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下水道の経費回収率とは?100%未満の意味と見方をわかりやすく解説

自治体の下水道に関する資料を見ると、「経費回収率」という数字が掲載されていることがあります。

90%、100%、120%など自治体によって数字はさまざまですが、そもそも何を表しているのでしょうか。

経費回収率とは、簡単にいえば、汚水を処理するために使用料で負担すべき費用を、下水道使用料でどの程度賄えているかを示す指標です。

100%であれば、使用料で回収すべき汚水処理費を使用料収入で賄えている状態です。100%未満であれば、その費用のすべてを使用料だけでは回収できていないことを意味します。自治体でも、経費回収率を「使用料で回収すべき経費を下水道使用料でどの程度賄えているか」を示す指標として説明しています。

ただし、経費回収率が100%未満だからといって、直ちに「自治体の下水道事業が赤字」「経営破綻している」という意味ではありません。

下水道事業には公費で負担することが適切な費用もあり、経費回収率は下水道事業全体の収支とは異なる指標だからです。

この記事では、経費回収率の計算方法から100%という数字の意味、実際に自治体の数字を見る際の注意点まで順番に解説します。

下水道の経費回収率とは

経費回収率は、下水道事業における重要な経営指標の一つです。

基本的な計算式は次のとおりです。

経費回収率(%)=下水道使用料収入 ÷ 汚水処理費 × 100

例えば、使用料で負担すべき汚水処理費が年間10億円あり、下水道使用料収入が8億円だったとします。

この場合、

8億円 ÷ 10億円 × 100 = 80%

となり、経費回収率は80%です。

反対に、汚水処理費が10億円、使用料収入も10億円であれば経費回収率は100%になります。

汚水処理費下水道使用料収入経費回収率状態
10億円8億円80%使用料収入だけでは不足
10億円10億円100%使用料で回収すべき費用を賄えている
10億円12億円120%使用料収入が対象となる汚水処理費を上回る

つまり、経費回収率を見ることで、利用者から集めた下水道使用料と、汚水を処理するために必要な費用との関係を確認できます。

経費回収率100%とはどういう意味?

経費回収率を見るとき、一つの基準になるのが「100%」です。

100%ということは、

使用料で回収すべき汚水処理費 = 下水道使用料収入

という状態です。

国土交通省は、公共下水道事業について、事業に伴う収入によって経費を賄い、自立性を持って事業を継続する「独立採算制」が原則であると説明しています。また、経費負担については「雨水公費・汚水私費」が原則とされています。

そのため、汚水処理について使用料で負担すべき部分を下水道使用料で賄えているかを見るうえで、100%が重要な目安になります。

例えば栃木県日光市では、汚水処理費を下水道使用料で賄えない状況などを踏まえ、2026年1月から下水道使用料を改定しています。同市も経費回収率100%以上を目標として料金を検討しています。

経費回収率は、単に自治体の決算書に載っている数字ではありません。

将来にわたって下水道サービスを維持するために、使用料の水準を考える際にも使われている指標です。

経費回収率が100%未満だとどうなる?

では、経費回収率が100%未満の場合はどう考えればよいのでしょうか。

例えば経費回収率が80%の場合、使用料で回収すべき汚水処理費100円に対して、使用料収入は80円という関係になります。

残りの20円分については、使用料以外の財源などによって補う必要があります。

これが長期間続けば、下水道事業の経営を考えるうえで課題になる可能性があります。

実際、香芝市では人口減少による使用料収入の減少や施設の老朽化、職員不足などを課題として挙げ、経費回収率の向上に向けた計画を示しています。

ただし、ここで注意したいのが、

「経費回収率100%未満=下水道事業全体が赤字」ではない

という点です。

経費回収率100%未満でも「経営破綻」とは限らない

下水道事業では、すべての費用を下水道使用料だけで負担するわけではありません。

国土交通省は下水道事業の費用負担について「雨水公費・汚水私費」を原則としています。

雨水を排除することによる利益は地域全体に及ぶため、雨水処理に関する費用は主に公費で負担します。

また、汚水処理に関する費用であっても、高度処理や分流式下水道に関する一部の費用など、公的な便益が認められるものは公費負担の対象になります。

したがって、

「下水道事業に税金が入っている=不健全」

という考え方も正しくありません。

一方で、本来使用料で回収すべき汚水処理費について長期間十分な使用料収入を確保できていなければ、経営上の課題として確認する必要があります。

大切なのは、

何を公費で負担する費用とし、何を下水道使用料で負担する費用としているのか

を分けて考えることです。

経費回収率と「赤字」は別の指標

経費回収率は、下水道事業の利益や損失そのものを示す数字ではありません。

経費回収率が見ているのは、

下水道使用料収入と、使用料で回収すべき汚水処理費の関係

です。

一方、下水道事業全体の収支を見る際には、使用料以外にも、

  • 雨水処理に対する一般会計からの負担
  • 国や自治体からの補助
  • その他の営業収益
  • 支払利息
  • 減価償却費

など、さまざまな収入・費用を考える必要があります。

そのため、

「経費回収率80%だから赤字」
「経費回収率120%だから経営に全く問題がない」

と一つの数字だけで判断することはできません。

経費回収率は重要な指標ですが、下水道経営を見るための一つの物差しとして使うことが大切です。

経費回収率は「使用料単価」と「汚水処理原価」からも分かる

経費回収率を理解するときには、「使用料単価」と「汚水処理原価」という二つの数字も重要です。

簡単にいえば、

使用料単価
=有収水量1m³あたり、どれだけ使用料収入があるか

汚水処理原価
=有収水量1m³あたり、どれだけ汚水処理費がかかっているか

という指標です。

そのため、経費回収率は、

使用料単価 ÷ 汚水処理原価 × 100

という関係でも表せます。

例えば、

  • 使用料単価:120円/m³
  • 汚水処理原価:150円/m³

であれば、

120 ÷ 150 × 100 = 80%

となります。

使用料単価と汚水処理原価については、それぞれ別の記事で詳しく扱います。

ここでは、

「1m³あたりの収入」と「1m³あたりの費用」の関係を割合で表したものが経費回収率

と考えておけばよいでしょう。

経費回収率は自治体によって大きく違う

経費回収率は全国一律ではありません。

「まる見え!全国の下水道使用料」に収録している2024年度決算の公共下水道1,169自治体を単純集計すると、経費回収率100%未満の自治体は69.9%です。

なお、この69.9%は収録自治体を単純に数えた本サービス独自の集計値であり、国が公表する全国加重平均などとは異なります。

自治体ごとの経費回収率を調べると、自分が住んでいる自治体の数値を確認できます。

また、全国の経費回収率ランキングを確認することもできます。

数字を見ると自治体による違いの大きさに気付きますが、単純に順位だけで良し悪しを判断することはできません。

あなたのまちの下水道使用料はどのくらい?

なぜ自治体によって経費回収率が違うのか

下水道事業は地域条件の影響を強く受けます。

例えば、人口密度が高い地域では、比較的短い下水道管で多くの利用者から使用料を得られる場合があります。

一方、住宅が広い範囲に点在している地域では、少ない利用者のために長い管路を維持しなければならないことがあります。

経費回収率に影響する主な要素としては、

  • 処理区域の人口や人口密度
  • 下水道使用者数
  • 使用水量
  • 管路の長さ
  • ポンプ場や処理場などの施設構成
  • 施設の老朽化
  • 維持管理費
  • 下水道使用料の設定

などがあります。

下水道施設は造って終わりではなく、点検、清掃、補修、更新を続けなければなりません。

例えば、下水道管では硫化水素などを原因とするコンクリート腐食が発生することがあります。施設側でどのような対策が必要になるかについては、下水道コンクリート管の硫酸腐食と耐硫酸管材を解説した記事で詳しく紹介しています。

また、下水道管に雨水や地下水などの「不明水」が入り込むと、本来処理する必要のない水まで処理場へ送られ、処理負担の増加につながります。不明水と下水道事業への影響を解説した記事もあわせて参考にしてください。

このように、経費回収率は単なる「料金の高さ」を示しているわけではありません。

地域の条件、施設の状態、費用、使用料設定などが重なった結果として表れる数字です。

経費回収率が高ければ高いほど良い?

100%以上が一つの目安だからといって、

「200%なら100%の自治体より2倍優れている」

という意味ではありません。

経費回収率が高くなる理由には、

  • 使用料収入が多い
  • 汚水処理費が低い
  • 一時的な収入や費用の変動
  • 地域や施設の条件

など、さまざまな要因があります。

そのため、自治体を比較するときには経費回収率だけを見るのではなく、

  • 使用料単価
  • 汚水処理原価
  • 家庭が実際に支払う下水道使用料
  • 有収水量の推移
  • 施設の老朽化状況
  • 経営全体の収支

などもあわせて見る必要があります。

100%は重要な基準ですが、数字が高ければ無条件に良いという指標ではありません。

自分の自治体の経費回収率を調べてみよう

経費回収率の意味が分かったら、実際に自分が住んでいる自治体を調べてみると、下水道事業がぐっと身近になります。

まる見え!全国の下水道使用料で自治体を検索すると、自治体ごとの経費回収率などを確認できます。

例えば、

「自分の自治体は100%を超えているのか」

「近隣自治体と比べるとどうなのか」

「使用料単価と汚水処理原価はどのくらい違うのか」

という視点で見てみるとよいでしょう。

ただし、数字だけを見て自治体の経営状態を断定するのではなく、自治体が公開している決算資料や経営戦略とあわせて確認することが大切です。

経費回収率の計算方法とデータの出典も公開していますので、数字を詳しく確認したい場合はこちらも参照してください。

あなたのまちの下水道使用料はどのくらい?

まとめ|経費回収率は下水道経営を知る入口になる

経費回収率とは、

使用料で回収すべき汚水処理費を、下水道使用料収入でどの程度賄えているか

を示す指標です。

基本的な計算式は、

経費回収率(%)=下水道使用料収入 ÷ 汚水処理費 × 100

です。

100%であれば、使用料で回収すべき汚水処理費を使用料収入で賄えていることになります。

100%未満の場合は、その費用を使用料だけでは十分に回収できていない状態です。

ただし、下水道には公費で負担することが適切な費用もあるため、

「100%未満=自治体が赤字・経営破綻」

と判断するのは適切ではありません。

また、経費回収率が高いだけで、その自治体の下水道経営がすべて良好だと判断することもできません。

まずは経費回収率を入口として、

「自分の自治体では、汚水を処理するためにいくらかかり、そのうちどれくらいを使用料で賄えているのか」

に目を向けることが、地域の下水道経営を知る第一歩になります。

普段は地下にあって目にする機会の少ない下水道ですが、私たちの生活を支える重要な社会基盤です。

自分のまちの下水道の経費回収率を確認するところから、地域の下水道について考えてみてはいかがでしょうか。

あなたのまちの下水道使用料はどのくらい?

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