノシリカ3%、メタカオリン18%という最適な組み合わせにおいて、最も優れた性能が発揮されることが判明しました。この最適な配合では、未改質LC3と比較して28日圧縮強度が34%向上し、中央細孔径も30%減少するという顕著な改善が示されました。等温熱量測定では、ナノシリカがケイ酸塩およびアルミン酸塩の反応ピークを前進させる一方で、過剰なナノシリカ(5%)は粒子凝集により水和を阻害する可能性も示唆されました。微細構造分析からは、ナノシリカが細孔構造を精緻化し材料の緻密化を促進すること、そしてメタカオリンがエトリンガイトからモノサルフェートへの変換を安定させるメカニズムが解明されました。

今回の研究で得られたナノシリカとメタカオリンの相乗効果およびその制御メカニズムに関する深い洞察は、環境負荷の低い次世代セメントであるLC3の高性能化と実用化に大きく貢献するものです。特に、最適な配合比率が強度向上と微細構造改善に直結するという知見は、今後のLC3の配合設計や新しい建設材料の開発において、重要な指針となります。本成果は、持続可能な社会の実現に向けた建設材料技術の発展に寄与するだけでなく、セメント化学における学術的な理解を深める基盤を提供し、今後の研究開発の進展が期待されます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)