― 導入反対ではなく、導入前に“下水道側の確認”もセットで、という提言 ―
ドットコン(Dotcon)は、雨水を地中へ浸透させやすい「透水系コンクリート」として注目されています。実際、Dotcon公式サイトやDotconカタログ・資料ダウンロードでは、雨水を大地に浸透させることで下水処理場へ流れていく雨水を減らす、あるいは集水ますへ排水される量を減らすといった効果が強調されています。つまり、ドットコンは「地表面を流れて下水道側へ向かう雨水負荷を減らす」という意味で、下水道負担の軽減に資する舗装として訴求されているといえます。
ただ、下水道の世界には「雨水を減らしたはずなのに、なぜか雨の日に汚水量が増える」という厄介な現象があります。いわゆる不明水です。国土交通省の雨天時浸入水対策ガイドライン(案)では、不明水の中でも雨天時浸入水について、直接浸入水と雨天時浸入地下水に分けて整理しています。
ここで重要なのは、ドットコンが主に訴求しているのは“直接的な地表流出の低減”に近い話である一方、見落とされやすいのは“地下経由の間接浸入水”であるという点です。川越市の今後の不明水対策についてでは、雨天時浸入水の中に、マンホール蓋穴や誤接合などから雨水がそのまま入る直接浸入水と、降雨が地下へ浸透した後に管きょの継手や損傷箇所から地下水として入り込む間接浸入水があると説明しています。この記事では、この間接浸入水に焦点を当てて、ドットコンの「下水道に特化した」注意点を整理します。
この記事でいう「下水道デメリット」とは何か
ポイントは、間接浸入水(国交省の用語では「雨天時浸入地下水」)です。
国土交通省の雨天時浸入水対策ガイドライン(案)では、直接浸入水はマンホールの蓋穴や汚水管への誤接続などによって汚水系統へ入る雨水、雨天時浸入地下水は雨天時の地下水位上昇等に伴って汚水系統へ流入する地下水として整理されています。川越市はこれを、よりわかりやすく直接浸入水と間接浸入水として示しています。
つまり、ドットコンが主に減らそうとしているのは、地表面を流れてそのまま下水道側へ向かう雨水負荷です。これは確かに合理的な考え方です。しかし、雨水が地表を流れずに地下へ回ったとしても、その地域の汚水管が老朽化していれば、別ルートで下水処理場に“戻ってくる”ことがあります。これが、この記事でいう下水道デメリットの本質です。
ドットコンの下水道デメリット1:老朽汚水管がある地域で、間接浸入水が増える可能性
ドットコンの特徴は、「雨水を地中へ浸透させる量を増やす」ことです。ここで注意したいのは、地中に行った水が“汚水管の弱点”から入ると、不明水になるという点です。国土交通省の雨天時浸入水対策ガイドライン(案)では、雨天時浸入水の浸入部位は宅内ます等の排水設備から下水道管や公共ますなどの管路施設まで様々であり、原因も目地切れ、クラック、破損、継手部のゆるみなどにわたると整理されています。
つまり、ドットコン導入によって地表流出が減っても、地域の汚水管が新しく水密性が高ければ問題は表面化しにくい一方、老朽化が進んだ地域ほど、地下へ浸透した雨水が間接浸入水として下水道へ入りやすいということです。下水道側から見たときの最重要ポイントは、ドットコンの舗装性能そのものより、その地区の汚水管が、浸透した雨水や上昇した地下水に対してどれだけ脆いかにあります。
ドットコンの下水道デメリット2:高地下水位・低地ではリスクが増幅しやすい
都市部や浸水常襲地ほどドットコンのような透水系舗装の導入が進みやすい、という見方は自然です。ただ、下水道面ではこの点に注意が必要です。なぜなら、低地ほど地下水位が浅い/雨で地下水位が上がりやすい傾向があり、そこに老朽管が重なると浸入水が増えやすいからです。
国土交通省の雨水浸透施設の整備促進に関する手引き(案)では、地下水位が高い地域は浸透能力が減少するので不適とされ、さらに地下水位と浸透施設底面との距離は0.5m以上必要と整理されています。また、横浜市の雨水浸透施設設置基準でも、地下水位が高い地域は設置に適さない、特に低地では降雨で地下水位が鋭敏に上昇し、浸透能力が著しく減少する場合があるとされています。
下水道の観点では、ここから次の構図が見えてきます。
- 地下水位が浅い、または雨で上がりやすい
- その地下水が、老朽化した汚水管の弱点に当たる
- 間接浸入水が増える
- 雨天時に汚水量が増え、溢水・逆流や処理負担が出る
ドットコンは「地表の水を減らす」方向に働きますが、条件によっては「地下の水を増やす」方向にも働くため、下水道の弱点がある地区ほど、マイナスが顕在化しやすいというわけです。
ドットコンの下水道デメリット3:不明水増は、溢水・逆流など“現場被害”のリスクを上げる
下水道の不明水問題は、費用の話だけではありません。雨の日に汚水量が増えると、管路やマンホールの能力を超えたときに溢水や宅内側への逆流が起きやすくなります。川越市の今後の不明水対策についてでも、分流式下水道で老朽化の進行等により降雨時の流量が増え、マンホール等からの溢水や宅内への逆流が発生することが課題だと示されています。
ドットコン導入が増えた結果として、もし一部地区で間接浸入水が増えた場合、現場では「雨の日だけ急に汚水量が跳ねる」という形で表れやすくなります。これは、住民から見れば「下水のトラブルが増えた」という認識につながります。しかも、原因が“地表の雨水”ではなく“地下経由”である場合、対策は舗装側だけでは完結せず、下水道側の調査・補修が必要になる点が厄介です。
ドットコンの下水道デメリット4:処理量増 → 処理費増につながりやすい
下水処理場は、「水量が増えれば比例してコストが増える」部分が大きいインフラです。川越市は、不明水の浸入によって流域下水道維持管理負担金が増加し、事業経営上の課題となっていると述べています。
したがって、ドットコンの導入効果を語るときは、「下水処理場へ流れる雨水が減る」という直接効果だけでなく、地区条件次第で「地下経由で不明水が増える」という間接効果も並べて評価しないと、全体最適を外す可能性があります。ドットコンがこの費用増を直接生むとまでは言えませんが、少なくとも老朽管と高地下水位が重なる地域では、下水道事業体が追加負担を背負う可能性があることは意識すべきです。
ドットコンの下水道デメリット5:不明水対策(調査・補修)の“追加コスト”が発生し得る
不明水は、原因箇所の特定が難しく、対策投資に対して効果が見えにくいとされています。川越市の今後の不明水対策についてでも、不明水対策が抜本的解決に至っていない背景として、発生原因・発生源の特定が容易でないこと、対策投資に対して効果が現れにくいことが挙げられています。
つまり、ドットコン普及後に一部地区で問題が顕在化すると、自治体や事業者は次のような下水道側の対応コストを背負うことになります。
- テレビカメラ調査、マンホール点検、宅内側の誤接合確認
- 破損・クラック・継手の補修、更生工事
- 浸入率の推定や雨天時計画汚水量の見直し
- 不明水対策計画の策定や更新
これは舗装の導入費とは別勘定で、しかも後追いで発生しやすい点が怖いところです。
では、どうすれば“手遅れ”を避けられるか
ここからが、「導入反対ではなく注意喚起」の核心です。下水道に特化して言うなら、提言は次の3つに整理できます。
1. ドットコン導入前に、最低限「地下水位」と「老朽管リスク」を確認する
地下水位が高い地域は、そもそも浸透施設として不適・要注意になりやすい、というのが公的な整理です。導入前に、地下水位と既設汚水管の老朽化状況の確認をセットで行うべきです。
2. 効果検証は「地表の水たまり」だけで終わらせず、「雨天時の汚水量」も見る
ドットコンの効果測定が“見た目の排水性”に寄ると、地下経由の影響を取りこぼします。導入地区では可能なら、雨の日に汚水量が跳ねていないか、つまり浸入水が増えていないかも同時に見る設計が望ましいです。これは、直接効果と間接影響を分けて評価するうえで重要です。
3. 都市部・低地ほど「ドットコン導入」と「不明水対策」をセットで進める
低地・高地下水位・老朽管の三点セットがある地域ほど、ドットコンは“両刃”になり得ます。導入が進むほど、下水道側の弱点が露出しやすいので、導入と同時に浸入水対策(点検・補修)も前倒しで進めるのが、結果として合理的な可能性があります。
下水道に特化したチェックリスト
ドットコン導入前に、下水道担当・発注者が確認したいこと
- 地区の地下水位は浅くないか(雨で上がりやすい低地ではないか)
- 分流式汚水管の老朽化が進んでいないか(クラック・継手不良が多い地区ではないか)
- 雨の日にマンホール溢水・宅内逆流などの履歴がないか
- 不明水が経営課題になっていないか(有収率低下、処理量増などの兆候)
- 導入後のモニタリング設計はあるか(雨天時汚水量の確認、問題時の責任分界の整理)
※不明水が経営課題になり得ることは、川越市の不明水対策資料でも具体的に示されています。
FAQ(下水道特化)
Q1. ドットコンを増やすと、下水処理量は必ず増えますか?
必ず、とは言えません。下水道側が新しく水密性が高い地区や、地下水位が深い地区では、間接浸入水の増加が目立たない可能性があります。一方で、老朽管や高地下水位が重なる地区では、間接浸入水が増えるリスクが上がります。
Q2. 「下水処理場へ流れる雨水を減らす」は間違いですか?
間違いではありません。ドットコンはその効果を公式に訴求しています。大事なのは、その直接的な負荷低減効果に加えて、地区条件によっては地下経由で汚水管に入る間接浸入水も同時に評価すべきだ、という点です。
Q3. じゃあ結局、導入するなという話ですか?
違います。提言は「導入反対」ではなく、下水道の状態(老朽度)と地下水位の確認を省略しないことです。導入後に問題化すると、原因特定や対策が難しくなり、コストも時間もかかりやすいからです。
まとめ
ドットコンは、雨水を地中へ浸透させることで、地表流出や集水ます側へ向かう雨水負荷を減らす方向に働く、魅力のある舗装です。公式にも、雨水を直接地面へ浸透させ、下水処理場へ流れる雨水を減らすというメリットが打ち出されています。
ただし、下水道の観点で見落としてはいけないのは、不明水には直接浸入水だけでなく、間接浸入水(国交省の用語では雨天時浸入地下水)もあるという点です。直接浸入水は、マンホール蓋穴や誤接続などから雨水がそのまま入るもので、ドットコンの訴求は主にこちら側の負荷低減と親和性があります。一方で、間接浸入水は、降雨が地下に浸透した後、継手や損傷箇所から地下水として汚水系統へ入り込むものです。したがって、地下水位が高い地域、低地、老朽化した汚水管が多い地域では、ドットコンが地表の雨水負荷を減らす一方で、地下経由の間接浸入水を増やす可能性も視野に入れる必要がある、というのがこの記事の結論です。
