AIニュース|2026-01-10 Cement の新着まとめ

Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。


Geologically-inspired calcium carbonate-based sustainable cementitious materials

建築材料であるセメント製造は、大量の二酸化炭素排出という環境負荷の大きい課題を抱えています。従来のポルトランドセメント製造における石灰石の焼成は地球温暖化の一因であり、CO2排出量を大幅に削減できる新建材の開発が喫緊の課題です。こうした中、自然界の地質学的続成作用、すなわち炭酸カルシウム粒子が凝集・固化して高密度な連続構造を形成するプロセスに着想を得た、革新的な低炭素セメント材料の開発が注目されており、その人工的再現が環境負荷の低いセメント製造への可能性を拓くと期待されます。

本研究では、この地質学的続成作用に着想を得た、炭酸カルシウム(Cc)を基盤とする新しい低炭素セメント系材料を提案しました。その目的は、従来の製造プロセスと同等の時間スケールで、高密度なCcペーストを製造することにありました。この緻密化メカニズムを正確に解明するため、研究チームは高純度の非晶質炭酸カルシウム(ACC)、バテライト、アラゴナイト、カルサイトといった多様なCc多形を用いて実験を行いました。その結果、Cc多形の緻密化挙動は、粒子の再配列能力、溶解-再沈殿特性、そして沈殿する結晶の形態によって影響されることが明らかになりました。中でも、ACCから作られたペーストは優れた初期機械的特性を示し、穏やかな冷間焼結プロセスを適用することで23 MPaの圧縮強度を達成可能であることを実証。これは、高温を要する従来の焼結に比べ、エネルギーとCO2排出の大幅削減に繋がります。

本研究の成果は、炭酸カルシウムが冷間焼結建材の結合材として、極めて大きな潜在能力を持つことを強く示唆しています。この発見は、単なる低炭素セメント開発に留まらず、カルシウム豊富な固体廃棄物や大気中の二酸化炭素を原料として活用することで、製造過程でCO2を排出しない、あるいは「負の炭素排出」を実現するCcベースのコンクリート開発への重要な洞察を提供します。これにより、資源有効活用と地球温暖化対策の両面から、持続可能な建設産業の実現に向けた新たな道筋が示されたと言えます。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Enhancing the rheology, reaction kinetics and early-age strength of limestone calcined clay cement (LC3) with sodium silicate addition

地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、建設分野における二酸化炭素排出量削減は重要なテーマです。その中で、ポルトランドセメントの代替として、石灰石焼成粘土セメント(LC3)が持続可能なセメントシステムとして大きな注目を集めています。LC3は、セメントクリンカー使用量を大幅に削減し、製造時のCO2排出量を大きく低減できるため、環境負荷の低い建材として期待されています。しかし、従来のセメントと比較して、その流動性(レオロジー特性)や、特に打設後早期の強度発現が遅いという課題が実用化の障壁となっていました。建築物の早期利用や建設プロセスの効率化には、初期強度向上が不可欠であり、その技術開発が求められていました。

このような背景のもと、最新の研究では、LC3の性能向上を目指し、少量のケイ酸ナトリウム(SS)溶液を添加する手法の有効性が評価されました。本研究では、組成の異なる複数のSS溶液がLC3のレオロジー特性と初期強度に与える影響を分析。SSの添加がLC3内部のコロイド相互作用を効果的に低減させ、初期の降伏応力および粘度を大幅に減少させることが明らかになりました。これは、セメントペーストの良好な流動性を確保し、施工性を向上させる上で重要です。また、全てのSS添加システムは欧州規格EN 197–1に定められた初期凝結時間の要件を満たしており、実用上の問題がないことも確認されました。

特筆すべきは、特定の組成(Na2O 1%、ケイ酸モジュラス0.4)のSS溶液が、セメントクリンカー中の反応、および焼成粘土と石灰石間の相乗的な反応を著しく加速させた点です。この反応促進効果により、LC3単独と比較して1日強度が120%も向上し、従来の一般的なポルトランドセメント(CEM I)と比較しても13%の強度向上を達成しました。これはLC3の初期強度発現の課題を大きく改善する画期的な成果です。微細構造分析でも、1日齢でより緻密なマトリックス構造と洗練された細孔構造が観察され、初期強度向上のメカニズムを裏付ける強力な証拠となりました。

これらの研究成果は、適切に配合されたケイ酸ナトリウム溶液が、LC3の流動性および初期性能の両方を劇的に向上させる効果的な促進剤として機能することを示唆しています。この技術は、LC3の潜在能力を最大限に引き出し、その実用化を大きく加速させる可能性を秘めています。セメント産業が直面するCO2排出量削減という大きな課題に対し、高性能なLC3の普及は、建設業界全体の環境負荷低減に大きく貢献すると期待されます。本研究は、地球環境に配慮した高性能かつ経済的な建材の実現に向けた重要な一歩であり、今後の建設技術の発展に多大な影響を与えるでしょう。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)


Understanding early hydration in belite calcium sulfoaluminate cements: Impacts of minor elements and citric acid

ベリテカルシウムスルホアルミネートセメント(BCSAセメント)は、その迅速な強度発現、低い二酸化炭素排出量、優れた耐久性といった特性により、建設分野でその応用が拡大しています。しかしながら、配合や物理特性が類似していても、BCSAセメントの初期水和挙動、すなわち硬化速度には顕著なばらつきが見られることがあり、これは品質の一貫性や性能の予測可能性において課題となっていました。本研究は、この初期硬化挙動の差異の根源を明らかにし、さらに一般的な遅延剤であるクエン酸がBCSAセメントの水和プロセスに与える影響を詳細に解析することで、セメントの性能制御と設計に資する重要な科学的知見を提供しました。

研究チームは、組成と物理特性がほぼ同一でありながら水和速度が異なる8種類のBCSAセメントバッチを精査し、その初期水和挙動が、速く硬化するタイプと遅く硬化するタイプの二つの明確なクラスターに分類できることを特定しました。速硬性セメントは最終凝結時間が約22分、主な発熱ピークが2時間であったのに対し、遅硬性セメントではそれぞれ約28分、3時間と有意な差異が認められました。この水和速度の違いは、初期段階で細孔溶液中に溶出する可溶性カリウムイオンおよび硫酸イオンの濃度に大きな差があることに起因していることが判明しました。速硬性セメントでは、硫酸カリウム含有量が高いため、遅硬性セメントと比較して、溶存カリウムイオンが約1.4倍(149 mM対107 mM)、硫酸イオンが約1.3倍(76 mM対57 mM)も高濃度であることが確認されました。等温カロリメトリーとin-situ X線粉末回折(リートベルト解析)を用いた詳細な分析により、高いアルカリ含有量が主要鉱物であるイェーリマイトの溶解を加速し、それに伴うエトリンガイトの結晶化を促進することで、水和速度の差異を生み出すメカニズムが明らかにされました。さらに、クエン酸の添加が初期および最終凝結時間を約1.8時間遅延させる効果があることが確認され、この遅延効果は特に無水石膏の溶解に対して最も顕著であり、イェーリマイト溶解やエトリンガイト結晶化への影響は比較的小さいことが分かりました。細孔溶液分析からは、クエン酸がカルシウムイオンと硫酸イオン濃度を増加させる一方で、カリウムイオン濃度を減少させることが示唆され、カルシウムとの錯形成や、無水相表面へのシトラートの選択的な吸着・沈着が遅延メカニズムに関与していることが示されました。

本研究の成果は、BCSAセメントの性能発現を決定する上で、初期段階における各鉱物相の溶解挙動、特に微量成分の影響が極めて重要であることを改めて浮き彫りにしました。硫酸カリウムのような微量成分が水和初期の溶解挙動に与える影響を深く理解することは、BCSAセメントの安定した品質管理を実現し、さらには急速硬化や早期強度発現が求められる特殊な用途に応じたセメントの設計を最適化する上で不可欠な要素となります。また、クエン酸による水和遅延メカニズムの詳細な解明は、セメントの凝結時間調整剤の選定と最適化に貢献し、建設現場での作業性向上や、特定の気象条件、あるいは特定の施工要件下での利用可能性を広げるための貴重な指針となるでしょう。これらの画期的な知見は、BCSAセメントのさらなる性能向上と応用拡大に向けた強固な基盤を提供します。

出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)