廃油灰がジオポリマーモルタルの微細構造に及ぼす影響【2018年】

著者名:Vike Itteridi, Saloma, and Imron Fikri Astira

論文タイトル:Microstructure Characterization of Fly Ash-Based Geopolymer Mortar with Substitution of Oil Palm Ash

掲載誌名:AIP Conference Proceedings

出版年:2018

巻数: 2030

ページ範囲: 020103

研究背景と動機

ジオポリマーは、フライアッシュ、メタカオリン、高炉スラグなどに含まれるケイ素およびアルミニウム元素を含む無機材料から重合プロセスを経て生成される材料です。従来のセメント系材料に代わる環境に優しい材料として注目されています。本研究では、持続可能な資源活用と廃棄物削減の観点から、フライアッシュベースのジオポリマーモルタルに油やし殻灰を代替材として使用することの影響を調査しました。ジオポリマーの微細構造と圧縮強度に及ぼす油やし殻灰の影響を評価することで、この新規材料の性能と環境への影響をより深く理解することを目的としました。

解決できたこと

本研究では、油やし殻灰の添加率とNaOH溶液のモル濃度を変化させたジオポリマーモルタルを作製し、その微細構造、圧縮強度、密度などを評価しました。結果として、油やし殻灰の添加は、ジオポリマーモルタルの圧縮強度を低下させることがわかりました。これは、油やし殻灰中のCaO含有量がフライアッシュよりも高く、エトリンガイトの形成が促進されるためと考えられます。エトリンガイトは、体積膨張を引き起こし、モルタルの強度低下につながります。一方、NaOH溶液のモル濃度が高いほど、ジオポリマーの重合反応が促進され、圧縮強度が増加する傾向が見られました。これは、NaOH溶液中のOH-イオンが重合反応を促進するためです。微細構造観察の結果、フライアッシュを100%使用したジオポリマーモルタルは、油やし殻灰を添加したものと比較して、より緻密な構造を示しました。油やし殻灰を添加したモルタルでは、未反応の油やし殻灰粒子が観察され、これが強度低下の要因の一つと考えられます。これらの結果は、油やし殻灰をジオポリマーモルタルの代替材料として使用する場合、その添加率とアルカリ活性化剤の濃度を適切に制御することが重要であることを示唆しています。

研究の貢献

Itteridiらは、廃油灰の有効利用とジオポリマーの性能向上を目指し、フライアッシュベースのジオポリマーモルタルに廃油灰を部分的に代替して作製し、その力学特性と微細構造を調査しました。その結果、廃油灰の添加率が増加するにつれて圧縮強度は低下するものの、NaOH溶液のモル濃度を調整することで強度を制御できる可能性を示しました。

実世界への応用と影響

本研究の成果は、フライアッシュや油やし殻灰などの産業副産物を有効利用した高強度ジオポリマー材料の開発に貢献するものです。特に、油やし殻灰の添加率とアルカリ活性化剤の最適な配合を見出すことで、従来のセメント系材料に匹敵する強度を持つジオポリマーモルタルを製造できる可能性を示しました。これは、建設材料の製造におけるセメントの使用量削減、ひいてはCO2排出量削減に貢献する可能性があります。また、ジオポリマーは、耐火性、耐薬品性、耐酸性など、セメント系材料よりも優れた特性を持つことが知られており、過酷な環境下での使用にも適しています。

今後の展望と未解決の課題(Unknown)

油やし殻灰の最適な利用条件をさらに詳細に調査する必要があります。また、耐久性や長期的な性能については更なる研究が必要です。

学術的位置づけと読者へのインパクト

本研究は、ジオポリマー研究分野において、廃棄物資源の有効利用と材料特性の向上を両立させるための重要な知見を提供するものです。特に、油やし殻灰の添加がジオポリマーモルタルの微細構造と力学特性に及ぼす影響を明らかにしたことは、今後のジオポリマー材料設計において重要な指針となります。また、本研究で得られた成果は、建設材料分野における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する可能性を秘めています。

本記事は学術論文の要約であり、原著作者および出版社の権利を尊重しています。詳細な情報や正確な引用については、原論文を参照してください。

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