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セメントの水和度はどう求める?TG・非蒸発水量・未反応量を比較

セメントの水和反応を研究していると、「水和度を測定したいが、何を測ればよいのか分からない」という問題にぶつかります。

論文を調べると、非蒸発水量、化学結合水量、TG-DTAによる質量減少、XRDによる未水和セメント量、積算発熱量、圧縮強度など、さまざまな値が水和の進行を示す指標として使われています。

先に結論を示すと、セメントの水和度を一つの測定値だけから完全に決めることはできません

測定目的に応じて、次のように使い分けるのが基本です。

測定目的主に使う方法
普通ポルトランドセメントの水和進行を比較したい非蒸発水量、TG-DTA
未反応のセメント鉱物を直接調べたいXRD・リートベルト解析
初期の反応速度を連続的に追いたい等温熱量測定
水酸化カルシウムの生成・消費を調べたいTG-DTA、XRD
強度や細孔構造との関係を調べたい圧縮強度、MIPなどを水和度と併用
高炉スラグやフライアッシュを含む系を調べたいTG-DTA、XRD、熱量測定などを組み合わせる

特に注意したいのは、水酸化カルシウム量や圧縮強度を、そのまま水和度と呼ばないことです。

この記事では、セメントの水和度の定義から、非蒸発水量、TG-DTA、XRD、発熱量を使った求め方までを整理します。

セメントの水和度とは何か

水和度とは、最初に存在したセメントのうち、どれだけが水と反応したかを示す割合です。

初期のセメント質量を m0m_0、材齢 ttまでに反応したセメント質量を mreacted(t)m_{\mathrm{reacted}}(t)とすると、水和度 α(t)\alpha(t)は次式で表せます。

α(t)=mreacted(t)m0\alpha(t)=\frac{m_{\mathrm{reacted}}(t)}{m_0}

未反応のセメント質量を munreacted(t)m_{\mathrm{unreacted}}(t)とすれば、次のようにも書けます。α(t)=1munreacted(t)m0\alpha(t)=1-\frac{m_{\mathrm{unreacted}}(t)}{m_0}

したがって、本来の水和度を求めるには、「反応したセメント量」または「残っている未反応セメント量」を把握する必要があります。

ただし、セメント硬化体の内部には、エーライト、ビーライト、アルミネート相、フェライト相が同時に存在し、それぞれ異なる速度で反応します。さらに、生成するC-S-Hの多くは結晶性が低いため、すべての反応量を一つの測定で直接求めるのは簡単ではありません。

そこで実際の研究では、水和反応に伴って増減する値を測定し、それを水和度の指標として利用します。

水和度の評価方法を比較

セメントの水和度を評価するときに使われる主な方法を整理すると、次のようになります。

方法測定するもの水和度の求め方主な注意点
非蒸発水量水和物に保持された水完全水和時の非蒸発水量で割る乾燥条件と基準値に左右される
TG-DTA水和物の脱水に伴う質量減少結合水量を基準値で割る炭酸化、前処理、温度区分の影響を受ける
XRD・リートベルト法未反応のクリンカー鉱物初期量からの減少率を求める非晶質相と内標準の扱いが必要
等温熱量測定水和反応による発熱量積算発熱量を最終発熱量で割る最終発熱量の設定が必要
CH量水酸化カルシウム量水和進行の補助指標として使う混和材反応や炭酸化で減少する
圧縮強度硬化体の力学性能同一配合内で反応進行を推測する水セメント比や空隙量にも左右される
MIP細孔径分布、圧入量水和に伴う組織変化を確認する水和度を直接測っているわけではない

「水和度」という数値を出したい場合は、非蒸発水量、TG-DTA、XRD、熱量測定が主な候補になります。

一方、CH量、圧縮強度、MIPの結果は、水和反応に伴って変化しますが、それ自体が水和度ではありません。

非蒸発水量からセメントの水和度を求める方法

非蒸発水とは何か

セメントペースト中の水は、大きく分けると次のように分類できます。

  • 毛細管空隙などに存在する自由水
  • C-S-Hの表面や微細な空隙に保持される水
  • 水和物の構造に取り込まれた水

非蒸発水は、一定の乾燥条件では取り除かれず、高温で水和物を分解したときに失われる水として測定されます。

ただし、「どこまでを蒸発可能な水とするか」は乾燥方法によって変わります。乾燥条件が厳しすぎれば、水和物の一部から水が失われることもあります。そのため、非蒸発水量は完全に一義的な物性値ではなく、決められた前処理条件に基づく測定値として扱う必要があります。

非蒸発水量の基本的な計算式

試料を105℃で乾燥した後の質量を m105m_{105}​、高温で強熱した後の質量を m1000m_{1000}​ とすると、非蒸発水量は簡略的に次式で求められます。wn=m105m1000m1000w_n=\frac{m_{105}-m_{1000}}{m_{1000}}

未水和セメントや混和材がもともと持っている強熱減量を補正する場合は、次のように計算します。wn=m105m1000m1000LOI0w_n= \frac{m_{105}-m_{1000}}{m_{1000}} -\mathrm{LOI}_0

ここで、LOI0\mathrm{LOI}_0は未水和のセメントまたは結合材の強熱減量です。

実際の計算では、結果を次のどちらで表しているかを明記します。

  • 強熱後の固体1 g当たりの非蒸発水量
  • 配合時のセメント1 g当たりの非蒸発水量

モルタルやコンクリートを測定する場合は、骨材が分母に含まれると値が小さくなるため、セメントペースト部分の質量に換算する必要があります。

非蒸発水量を水和度に換算する

材齢 ttの非蒸発水量を wn(t)w_n(t)、完全に水和したときの非蒸発水量を wn,w_{n,\infty}とすると、水和度は次式で求められます。αwn(t)=wn(t)wn,\alpha_{w_n}(t)=\frac{w_n(t)}{w_{n,\infty}}

普通ポルトランドセメントでは、完全水和時の非蒸発水量として、セメント1 g当たり0.23 gを仮定する例が多く見られます。

したがって、簡略的には次式になります。αwn(t)=wn(t)0.23\alpha_{w_n}(t)=\frac{w_n(t)}{0.23}

ただし、0.23という値はすべてのセメントに共通する定数ではありません。完全水和時に保持される水量は、エーライト、ビーライト、アルミネート相、フェライト相などの構成割合によって変わります。クリンカー組成から非蒸発水量を計算する考え方も示されているため、正確な評価では使用したセメントの組成を考慮する必要があります。

計算例

材齢28日の非蒸発水量が、セメント1 g当たり0.165 gだったとします。

完全水和時の非蒸発水量を0.23 g/gと仮定すると、次のように計算できます。αwn=0.1650.23=0.717\alpha_{w_n} =\frac{0.165}{0.23} =0.717

したがって、水和度は約72%です。

ただし、同じセメントを長期養生した試料から wn,=0.218w_{n,\infty}=0.218が得られている場合は、次のようになります。αwn=0.1650.218=0.757\alpha_{w_n} =\frac{0.165}{0.218} =0.757

この場合の水和度は約76%です。

同じ非蒸発水量でも、分母となる完全水和時の値によって結果が変わります。論文や報告書では、完全水和時の値をどのように設定したかまで記載する必要があります。

TG-DTAでセメントの水和度を求める方法

TGで測っているのは温度ごとの質量減少

TGでは、試料を加熱したときの質量変化を連続的に測定します。

セメント硬化体では、おおむね次のような変化が現れます。

温度域の例主な変化
約50~200℃C-S-H、エトリンガイト、AFm相などの脱水
約200~400℃水和物からの継続的な脱水
約400~500℃水酸化カルシウムの脱水分解
約550~900℃炭酸カルシウムなどの脱炭酸

温度範囲は固定されたものではありません。昇温速度、雰囲気ガス、試料量、水和物の組成などによってピーク位置が変わるため、TG曲線だけでなくDTGまたはDTAのピークも確認します。

TGから結合水量を求める考え方

TGによる結合水量の計算では、各水和物から放出された水の質量減少を合計します。

炭酸化の影響を補正する方法の一例は、次のように表せます。wn=Lhydrates+LCH+0.41(LCO2,tLCO2,0)w_n = L_{\mathrm{hydrates}} + L_{\mathrm{CH}} + 0.41\left( L_{\mathrm{CO_2},t} – L_{\mathrm{CO_2},0} \right)

各記号の意味は次のとおりです。

  • LhydratesL_{\mathrm{hydrates}}:主な水和物の脱水による質量減少
  • LCHL_{\mathrm{CH}}:水酸化カルシウムの脱水による水の質量減少
  • LCO2,tL_{\mathrm{CO_2},t}:水和試料の脱炭酸による質量減少
  • LCO2,0L_{\mathrm{CO_2},0}:未水和セメントの脱炭酸による質量減少
  • 0.41:水と二酸化炭素のモル質量比 18/4418/4418/44

炭酸化によって水酸化カルシウムなどが炭酸塩へ変わると、それまで水和物に含まれていた水が失われます。そこで、増加した二酸化炭素量から、炭酸化前に保持されていた水の量を補正します。

ただし、石灰石微粉末を含むセメントでは、脱炭酸による質量減少がすべて炭酸化生成物に由来するわけではありません。未水和セメントのTG測定や材料構成の確認が必要です。TGによる結合水量は発熱量と対応し、水和進行の評価に利用できる一方、混合セメントではポルトランドセメントの水和と混和材の反応が重なります。

TGで求めた結合水量から水和度を計算する

TGから求めた結合水量を wTG(t)w_{\mathrm{TG}}(t)、完全水和時の結合水量を wTG,w_{\mathrm{TG},\infty}とすると、次式で表せます。αTG(t)=wTG(t)wTG,\alpha_{\mathrm{TG}}(t) = \frac{w_{\mathrm{TG}}(t)} {w_{\mathrm{TG},\infty}}

この方法で得られる値は、厳密には「TGから求めた結合水量に基づく水和度」です。

完全水和時の基準値を実測していない場合は、「水和度」と断定するよりも、次のように書く方が測定内容を正確に伝えられます。

TGから求めた結合水量は、材齢3日から28日にかけて増加した。

または、

完全水和時の結合水量を0.23 g/gと仮定し、結合水量に基づく見掛けの水和度を算出した。

TG測定では前処理条件をそろえる

材齢ごとの水和度を比較する場合は、試料採取後の反応を適切に止めなければなりません。

水和停止が不十分な場合、試料を粉砕してから測定するまでの間にも反応が進みます。反対に、過度な乾燥を行うと、水和物の組成や微細構造が変化する可能性があります。

イソプロパノール置換、アセトン置換、凍結乾燥などには、それぞれ異なる特徴があります。前処理を決める際は、セメント試料の水和停止方法と乾燥方法の使い分けも確認してください。

同じ試料系列を比較する場合は、少なくとも次の条件を統一します。

  1. 試料を採取する位置
  2. 試料の粉砕方法と粒径
  3. 水和停止に使用する溶媒
  4. 溶媒への浸せき時間
  5. 乾燥方法と乾燥時間
  6. TGの試料量
  7. 昇温速度と雰囲気ガス
  8. 質量減少を積算する温度範囲

水和停止や乾燥方法によって、TGで得られる見掛けの水和度が変わることが報告されています。完全に試料を変化させずに水だけを除く方法はないため、異なる研究結果を比較するときも前処理条件の確認が必要です。

CH量と水和度を同じものとして扱えない理由

TG-DTAでは、約400~500℃付近に現れる質量減少から、水酸化カルシウム量を求められます。

水酸化カルシウムの分解反応は次のとおりです。Ca(OH)2CaO+H2O\mathrm{Ca(OH)_2 \rightarrow CaO + H_2O}

水酸化カルシウムのモル質量は74.09、脱離する水のモル質量は18.015です。

したがって、TGで測定した水の質量減少を ΔmCH\Delta m_{\mathrm{CH}}とすると、水酸化カルシウム量は次式で求められます。mCH=ΔmCH×74.0918.015m_{\mathrm{CH}} = \Delta m_{\mathrm{CH}} \times \frac{74.09}{18.015}mCH4.11ΔmCHm_{\mathrm{CH}} \approx 4.11\Delta m_{\mathrm{CH}}

具体的なピークの読み方や計算手順は、TG-DTAで水酸化カルシウム量を算出する方法で詳しく解説しています。

ただし、CH量は水和度そのものではありません。

主な理由は次の4つです。

エーライトとビーライトでCH生成量が異なる

エーライトとビーライトは、反応した質量が同じでも生成するCH量が異なります。

そのため、ビーライトの多いセメントとエーライトの多いセメントをCH量だけで比較すると、水和度を正しく判断できないことがあります。

ポゾラン反応でCHが消費される

フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリンなどを含む系では、セメントの水和によって生成したCHが二次反応で消費されます。

この場合、水和反応と混和材の反応が進んでいるにもかかわらず、CH量が減少することがあります。混合セメントの研究では、CH量の減少を「水和が進んでいない」と解釈してはいけません。

炭酸化でCHが減少する

試料が空気中の二酸化炭素と反応すると、CHは炭酸カルシウムへ変化します。Ca(OH)2+CO2CaCO3+H2O\mathrm{Ca(OH)_2+CO_2\rightarrow CaCO_3+H_2O}

炭酸化した試料では、CH量が少なくても、水和度が低いとは限りません。

石灰石を含む系では炭酸塩の起源を分けにくい

高温側の質量減少から炭酸化量を補正しようとしても、石灰石微粉末や原料由来の炭酸塩が含まれていると、すべてを炭酸化生成物として扱うことはできません。

したがって、CH量は次のように表現するのが適切です。

水酸化カルシウム量を、水和反応およびポゾラン反応の進行を確認する補助指標として評価した。

「CH量から水和度を直接算出した」と書く場合は、セメント組成、反応式、混和材の有無など、成立条件を示す必要があります。

XRDで未反応セメント量から水和度を求める方法

クリンカー鉱物ごとの反応率を求める

XRD・リートベルト解析では、エーライト、ビーライト、アルミネート相、フェライト相などの残存量を定量できます。

鉱物 iii の初期量を mi,0m_{i,0}、材齢 ttにおける残存量を mi,tm_{i,t}とすると、その鉱物の反応率は次式で表せます。αi(t)=1mi,tmi,0\alpha_i(t) = 1-\frac{m_{i,t}}{m_{i,0}}

例えば、初期のエーライト量が65 gで、材齢28日に13 g残っていた場合は、次のようになります。αC3S=11365=0.80\alpha_{\mathrm{C_3S}} = 1-\frac{13}{65} =0.80

エーライトの反応率は80%です。

セメント全体の水和度を求める

主要クリンカー鉱物の初期量と残存量が分かれば、セメント全体の平均的な水和度を次式で計算できます。αcement=i(mi,0mi,t)imi,0\alpha_{\mathrm{cement}} = \frac{ \sum_i \left(m_{i,0}-m_{i,t}\right) }{ \sum_i m_{i,0} }

または、各鉱物の初期質量割合を fi,0f_{i,0}とすれば、次のように表せます。αcement=ifi,0αiifi,0\alpha_{\mathrm{cement}} = \frac{ \sum_i f_{i,0}\alpha_i }{ \sum_i f_{i,0} }

この方法の利点は、エーライトとビーライトの反応率を分けて評価できることです。

XRD・リートベルト解析による水和度は、非蒸発水量のように完全水和時の水量を仮定するのではなく、残っている未反応鉱物を基準に計算する点が特徴です。XRDによる定量結果は、TGや反射電子像による分析と比較しながら検証されています。

内標準を使う理由

通常のリートベルト解析で得られる相組成は、解析対象となった結晶相の合計が100%になるように正規化されます。

しかし、セメント硬化体には結晶性の低いC-S-Hなどが多く含まれます。非晶質相が増えたにもかかわらず結晶相だけを100%に正規化すると、残存クリンカー量を実際より多く見積もる可能性があります。

そこで、コランダムなどの既知量の内標準物質を加え、非晶質相を含めた質量収支を計算します。内標準を加えたXRD・リートベルト解析により、残存クリンカー鉱物、結晶性水和物、非晶質相を定量する方法が用いられています。

XRDの基本的なピークの読み方は、セメントXRD解析入門|エーライト・ビーライトの同定方法で確認できます。

XRDによる水和度の注意点

XRDによる水和度を求める場合は、次の点を確認します。

  • 未水和試料と水和試料で測定条件を統一しているか
  • 内標準を均一に混合できているか
  • 水和停止後に反応や炭酸化が進んでいないか
  • エーライトの多形や固溶組成を適切に設定しているか
  • ピークが重なる相を適切に分離できているか
  • 初期量と残存量の基準質量が同じか

特に、解析結果として表示された重量百分率をそのまま初期値で割るのではなく、内標準を含む質量収支と基準質量を確認する必要があります。

発熱量から水和度を求める方法

セメントの水和反応では熱が発生します。

材齢 ttまでの積算発熱量を Q(t)Q(t)、最終的な積算発熱量を QQ_\inftyとすると、発熱量に基づく水和度は次式で表せます。αQ(t)=Q(t)Q\alpha_Q(t) = \frac{Q(t)}{Q_\infty}

等温熱量測定の利点は、初期水和の反応速度を連続的に測定できることです。

例えば、次のような変化を確認できます。

  • 注水直後の反応
  • 誘導期の長さ
  • 主発熱ピークの開始時刻
  • 混和剤による反応遅延
  • セメント種類による初期反応の違い

一方で、QQ_\inftyをどのように決めるかが課題になります。測定期間内に反応が終わらない場合は、長期測定値、セメント鉱物組成から求めた理論発熱量、または反応モデルによる推定値を使います。

混合セメントでは、ポルトランドセメントの水和熱と混和材の反応熱が重なるため、積算発熱量だけから両者の反応率を分離することは困難です。TGによる結合水量やCH量、XRDによる残存クリンカー量と組み合わせて解釈します。

圧縮強度を水和度として扱ってよいか

圧縮強度は水和の進行に伴って増加するため、反応の進み具合を判断する材料にはなります。

ただし、圧縮強度は次の要因にも大きく左右されます。

  • 水セメント比
  • 空気量
  • 締固め状態
  • 供試体寸法
  • 養生温度
  • 細孔構造
  • 骨材の種類と量
  • 混和材の反応
  • ひび割れや乾燥状態

同じ水和度でも、水セメント比が低く空隙の少ない試料の方が高い強度を示すことがあります。

水和度が反応したセメントの割合を示すのに対し、強度は水和生成物が空間をどの程度埋め、荷重を伝えられる組織を形成したかに関係します。XRDで求めた相組成やゲル空隙比と圧縮強度には関係がありますが、強度だけから水和度を一つに決めることはできません。

したがって、研究では次のように区別します。

  • 水和度:非蒸発水量、TG、XRD、発熱量などから評価
  • 強度発現:圧縮強度や曲げ強度から評価
  • 水和度と強度の関係:両方を測定して検討

MIPの細孔径分布から水和度を求められるか

水和が進むと、セメント粒子間の空間に水和物が生成し、毛細管空隙が減少します。そのため、MIPの累積圧入量や細孔径分布も材齢によって変化します。

ただし、MIPで測定しているのは、加圧された水銀が試料内部へ侵入するときの挙動です。未反応セメント量や反応したセメント量を直接測定しているわけではありません。

また、結果は次の影響を受けます。

  • 水和停止方法
  • 乾燥による収縮や組織変化
  • インクボトル効果
  • 閉鎖された空隙
  • 高圧による組織損傷
  • 接触角の設定

したがって、MIPは「水和度を求める方法」ではなく、水和に伴う細孔構造の変化を調べる方法として使います。

測定原理と結果の読み方は、セメントのMIP(水銀圧入法)入門で詳しく整理しています。

混和材を含む場合は何を水和度と呼ぶのか

高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどを含む場合は、「水和度」の対象を最初に決める必要があります。

少なくとも、次の三つは分けて考えます。

  1. ポルトランドセメントクリンカーの水和度
  2. 混和材の反応率
  3. 結合材全体の反応率

例えば、高炉セメントでTGによる結合水量が増えた場合、次の反応が同時に含まれている可能性があります。

  • エーライトやビーライトの水和
  • 高炉スラグの反応
  • アルミネート系水和物の生成
  • CHの生成と消費
  • 炭酸塩を含む水和物の生成

この値をすべて「セメントの水和度」と表現すると、何の反応を評価したのか分からなくなります。

混和材を含む研究では、次のような書き方が適しています。

TGから求めた結合水量を、結合材全体の反応進行を示す指標として使用した。

XRDで測定した残存エーライト量から、ポルトランドセメントクリンカーの反応率を算出した。

CH量の減少と結合水量の増加を併せて確認し、ポゾラン反応の進行を評価した。

発熱量や結合水量によって混合セメント全体の反応進行を追うことはできますが、クリンカーの水和と混和材反応を分けるには、複数の測定結果を組み合わせる必要があります。

目的別に水和度の測定方法を選ぶ

普通ポルトランドセメントの材齢変化を比較したい

TGによる結合水量または非蒸発水量が使いやすい方法です。

ただし、絶対値を示す場合は完全水和時の基準値を設定し、炭酸化と未水和セメントの強熱減量を補正します。

可能であればXRDも併用し、残存エーライトやビーライトの変化を確認します。

早期水和の促進や遅延を調べたい

等温熱量測定が適しています。

主発熱ピークの時刻、最大発熱速度、積算発熱量を比較すると、促進剤、遅延剤、養生温度などの影響を把握できます。

特定の材齢でTGやXRDを行えば、発熱挙動と生成物・未反応量を対応させられます。

高炉スラグやフライアッシュの反応を調べたい

CH量だけでは判断しません。

少なくとも次の結果を組み合わせます。

  • TGによる結合水量とCH量
  • XRDによる残存クリンカー量
  • 等温熱量測定
  • 必要に応じて混和材の反応率を求める分析

「クリンカー水和度」と「混和材反応率」を分けて示すと、結果を説明しやすくなります。

強度や耐久性との関係を調べたい

水和度に加えて、圧縮強度、空隙率、MIP、吸水率などを測定します。

水和度が同じでも、生成物の種類や空間的な分布が異なれば、強度や物質移動抵抗は変わります。反応量と硬化体性能を分けて評価することが必要です。

水和度を算出する前のチェックリスト

測定方法を決める前に、次の項目を確認してください。

  • 反応率を求めたい対象は、クリンカーか、混和材か、結合材全体か
  • 絶対的な水和度が必要か、材齢間の相対比較でよいか
  • 完全水和時の基準値をどのように設定するか
  • 未水和セメントの強熱減量を測定しているか
  • 炭酸化の影響を補正できるか
  • 水和停止と乾燥条件を統一しているか
  • モルタルやコンクリートでは骨材量を補正しているか
  • XRDでは内標準を使っているか
  • 水和度とCH量、強度、細孔構造を混同していないか
  • 論文や報告書に計算式と基準質量を記載しているか

特に、何を100%としたのか説明できない場合は、水和度という百分率を出さないという判断も必要です。

その場合は、結合水量、積算発熱量、残存エーライト量など、実際に測定した値をそのまま示した方が、結果の意味が明確になります。

FAQ

非蒸発水量と化学結合水量は同じですか?

論文では近い意味で使われることがありますが、厳密には測定条件を確認する必要があります。

非蒸発水量は、一定の乾燥条件で残った水を強熱によって除去し、その質量差から求める操作上の値です。乾燥温度、湿度、真空度、溶媒置換の有無によって、どこまでの水が残るかが変わります。

「化学結合水量」と記載するときも、測定方法と温度範囲を併記した方が正確です。

非蒸発水量を0.23で割れば水和度になりますか?

普通ポルトランドセメントの概算には使えますが、すべての材料に適用できるわけではありません。

0.23 g/gは代表的な仮定値です。セメント鉱物組成、混和材の種類、炭酸化、強熱減量などによって完全水和時の値は変わります。

同じ材料系列の相対比較には利用しやすい一方、異なるセメント同士を厳密に比較する場合は、材料ごとの基準値を検討してください。

TGで計算した水和度が100%を超えるのはなぜですか?

主に次の原因が考えられます。

  • 完全水和時の結合水量を小さく設定している
  • 炭酸化や石灰石由来の質量減少を水として数えている
  • 未水和材料の強熱減量を補正していない
  • 溶媒や自由水が残っている
  • セメント量または結合材量への換算を誤っている
  • 混和材の反応による結合水も含まれている

まずは、TG曲線の温度区分、未水和試料のTG、分母となる結合材質量を確認します。

CH量が少ない試料は水和度も低いですか?

一概にはいえません。

混和材を含まない同一セメントの材齢比較では、CH量の増加が水和進行を示すことがあります。一方、フライアッシュやシリカフュームを含む系では、生成したCHがポゾラン反応によって消費されます。

炭酸化によってCHが減少する場合もあるため、結合水量、残存クリンカー量、炭酸塩量などと併せて判断します。

まとめ|測定値と水和度の定義を分けて考える

セメントの水和度は、本来、最初に存在したセメントのうち水と反応した割合を示す値です。

実際の研究では、次の方法で評価します。

  • 非蒸発水量を完全水和時の値で割る
  • TGによる結合水量を基準値で割る
  • XRDで未反応クリンカー鉱物の減少率を求める
  • 積算発熱量を最終発熱量で割る

CH量、圧縮強度、MIPによる細孔径分布は、水和の進行と関係しますが、水和度そのものではありません。

測定方法を選ぶ前に、まず次の一文を決めてください。

今回求めたい水和度は、何の反応量を、何を100%として表すものか。

この定義が決まれば、必要な測定方法、計算式、補正項目も決めやすくなります。

普通ポルトランドセメントの材齢比較であれば、まずTGによる結合水量とXRDによる残存クリンカー量を検討します。混和材を含む場合は、クリンカーの水和と混和材の反応を分け、複数の測定結果から判断することが必要です。

主な参考文献

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