Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Cement」に関連する新着論文 3 本の要点をまとめました。
The influence of recycled active magnesium oxide on the properties of magnesium oxychloride cement
建設分野でその優れた特性から広く利用されているオキシ塩化マグネシウムセメント(MOC)は、需要が高まる一方で、その生産方法に起因する環境負荷が課題となっています。MOCの主要原料である活性酸化マグネシウム(MgO)は、一般的に天然鉱物である菱苦土石(MgCO3)の採掘と、これを高温で焼成するプロセスを経て製造されます。この伝統的な生産方法は、有限な天然資源の消費を伴うだけでなく、焼成工程におけるエネルギー多消費とそれに伴う温室効果ガス排出が、環境保護上、深刻な課題として指摘されており、持続可能な建築材料の供給に向けた新たなアプローチが求められていました。
こうしたMOC生産における環境負荷と資源枯渇の問題を克服するため、本研究は新たな資源循環型アプローチを提案しました。具体的には、廃棄されたMOCと、塩湖の副産物であるビスコフィットを原料として、活性酸化マグネシウム(MgO)を効率的に再生し、これを用いて高品質な再生MOCを製造する革新的な技術ルートの確立を目指しました。特に、廃棄MOCを焼成処理することで、MOCに不可欠な再生活性酸化マグネシウムを回収する手法に焦点を当て、その性能評価を行いました。
研究の結果、廃棄MOCを焼成して得られた再生酸化マグネシウムは、74.1%から81.7%という非常に高い活性含有量を示すことが確認されました。これは、MOC製造に求められる活性度を十分に満たすものであり、再生原料としての高い実用性を示すものです。この再生酸化マグネシウムを用いて製造された再生MOCは、28日後の圧縮強度が69.6 MPaを超える優れた性能を発揮し、建設材料として十分な適用可能性を持つことが実証されました。一方で、塩湖副産物のビスコフィットを直接焼成して得られた活性酸化マグネシウムの活性含有量は14.5%と著しく低く、廃棄MOCを基盤とするリサイクルルートの優位性が明確になりました。
本研究によって確立された廃棄MOCを有効活用するリサイクル技術は、高性能な活性酸化マグネシウムと再生MOCの持続可能な供給を実現し、その実現可能性を具体的に示しました。この革新的なアプローチは、MOCの生産コスト削減に大きく貢献するだけでなく、天然資源の消費抑制と廃棄物削減という二重の環境メリットをもたらします。最終的には、建設産業における資源循環を促進し、低炭素建築の発展に不可欠な基盤を提供することで、持続可能な社会の実現に大きく寄与するものと期待されます。
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Assignment of Si O vibrational modes in the IR spectra of C-S-H phases based on single-crystal polarized IR and Raman spectra of 14 Å tobermorite, jennite, and jaffeite
コンクリートの主成分であるセメントが水と反応して硬化する過程で形成されるカルシウムシリケート水和物(C-S-H)相は、その強度や耐久性といった材料特性を決定する上で極めて重要な役割を担っています。しかし、C-S-H相は多様な構造を持つ複雑な非晶質物質であり、そのミクロな構造や組成がセメント材料の性能にどのように影響するかについては、未だ多くの謎が残されています。特に、振動分光法である赤外(IR)スペクトルは、C-S-H相内のシリコン-酸素(Si-O)結合の状態を非破壊で分析する強力なツールですが、多数の振動モードが重なり合うため、その詳細なスペクトル帰属は長年の課題でした。従来のin situ IR実験では、特定のC-S-Hバンドの帰属に不確実性が伴い、水和プロセスの理解を深める上でのボトルネックとなっていました。
このような背景のもと、本研究は合成された様々なC/S(カルシウム/シリコン)比を持つC-S-H相のIRスペクトルにおけるSi-O伸縮振動モードの明確な帰属を目指しました。そのために、14 Åトベルモライト、ジェナイト、ジャファイトといった結晶性の高いモデル水和物の配向結晶を用いて、単結晶偏光IRおよびラマンスペクトルを測定するという革新的なアプローチを採用しています。この手法により、特定のシリコン原子(ペアを形成するSi、架橋Si)と酸素原子(架橋O、非架橋O)がそれぞれの振動モードにどのように関与しているかを直接的に観察し、詳細に分解することに成功しました。得られた帰属は、29Si核磁気共鳴(NMR)やトリメチルシリル化(TMS)データによって裏付けられ、既存の理論データとも比較検証されました。さらに、これらの合成C-S-H相のIRスペクトルは、普通ポルトランドセメント(OPC)の水和時にin situで生成される水和物のスペクトルとも比較され、両者の類似性が示されました。
本研究によって確立されたSi-O振動モードの精緻な帰属は、セメントの水和プロセスを理解するためのモデルC-S-H相の妥当性を強力に証明するものです。これにより、これまで不確実性が指摘されていた既存のin situ IR実験におけるC-S-Hバンドの帰属に関する問題が解消され、潜在的な誤差源が特定されました。この成果は、C-S-H相の原子レベルでの構造変化と物性との関連性をより深く理解するための基盤を提供し、セメント材料の設計や性能向上に向けた新たな道を開くことが期待されます。将来的には、より高性能で耐久性の高い、そして持続可能性に優れた次世代コンクリート材料の開発に大きく貢献する知見となるでしょう。
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Fe3O4-modified ethyl cellulose microcapsule and its single and dual healing characteristics for cement-based materials
セメント系材料、特にコンクリートは現代社会のインフラを支える基幹材料である一方、経年劣化や外部からの影響により発生するひび割れは、その構造健全性や長期的な寿命を脅かす深刻な問題です。微細なひび割れから水や腐食性物質が侵入し、鉄筋の腐食などを引き起こすため、初期段階での自己治癒メカニズムの導入は、構造物の維持管理コスト削減と安全性向上に不可欠とされています。これまで、エポキシ樹脂(ER)をエチルセルロース(EC)マイクロカプセル(MCs)に封入した技術が、コンクリートの初期微細ひび割れの修復に有効であることが示されてきました。しかし、この既存技術には、マイクロカプセルのシェルが多孔質であるために、封入されたエポキシ樹脂が早期に漏出してしまうという致命的な課題があり、自己治癒効果の持続性や信頼性が制限され、実用化への大きな障壁となっていました。
このような課題を背景に、建設材料分野の最新研究では、エポキシ樹脂@エチルセルロースマイクロカプセル(ER@EC MCs)の構造的完全性を飛躍的に向上させ、その連続的な治癒能力を最適化する画期的な手法が開発されました。本研究チームは、既存のER@EC MCsのシェルに微細なFe3O4(四酸化三鉄)粒子を導入する修飾技術を採用しました。詳細な検証の結果、特に50%のFe3O4粒子で修飾されたER@EC MCsが最も優れた特性を示すことが明らかになりました。この最適化されたマイクロカプセルは、従来のER@EC MCsと比較して、はるかに緻密で堅固なシェル構造を持つことが確認され、これにより封入されたエポキシ樹脂の早期漏出が効果的に抑制されました。また、コア材料の含有率も49%と高水準を維持し、熱安定性も向上しており、より多様な環境条件下での安定的な機能発揮が期待されます。重要な治癒性能の評価では、Fe3O4修飾マイクロカプセルを導入したセメント系材料は、強度回復能力において顕著な向上を示しただけでなく、コンクリートの耐久性を左右する塩化物イオンの拡散に対する抵抗性も大幅に強化されることが実証されました。これらの優れた治癒効率は、単一の損傷条件だけでなく、より複雑な二重損傷条件に対しても有効であり、長期にわたる養生期間後もその効果が持続することが確認されました。これにより、このFe3O4修飾ER@EC MCsは、単一および二重の損傷条件の両方で、その優れた自己治癒能力を証明したことになります。
本研究で開発されたFe3O4修飾エポキシ樹脂@エチルセルロースマイクロカプセルは、セメント系材料の自己治癒技術に画期的な進歩をもたらすものです。その強化された構造的健全性、長期にわたる治癒ポテンシャル、そして単一損傷から二重損傷に至る多様な損傷条件に対する有効性は、コンクリート構造物の耐久性向上と長寿命化に大きく貢献することが期待されます。この革新的な技術は、将来的なインフラ構造物の維持管理コストの削減、安全性の一層の向上、さらには持続可能な社会の実現に向けた、次世代の高性能で長寿命なセメント系材料の開発を加速させる重要な一歩となるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)