著者名:Ratni Nurwidayati, Muhammad Bahrul Ulum, Januarti Jaya Ekaputri, Triwulan, Priyo Suprobo
論文タイトル:Characterization of Fly Ash on Geopolymer Paste
掲載誌名:Materials Science Forum
出版年:2016
巻数:841
ページ範囲:118-125
研究の背景と動機
本論文は、様々なフライアッシュの物理化学的特性がジオポリマーペーストの圧縮強度へ及ぼす影響について考察し、同一のフライアッシュを用いたセメントペーストとの比較を行ったものです。ジオポリマーは、環境負荷の低減が可能な新素材として注目されています。従来のセメントに代わる材料として、ポゾラン性材料であり、シリカ (SiO2) とアルミナ (Al2O3) を多く含むフライアッシュや籾殻灰などがジオポリマーの原料として用いられています。アルカリ溶液をフライアッシュに添加することで、結合材が生成されます。ジオポリマーの物理的、化学的、機械的特性は、フライアッシュなどの原料の特性によって大きく左右されます [1, 2]。しかしながら、フライアッシュの特性は、石炭の種類、燃焼温度、燃焼プロセスによって異なるため [1, 2, 3, 4]、フライアッシュの特性評価が重要となります。
従来、いくつかの研究者によってフライアッシュの特性について調査が行われています。Jaarsveldらは [1]、南アフリカとオーストラリア産フライアッシュ6種類を用いて、ジオポリマーペーストの特性に対する異なるフライアッシュの使用の影響を評価しました。その結果、フライアッシュ粒子のゼータ電位とカルシウム含有量が、ジオポリマーペーストの硬化時間と特性に影響を与えることがわかりました。JiménezとPalomo [5]は、スペイン産フライアッシュの化学的、物理的、鉱物学的、微細構造的特性を調べ、フライアッシュの反応性を評価しました。反応性シリカ (SiO2) の割合は、フライアッシュの化学的特性において最も重要な因子であり、反応性シリカ含有量は40~50%程度が望ましいと結論付けられました。さらに、Somnaらは [6]、45μmの篩に残り量が2%未満のClass Cフライアッシュを用いて、異なるNaOH濃度におけるジオポリマーペーストの圧縮強度に対する影響を評価しました。その結果、粒径が細かいフライアッシュの方が、粗いフライアッシュよりも強度が高いことがわかりました。
インドネシア産フライアッシュの品質評価に関する研究もいくつか行われています [7, 8]。フライアッシュの物理化学的特性は、材料科学の観点から機械的特性と関連付けられて研究されています。フライアッシュのポゾラン活性を測定するために、強度活性指数 (SAI) が用いられています。SAIとは、フライアッシュ置換モルタルの圧縮強度とモルタル対照の圧縮強度の割合をパーセンテージで表したものです。その結果、モルタルの圧縮強度は、フライアッシュの粒径、CaO含有量、可溶性含有量の影響を大きく受けることが明らかになりました。しかしながら、これらの研究は、10~20%のフライアッシュ置換セメントペーストで行われたものでした。そのため、インドネシア産フライアッシュのジオポリマーペーストに対する特性評価が必要となります。本研究では、インドネシア産フライアッシュ6種類を用いて、フライアッシュの特性がジオポリマーペーストの強度へ及ぼす影響を評価しました。上記の研究 [8] と同様に、フライアッシュの特性がジオポリマーペーストの強度へ影響を与えることが期待されます。
解決できたこと
本研究では、フライアッシュの特性である、失火率 (LOI)、比重、細かさ、比表面積、可溶性フライアッシュ含有量が、ジオポリマーペーストの圧縮強度へ及ぼす影響を評価しました。6種類のフライアッシュは、インドネシアの東ジャワにある2つの工場から採取されました。フライアッシュの名称は、その発生源に基づいています。フライアッシュSBはPT. Surya Beton Indonesiaから、SIはPT. Semen Indonesiaから採取されました。アルカリ活性化剤として、Na2O 18%、SiO2 36%、H2O 46%のケイ酸ナトリウム溶液と水酸化ナトリウムが使用されました。水酸化ナトリウムの濃度とケイ酸ナトリウムに対する水酸化ナトリウムの質量比は、それぞれ14Mと1に固定されました。
その結果、ペーストの圧縮強度の向上は、フライアッシュの細かさ、比表面積、可溶性含有量の影響を大きく受けました。フライアッシュの可溶性含有量は、20%のフライアッシュ置換セメントペーストの圧縮強度と比較して、ジオポリマーペーストの圧縮強度へ大きな影響を与えました。
フライアッシュの特性を詳細に分析した結果、次のことが明らかになりました。
- フライアッシュSI2は、他のフライアッシュと比較して、最も性能が高く、圧縮強度が最も高くなっています。
- 失火率 (LOI) が低くなると、比重が高くなると、細かさ (%45μmの篩に残り) が低くなると、比表面積が高くなると、可溶性フライアッシュ含有量が高くなると、ジオポリマーペーストの圧縮強度が向上する傾向が見られました。
- ジオポリマーペーストの圧縮強度は、フライアッシュの物理化学的特性の影響を受けますが、特に細かさ、比表面積、可溶性含有量の影響を大きく受けます。
- 20%のフライアッシュ置換セメントペーストと比較して、ジオポリマーペーストはフライアッシュの物理化学的特性の影響を大きく受けます。これは、ジオポリマーペーストが100%フライアッシュで構成されているため、可溶性フライアッシュがジオポリマーの機械的特性に大きな影響を与えます。
研究の貢献
Ratni Nurwidayatiらは、ジオポリマーペーストの強度向上にフライアッシュの特性が大きく影響することを明らかにしました。特に、フライアッシュの細かさ、比表面積、可溶性含有量が重要であり、これらの因子を最適化することで、ジオポリマーペーストの強度を向上させることが期待できます。
実世界への応用と影響
本研究の結果は、フライアッシュの特性評価を適切に行うことで、高強度で環境負荷の低いジオポリマー材料を開発する上で重要な指針となります。ジオポリマー材料は、コンクリートやモルタルなどの建設材料だけでなく、廃棄物処理や土壌改良など、幅広い分野で応用が期待されます。
今後の展望と未解決の課題
今後の研究では、異なるフライアッシュの組み合わせや、アルカリ活性化剤の種類や濃度を変えて、ジオポリマーペーストの特性をさらに詳しく評価していく必要があります。また、ジオポリマー材料の耐久性や長期安定性に関する研究も重要です。ジオポリマー材料の実用化に向けて、これらの課題を解決していくことが求められます。
学術的位置づけと読者へのインパクト
本研究は、ジオポリマー材料開発におけるフライアッシュの特性評価の重要性を示すものであり、当該分野における学術的な貢献となります。本研究は、ジオポリマー材料に関する研究者や技術者にとって、重要な情報と新たな研究方向性を提供するものであり、読者の専門知識向上に貢献すると期待されます。
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