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下水道料金は自治体でどれくらい違う?地域差が生まれる理由も解説

毎月支払っている下水道料金について、

「自分の住んでいる地域は高いのだろうか?」

「隣の市に引っ越したら下水道料金も変わるの?」

と疑問に思ったことはないでしょうか。

結論からいうと、下水道使用料は全国一律ではなく、自治体によって大きく異なります。

国土交通省が令和4年度の「下水道統計」を基に整理した資料では、家庭用20m³・1か月当たりの下水道使用料について、公共下水道の事業者間で5,000円を超えるところがある一方、1,000円を下回るところもありました。単純に比べると、最大と最小では6倍程度の差があります。

ただし、

「下水道料金が高い自治体=経営が悪い」

「下水道料金が安い自治体=経営が良い」

とは限りません。

下水道料金には、人口密度、地形、施設の整備時期、汚水を処理するための費用、これまでの料金改定など、さまざまな事情が反映されています。

この記事では、全国の下水道料金にどれくらい差があるのかを確認したうえで、自治体によって料金が異なる理由と、比較するときに一緒に確認したい数字について解説します。

下水道料金は自治体によって大きく違う

下水道使用料は国が全国一律に決めているものではありません。

それぞれの自治体や下水道事業者が、地域の下水道施設や経営状況などを踏まえて設定しています。

そのため、同じ20m³の水を使用した場合でも、住んでいる自治体によって支払う下水道使用料は異なります。

国土交通省が令和4年度の「下水道統計」を基に整理した資料では、家庭用20m³・1か月当たりの全国平均は2,966円でした。

都道府県別の平均を見ると、北海道3,644円、福岡県3,475円、新潟県3,402円などに対して、東京都1,726円、沖縄県1,495円など、地域によってかなり違いがあります。

さらに公共下水道の事業者別では、同資料で高い事業者として北海道三笠市の5,583円、低い事業者として東京都府中市の908円が示されています。

もちろん、これは令和4年度の一定条件による比較です。

実際に各家庭が支払う金額は使用水量や自治体の料金体系などによって変わります。また、料金改定も行われるため、現在の料金を確認するときは各自治体の最新情報を見る必要があります。

全国の自治体を実際に調べたい場合は、自治体ごとの下水道使用料・経営指標を検索することができます。

あなたのまちの下水道使用料はどのくらい?

なぜ下水道料金は自治体によって違うのか

では、なぜこれほど地域差が生まれるのでしょうか。

国土交通省は、下水道使用料に地域差が生じる主な要因として、立地条件、高低差、人口密度、施設の建設時期、各事業体の使用料水準や料金改定の時期などを挙げています。

特に重要なものを見ていきましょう。

理由1 人口密度が違う

下水道料金を考えるうえで大きな要素となるのが、人口密度です。

下水道には、

  • 下水道管
  • マンホール
  • ポンプ場
  • 下水処理場

など、多くの施設が必要です。

人口が密集している地域では、比較的短い下水道管で多くの利用者をつなぐことができます。

反対に、住宅が広い範囲に点在している地域では、少ない利用者のために長い下水道管を整備・維持しなければならない場合があります。

国土交通省の令和4年度データでも、公共下水道について処理区域内人口密度が25人/ha未満の事業では、家庭用20m³当たりの平均使用料が3,308円だったのに対し、100人/ha以上では2,390円でした。

別の人口規模別の集計でも、処理区域内人口1万人未満では3,169円、30万人以上では2,272円となっており、小規模な地域ほど平均使用料が高い傾向が確認できます。

つまり、利用者が少ない地域では、一人当たりが負担する費用が大きくなりやすいという構造があります。

理由2 地形や高低差が違う

同じ人口規模であっても、地域の地形によって下水道に必要な設備は変わります。

下水は基本的に重力を利用して低い方へ流します。

しかし、地形の関係で自然に流すことが難しい場所では、ポンプを使って下水を送らなければならない場合があります。

ポンプ場を設ければ、

  • 電気代
  • 点検費
  • 修繕費
  • 設備更新費

などが必要になります。

また、処理場までの距離や管路の配置なども地域によって異なります。

国土交通省も、下水道使用料の地域差が生じる要因として「立地(高低差等)」を明示しています。

したがって、単純に人口だけを比べても、下水道に必要な費用を説明できるとは限りません。

理由3 下水道を整備した時期や施設の状態が違う

下水道施設がいつ整備されたのかも重要です。

比較的新しく下水道を整備した地域と、何十年も前から下水道を使用している地域では、建設時の条件や設備の状態が異なります。

特に今後は、老朽化した管路、処理場、ポンプ場などの更新が大きな課題になります。

下水道管は普段目にする機会がほとんどありませんが、地中には大規模な施設が存在します。下水道管の構造や老朽化の問題については、八潮市の事故と下水道シールド管について解説した記事でも詳しく紹介しています。

また、老朽化した施設では単に管を交換するだけでなく、腐食対策や補修なども必要になります。具体的な維持管理技術については、FRPM管や防食ライニングによる下水道管の腐食対策を解説した記事も参考になります。

ただし、施設が古いから現在の下水道料金が必ず高い、という単純な関係ではありません。

更新費用をまだ十分に料金へ反映していない自治体もあれば、将来の更新を考えて料金を見直している自治体もあります。

そのため、現在の料金だけでなく、今後必要になる費用まで含めて考える必要があります。

理由4 料金を改定した時期が違う

下水道料金には、その自治体がいつ料金を見直したのかも影響します。

下水道事業では、

  • 人口の変化
  • 使用水量の変化
  • 維持管理費
  • 施設更新費
  • 物価
  • 経営状況

などを踏まえて料金を検討します。

しかし、すべての自治体が同じ時期に同じ割合で料金を改定するわけではありません。

長期間料金を変えていない自治体もあれば、段階的に見直している自治体もあります。

そのため、現在の料金が安いからといって、汚水処理にかかる費用そのものが安いとは限りません。

2026年に成立した改正下水道法でも、将来の改築に必要な資金を考慮した使用料算定の考え方が盛り込まれています。

今後の下水道経営と使用料の関係については、2026年改正下水道法と下水道使用料への影響を解説した記事で詳しく説明しています。

理由5 下水道の費用を使用料だけで負担しているわけではない

下水道事業のお金を考えるとき、もう一つ知っておきたいのが公費負担です。

下水道には、一般に「雨水公費・汚水私費」という考え方があります。

基本的には、雨水を排除するための費用は公費、家庭や事業所から排出される汚水の処理に関する費用は使用料で負担するという考え方です。ただし、汚水処理についても公共的な役割を持つ一部の費用は公費負担の対象になります。

つまり、下水道事業には、

利用者が下水道使用料として直接負担する部分

と、

税金などを財源とする公費で負担する部分

があります。

そのため、下水道料金の金額だけを見ても、下水道事業全体のお金の流れは分かりません。

下水道料金が安い自治体ほど経営状態が良いとは限らない

ここが、自治体の下水道料金を比較するときに最も注意したい点です。

例えば、

A市:月2,000円
B市:月3,500円

だったとします。

料金だけを見るとA市の方が利用者には安く感じます。

しかし、A市では汚水を処理する費用に対して使用料収入が不足しており、B市では必要な費用を使用料で比較的しっかり賄えている可能性もあります。

反対に、A市は人口密度が高く効率的に処理できるため、本当に低い費用で運営できている可能性もあります。

したがって、

「下水道料金はいくらか」だけでは、自治体の下水道経営を評価できません。

そこで一緒に見たいのが、

  • 経費回収率
  • 使用料単価
  • 汚水処理原価

という3つの数字です。

比較するときは「経費回収率」も見る

経費回収率とは、使用料で回収すべき汚水処理費を、下水道使用料収入でどの程度賄えているかを示す指標です。

100%であれば、使用料で回収すべき汚水処理費を使用料収入で賄えていることを意味します。

例えば料金が比較的安くても経費回収率が低ければ、必要な汚水処理費に対して使用料収入が不足していることになります。

反対に、料金が高くても、その地域ではそもそも汚水処理に大きな費用がかかっている可能性があります。

詳しい意味については、下水道の経費回収率と100%未満の意味を解説した記事で確認できます。

「使用料単価」と「汚水処理原価」を比べるとさらに分かりやすい

経費回収率を理解するうえで役立つのが、使用料単価と汚水処理原価です。

使用料単価は、簡単にいえば下水1m³当たりでどれくらいの使用料収入を得ているかを示します。

一方、汚水処理原価は、下水1m³を処理するためにどれくらいの費用がかかっているかを見る指標です。

例えば、

使用料単価:150円/m³
汚水処理原価:200円/m³

であれば、1m³当たりの使用料収入より、使用料で回収すべき汚水処理費の方が大きい状態です。

このように、

料金 → 使用料単価 → 汚水処理原価 → 経費回収率

まで見ることで、その自治体の下水道経営をより具体的に理解できます。

それぞれの詳しい意味は、下水道の使用料単価と毎月支払う料金の違いを解説した記事と、汚水処理原価と下水1m³の処理費用を解説した記事で解説しています。

自分の自治体の下水道料金を全国と比較してみよう

下水道について興味を持つ第一歩として、自分が住んでいる自治体の数字を実際に調べてみるのがおすすめです。

「まる見え!全国の下水道使用料」では、総務省の地方公営企業決算状況調査などを基に、2024年度決算について公共下水道1,169自治体を収録しています。

自治体検索では、自分の自治体を探して下水道経営に関する指標を確認できます。

まずは、自分の自治体の下水道使用料・経営指標を調べるところから始めてみてください。

さらに、全国の自治体について経費回収率、使用料単価、汚水処理原価を比較したい場合は、全国の下水道経営指標をランキングで比較することもできます。

ただし、ランキングの順位だけで自治体の良し悪しを判断することはできません。

人口密度や事業規模などの条件が違うため、

「なぜこの自治体はこの数字なのだろう?」

と背景まで考えることが重要です。

あなたのまちの下水道使用料はどのくらい?

まとめ

下水道料金は全国一律ではなく、自治体によって大きく異なります。

国土交通省の令和4年度データでは、家庭用20m³・1か月当たりの使用料について、公共下水道の事業者間で約6倍の差が確認できます。

地域差が生まれる主な理由としては、

  • 人口密度や事業規模
  • 地形や高低差
  • 管路や処理施設の条件
  • 施設を整備した時期
  • 維持管理・更新に必要な費用
  • 料金改定の時期
  • 公費と使用料の負担関係

などがあります。

そのため、下水道料金が高いか安いかだけで、自治体の下水道事業を評価することはできません。

料金を比較した後は、

「その料金で必要な汚水処理費をどれくらい賄えているのか」

まで見てみると、下水道経営の実態が少しずつ見えてきます。

普段は地下に隠れていて意識する機会の少ない下水道ですが、私たちが毎日使い続けるためには、施設だけでなく、それを支える経営も維持しなければなりません。

まずは、「まる見え!全国の下水道使用料」で自分のまちの下水道を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

あなたのまちの下水道使用料はどのくらい?

【主な参考資料】

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