結論から言うと、「個人としての研究活動の母艦」にするなら、私は Obsidian 推しです。ただし、共同研究・ラボ運営・プロジェクト管理まで含めるなら、Notion を完全に捨てる必要もなく、
「Obsidian を“思考と知識の中枢”、Notion を“外向きの整理と共有”」にするハイブリッド構成が現実的だと感じています。
主なポイント
- Obsidian はローカルの Markdown ファイル+双方向リンク+グラフビューで、研究ノートやアイデアの長期的な蓄積に強い。
- Notion はページとデータベース、バックリンク、チームワークに強く、共同研究のタスク管理や進捗共有に向いている。
- 「一人でじっくり考える時間」が多い研究者は Obsidian、有志のプロジェクトやラボ運営メインなら Notion が有利。
- 私自身は Obsidian を“研究の第二の脳”として固定し、Notion をプロジェクトと共有用の“外部インターフェース”として使うスタイルに落ち着いています。
Obsidian と Notion を、研究の文脈でざっくり整理すると?
Obsidian とは?(研究寄りのざっくり定義)
Obsidian は、ローカルに保存された Markdown ファイル群に双方向リンクとグラフビューをかぶせた知識ベースアプリです。
ファイルは単なるテキストなのでエディタでも読めるし、プラグインやテーマでの拡張性も高いのが特徴です。
研究目線で見ると、
- ローカルファイルであること(データの所有権・持続性)
- ノート同士を自然につなげていけるリンク/バックリンク
- アイデアのつながりを俯瞰できるグラフビュー
あたりが大きな利点になります。
Notion とは?(研究寄りのざっくり定義)
Notion は、ページとデータベースを組み合わせて使うオールインワンのワークスペースです。
ページ同士をリンクしたり、データベースで文献やタスクを構造化したり、チームで共有したりするのが得意です。
最近は Notion AI が強化され、「Research mode」でウェブやワークスペース内の情報をまとめてレポートを作るような機能も入ってきています。
研究活動では、どんな場面でツールが効いてくるのか?
文献メモとアイデアの蓄積にはどっちが向いている?
個人の知的作業に寄せて考えるなら、私は Obsidian 優勢だと思っています。
理由はシンプルで、
- Markdown で素早く書ける(書式より中身に集中しやすい)
- 思いついた断片をどんどんノート化し、リンクであとから意味づけできる
- 長期的に見ても「テキストファイルとして残る」安心感がある
からです。
Notion でも文献ノートは作れますが、「データベース前提のきれいな構造」を意識しがちで、
思考の生煮えな段階では、かえって書き出しづらいと感じる場面がありました。
「とりあえずラフに書く」「後からリンクとタグで整理する」というやり方は、Obsidian の方が体に馴染みやすい、というのが私の実感です。
共同研究・ラボ運営にはどっちが向いている?
これは逆に Notion の勝ちやすい領域だと感じています。
- メンバーのタスク、締切、担当者の一覧
- 研究ミーティングの議事録とアクションアイテム
- 予算管理や申請スケジュール
- ラボ内マニュアル・手順書
こういった情報は、データベース+ビュー切り替え(カンバン、カレンダー、テーブルなど)が非常に効いてきます。
Obsidian にもタスク系プラグインはありますが、「複数人でタスクと情報を共有する場」としては、
Notion のほうが導入コストも低く、非オタクなメンバーにも説明しやすいです。
書き上げフェーズ(論文やスライドの準備)では?
ここは人によりますが、私のパターンはだいたいこうです。
- アイデア出し・構成メモ → Obsidian(バラバラなノート+リンク)
- 章立てが固まってきたら → LaTeX / Word / スライド(外部ツール)
- その補助情報(図版の一覧・提出スケジュールなど) → Notion
つまり、執筆そのものは専用ツールに任せ、Obsidian は“素材倉庫兼リサーチノート”として残すイメージです。
実際のワークフロー例:Obsidian 主軸+ Notion 補助
個人的にしっくり来ている構成を、もう少し具体的に書くとこんな感じです。
- Obsidian
- 論文読みメモ(1 本 1 ノート)
- 自分のアイデアノート(仮説・メモ・思いつき)
- キーワードや概念ごとのまとめノート
- 日々のリサーチログ(日記+進捗メモ)
- Notion
- 進行中プロジェクトの一覧(締切・共著者・ステータス)
- 学会や投稿のスケジュール管理
- ラボ内で共有する「読むべき論文リスト」
- TA 業務や授業関連のタスク管理
この構成のポイントは、「考える場所」と「見せる場所」を分けることです。
- 「考える場所」=多少カオスでもよい、自分だけが触る Obsidian
- 「見せる場所」=他人に見せても恥ずかしくない、構造化された Notion
と割り切ると、どちらのツールにも無理をさせなくてすみます。
私が「研究の母艦」として Obsidian を選ぶ理由
ここからは完全に個人の好みですが、Obsidian を主軸にしている理由を整理しておきます。
- ローカルファイルの安心感 研究ノートは、気分や流行でツールを乗り換えても「中身だけは残っていてほしい」ものです。
Obsidian のノートは単なる Markdown ファイルなので、最悪アプリが消えてもテキストは残ります。 - 「リンク前提」で考えやすい 研究って、「この論文」と「あの概念」と「以前のメモ」が頭の中で勝手につながっていく作業です。
双方向リンクとバックリンク、グラフビューがあることで、“頭の中の連想”を外部化しやすいと感じます。(Obsidian Help) - 書式より中身に集中しやすい Notion はレイアウトやブロック表現がリッチな分、「きれいに整えたい欲」が出てきます。
一方、Obsidian は基本テキストなので、「とりあえず書く」「あとで見出しやリンクをつける」と割り切りやすいです。 - プラグインで研究寄りに寄せられる 文献管理や LaTeX、タスク管理など、研究者向けのプラグインがかなり充実しています。
「最低限は素の Markdown、それ以上はプラグイン」という階層構造が、自分の好みに合っていました。
あえて Notion 中心にするなら、どんなケース?
一方で、「この条件なら Notion を母艦にしてもよさそう」と思うケースもあります。
- 研究よりも「チーム運営・プロジェクト進行」が主業務に近づいている人
- PI(教授・PI クラス)やプロジェクトマネージャー寄りのポジション
- 研究メモよりも、タスク管理・進捗管理のほうがボトルネックになっている人
- 非エンジニア・非研究者も巻き込んだコラボが多い人
- 企業や行政との共同研究、学生バイトとのやりとりなど
- Notion AI の要約・リサーチ機能に魅力を感じる人(notion.com)
この場合は、
- 文献メモもデータベース(文献DB)として Notion に集約
- 各文献ページにメモ・気づき・リンクを積む
- プロジェクト・学会・授業などもひとまとめにして「人生ダッシュボード」を作る
という「全部 Notion でやってしまう」構成も、充分に現実的です。
注意点・ベストプラクティス
最後に、「どっちを選ぶにしても気をつけたい」と感じているポイントをまとめます。
1. ツールを決める前に「何が詰まっているか」を言葉にする
- 文献管理がカオスでつらいのか
- アイデアが散らばっていて拾えないのか
- 締切とタスク管理が追いつかないのか
- 共同研究の情報共有が破綻しているのか
どこが一番のボトルネックなのかを言語化してからツールを選ぶと、後悔が減ります。
2. 最初から「完璧な構成」を目指さない
特に Notion は「きれいなデータベースを作らなきゃ」と思いがちですが、
研究の現場ではむしろ
- とりあえずページを作る
- しばらく運用してから共通プロパティを決める
- うまく回り始めてからテンプレ化する
くらいの順番のほうがうまくいきます。
3. 中核は 1 ツールに寄せる
Obsidian+Notion 両方を使うにしても、「どっちが母艦か」は決めておいたほうが楽です。
- 「迷ったら Obsidian に投げる」のか
- 「迷ったら Notion に投げる」のか
を決めておかないと、情報が分散して「どこに何を書いたか分からない」問題が起こりがちです。
FAQ:Obsidian vs Notion で研究者がよく悩みそうなこと
Q1. 最初から両方使うと混乱しませんか?
A. 正直、いきなりフル活用しようとすると混乱します。
まずは どちらか 1 つだけを「1 つの用途」に使うのがおすすめです。
- Obsidianなら「今日の研究ログだけを書く」
- Notionなら「研究プロジェクトのタスクだけ管理する」
など、用途を一つに絞って慣れてから徐々に拡張すると、負担が少なくて済みます。
Q2. 大学院に入ったばかりなら、どっちから始めるべき?
A. 私なら、Obsidian から始めることを勧めます。
理由は、初期はとにかく論文を読み、考え、メモを書く「インプットと思考」が中心だからです。
共同研究が増えたり、プロジェクトの責任が重くなってきた段階で Notion を足しても、全く遅くはありません。
Q3. iPad 中心でも Obsidian は使えますか?
A. iPad 版 Obsidian もあるので、一応使えますが、最初のセットアップやフォルダ構成の設計だけは PC でやったほうが楽だと感じます。
Notion はブラウザでもアプリでも同じように動くので、iPad 中心なら Notion のほうがとっつきやすいかもしれません。
Q4. ラボ内でツールを統一したほうがいいですか?
A. 「ラボでの共有用ツール」は統一したほうが楽ですが、「個人の研究ノート用ツール」は各自に任せてよいと思います。
たとえば「共有は Notion、個人ノートは自由(Obsidian でも紙ノートでも可)」という方針でも十分機能します。
Q5. すでに別ツール(Evernote など)にノートがある場合は?
A. いきなり全部を移行しようとすると確実に挫折するので、“これから書くノート”だけ新ツールに移すのが現実的です。
過去のノートは必要になったときに少しずつコピーするくらいで十分、というのが私のスタンスです。
まとめ:迷ったら、小さく両方触って「ボトルネック基準」で選ぶ
改めてまとめると、
- 個人の研究ノートとアイデア蓄積の「母艦」としては、私は Obsidian 推し
- 共同研究・ラボ運営・タスク管理には Notion のほうが向きやすい
- 現実的には「Obsidian(思考と知識)+ Notion(進捗と共有)」のハイブリッドが落としどころ
というのが、私の個人的な結論です。
今すぐできる一歩としては、
- Obsidian か Notion どちらか一方で、「今日の研究ログ」だけを 1 週間つけてみる
- もう片方のツールでは、「進行中プロジェクトの一覧」だけを作ってみる
- 1〜2 週間後、「どっちを開いている時間のほうが“研究が前に進んだ感”があるか」を振り返る
この「体感ベースの判断」が、最終的にいちばん後悔の少ない選び方かな、と思っています。
