Obsidianは「スライド専用ツール」ではありませんが、研究ノートの一元管理×Markdown×プラグインのおかげで、研究発表スライドとの相性はかなり良いです。
うまくワークフローを組むと、論文読み → 研究ノート → スライドまでをすべて Obsidian 上で完結させることもできます。ここでは、どんな使い方ができるのか、具体的な手順とベストプラクティスを整理します。
主なポイント
- Obsidian は「スライド作成ツール」ではなく、「スライドの素材と構成を作るための頭脳」として使うと相性が良い
- 研究ノート・論文メモ・図表ファイルを Obsidian に集約しておくことで、スライド用のアウトライン作成が圧倒的に楽になる
- Markdown+プラグインを使えば、Obsidian からそのままスライド(HTML/Reveal.js など)を書き出すことも可能
- 日々のノートから「研究のストーリー」を抽出し、そのままスライド構成に変換するワークフローを決めておくことが重要
- テンプレート化・タグ運用・リンク構造を整えるほど、次回以降の発表スライド作成コストが下がる
Obsidian と研究発表スライドの関係とは?
まず整理しておきたいのは、Obsidian 自体は PowerPoint や Keynote のようなスライド専用ソフトではないという点です。
その代わりに、Obsidian は次のような役割を担うときに真価を発揮します。
- 文献メモ・実験ノート・アイデアを Markdown で一元管理する
- ノート同士をリンクさせて「研究の全体像」を見える化する
- テンプレートやタグを使って、発表向けの情報だけを素早く抜き出す
この「思考と情報のインフラ」としての Obsidian を、最終的なスライド作成にどうつなげるかがポイントです。
研究発表のために Obsidian をどう準備しておくべきか?
なぜ研究ノートを Obsidian に集約するとスライドが楽になるのか?
研究発表スライドで困る典型パターンは、「材料がバラバラ」です。
- 文献メモはPDFに手書き
- 実験ノートは紙ノート
- アイデアは別のメモアプリ
- スライドはPowerPointだけに存在
この状態だと、「何を話すか」を組み立てるたびに情報を探し回ることになります。
Obsidian に次のようなノートを集約しておくと、スライドの「材料」がすぐに見えるようになります。
- 論文ごとの文献メモ(要点・図表・引用したいフレーズ)
- 実験ログ・結果のサマリー
- 研究テーマ別のまとめノート(背景・目的・結論など)
- 既に行った発表のメモ(聴衆の反応・質疑応答など)
これらをリンクでつないでおけば、「この発表で何を話すべきか」→関連ノートをたどるという流れが自然に作れます。
スライド作成を見据えたノートの基本構造は?
おすすめの基本構造は次のようなイメージです。
- テーマごとの「マスターノート」
- 研究の背景・課題
- 目的・仮説
- 手法・実験条件
- 結果・考察
- 今後の展望
- 各論文・各実験の詳細ノート
- 「発表用アウトライン」ノート
特に「マスターノート」は、そのままスライド構成に落とし込みやすい形にしておくと、発表準備のたびに助かります。
Obsidianを使って発表スライドの構成をどう作るか?
スライドの構成を Obsidian で設計する手順
Obsidian は「構成作業」にとても向いています。基本的な流れは次のとおりです。
- 新しいノートを「発表タイトル(発表用アウトライン)」として作る
- その中に、スライドの章立てを Markdown で書き出す
- 例:
# 背景、# 目的、# 手法、# 結果、# 考察など
- 例:
- 各セクションの下に、「スライド1枚分」に相当する要点を箇条書きで書く
- 必要に応じて、詳細ノートへのリンクや図表ファイルへのリンクを貼る
ここでは 「1スライド=1メッセージ」 の原則で、箇条書きに情報を詰めすぎないことが重要です。
スライド1枚分の情報量を Obsidian 上でどう管理するか?
発表初心者にありがちなのが、「1スライドに話したいことを全部詰め込む」状態です。
Obsidian 上で次のようなルールを置いておくと、後でスライドに移すときにも迷いにくくなります。
- スライド1枚分のメモは、箇条書き3〜5行程度に抑える
- 1行目:そのスライドで伝えたい一番のメッセージ
- 2〜4行目:その根拠・例・図の説明など
- 図を使う予定なら、図のファイル名や格納場所も一緒にメモしておく
こうしておくと、PowerPoint や Keynote に移すときも、ただ写すだけでなく「何を削るか・何を強調するか」を判断しやすくなります。
Obsidian から直接スライドを生成するには?
Markdown からスライドを作るプラグインや仕組み
Obsidian の強みの一つは、Markdown からスライドを吐き出せるエコシステムと相性がいいことです。
具体的には、次のようなアプローチがあります。
- Obsidian のコミュニティプラグイン(例:Reveal.js 形式のスライド出力ができるもの)
- Obsidian ノートをそのまま Pandoc や他ツールで変換し、PDF や HTML スライドにする
- 「スライド用ノート」を Markdown ルール(
---でスライド区切りなど)に従って書き、外部ツールで一括変換する
環境構築は少し手間ですが、一度パイプラインを作ってしまえば、Obsidian 上の Markdown → スライドがかなり効率化します。
どのケースで「直接スライド生成」が向いているか?
次のような場合は、Obsidian からの直接生成(もしくは Markdown ベースのスライド)が向いています。
- 学会やゼミで、テキスト中心でシンプルなスライドが求められる
- コード断片・数式・箇条書きがメインで、凝ったレイアウトは不要
- Git でスライドをバージョン管理したい
- 外部共有用に HTML スライドとして公開したい
逆に、アニメーションや緻密な図表など、PowerPoint 的な表現を多用したいときは、「構成は Obsidian、デザインは PowerPoint」の分業が現実的です。
具体的なワークフロー例:論文読みから発表スライドまで
ステップ1:論文を読んだら必ず Obsidian に要約ノートを残す
- 論文1本につき1ノート
- 目的・手法・結果・限界・自分のコメントをテンプレートに沿って記入
- 重要な図表や引用は、図のパス・ページ番号などもメモ
ステップ2:研究テーマごとのマスターノートを成長させる
- 論文ノートから重要部分だけを抜き出し、テーマ別ノートにまとめる
- 背景・関連研究・課題・自分のアプローチ…といった構成で整理しておく
ステップ3:発表依頼が来たら「発表用アウトライン」ノートを作る
- タイトル・発表時間・聴衆のレベルを一番上にメモ
- マスターノートから必要な要素だけをピックアップし、話の流れを組む
- 各セクションを「スライド1枚分」の粒度に分割して箇条書き化
ステップ4:スライド作成ツールへ転記・洗練
- Obsidian のアウトラインを見ながら、PowerPoint 等にスライドを作る
- 図表の挿入位置、強調したいメッセージを再チェック
- 完成したスライドの要点を、Obsidian の「発表メモ」として残しておく
このサイクルを繰り返すと、「次の発表」がどんどん楽になります。
Obsidian をスライド作成に活かす際の注意点とベストプラクティス
注意点
- スライドデザインそのものは別ツールでやる前提にする
Obsidian は構成・テキスト整理に強い一方、レイアウト調整には向きません。 - ノートが増えすぎると迷子になりやすい
タグ・フォルダ・リンクを使って、「発表用」「実験ログ」などの区別を明確にする必要があります。 - プラグインに依存しすぎない
発表直前に環境が壊れると致命的なので、コアとなる発表用ノートはプレーンな Markdown で読める形を保っておくと安心です。
ベストプラクティス
- 発表用の Markdown テンプレートを用意しておく
- 各発表ごとに「発表ノート」(目的・構成・質疑応答)を必ず作り、次回に活かす
- スライドに使った図・表は、Obsidian ノートからたどれるフォルダに整理しておく
- 「この図の元データはどこ?」という問いに、Obsidian からすぐリンクで飛べる状態を目指す
FAQ:Obsidian と研究発表スライドに関するよくある質問
Obsidian だけで PowerPoint なしにスライド発表はできますか?
テキスト中心・シンプルな構成であれば、Markdown から HTML スライドなどを生成して、ブラウザ上で発表することは可能です。ただし、デザインの自由度や他人とのファイル共有を考えると、多くの場合は「構成は Obsidian、表現は PowerPoint/Keynote」で分けた方が実務的です。
研究室内の共有には Obsidian とスライド、どちらを基準にすべきですか?
発表内容の再利用や蓄積を考えるなら、Obsidian のノートを「情報の原本」として扱うのがおすすめです。スライドはそのときの聴衆や時間に合わせた「プレゼン用加工物」と考えると、整理の方針がぶれにくくなります。
数式やコードが多い発表でも Obsidian は役に立ちますか?
はい。Obsidian は Markdown ベースなので、数式(LaTeX)やコードブロックとの相性が良いです。数式やコードをまず Obsidian で整理し、その後でスライドにコピーすると、どの式・コードがどの文脈で出てきたかを追跡しやすくなります。
画像や図表を大量に使うときはどう整理すればいいですか?
図表ファイルを専用フォルダにまとめ、そのパスを Obsidian のノートから参照する形が現実的です。図のキャプションや用途(どのスライドで使うか)も一緒にメモしておくと、後から探しやすくなります。
Obsidian を使い始めたばかりですが、最初に何から手を付けるべきですか?
いきなりスライドまで完結させようとせず、まずは「論文1本1ノート」「研究テーマごとにマスターノート」の2つだけを習慣化するのがおすすめです。ある程度ノートがたまってきたら、それらを材料に発表用アウトラインを組む、というステップに進むとスムーズです。
まとめ:Obsidian は「スライドの前段階」を圧倒的に楽にしてくれる
Obsidian はスライド作成ツールそのものではありませんが、
- 研究ノートや文献メモの一元管理
- 発表ストーリーの設計(アウトライン作成)
- Markdown からのスライド生成パイプライン(必要に応じて)
といった形で、研究発表の準備全体を効率化するプラットフォームとして大きく貢献します。
今日からできる次の一歩としては、次のようなものがあります。
- 直近の1本の論文だけでも、Obsidian にテンプレート付きで要約ノートを作る
- 自分の研究テーマ用の「マスターノート」を1つだけ作り、背景・目的・手法・結果・考察をざっくり整理する
- 次の発表が決まったら、「発表用アウトライン」ノートを作り、スライド1枚分の粒度で箇条書きを並べてみる
この3つが回り始めると、「Obsidian を使っていてよかった」と感じる場面が一気に増えていきます。
