高炉スラグ微粉末は、水を加えただけでは室温で反応が進みにくい一方、ポルトランドセメントと混ぜると徐々に反応し、コンクリートの強度や緻密性に寄与します。
この違いを生むのが、高炉スラグの潜在水硬性です。
結論から言えば、高炉スラグ微粉末が反応する流れは次のように整理できます。
- ポルトランドセメントが先に水和する
- 細孔溶液のpHが上昇し、Ca²⁺やOH⁻が供給される
- 高炉スラグのガラス質が溶解する
- 溶け出したCa、Si、Alが再び組み合わさる
- C-A-S-Hを中心とする水和物が生成する
つまり、高炉スラグはセメントから発生する水酸化カルシウムだけで反応するのではありません。アルカリ性の水溶液がスラグのガラス構造を溶かし、CaやSi、Alが水和物として再構成されることが、高炉セメントの反応メカニズムの中心です。[1][2]
この記事では、高炉スラグ微粉末の水和反応を、CH、アルカリ、C-A-S-H、分析結果の読み方に分けて解説します。
高炉セメントの環境性能や実務上の特徴を先に確認したい方は、高炉セメントのCO2削減効果と課題も参考にしてください。
高炉スラグはなぜ「潜在水硬性」を持つのか
高炉スラグ微粉末はガラス質の材料
高炉スラグは、鉄鉱石から鉄を製造するときに発生する溶融物です。この溶融物を水で急冷すると、原子が規則正しく並ぶ前に固まり、結晶ではなくガラス質になります。
この水砕スラグを乾燥、粉砕したものが高炉スラグ微粉末です。
高炉スラグには、主に次の成分が含まれています。
- CaO
- SiO₂
- Al₂O₃
- MgO
これらはセメント水和物の材料になる成分です。しかし、材料中にCaやSiが含まれているだけでは、水を加えた直後から十分に反応するとは限りません。
高炉スラグの成分はガラス構造の中に取り込まれているため、まずガラス構造を溶かし、Ca、Si、Alなどを水溶液中に放出する必要があります。
「反応できるが、そのままでは反応しにくい」
潜在水硬性とは、簡単に言えば、適切な刺激を与えれば水と反応して硬化する性質です。
高炉スラグは水だけに触れた状態でも反応する可能性はありますが、室温では一般に反応が遅く、実用的な速さで硬化させるにはアルカリや硫酸塩などによる活性化が必要です。[7]
ポルトランドセメントとの混合系では、セメントの水和によって生じる高アルカリ環境が、この活性化の役割を担います。
| 材料 | 水との反応性 | 主な反応の始まり方 |
|---|---|---|
| ポルトランドセメント | 水だけで反応しやすい | クリンカ鉱物が水和する |
| 高炉スラグ微粉末 | 水だけでは反応が遅い | アルカリ性環境でガラス質が溶解する |
| フライアッシュ | 一般に水だけでは硬化しにくい | CHなどとポゾラン反応を起こす |
| アルカリ活性スラグ | 活性化剤により反応する | NaOHや水ガラスなどで溶解を促す |
高炉スラグはフライアッシュと同じ混和材として扱われることがありますが、反応の考え方は完全には同じではありません。
フライアッシュは外部から供給されたCaと反応する性格が強いのに対し、高炉スラグは自身も比較的多くのCaを含みます。そのため、高炉スラグの反応は「CHを消費するポゾラン反応」だけでは説明できません。
CHとアルカリは高炉スラグの反応にどう関わるのか

まずポルトランドセメントが反応する
高炉セメントに水を加えると、最初からクリンカと高炉スラグが同じ速さで反応するわけではありません。
初期には、主にエーライトやアルミネート相などのクリンカ鉱物が水和します。これにより、C-S-H、CH、エトリンガイトなどが生成し、細孔溶液中にはNa⁺、K⁺、OH⁻、Ca²⁺などが存在するようになります。
このうち、高炉スラグの反応開始に直接関わるのがOH⁻です。
OH⁻は、高炉スラグのガラス構造を構成するSi-O-Si結合やSi-O-Al結合に作用し、ガラス質からSiやAlを溶け出しやすくします。
CHには二つの役割がある
CHは水酸化カルシウム、またはポルトランダイトと呼ばれる結晶性の水和物です。
高炉スラグの反応におけるCHの主な役割は、次の二つです。
- Ca²⁺を供給する
- 高いpHを維持する
ただし、「CHが高炉スラグの表面を直接溶かす」とだけ説明すると、反応の実態を単純化しすぎます。
ガラス構造の溶解を進めるのは主にOH⁻であり、CHはCaの供給源やpHを保つ役割を持ちます。Na⁺やK⁺そのものよりも、それらと対応して存在するOH⁻の濃度が反応に関係します。
高炉スラグの反応を簡略化すると、次のように表せます。
高炉スラグのガラス相 + H₂O + OH⁻ + Ca²⁺ → C-(A)-S-H + Al・Mgを含む水和物
これは反応物と生成物の関係を示すための簡略式であり、原子数を合わせた化学反応式ではありません。
CHが減っただけでは反応率を判断できない
高炉スラグを混合したセメントでは、普通ポルトランドセメントよりもCH量が少なくなることがあります。[1]
ただし、その理由には二つあります。
- クリンカ量が減ったため、最初からCHの生成量が少ない
- 高炉スラグの反応や他の水和物の生成によってCHが消費された
したがって、TGやXRDでCH量が少なかったとしても、それだけで「高炉スラグがよく反応した」とは判断できません。
CH量を比較するときは、結合材全体の質量だけでなく、クリンカ量で補正した値も確認する必要があります。
C-A-S-Hはどのように生成するのか
C-A-S-HはAlを含むC-S-H
C-A-S-Hは、Calcium Aluminosilicate Hydrateの略です。
セメント化学では、各文字が次の成分を表します。
- C:CaO
- A:Al₂O₃
- S:SiO₂
- H:H₂O
普通ポルトランドセメントの主要な水和物はC-S-Hです。高炉スラグの反応ではAlも多く供給されるため、C-S-Hのシリケート鎖にAlが取り込まれたC-A-S-Hが生成します。
ただし、C-A-S-Hは一定の化学式を持つ単一の結晶ではありません。Ca/Si比、Al/Si比、アルカリ量、養生条件などによって組成が変わる、結晶性の低いゲル状水和物です。
そのため、Alが少量だけ含まれることを示す場合には、C-(A)-S-Hと表記されることもあります。
Alはシリケート鎖の一部に入る
C-S-Hは、SiO₄四面体が連なったシリケート鎖を持ちます。C-A-S-Hでは、一部のSiがAlに置き換わります。
固体NMRを用いた研究では、高炉スラグを含むセメントペーストでAlを含むシリケート構造が確認されています。[3][4]
高炉スラグを混合すると、普通ポルトランドセメント単独の場合と比べて、生成するC-S-H系水和物は次の傾向を示します。
- Ca/Si比が低くなる
- Al/Si比が高くなる
- シリケート鎖が長くなる場合がある
実際の値は、高炉スラグの化学組成、置換率、材齢、硫酸塩量などによって変わります。[1][5]
C-A-S-HのAl置換を詳しく確認したい方は、C-A-S-Hの基礎:AlがC-S-Hに入ると何が起きる?もあわせて読むと理解しやすくなります。
すべてのAlがC-A-S-Hに入るわけではない
高炉スラグから溶け出したAlの行き先は、C-A-S-Hだけではありません。
細孔溶液中の硫酸イオンや炭酸イオン、Ca濃度などに応じて、次の水和物にも取り込まれます。
- エトリンガイト
- モノサルフェートなどのAFm相
- モノカーボネート、ヘミカーボネート
- ハイドロタルサイトに似たMg-Al系水和物
特にMgを含む高炉スラグでは、ハイドロタルサイトに似た相が生成することがあります。[1][2]
つまり、高炉スラグ中のAl量が多ければ、そのすべてがC-A-S-HのAl/Si比を高めるわけではありません。硫酸塩量や石灰石微粉末の有無によって、Alがどの水和物に分配されるかが変わります。[1][6]
普通ポルトランドセメントやAAMとの違い
高炉スラグからC-A-S-Hが生成する材料には、高炉セメントのほかにアルカリ活性材料があります。
どちらも高炉スラグを使いますが、反応を始める方法は異なります。
| 項目 | 普通ポルトランドセメント | ポルトランドセメント+高炉スラグ | アルカリ活性スラグ |
| 主な反応物 | クリンカ鉱物 | クリンカ鉱物と高炉スラグ | 主に高炉スラグ |
| 反応を進めるもの | 水 | クリンカ水和で生じるアルカリ性環境 | NaOH、水ガラスなどの活性化剤 |
| 主なゲル | C-S-H | C-(A)-S-H | C-(A)-S-H、C-(N)-A-S-Hなど |
| CH | 比較的多く生成 | 生成量が減り、反応で消費される場合がある | 少ない、またはほとんど生成しない場合がある |
| Naの影響 | 比較的小さい | 細孔溶液やゲルへの取り込みに関与 | ゲル組成や反応速度に強く関与する |
高炉セメントでは、ポルトランドセメントが反応の出発点になります。一般的な高炉セメントでは、強アルカリ水溶液を外から加える必要はありません。
一方、アルカリ活性材料では、NaOHやケイ酸ナトリウム水溶液などを加え、高炉スラグを直接活性化します。
同じ「C-A-S-H」という名称が使われていても、Ca/Si比、Al/Si比、Naの含有量、水分状態などは同じとは限りません。AAMで得られた結果を、そのまま高炉セメントに当てはめないことが必要です。
AAM側の反応を比較したい場合は、アルカリ活性材料の反応メカニズムと水ガラスの役割で整理しています。
高炉スラグの水和反応と初期強度・長期強度
初期強度が低くなりやすい理由
高炉スラグを多く混合すると、初期強度が低くなる場合があります。
主な理由は次の二つです。
第一に、反応の速いクリンカの割合が減ることです。高炉スラグを混ぜた時点で、初期にC-S-Hを生成するクリンカ量が少なくなります。
第二に、ごく初期の高炉スラグ反応が比較的遅いことです。研究例でも、初期には未反応の高炉スラグ粒子が多く残り、材齢の進行とともに反応層や水和物が増える様子が観察されています。[1]
特に低温環境や湿潤養生が不十分な条件では、反応が遅れやすくなります。
長期的には反応が続く
材齢が進むと、高炉スラグの反応が続き、C-(A)-S-Hなどの水和物が空隙を埋めます。
その結果、次の変化が期待できます。
- 毛細管空隙が減る
- 空隙同士のつながりが少なくなる
- 長期強度が増加する
- 塩化物イオンなどの移動が遅くなる
ただし、「高炉スラグを入れれば長期強度が必ず高くなる」とは限りません。
反応の進み方は、次の条件に左右されます。
| 条件 | 反応への主な影響 |
| 粉末度 | 細かいほど反応面積が増えやすい |
| ガラス化率 | 一般にガラス質が多いほど反応しやすい |
| 化学組成 | Ca、Al、Mg量やガラス構造が反応性に影響する |
| 置換率 | 高すぎると初期に必要なクリンカやアルカリが不足する場合がある |
| 養生温度 | 低温では反応が遅れやすい |
| 湿潤養生 | 水分が不足すると反応が止まりやすい |
| 硫酸塩量 | エトリンガイトやAFm相へのAlの分配に影響する |
| 水結合材比 | 溶解、物質移動、空隙構造に影響する |
高炉スラグの効果を評価するときは、置換率だけでなく、粉末度や化学組成、養生条件も確認する必要があります。
XRD・NMR・TGで高炉スラグの反応をどう見るか
高炉スラグの水和反応は、一つの分析だけでは十分に判断できません。
C-A-S-Hは結晶性が低く、XRDで鋭いピークとして検出しにくいためです。XRD、NMR、TGなどの結果を組み合わせる必要があります。
| 分析方法 | 主に確認できること | 読むときの注意点 |
| XRD | CH、エトリンガイト、AFm相、未反応クリンカ | C-A-S-Hは鋭いピークが出にくい |
| TG-DTA | CH量、結合水量、炭酸塩量 | C-A-S-Hと他の水和物の脱水が重なりやすい |
| ²⁹Si MAS NMR | Siの結合状態、Q¹・Q²・Q²(1Al) | 未反応スラグと水和物の信号が重なる場合がある |
| ²⁷Al MAS NMR | Alの配位状態、Alを含む水和物 | C-A-S-H、AFm、エトリンガイトを分けて考える |
| SEM-EDS | 反応層、局所的なCa/Si比・Al/Si比 | 複数相が混ざった測定点に注意する |
| 等温熱量測定 | 初期の反応速度と発熱 | クリンカ反応とスラグ反応の分離には比較試料が必要 |
XRDでは結晶性水和物を見る
XRDでは、主にCH、エトリンガイト、AFm相、未反応のクリンカ鉱物などを確認します。
高炉スラグの反応によりC-A-S-Hが増えても、新しい鋭いピークが現れるとは限りません。C-A-S-Hは結晶性が低く、幅広い散乱として現れるためです。
したがって、「C-A-S-Hのピークがないから生成していない」と判断するのは適切ではありません。
また、未反応高炉スラグもガラス質であるため、通常のXRDだけで反応率を直接求めるのは困難です。反応率を定量する場合は、内部標準を用いた解析、選択溶解、NMR、画像解析などとの組み合わせが必要になります。
NMRではSiとAlの周辺構造を見る
²⁹Si MAS NMRでは、SiO₄四面体のつながり方をQⁿで表します。
- Q⁰:他のSiO₄四面体とつながっていない状態
- Q¹:一つの四面体とつながる鎖端
- Q²:二つの四面体とつながる鎖中
- Q²(1Al):近くにAlを含む鎖中の構造
高炉スラグの反応が進み、Q¹やQ²、Q²(1Al)の割合が変化すれば、C-(A)-S-Hの生成やシリケート鎖の発達を検討できます。[3][4]
²⁷Al MAS NMRを組み合わせると、AlがC-A-S-Hのシリケート鎖に入っているのか、エトリンガイトやAFm相などに存在するのかを考えやすくなります。
Q種や平均鎖長の基本は、セメント固体NMR入門:²⁹Si MAS NMRでC-S-Hの鎖長を読むで詳しく解説しています。
TGではCH量と結合水量を見る
TG-DTAでは、加熱に伴う質量減少から水和物の量を検討します。
高炉スラグ混合系では、主に次の変化を確認します。
- 低温側:C-(A)-S-H、エトリンガイト、AFm相などの脱水
- 400~500℃付近:CHの脱水酸基
- 高温側:炭酸カルシウムなどの脱炭酸
温度範囲は、試料条件、昇温速度、雰囲気、装置によって変わります。
また、C-A-S-H単独の質量減少を分離して定量するのは容易ではありません。低温側では複数の水和物の脱水が重なるため、XRDやNMRの結果と合わせて解釈します。
分析結果を組み合わせた判断例
例えば、高炉スラグ混合セメントで次の結果が得られたとします。
- XRDでCHが減少した
- TGでもCH量が少なかった
- ²⁹Si NMRでQ²とQ²(1Al)が増加した
- SEMで高炉スラグ粒子の周囲に反応層が見られた
- 長期材齢で空隙率が低下した
この場合、CHの減少だけでなく、Alを含むシリケート鎖の形成や反応層も確認できているため、高炉スラグ反応が進んだ可能性を説明しやすくなります。
一方、CH量だけが減少している場合は、クリンカ量の減少や炭酸化の影響も考える必要があります。
高炉スラグの反応で起こりやすい読み違い
| 読み違い | 適切な考え方 |
| CHが減ったので高炉スラグが反応した | クリンカ量の減少や炭酸化も確認する |
| XRDにC-A-S-Hのピークがない | C-A-S-Hは結晶性が低く、鋭いピークが出にくい |
| Al量が多いほどC-A-S-Hが増える | AlはAFm相、エトリンガイト、ハイドロタルサイトにも分配される |
| 28日強度が高いので反応率も高い | 粉末効果、空隙率、クリンカ反応も強度に影響する |
| AAMのC-A-S-Hと高炉セメントのC-A-S-Hは同じ | 活性化剤やNa量が異なり、組成と構造も変わり得る |
| 高炉スラグはCHだけで反応する | OH⁻によるガラス溶解とCa供給を分けて考える |
研究で高炉スラグの水和反応を調べる手順
卒論や修士研究で高炉スラグの反応を調べる場合は、最初から多くの分析を行うよりも、比較条件を明確にすることが先です。
1. 比較試料を用意する
最低限、次の試料を用意します。
- 普通ポルトランドセメント単独
- 高炉スラグ混合セメント
- 必要に応じて、石英粉などの不活性粉末を混合した試料
不活性粉末の試料があると、高炉スラグの化学反応と、微粉末を加えたことによる充填効果やクリンカ水和の促進を分けて考えやすくなります。
2. 複数の材齢で測定する
高炉スラグの反応は時間とともに変わるため、28日だけでは反応過程を把握できません。
一例として、次の材齢が考えられます。
- 1日
- 3日
- 7日
- 28日
- 91日
初期反応を詳しく見る場合は、数時間から1日までの等温熱量測定も有効です。
3. XRDとTGを基本にする
XRDでは結晶性水和物、TGではCH量や結合水量を確認します。
この二つを組み合わせれば、クリンカ水和と高炉スラグ反応の大まかな変化を追えます。
4. NMRやSEM-EDSでC-A-S-Hを確認する
装置を利用できる場合は、²⁹Si・²⁷Al MAS NMRやSEM-EDSを追加します。
NMRではシリケート鎖とAlの状態、SEM-EDSでは反応層や局所組成を確認できます。
5. 試料調製条件をそろえる
分析前の水和停止や乾燥方法が異なると、水和物や空隙構造が変化する場合があります。
比較試料では、次の条件をそろえます。
- 水和停止方法
- 乾燥時間
- 粉砕方法
- 保管条件
- 測定までの時間
特に高炉スラグ混合系ではCH量が少ない場合があるため、試料調製中の炭酸化にも注意が必要です。
まとめ:高炉スラグの反応は「溶解と再生成」で考える
高炉スラグ微粉末が反応する理由は、ガラス質の中にCa、Si、Alなどの水和物を作る成分が含まれているためです。
ただし、水を加えただけでは反応が遅く、ポルトランドセメントの水和によって生じるアルカリ性環境が必要になります。
反応の流れは、次のようにまとめられます。
- クリンカが水和し、アルカリ性の細孔溶液とCHを生じる
- OH⁻が高炉スラグのガラス構造を溶かす
- Ca、Si、Al、Mgが溶液中に放出される
- C-(A)-S-H、AFm相、エトリンガイト、ハイドロタルサイトに似た相などが生成する
- 水和物が空隙を埋め、長期的に組織が緻密になる
研究を始めるときは、最初に「ガラスの溶解を調べたいのか」「生成した水和物を調べたいのか」「強度との関係を調べたいのか」を決めると、必要な分析を選びやすくなります。
初めの実験では、普通ポルトランドセメントと高炉スラグ混合セメントを同じ水結合材比で作製し、1日、7日、28日のXRD、TG、発熱量を比較する方法が取り組みやすいでしょう。NMRやSEM-EDSを追加できれば、C-A-S-Hの生成まで踏み込んだ説明が可能になります。
よくある質問
高炉スラグ微粉末だけでも水を加えれば固まりますか?
高炉スラグは潜在水硬性を持つため、水との反応性がまったくないわけではありません。ただし、室温で水だけを加えた場合は一般に反応が遅く、実用的な強度発現にはアルカリや硫酸塩などによる活性化が必要です。
C-A-S-HとC-S-Hは別の水和物ですか?
完全に切り離された別物というより、C-S-Hのシリケート構造にAlが取り込まれたものとして考えると理解しやすくなります。Al量が少ない場合には、C-(A)-S-Hと表記されることもあります。
高炉スラグが十分に反応するとCHはなくなりますか?
必ずしもなくなるわけではありません。CH量は、高炉スラグ置換率、クリンカの反応率、高炉スラグの組成、材齢などによって変わります。CHが残っていても高炉スラグが反応している場合があり、反対にCHが少なくても反応率が高いとは限りません。
高炉スラグの置換率は高いほど良いですか?
置換率を高くするとクリンカ量を減らせますが、初期に供給されるアルカリやCaも少なくなります。初期強度、養生温度、粉末度、要求耐久性などを含めて決める必要があり、置換率だけで性能は決まりません。
参考文献
- Whittaker, M. J. et al., “The role of the alumina content of slag, plus the presence of additional sulfate on the hydration and microstructure of Portland cement-slag blends,” Cement and Concrete Research, 2014.
- Elakneswaran, Y. et al., “Hydration study of slag-blended cement based on thermodynamic considerations,” 2016.
- Dong, Y. et al., “Study on the Structure of C-S-H Gels of Slag–Cement Hardened Paste by ²⁹Si, ²⁷Al MAS NMR,” Applied Magnetic Resonance, 2019.
- Pardal, X. et al., “²⁷Al and ²⁹Si Solid-State NMR Characterization of Calcium-Aluminosilicate-Hydrate,” Inorganic Chemistry, 2012.
- Richardson, I. G., “Model structures for C-(A)-S-H(I),” Acta Crystallographica Section B, 2014.
- Kucharczyk, S. et al., “Effect of Slag Reactivity Influenced by Alumina Content on Hydration of Composite Cements,” Journal of Advanced Concrete Technology, 2016.
- Arabi, N. et al., “Formation of C-S-H in calcium hydroxide–blast furnace slag systems,” 2015.

