著者: Stefanie von Greve-Dierfeld, et al.
論文タイトル: Understanding the carbonation of concrete with supplementary cementitious materials: a critical review by RILEM TC 281-CCC
掲載誌: Materials and Structures
出版年: 2020
巻数: 53
ページ: Article 136
研究の背景と動機
混合セメントは、コンクリート生産に伴う二酸化炭素排出量を削減する最も実現可能な方法です。しかし、クリンカー含有量を下げると、コンクリートの細孔溶液の中和と潜在的な鉄筋腐食のリスクが高まる可能性があります。補足的セメント材料(SCM)を含むコンクリートの炭酸化は、ポルトランドセメント(PC)のみのコンクリートの炭酸化とは異なります。これは、結合材の組成、材齢、養生条件が異なることによる水和物相組成と細孔溶液化学、細孔構造と輸送特性の違いによるものです。
解決できたこと
本レビューでは、SCMの特性、暴露環境、養生条件が炭酸化メカニズム、動力学、SCMを含むセメント系材料の構造変化に及ぼす影響を解明しました。主な知見は以下の通りです:
- SCMを含むシステムでは、ポルトランダイトの含有量が少ないため、主なCO2結合相であるC-S-HやC-A-S-Hの炭酸化がより速く進行します。
- 炭酸化の進行は、コンクリートの飽和度とCO2分圧に依存し、これらは暴露条件(相対湿度、水との接触時間と量、温度条件)に影響されます。
- SCMの種類と置換量によって、炭酸化による細孔構造の変化が異なります。高炉スラグやフライアッシュを多量に使用した場合、炭酸化により細孔構造が粗大化する傾向があります。
研究の貢献
著者らはSCMを含むコンクリートの炭酸化メカニズムを包括的にレビューし、材料特性、環境条件、養生条件が炭酸化に及ぼす複雑な影響を明らかにしました。この知見は、SCMを含む現代のインフラ用コンクリートの耐久性を正確に評価し、改善するための基礎となります。
実世界への応用と影響
この研究の成果は、以下のような実践的な応用が期待できます:
- SCMを含むコンクリートの耐久性設計の最適化
- 炭酸化試験方法の改善と標準化
- 低炭素コンクリートの開発と実用化の促進
これらの応用により、建設産業のCO2排出量削減と構造物の長寿命化の両立が可能になると考えられます。
今後の展望と未解決の課題
今後の研究課題として、以下のようなものが挙げられます:
- Al置換C-S-H相の炭酸化メカニズムの解明
- SCMの種類による炭酸化生成物の違いとその影響の解明
- 加速炭酸化試験と自然暴露条件の相関関係の改善
- 炭酸化が他の劣化メカニズムに与える影響の解明
学術的位置づけと読者へのインパクト
本レビューは、RILEM技術委員会281-CCCのメンバーによって作成された包括的な文献調査です。SCMを含むコンクリートの炭酸化に関する最新の知見を集約し、今後の研究の方向性を示した重要な文献と位置付けられます。読者は、この分野の現状と課題を体系的に理解することができ、自身の研究や実務に活かすことができるでしょう。
本記事は学術論文の要約であり、原著作者および出版社の権利を尊重しています。詳細な情報や正確な引用については、原論文を参照してください。