Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials を中心に、キーワード「Geopolymer」に関連する新着論文 2 本の要点をまとめました。
Design development of lightweight ambient-cured geopolymer sandwich slab panels
持続可能な社会の実現が求められる現代において、建設業界は二酸化炭素(CO2)排出量削減と材料効率の向上が喫緊の課題です。特に、主要な建設材料であるポルトランドセメントコンクリート(PCC)は製造過程で大量のCO2を排出するため、その代替となる低炭素材料の開発が不可欠です。産業副産物由来のジオポリマーコンクリート(GPC)は、PCCよりCO2排出量を大幅に削減でき、次世代の持続可能な建設材料として期待される一方、構造物への実用化には、詳細な材料特性解明と性能評価、設計指針確立が課題でした。
このような背景のもと、本研究は常温硬化ジオポリマーコンクリート(GPC)と発泡ポリスチレン(EPS)コアを組み合わせた、材料効率の高い軽量サンドイッチスラブパネルの開発に着手しました。まず、GPCの基本的な材料特性を室温硬化条件下で評価した結果、GPCは28日以降に圧縮強度比を超えるヤング率の顕著な増加を見せる一方、同等のPCCに比べ引張応答が脆い傾向が判明しました。この脆性に対し、繊維添加により亀裂発生後の抵抗を著しく向上させ、PCCよりも高い早期亀裂開口抵抗を実現しました。さらに、低繊維量(25 kg/m³)の繊維補強GPCスラブパネルを製造しPCCパネルと比較検証した結果、繊維補強GPCパネルはPCCパネルを凌駕する高い耐荷重能力、優れた延性、エネルギー吸収性を示し、亀裂伝播遅延による亀裂発生後の剛性維持と荷重回復能力の向上も実証されました。これらの知見に基づき、様々なスパンに対応する一方向GPCサンドイッチスラブパネルの実用的な設計ガイドラインが開発されました。
本研究の成果は、軽量プレキャスト構造用途における繊維補強GPCサンドイッチパネルの実用化に向けた実現可能性を明確に示しました。低炭素コンクリートであるGPCを活用した材料効率の高い構造スラブの開発は、CO2排出量と材料使用量の削減に直接的に貢献し、持続可能な建設の推進に貢献します。環境負荷を大幅に低減しながら、優れた構造性能と軽量化を両立できるこの新しい材料は、今後のインフラ整備や建築分野に、持続可能性と経済性の両面から多大な恩恵をもたらすでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)
Mechanical properties and comparative microstructural analysis of volcanic ash-based geopolymer concretes incorporating lateritic and ordinary aggregates
現代の建設業界では、従来のセメント製造が大量の二酸化炭素(CO2)を排出するため、環境負荷の低い代替材料への転換が喫緊の課題となっています。こうした中、セメントを使用せず、火山灰などの天然資源や産業副産物をアルカリ活性化することで製造される「ジオポリマーコンクリート」が、次世代の持続可能な建材として世界的に注目を集めています。ジオポリマーコンクリートは、CO2排出量削減に貢献するだけでなく、地域に豊富に存在する資源の有効活用も可能にするため、資源循環型社会の実現に向けた有力な選択肢とされています。本研究は、特に特定の地域で広く産出される「ラテライト礫」に着目し、これをジオポリマーコンクリートの骨材として利用する実現可能性を評価するものです。
本研究の最大の新規性は、地域に偏在するラテライト礫をジオポリマーコンクリートの骨材として初めて本格的に評価し、その特性を詳細に解明した点にあります。研究チームは、火山灰をベースとしたジオポリマーマトリックスに対し、このラテライト礫を組み込んだジオポリマーコンクリートを製造し、その物理的、機械的、そして微細構造的特性を、一般的な骨材を用いたジオポリマーコンクリートと比較しました。その結果、最適なアルカリ溶液と火山灰の比率が、ラテライト礫骨材を用いた場合は0.5、一般的な骨材を用いた場合は0.4と、骨材の種類によって異なることを見出しました。圧縮強度については、一般的な骨材を用いたコンクリートが21.7 MPaを記録したのに対し、ラテライト礫を用いたコンクリートは18.03 MPaとやや低い値を示しました。しかし、最も重要な発見は、走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析(SEM-EDX)による微細構造解析によって明らかになった、骨材とマトリックス間の特異な化学的相互作用です。ラテライト礫を用いたジオポリマーコンクリートでは、マトリックスと骨材の界面付近に、鉄を豊富に含むN-(F)-A-S-Hという新たな相が形成されていることが確認され、これが骨材とマトリックス間に強い化学結合を促進していることが示唆されました。この特異な反応は一般的な骨材では観察されず、ラテライト礫がジオポリマーマトリックスと反応性を持つことを初めて実証した点で、材料科学的に非常に重要な知見を提供しています。
本研究の成果は、持続可能な建設材料の開発において多大な意義を持ちます。特に、ラテライト礫という地域に豊富に存在する資源を骨材として活用することで、遠方からの資材輸送に伴う環境負荷とコストを削減し、地域の経済活性化にも貢献します。ラテライト礫ベースのジオポリマーコンクリートは、強度が一般的な骨材を用いた場合よりやや低いものの、18.03 MPaという強度を達成しており、これは非構造用途や低〜中程度の応力がかかる建設用途、例えば舗装やブロック、内外装材などにおいて十分に実用可能であることを示唆しています。また、火山灰という潜在的な廃棄物を有効利用するジオポリマー技術と組み合わせることで、まさに資源の「価値化(valorisation)」を推進し、環境に優しく地域に根ざした未来の建設を支える、持続可能な社会の実現に向けた具体的な選択肢を提示していると言えるでしょう。
出典: DOIリンク(Cement and Concrete Research,Cement and Concrete Composites,Construction and Building Materials)