セメント硬化体に含まれるC-S-Hや、アルカリ活性材料に含まれるC-A-S-H、C-(N)-A-S-H、N-A-S-Hは、結晶性水和物のような明瞭なXRDピークを示さないことがあります。
そのため、研究を始めたばかりの段階では、次のような疑問が生じやすくなります。
- XRDで非晶質相を定量すれば、C-S-H量が分かるのか
- 29Si MAS NMRのQ1とQ2の面積を足せば、C-S-H量になるのか
- TGの結合水量から、ジオポリマーゲルの量を求められるのか
- スラグの反応率とC-A-S-Hの生成量は同じなのか
結論からいうと、C-S-Hやジオポリマーゲルの量を、どの材料にも共通する一つの分析法だけで求めることは困難です。
最初に決めるべきなのは、使用する分析装置ではありません。次のうち、何を知りたいのかを明確にする必要があります。
- 試料中の全非晶質・低結晶質量
- C-S-HやN-A-S-Hなど、特定の生成ゲル量
- スラグやメタカオリンなど、原料の反応率
- Q1、Q2、Q4(mAl)など、特定の原子環境の割合
これらは似ているように見えますが、測定対象、分母、単位が異なります。
本記事では、内部標準・外部標準XRD、PONKCS、固体NMR、TG・DTG、選択溶解、SEM-BSE・EDS、物質収支、熱力学モデリング、総散乱・PDF解析を比較します。
最後まで読むと、自分が扱う材料について、どの分析法を組み合わせればよいかを判断できるようになります。
「非晶質相の定量」には4つの異なる意味がある
セメント分野で「非晶質相を定量した」と書かれていても、論文によって測定している量は同じとは限りません。
| 知りたい量 | 質問の例 | 主な分析法 | 結果の例 |
|---|---|---|---|
| 全非晶質・低結晶質量 | 試料中の非晶質成分は何質量%か | 内部標準・外部標準XRD | 非晶質・未定量相45質量% |
| 特定の生成ゲル量 | C-S-HやN-A-S-Hは何質量%か | PONKCS、NMR、物質収支 | C-S-H 32質量% |
| 原料の反応率 | スラグやメタカオリンが何%反応したか | PONKCS、選択溶解、SEM、NMR | スラグ反応率60% |
| 原子環境の割合 | Q1、Q2、Q4(mAl)はどの程度あるか | 29Si・27Al MAS NMR | 全Si信号中のQ1+Q2が70% |
例えば、同じ試料から次の結果が得られたとします。
- XRD:全非晶質・低結晶質量45質量%
- 29Si NMR:Q1+Q2が全Si信号の70%
- TG:結合水量18質量%
- PONKCS:未反応スラグ12質量%
これらは互いに矛盾しているわけではありません。
XRDの45質量%は、試料全体に対する非晶質・低結晶質成分の割合です。一方、29Si NMRの70%は、観測されたSi信号のうち、Q1とQ2に割り当てられた面積の割合です。
TGの18質量%は、設定した温度範囲で失われた水などの質量です。PONKCSの12質量%は、校正した回折プロファイルに割り当てられた未反応スラグの量を表します。
複数の分析結果を比較するときは、必ず次の3点を確認します。
- 何を測っているか
- 分母は何か
- 質量、体積、元素数、信号面積のどれで表しているか
数値が合わないときは、分析精度を疑う前に、測定対象と分母が同じかを確認する必要があります。
C-S-Hは完全に無秩序なガラスとは限らない

C-S-Hは、一般的な結晶相のような長距離の周期構造を持ちません。一方で、Si–OやCa–Oなどの近距離では一定の原子配列を持ち、トバモライトに似た局所構造が確認されています。
そのため、C-S-Hは研究によって「非晶質」「低結晶質」「ナノ結晶質」などと表現されます。
総散乱・PDF解析では、C-S-Hが近距離では一定の秩序を持つ一方、その秩序が長距離までは続かないことが示されています。C-S-Hを均一なガラスとみなすより、短距離秩序を持つ不規則な相として扱う方が適切な場合があります。
一方、フライアッシュやメタカオリンを用いたジオポリマーでは、未反応原料とN-A-S-Hなどの生成物が、いずれも幅広い散乱を示すことがあります。
本記事では、完全なガラスだけを指すと誤解されないように、原則として「非晶質・低結晶質相」と表記します。
内部標準・外部標準XRD|全非晶質量を求める方法
通常のリートベルト解析では、結晶構造が分かっている相について、回折パターン全体を使って定量します。
セメント硬化体であれば、次のような相が対象になります。
- 未水和のエーライト、ビーライト、アルミネート相、フェライト相
- ポルトランダイト
- エトリンガイト
- AFm相
- 方解石などの炭酸塩
- 石英などの結晶性原料
しかし、通常のリートベルト解析では、解析に含めた結晶相の合計が100質量%になるように規格化されることがあります。
そのままでは、解析対象に含まれていない非晶質・低結晶質相の絶対量は分かりません。
内部標準法
内部標準法では、コランダムなどの結晶性が高い標準物質を、既知の割合で試料に加えます。
リートベルト解析で算出された標準物質の割合と、実際に添加した割合との差から、試料中の結晶相の絶対量を補正します。
その後、試料全体から結晶相量を差し引き、非晶質・低結晶質および未定量成分の合計量を求めます。
外部標準法
外部標準法では、標準物質と試料を別々に測定します。
標準物質の測定から装置定数に相当する値を求め、その値を使って試料中の結晶相を絶対量として算出します。
試料に標準物質を混ぜないため、次のような問題を避けやすい方法です。
- 標準物質の混合むら
- 標準物質との粒径差
- 標準物質と試料の反応
- 標準物質の添加による試料量の減少
内部標準法と外部標準法は、どちらも全非晶質・低結晶質量の評価に使われます。ただし、通常は非晶質相の種類までは識別していません。
XRDの「非晶質量」に含まれるもの
高炉スラグ混合セメントを内部標準法で分析した場合、算出された非晶質・低結晶質量には、例えば次の成分がまとめて含まれます。
- 生成したC-S-H、C-A-S-H
- 未反応の高炉スラグ
- 未反応のフライアッシュガラス
- 未反応のメタカオリン
- シリカゲルやAlに富む低結晶質相
- 結晶構造モデルを設定していない相
したがって、次のような解釈はできません。
XRDで非晶質相が45質量%だったため、C-S-Hが45質量%生成した。
卒論や論文では、次のように書くと定量値の範囲が明確になります。
内部標準XRD・リートベルト解析により、試料中の非晶質・低結晶質および未定量成分の合計量は45質量%と評価された。ただし、この値には生成したC-S-Hと未反応混和材の両方が含まれる可能性がある。
特に混合セメントやAAMでは、全非晶質量から特定のゲル量を直接読み取らないことが必要です。
XRDとSEMによるセメント硬化体の評価を先に確認したい場合は、XRDとSEMで解明するセメント硬化体の微細構造も参考になります。
全非晶質量を比較するときの確認事項
- 内部標準法か外部標準法か
- 標準物質の種類と純度
- 内部標準物質の添加量
- 乾燥質量基準か強熱後質量基準か
- 水和停止方法と乾燥方法
- 粉砕条件と粒径
- 測定範囲と測定時間
- 試料の充填方法
- バックグラウンド関数
- 吸収や選択配向の補正
- 解析に含めた結晶相
粉砕によって結晶性が低下した場合や、同定していない結晶相が残っている場合は、見かけ上の非晶質量が増える可能性があります。
非晶質量の数値だけでなく、試料調製と解析条件も併せて記録します。
PONKCS法|非晶質原料やC-S-Hを個別に定量する
PONKCSは、Partial Or No Known Crystal Structureの略です。
結晶構造が完全には分からない相について、実測された回折プロファイル全体を一つの相モデルとして扱います。
そのモデルを、対象相の含有量が分かっている試料で校正することにより、リートベルト解析の中で個別の相として定量します。
PONKCSで定量できる対象
- 未反応高炉スラグ
- 未反応フライアッシュガラス
- 未反応メタカオリン
- ガラス粉末などの反応率
- C-S-H
- 条件を区別して校正した非晶質・低結晶質相
混合セメントを対象とした研究では、PONKCSと標準法を組み合わせることにより、未反応スラグやその他の非晶質混和材を個別に定量する方法が報告されています。
C-S-HをPONKCSで定量する方法
エーライトの水和系では、PONKCSとG-factor法を組み合わせ、生成するC-S-H量をその場XRDで追跡する方法が報告されています。
さらに2025年には、C3S、ポルトランドセメント、フライアッシュ混合セメントを対象として、PONKCS、TG、物質収支を組み合わせたC-S-H定量法が報告されました。
この研究では、C-S-H量だけでなく、結合水量やCa/Si比と回折プロファイルの関係も検討されています。
PONKCSはハローを自由に分割する方法ではない
PONKCSは、幅広いハローに任意の相名を付ければ、自動的に定量できる方法ではありません。
定量には、次の条件が必要です。
- 対象相の回折プロファイルを適切に取得できる
- 対象相の含有量が分かる校正試料がある
- 校正試料と測定試料の測定条件が対応している
- 対象相の組成や含水状態が大きく異ならない
- 他の非晶質相とのプロファイル重なりを検討している
- 結晶相の定量誤差が十分に抑えられている
C-S-Hでは、次の条件によって回折プロファイルが変化する可能性があります。
- Ca/Si比
- Al置換量
- 含水状態
- 炭酸化の程度
- 水和停止方法
- 乾燥方法
- 材齢
- 共存するイオン
高炉スラグ、フライアッシュ、メタカオリン、C-A-S-Hなどが同時に存在する場合は、複数の幅広い散乱が重なります。
モデルの自由度を増やすと、計算パターンと実測パターンの差は小さくなることがあります。しかし、それぞれのモデルが実際の相に対応しているかは、NMR、TG、SEM-EDS、物質収支などで確かめる必要があります。
定量固体NMR|SiとAlの化学環境から生成物を分ける
固体NMRは、結晶性の有無ではなく、原子核の周囲にある局所的な化学環境を測定します。
そのため、XRDでは幅広い散乱として現れるC-S-H、C-A-S-H、N-A-S-Hや未反応ガラスについても、SiやAlの結合状態から解析できます。
29Si MAS NMRで見分ける主な成分
| 主な信号 | セメント系材料での代表的な解釈 |
|---|---|
| Q0 | 未反応C3S・C2S、低重合度のスラグ構造 |
| Q1 | C-S-H・C-A-S-Hのシリケート鎖端 |
| Q2 | C-S-H・C-A-S-Hのシリケート鎖内部 |
| Q2(1Al) | 隣接する四面体にAlを含むSi環境 |
| Q3 | 枝分かれした構造や高重合度の生成物 |
| Q4(mAl) | N-A-S-H、未反応フライアッシュ、メタカオリンなど |
単純なC3S水和系では、未反応C3Sに由来するQ0と、C-S-Hに由来するQ1・Q2を比較的分けやすいため、Siを基準とした反応率や生成物割合を評価できます。
一方、スラグ混合系では、未反応スラグの幅広い信号がC-S-HやC-A-S-Hの信号と重なります。
フライアッシュやメタカオリン系でも、未反応原料とN-A-S-Hが同じQ4(mAl)領域に現れるため、ピーク分離だけでは一意に決められないことがあります。
Q種や平均鎖長について詳しく知りたい場合は、29Si MAS NMRで鎖長とQ種を定量した研究の解説も参考になります。
27Al MAS NMRで見分ける主な成分
| Alの配位状態 | 主な解釈 |
|---|---|
| 四配位Al | C-A-S-H、N-A-S-H、未反応ガラスなど |
| 五配位Al | ひずんだAl環境、反応中間体、一部の非晶質生成物 |
| 六配位Al | AFt、AFm、ハイドロタルサイト系相など |
四配位AlのすべてがN-A-S-Hに含まれるわけではありません。
未反応メタカオリンやフライアッシュにも四配位Alが含まれるため、原料スペクトルとの比較が必要です。
また、27Alは四極子核であり、化学環境によって信号が大きく広がります。測定条件によっては、非常に幅広いAl信号を十分に観測できない可能性があります。
NMRのピーク面積は質量割合ではない
29Si NMRでQ1+Q2が70%だった場合、原則として次の意味になります。
観測され、適切に補正された全29Si信号面積のうち、Q1とQ2に割り当てられた割合が70%である。
これは、試料全体の70質量%がC-S-Hであるという意味ではありません。
NMRの信号面積を相の質量割合へ変換するには、次の情報が必要です。
- 試料全体のSi量またはAl量
- 各相のSi・Al含有量
- C-S-HやN-A-S-Hの化学組成
- 未反応原料と生成物の信号分離
- 観測されていないSi・Al成分の有無
- Ca、Na、Mg、水など、Si・Al以外の構成成分
同じSi量を含む相であっても、Caや水を多く含む相ほど、Si信号面積に対する相の質量は大きくなります。
NMRを定量測定に使う条件
- 直接励起法を基本とする
- 十分に長い繰返し時間を設定する
- 各信号の縦緩和時間を確認する
- 回転速度やパルス条件を揃える
- 同じピーク形状と分離条件で比較する
- 交差分極法の面積を単純な定量値として扱わない
- 27Alでは四極子広がりを考慮する
- 原料と生成物の信号重なりを検討する
29Siの緩和時間は、エーライト、ビーライト、水和生成物などで異なる場合があります。
繰返し時間が短すぎると、緩和時間の長い成分の信号が相対的に小さくなり、面積比に偏りが生じます。
交差分極法は、SiやAlの近くにあるHとの関係に応じて信号を強調する方法です。感度向上や生成物の識別には有効ですが、すべてのSiやAlを同じ割合で観測する方法ではありません。
NMRと選択溶解を組み合わせる方法
未反応スラグとC-A-S-Hの29Si信号が重なる場合、選択溶解によって一部の成分を取り除いてからNMRを測定する方法があります。
水和高炉スラグセメントを対象とした研究では、29Si MAS NMRと選択溶解を組み合わせ、未反応スラグと水和物の評価が行われています。
アルカリ活性スラグ・フライアッシュ系でも、選択溶解前後の29Si・27Al MAS NMRを比較し、未反応原料と生成物の分離や反応率評価に利用した研究があります。
ただし、選択溶解によって目的成分だけを完全に分離できるとは限りません。
- 未反応原料の一部が溶ける
- 生成ゲルの一部が残る
- ハイドロタルサイト系相が残渣に混入する
- 微粒子がろ過時に失われる
- 溶解中に二次生成物が生じる
- 原料組成や材齢によって選択性が変わる
残渣率だけで反応率を決めるのではなく、残渣のXRD、NMR、SEM-EDS、化学組成も確認する必要があります。
TG・DTG|結合水量からゲル量を推定する
TGでは、加熱に伴う試料の質量変化を測定します。
セメント硬化体では、主に次の情報を得られます。
- 設定した温度範囲における脱水量
- 結合水量
- ポルトランダイト量
- 炭酸塩量
- 水和停止・乾燥状態の違い
- 材齢による水和進行
ただし、TGはC-S-HやN-A-S-Hを、単独の明瞭なピークとして直接定量する方法ではありません。
低温側では、次のような水の脱離が重なります。
- C-S-H、C-A-S-Hの脱水
- エトリンガイトの脱水
- AFm相の脱水
- N-A-S-H、C-(N)-A-S-Hの脱水
- ハイドロタルサイト系相の脱水
- 吸着水や層間水の脱離
C-S-H、AFt、AFmなどは脱水温度域が重なるため、DTG曲線の一つの谷を区切るだけで、各相の量を正確に分けることは困難です。
TGをゲル定量に利用する考え方
TGは、ゲル量を単独で決めるというより、物質収支の制約条件として利用します。
- 試料全体の結合水量を求める
- ポルトランダイトの脱水量を分ける
- 炭酸塩の脱炭酸量を補正する
- XRDで定量した結晶性水和物の水量を見積もる
- 残った水をC-S-Hや非晶質ゲルに割り当てる
- 仮定したH2O/Si比やゲル組成からゲル量を計算する
この方法で得られるゲル量は、設定したゲルの組成と含水量に依存します。
特にAAMでは、C-(N)-A-S-H、N-A-S-H、ハイドロタルサイト系相、炭酸塩、ゼオライト系相、活性化剤由来成分などの脱水や分解が重なります。
TGだけで各ゲルを分離するのではなく、XRD、NMR、SEM-EDSと組み合わせます。
CHの具体的なTG-DTA定量については、TG-DTAで水酸化カルシウム量を算出する方法で計算手順を確認できます。
「結合水」の定義を明記する
結合水や非蒸発水は、研究によって定義が異なる場合があります。
- 質量減少を積算する温度範囲
- 測定前の乾燥温度
- 層間水を含めるか
- 吸着水を含めるか
- 炭酸塩の補正方法
- 初期試料質量か強熱後質量を分母にするか
「結合水量18質量%」とだけ書くのではなく、温度範囲、乾燥条件、補正方法、質量基準を併記します。
選択溶解法|生成物ではなく未反応原料を測る
選択溶解法は、特定の溶媒や酸・アルカリ溶液を用いて、一部の相を優先的に溶かす方法です。
高炉スラグやフライアッシュを含む系では、水和生成物やセメント成分を溶解し、未反応原料を残渣として回収する方法が用いられます。
初期の原料量をm0、材齢tにおける未反応原料量をmtとすると、単純化した反応率α(t)は次のように表せます。
α(t) = 1 − mt m0
百分率で表す場合は、次のようになります。
α(t) [%] = (1 − mt m0 ) × 100
ここで、各記号は次の量を表します。
- m0:反応前に含まれていた対象原料の量
- mt:材齢tで残存している対象原料の量
- α(t):材齢tにおける反応率
ただし、m0とmtは、同じ質量基準に換算する必要があります。
水和後の試料には結合水や炭酸化生成物が含まれるため、単純に残渣質量を初期添加量で割るだけでは、反応率を正しく求められないことがあります。
必要に応じて、次の補正を行います。
- 強熱減量による無水物基準への換算
- 内部標準物質による質量基準の補正
- 結合水量の補正
- 炭酸化による質量増加の補正
- 溶解操作による回収率の補正
選択溶解法で分かること
- スラグの反応率
- フライアッシュの反応率
- メタカオリンなどの残存量
- 未反応原料を除いた生成物のNMRスペクトル
- 原料と生成物の元素収支
選択溶解法だけでは分からないこと
スラグ反応率が60%であっても、反応したスラグの全量がC-A-S-Hになったとは限りません。
反応したCa、Si、Al、Mgなどは、次の相や領域に分配されます。
- C-A-S-H、C-(N)-A-S-H
- ハイドロタルサイト系相
- AFm相
- ゼオライト系相
- 炭酸塩
- 細孔溶液
したがって、次の二つは分けて考えます。
- 原料反応率:原料がどれだけ減少したか
- 生成ゲル量:特定の生成物がどれだけ形成されたか
選択溶解法は、生成したゲルの直接定量法というより、未反応原料量を求め、他の測定結果を補う方法です。
SEM-BSE・EDS画像解析|未反応粒子と生成領域を空間的に測る
SEMの反射電子像では、観察領域の平均原子番号などの違いが、明暗として現れます。
セメント系材料では、BSE像とEDS元素マッピングを組み合わせることにより、次の領域を区分できる場合があります。
- 未反応セメント粒子
- 未反応スラグ粒子
- 未反応フライアッシュ粒子
- 水和生成物
- 反応リム
- 空隙
- 骨材やフィラー
SEM画像解析で得られる情報
- 未反応粒子の面積率
- 原料粒子の反応率
- 反応リムの厚さ
- ゲル領域のCa/Si、Al/Si、Na/Si
- 空隙を含む各領域の面積率
- 粒子ごとの反応状態
- 生成物の空間分布
XRDやNMRでは、試料全体を平均した情報が得られます。
一方、SEM-EDSでは「どの粒子の周囲に、どのような組成の生成物があるか」を観察できます。
面積率を体積率として扱う条件
代表性のある試料について、無作為な断面を十分な数だけ観察できれば、二次元断面の面積率から三次元的な体積率を推定できます。
- 観察断面に偏りがない
- 十分な視野数を確保している
- 粒径分布を反映した倍率を選んでいる
- 粒子の向きや形状による偏りを検討している
- 視野選択を観察者の判断だけで決めていない
体積率を質量率に変換する式
相iの体積割合をVi、密度をρiとすると、質量割合wiは次のように表せます。
wi = Viρi ∑j=1n Vjρj
ここで、各記号は次の量を表します。
- wi:相iの質量割合
- Vi:相iの体積割合
- ρi:相iの密度
- n:区分した相の数
C-S-HやAAMゲルの密度は、含水状態や組成によって変化します。そのため、密度の設定値が、算出される質量割合に影響します。
SEM画像解析で面積率を求められても、それをそのまま質量%として扱うことはできません。
SEM画像解析の注意点
- 観察視野数と視野面積
- 観察倍率
- 粗大粒子と微粒子の偏り
- 研磨面の代表性
- 樹脂含浸による影響
- 乾燥収縮によるひび割れ
- 輝度が近い相の誤分類
- 反応リムと周囲のゲルの境界
- EDS分類に用いる元素比の範囲
- 微粒子の検出限界
SEM-EDSは、局所的な組成や分布を調べる方法として優れています。
一方、C-A-S-HとN-A-S-Hがナノスケールで混在する場合は、画像上に明確な相境界を設定できないことがあります。
物質収支|複数の分析結果からゲル量を求める
物質収支では、原料や活性化剤に含まれていた元素が、反応後にどの相へ移動したかを計算します。
例えば、各成分のSi量を物質量で整理する場合、ゲルに含まれるSi量は、概念的には次のように表せます。
nSi,gel = nSi,total − nSi,unreacted − nSi,crystalline − nSi,pore
ここで、各記号は次の量を表します。
- nSi,gel:ゲル中のSi量
- nSi,total:原料と活性化剤から供給された全Si量
- nSi,unreacted:未反応原料中のSi量
- nSi,crystalline:結晶相中のSi量
- nSi,pore:細孔溶液中のSi量
同様の収支を、Ca、Al、Na、Mg、水についても計算します。
その上で、SEM-EDSやNMRから得たゲル組成と組み合わせ、特定ゲルの量を推定します。
物質収支に利用する測定値
- XRF・ICPなどによる原料組成
- XRDによる結晶相量
- PONKCSによる未反応原料量
- 選択溶解による原料反応率
- TGによる結合水量、CH量、炭酸塩量
- NMRによるSi・Alの化学環境
- SEM-EDSによるゲル組成
- 細孔溶液中の元素濃度
物質収支の長所は、一つの分析装置では直接求めにくいゲル量を、複数の測定値から絞り込めることです。
C-A-S-H量を求める考え方
- 初期スラグ量と組成を求める
- PONKCSや選択溶解で未反応スラグ量を求める
- 反応したスラグから供給されたCa、Si、Al、Mg量を計算する
- XRDでAFm相やハイドロタルサイト系相などの量を求める
- 各結晶相へ入った元素量を差し引く
- 細孔溶液へ残った元素量を差し引く
- 残ったCa、Si、AlをC-A-S-Hに割り当てる
- EDSやNMRで得たCa/Si、Al/Siを使ってゲル量を計算する
- TGの結合水量と整合するか確認する
この方法では、C-A-S-Hの組成や含水量の設定が結果に影響します。
C-A-S-HのAl置換やCa/Siとの関係を詳しく確認したい場合は、C-A-S-Hの基礎とAl置換をNMRで整理した記事も参考になります。
物質収支の限界
- C-S-HのCa/Si比
- C-A-S-HへのAl置換量
- N-A-S-HのSi/Al比
- ゲルのH2O/Si比
- 細孔溶液中の元素量
- 炭酸化生成物の量
- 未同定相への元素配分
- 分析誤差の扱い
計算結果だけを示すのではなく、使用した組成、密度、含水量、元素配分の仮定を記載します。
熱力学モデリング|相組成を計算する方法
熱力学モデリングでは、試料全体の化学組成、反応率、温度などを入力し、平衡または準安定平衡における相組成を計算します。
アルカリ活性スラグを対象とした計算では、C-(N)-A-S-HやMg-Al系層状複水酸化物などを含む相組成が検討されています。
原料や活性化剤の組成によって、AFm相、ストラトリンガイト、ゼオライト系相などの安定性が変化する場合もあります。
熱力学モデリングは、次の検討に向いています。
- 生成する可能性がある相の候補
- 原料組成による相組成の変化
- アルカリ量や可溶性Si量の影響
- Mg、Al、炭酸塩の分配
- 細孔溶液組成
- 実測値と元素収支の整合性
ただし、熱力学モデリングは、測定装置による直接定量ではありません。
結果は、次の条件に依存します。
- 使用する熱力学データベース
- C-S-HやC-(N)-A-S-Hの固溶体モデル
- 原料反応率の入力値
- 平衡状態に達しているという仮定
- 生成を許可する相の選択
- 非晶質ゲルの組成モデル
- 温度や液固比
計算結果を実測値の代わりにするのではなく、XRD、NMR、TG、EDSなどの測定結果を整合させる方法として使います。
総散乱・PDF解析|局所構造の評価に強い方法
通常のXRDでは、主に結晶構造によるブラッグピークを解析します。
総散乱・PDF解析では、ブラッグ散乱だけでなく散漫散乱も含めて測定し、原子間距離の分布を実空間で解析します。
C-S-H、N-A-S-H、非晶質混和材では、次の情報を得られます。
- Si–O、Ca–O、Si–Siなどの原子間距離
- トバモライト型構造との類似性
- 構造秩序が続く距離
- 反応前後の局所構造変化
- 結晶相と非晶質相の構造モデル
- 差分PDFによる生成相の抽出
PDF解析は、長距離の周期構造を持たない材料でも、原子間距離と短距離秩序を評価できる点が強みです。
PDF解析でゲルの質量を求められるか
構造モデルを用いて複数相のPDFを解析すれば、相割合や反応率を推定できる場合があります。
ただし、一般的な実験室分析として、PDF解析だけからモデルに依存せず「C-S-Hが35質量%」と求める方法が広く確立しているわけではありません。
結果は、次の条件に影響されます。
- 採用する構造モデル
- ナノ粒子の大きさ
- 構造欠陥
- 複数相の原子間距離の重なり
- 水や細孔溶液の散乱
- 測定可能な最大散乱ベクトル
- 差分処理に用いる基準試料
- 各モデルの尺度因子と相量の関係
PDF解析は、局所構造や秩序の長さの評価には強い一方、絶対的な相質量の定量ではモデルの妥当性確認が必要な方法と整理できます。
FTIR・ラマン分光はゲルの定量に使えるか
FTIRやラマン分光では、Si–O、Si–O–Al、CO3、SO4、O–Hなどの振動を測定します。
C-S-HやAAMゲルについては、次の変化を追う用途に向いています。
- Si–Oバンドの移動
- シリケートやアルミノシリケートの重合
- C-S-Hの脱Caとシリカゲル化
- N-A-S-H形成に伴う主バンドの変化
- 炭酸塩や硫酸塩の生成
- 含水状態の変化
ただし、ピーク面積や高さは、相の質量以外にも次の影響を受けます。
- 吸収係数やラマン散乱断面積
- 粒径
- 試料厚さ
- ATR結晶との接触状態
- レーザー出力
- 蛍光
- ベースライン処理
- 含水状態
- 他の結合とのピーク重なり
標準試料を用いて検量線を作成すれば、特定の測定条件における相対定量や半定量は可能です。
しかし、一般的なセメント硬化体について、Si–Oピークの面積だけからC-S-HやN-A-S-Hの質量を直接求めることは困難です。
分析法ごとに分かる量を比較する
| 分析法 | 主に得られる量 | 得意なこと | 単独では判断しにくいこと |
|---|---|---|---|
| 内部標準・外部標準XRD | 全非晶質・未定量相量 | 結晶相と全非晶質量の比較 | C-S-Hと未反応SCMの分離 |
| PONKCS | 個別の非晶質・低結晶質相量 | 未反応SCMやC-S-Hの相別定量 | 校正できない未知ゲルの定量 |
| 29Si・27Al NMR | Si・Alの化学環境割合 | Q種、Al配位、原料と生成物の識別 | 信号面積から質量への直接換算 |
| TG・DTG | 結合水、CH、炭酸塩 | 水分収支、XRD結果の検証 | 脱水域が重なるゲルの相別定量 |
| 選択溶解 | 未反応原料量、反応率 | スラグやフライアッシュの反応率 | 生成したゲルの種類と量 |
| SEM-BSE・EDS | 面積率、局所組成、空間分布 | 未反応粒子や反応リムの評価 | ナノスケールで混在するゲルの分離 |
| 物質収支 | 元素から推定したゲル量 | 複数分析値の統合 | 仮定に依存しない直接定量 |
| 熱力学モデリング | 計算上の相組成 | 生成相候補と元素分配 | 実測による直接的な相量 |
| 総散乱・PDF | 原子間距離、短距離秩序 | 非晶質・ナノ結晶質相の構造 | 一般的な絶対質量定量 |
| FTIR・ラマン | 結合状態、構造変化 | 相同定の補助、反応の相対比較 | 校正なしのゲル質量定量 |
材料別に見る推奨手法の組合せ
OPC・C3S系でC-S-H量を求めたい場合
C3Sや通常のポルトランドセメントは、スラグ・フライアッシュ系よりも原料と生成物の種類が比較的少ないため、C-S-H定量に取り組みやすい系です。
- XRD・リートベルト解析で未水和鉱物と結晶性水和物を定量する
- PONKCSでC-S-Hを定量する
- TGで結合水量とCH量を求める
- 29Si NMRでQ0とQ1・Q2の割合を求める
- Ca、Si、水分の収支を確認する
PONKCSで得たC-S-H量について、TGの結合水量や29Si NMRの反応率と整合しているかを確認します。
スラグ混合セメントでC-A-S-H量を求めたい場合
スラグ混合セメントでは、全非晶質量に少なくとも次の二つが含まれます。
- 未反応スラグ
- 生成したC-S-H、C-A-S-H
この二つを分けることが最初の課題です。
- PONKCSまたはSEM画像解析で未反応スラグ量を求める
- XRDで結晶相量を求める
- 29Si NMRでスラグとC-A-S-Hの信号を分離する
- 27Al NMRでAlの配位と分配を調べる
- SEM-EDSでゲルのCa/Si、Al/Siを測定する
- TGで結合水量を測定する
- Ca、Si、Al、Mgの物質収支を作る
ここでは、スラグ反応率とC-A-S-H量を別々に求めることが必要です。
例えば、スラグ反応率が60%でも、反応したMgがハイドロタルサイト系相に入り、Alの一部がAFm相へ移動すれば、反応したスラグ全量をC-A-S-Hとして扱うことはできません。
スラグ系AAMでC-(N)-A-S-H量を求めたい場合
スラグ系AAMでは、C-(N)-A-S-Hのほかに、ハイドロタルサイト系相、AFm相、炭酸塩、ゼオライト系相などが生成する可能性があります。
- PONKCS、SEMまたは選択溶解で未反応スラグ量を求める
- 29Si NMRでスラグと生成ゲルのQ種を分離する
- 27Al NMRで四配位・六配位Alの分配を調べる
- SEM-EDSでCa/Si、Al/Si、Na/Siを測定する
- TGで結合水と炭酸塩を確認する
- XRDで結晶相を定量する
- 熱力学計算または元素収支で相量を整合させる
スラグ系AAMでは、アルカリ活性化剤から加えたSiやNaもゲルに取り込まれます。
原料のスラグだけでなく、活性化剤由来の元素量も物質収支に含める必要があります。
メタカオリン・フライアッシュ系でN-A-S-H量を求めたい場合
低Caのメタカオリン・フライアッシュ系では、29Si・27Al MAS NMRが中心になります。
- 通常XRDで石英、ムライト、ゼオライトなどの結晶相を定量する
- 標準法XRDで全非晶質・未定量相量を求める
- PONKCS、選択溶解またはNMRで未反応原料量を求める
- 29Si NMRでQ4(mAl)の分布を解析する
- 27Al NMRで反応前後のAl配位を比較する
- SEM-EDSでSi/Al、Na/Alを測定する
- Si、Al、Na、水の収支からN-A-S-H量を推定する
この系では、未反応フライアッシュやメタカオリンとN-A-S-Hが、同じQ4(mAl)領域に現れやすくなります。
そのため、NMRのピーク分離だけで反応率やN-A-S-H量を決めるのは避けた方が安全です。
メタカオリンとスラグを併用したAAMでは、N-A-S-HとC-A-S-Hが完全に分離した二相として存在するとは限りません。
Caを含むアルミノシリケートゲルや、組成が連続的に変化する不均一な生成物として解釈する必要がある場合もあります。
卒論・修論で分析計画を立てる手順
1.知りたい量を一文で決める
曖昧な例
非晶質相を定量する。
具体的な例
28日材齢の高炉スラグ混合セメントについて、未反応スラグ量と生成したC-A-S-H量を、乾燥後の固体質量基準で求める。
対象相、材齢、分母まで決めることで、必要な分析法が見えやすくなります。
2.分母を決める
- 水和停止・乾燥後の試料質量
- 強熱後の固体質量
- 初期結合材質量
- 全Si量
- 全Al量
- 観測されたNMR信号面積
- 空隙を除いた固相体積
異なる分母の数値を同じ表で比較する場合は、列名や注記で明示します。
3.全非晶質量と特定ゲル量を区別する
内部標準XRDで全非晶質量を測定するだけでは、未反応原料と生成ゲルを分けられないことがあります。
混和材を含む系では、少なくとも次のいずれかを追加します。
- PONKCS
- 選択溶解
- SEM-BSE・EDS画像解析
- 原料スペクトルを用いたNMR分離
4.原料反応率を求める
生成ゲル量を求める前に、未反応原料がどの程度残っているかを測ります。
未反応原料量が分からないまま全非晶質量をゲルに割り当てると、スラグやフライアッシュの残存量をゲル量として数えてしまう可能性があります。
5.ゲル組成を測る
- SEM-EDS:Ca/Si、Al/Si、Na/Si
- 29Si NMR:Q種とAl置換
- 27Al NMR:Alの配位と分配
- XRF・ICP:試料全体の元素量
一つのEDS測定点だけで代表組成を決めず、複数点または元素マッピングから分布を確認します。
6.水分と炭酸化を確認する
- 水和停止方法
- 乾燥条件
- TGの結合水量
- 炭酸塩量
- 保管中の炭酸化
- 測定までの時間
乾燥試料と湿潤試料で得られたゲル量を比較するときは、含水量の基準を揃えます。
7.二つ以上の方法で確かめる
- PONKCSのC-S-H量とTGの結合水量
- PONKCSの未反応スラグ量とSEM画像解析
- NMRの反応率と選択溶解の残渣量
- 物質収支と熱力学計算
- XRD相組成とSEM-EDSの元素分布
数値が一致しない場合も、すぐにどちらかを誤りと決めるのではなく、測定対象と分母が同じかを確認します。
結果を論文・卒論に書くときの表現例
全非晶質量を測定した場合
内部標準XRD・リートベルト解析により、非晶質・低結晶質および未定量成分の合計量を算出した。本値には、生成したC-S-Hと未反応高炉スラグの双方が含まれる可能性があり、C-S-H単独の含有量を示すものではない。
PONKCSでC-S-Hを定量した場合
対象相の含有量が既知の校正試料から作成した回折プロファイルを用い、PONKCS法によりC-S-H量を定量した。校正試料と測定試料では、測定条件および乾燥条件を統一した。
NMRでQ種を定量した場合
29Si MAS NMRスペクトルを直接励起法で測定し、各成分が十分に緩和する繰返し時間を設定した上でピーク分離を行った。得られたQ1、Q2およびQ2(1Al)の面積割合は、観測された全29Si信号に対する割合であり、試料全体に対する水和物の質量割合ではない。
選択溶解で反応率を求めた場合
選択溶解後の残渣量から未反応スラグ量を求め、初期添加量との比較によりスラグ反応率を算出した。なお、本反応率はスラグの減少量を表すものであり、C-A-S-H生成量と同一ではない。
SEM画像解析を使った場合
BSE像およびEDS元素マッピングから未反応スラグ粒子を区分し、複数の無作為視野における面積率を算出した。得られた面積率は体積率の推定値として扱い、質量割合への換算には別途設定した相密度を用いた。
物質収支でゲル量を推定した場合
XRDで求めた結晶相量、PONKCSで求めた未反応原料量、TGによる結合水量およびSEM-EDSによるゲル組成を用いて元素収支を計算し、非晶質ゲル量を推定した。算出値は、仮定したゲル組成と含水量に依存する。
まとめ|測定対象と分母を決めてから定量する
セメント系材料の非晶質・低結晶質相を評価するときは、最初に何を定量したいのかを決める必要があります。
- 全非晶質・未定量相量:内部標準・外部標準XRD
- 個別の非晶質・低結晶質相量:PONKCS
- Si・Alの化学環境:29Si・27Al MAS NMR
- 未反応原料量と反応率:PONKCS、選択溶解、SEM画像解析
- 結合水量:TG・DTG
- ゲルの局所組成:SEM-EDS、NMR
- 局所構造と秩序の長さ:総散乱・PDF解析
- 複数の測定値から求める相量:元素収支、熱力学モデリング
特に注意したいのは、次の三つを同じ量として扱わないことです。
- 全非晶質量
- 原料反応率
- 生成ゲル量
高炉スラグの反応率が分かっても、反応した全量がC-A-S-Hになったとは限りません。
NMRでQ1とQ2の割合が分かっても、その数値は試料全体の質量割合ではありません。
XRDで全非晶質量が分かっても、未反応原料と生成ゲルを分離できているとは限りません。
分析計画を立てるときは、まず「何を、何に対する割合として求めるのか」を一文で決めてください。
その上で、未反応原料、結晶相、ゲル組成、結合水を別々の方法で測定し、最後に物質収支で整合性を確認します。
どの分析法が最も優れているかを決めるのではなく、それぞれの分析法が、どの対象を、どの分母と単位で測っているかを理解することが、信頼できる非晶質相定量につながります。
FAQ
XRDで非晶質相が40質量%なら、C-S-Hも40質量%ですか?
通常は、そのように判断できません。
内部標準・外部標準XRDで得られる非晶質・未定量相量には、C-S-Hだけでなく、未反応スラグ、フライアッシュガラス、メタカオリン、その他の低結晶質相が含まれる可能性があります。
C-S-H量を分けて求めるには、PONKCS、NMR、TG、物質収支などを組み合わせます。
PONKCSを使えばC-S-Hを直接定量できますか?
適切な校正モデルを作成できれば、C-S-Hを一つの相として定量できます。
ただし、C-S-HのCa/Si比、Al置換量、含水状態、水和停止方法などによって、回折プロファイルが変化する可能性があります。
別の材料や測定装置で作成したモデルを、そのまま転用できるとは限りません。
29Si NMRのQ1+Q2面積をC-S-H量として使えますか?
Q1+Q2面積は、Si原子の化学環境割合として利用できますが、そのままC-S-Hの質量割合にはなりません。
質量へ変換するには、試料全体のSi量、C-S-HのCa/Si比、含水量、Al置換量、他相との信号重なりなどを考慮する必要があります。
スラグの反応率からC-A-S-H量を計算できますか?
反応率だけでは計算できません。
反応したスラグのCa、Si、Al、Mgは、C-A-S-H以外にも、ハイドロタルサイト系相、AFm相、炭酸塩、細孔溶液などへ分配されます。
C-A-S-H量を求めるには、結晶相量、ゲル組成、結合水量、元素収支を併せて検討します。
卒論で使える装置がXRDとTGだけの場合、何を評価できますか?
- 未水和クリンカー鉱物量
- 結晶性水和物量
- 全非晶質・未定量相量
- CH量
- 炭酸塩量
- 結合水量
- 材齢による相組成変化
ただし、混和材を含む系では、未反応原料と生成ゲルを分離できない可能性があります。
その場合は「C-S-H量」と断定せず、「全非晶質・低結晶質量」「未定量相量」「結合水量」として報告する方が適切です。
参考文献
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