Obsidian には「Vault の最大容量は 4GB」という噂があり、研究ノートで PDF や画像を大量に扱う人ほど不安になりがちです。実際には、ローカル Vault に決まった容量上限はなく、制約がかかるのは Obsidian Sync や Publish などクラウド機能側のストレージ枠です。また、「同期がめんどうそう」という印象も、選ぶ同期方式と運用ルールを整理すればかなり軽くできます。本記事では、研究者・大学院生が Obsidian を使うときに気になりやすい「容量」と「同期」の不安を、インフラ設計という観点から分解していきます。
主なポイント
- 「最大 4GB」は ローカル Vault の制限ではなく、Sync / Publish などクラウド機能の話が元ネタの可能性が高い
- Obsidian Sync はプランごとに 1GB / 10GB+拡張オプションなどのストレージ上限があり、Publish 側には公開サイト 4GB 前後の制限がある(Obsidian)
- 研究用 Vault は「ノート中心の軽量ゾーン」と「PDF・画像など重いファイル」の役割分担を決めておくと肥大化リスクを抑えやすい
- 同期は「Obsidian Sync」「クラウドストレージ連携」「研究室サーバ/Git など自前インフラ」の 3 パターンを理解して、自分の環境に 1 つだけ採用するのが現実的
- 容量・同期に不安がある人ほど、先に「バックアップ方針」と「どこまでを Obsidian に入れるか」のルールを決めておくと安心できる
Obsidianの容量・同期の仕組みとは?
まず、「どこに何の制約があるのか」をざっくり整理します。
- Vault(ローカル保存)
- 実体は「1 つのフォルダ+その中の Markdown/添付ファイル」
- Obsidian 自体は、Vault の総容量に公式な上限を設けていません
- 実際には PC のストレージ容量と、検索・インデックスを回すための CPU / メモリがボトルネックになります(Reddit)
- Obsidian Sync(純正同期機能)
- 有料サブスクリプションで、Obsidian のサーバに暗号化して同期
- Standard プランは 1GB、Plus プランは 10GB のストレージ枠で、Plus は追加購入により最大 100GB まで拡張可能(Obsidian)
- 「容量制限」はこのストレージ枠に対してかかる
- Obsidian Publish(Web 公開)
- Vault の一部を Web サイトとして公開する機能
- 公開サイト側には 4GB 程度の上限があると紹介している解説もあり、「4GB」の数字はここから広まっている可能性があります(Notion活用の教科書)
研究者にとって重要なのは、「ローカル Vault 自体には 4GB のような固定上限はない」一方で、「クラウド側にはプランごとの枠がある」という切り分けです。
「最大4GB」という噂の正体は何か?
Yahoo!知恵袋に出てくる不安
ある Q&A サイトでは、次のような質問が出ていました。
Obsidian というデジタルノートアプリを使っているが、「最大容量 4GB」という噂は本当か? これはクラウド同期の上限なのか?(Yahoo!知恵袋)
この疑問には、いくつかの情報が混ざっていると考えられます。
1. 昔の Obsidian Sync の制限が独り歩きしている
Obsidian Sync は初期の頃、1 Vault あたり 4GB の制限がありました。その後、公式フォーラムで「4GB → 10GB に増量した」という告知が出ており、現在ではプランごとの総容量として 1GB / 10GB +拡張オプションという形に整理されています。(Obsidian Forum)
この「昔の 4GB 制限」だけが切り取られて、「Obsidian 全体の上限」として噂されている可能性があります。
2. Publish の 4GB 制限と混同されている
前述のように、Web 公開機能である Obsidian Publish には、公開サイト側で扱えるデータ量に 4GB 程度の上限があると説明する記事があります。(Notion活用の教科書)
「Obsidian の有料機能で 4GB という数字を見る」→「Obsidian は 4GB までしか使えないらしい」という連想が起きやすく、これも噂の一因となっていると考えられます。
3. 4GB は「メモリ(RAM)の上限」の話である場合も
Obsidian は Electron アプリなので、内部的には JavaScript エンジン(V8)のヒープメモリ上限として 4GB 前後の制約があります、という趣旨の議論も公式フォーラムで行われています。(Obsidian Forum)
これは「アプリが一度に使えるメモリ容量」の話であり、ディスク上の Vault サイズとは別物です。大規模 Vault で検索などをかけるときのパフォーマンスに影響はしますが、「4GB を超えた瞬間に使えなくなる」という意味ではありません。
ローカルVaultに容量上限はある?研究ノート的な現実ライン
実際には何GBくらいまで使われているのか
ユーザーの事例を見ると、
- テキスト中心のメイン Vault が数百 MB
- Evernote から移行した PDF・画像などを含む Vault が 20GB 以上
といった規模で使っている例も報告されています。(Reddit)
このことからも、ローカル Vault のサイズは「ディスク容量とマシン性能が許す範囲」と見るのが実態に近いです。
研究用Vaultで意識したい「現実ライン」
研究用途の場合、目安として次のように考えると現実的です(あくまで感覚値)。
- 〜1GB:ほぼ気にせず運用できる(ノート中心、軽い画像のみ)
- 1〜5GB:PDF・画像が増え始めるゾーン。検索やバックアップの時間を意識したい
- 5GB〜:丸ごと同期する場合はクラウド枠や転送時間が現実的かを検討する
- 10GB 超:ノートの役割と、生データ・画像アーカイブの役割を分ける設計を真剣に考える
特に研究分野では「電子顕微鏡画像」「測定データの CSV」「スライド PDF」などが Vault に流れ込みやすいため、「ノート」と「重いファイル」の線引きをどこで引くかが重要になります。
研究ノートはなぜVaultが肥大化しやすいのか?
研究ノート特有の事情として、次のようなファイルが大量に発生します。
- 図表・グラフの PNG / JPG
- 論文 PDF、査読用のドラフト、投稿用最終版
- 実験装置のログファイルや CSV
- 発表スライドの PPTX / PDF
これらを全部 Vault の attachments フォルダに放り込んでいくと、数年で 10GB 超えは普通に起こり得ます。
一方で、Obsidian に本当に「常時持たせたい」のは、どちらかと言えば次のような情報です。
- 文章としての研究ログ・実験ノート
- 文献の要約・抜き書き・自分の考察
- 発表構成や執筆アウトライン
- テーマ別・概念別のまとめノート
このギャップを埋める一つの解決策は、「ノートの Vault」と「ファイル倉庫」を分離し、ノートからリンクで参照する構成にすることです。
たとえば:
- Vault:テキストノート+サムネイル程度の軽い画像だけ
- 研究室サーバ / 外部ストレージ:元データ、巨大 PDF、スライドの実ファイル
- ノート側には「ファイルパス」「サーバ上のパス」「Zotero のキー」などをメモしておき、追跡できるようにする
文献 PDF や Zotero 連携の考え方については、既存記事の
Obsidianで研究ノートと文献整理を最適化するブログ&YouTubeまとめ もあわせて参考にしておくと、全体像を掴みやすくなります。
「同期がめんどうそう」という印象はどこから来る?
Yahoo!知恵袋のノートアプリ相談では、候補の一つとして Obsidian が挙がる一方で、
Obsidian(同期がめんどうくさそう?)
というコメントが添えられていました。(Yahoo!知恵袋)
研究者・大学院生の環境を想像すると、この印象はかなりリアルです。
- 研究室 PC(Windows)
- 自宅 PC(Windows / macOS)
- タブレット(iPad / Android)
- 研究室の共有サーバや NAS
- 場合によっては学科の制限が厳しい学内ネットワーク
このように 複数 OS + 複数ネットワーク+研究室ルールが絡む環境では、「よく分からない同期」はそもそも採用しにくいのが本音です。
Obsidianで選べる3パターンの同期方法
ここでは細かい設定手順ではなく、「どんな選択肢があって、研究用途ではどう見えるか」を整理します。
1. Obsidian Sync(純正同期)
向いているケース
- 個人の PC・タブレット間だけで同期したい
- 研究室側のストレージルールがそこまで厳しくない
- 通信経路の暗号化やゼロナレッジ暗号化など、セキュリティをそれなりに担保したい
メリット
- セットアップが比較的簡単で、「同期フォルダが壊れやすい」類のトラブルが起きにくい
- モバイルアプリとの相性がよい
- 暗号化同期なので、外部クラウドより心理的抵抗が少ない人もいる
注意点
- プランごとのストレージ枠(1GB / 10GB+拡張)を超えると、添付ファイルの扱い方を工夫する必要がある(Obsidian)
- 研究室のコンプライアンス上、「外部クラウドへの同期」が NG な場合は使えない
2. クラウドストレージ(OneDrive・Dropbox・Google Drive など)
向いているケース
- すでに研究室や大学で公式に採用されているクラウドがある
- 他のファイルも同じクラウドで同期しており、運用を一元化したい
メリット
- Obsidian から見ると単なる「ローカルフォルダ」なので、設定は Vault の場所をそのフォルダにするだけ
- 他の文書(Word・Excel・スライド)と一緒にバックアップされる
注意点
- 同期の仕組みはクラウド側なので、「同期中にファイルを開く」「同時編集で衝突する」といった一般的なクラウドのクセには注意
- モバイル側でのパス指定やオフライン利用が少しややこしくなるケースもある
3. 研究室サーバ・Git・Self-hosted LiveSync など自前インフラ
向いているケース
- 研究室に専用 NAS / サーバがあり、そこに研究関連データを集約する方針になっている
- 情報セキュリティ上、外部クラウドが原則禁止
- Git 管理や Docker 等に慣れている
メリット
- データを学内・研究室内に閉じ込められる
- 自分たちで容量を増やしたり、バックアップ戦略を決めたりしやすい
注意点
- 初期セットアップのハードルが高い(Self-hosted LiveSync のようなプラグインも、CouchDB / fly.io 等の構築が必要)(Obsidian Forum)
- ネットワーク障害時の挙動や、学外からのアクセスなど、運用設計も含めて自分たちで考える必要がある
研究分野ならではの同期戦略:何をどこまで同期させるか?
研究環境では、「すべてを 1 つの方法で同期しよう」とすると、むしろ運用が複雑になります。おすすめは次のような割り切りです。
- 「個人の頭の中」に近いノートだけを Obsidian で同期する
- 日々の研究ログ・アイデア・文献メモ・発表構成メモなど
- 生データや図表の元ファイルは研究室サーバ/専用クラウドに集約する
- Obsidian からはパスや識別子で参照する
- 共同研究の共有メモは Notion など別ツールに分離する
- 役割分担については
研究者目線で考える Obsidian vs Notion:個人研究の「母艦」に向いているのはどっち?
で詳しく整理されています
- 役割分担については
こうしておくと、Obsidian の Vault は「個人研究の中枢」に集中し、容量もそこまで爆発しません。
データ・事例・比較:どこまで太ったVaultが現実的か?
ここでは、容量と同期方式の組み合わせをざっくり比較しておきます。
パターンA:テキスト+軽い画像中心(〜1GB)
- 構成:研究ログ・文献メモ・軽めの図表スクショ
- Sync:Standard プラン(1GB)や一般的なクラウドストレージでも十分(Obsidian)
- 想定利用:B4〜修士のうちは、かなりの人がこの範囲に収まる
パターンB:PDF・画像多めの「全部入り」Vault(1〜10GB)
- 構成:論文 PDF、実験写真、スライド PDF などを一緒に保存
- Sync:Plus プラン(10GB)または大学のクラウドストレージが現実的(Obsidian)
- 注意:バックアップや検索インデックスの負荷が無視できなくなる
パターンC:長期研究+Evernote などからの移行 Vault(10GB〜)
- 構成:過去数年分のノート・PDF・画像を丸ごと集約
- Sync:
- Obsidian Sync のストレージ拡張(最大 100GB まで拡張可能)(Obsidian Help)
- 研究室サーバ+ローカルのみで運用し、モバイル同期は割り切って諦める
- 運用:明確に「ノートエリア」と「アーカイブエリア」をわけた設計がほぼ必須
「自分の研究スタイルだとどのパターンに近づきそうか」を一度シミュレーションしておくと、後からの移行コストがかなり減ります。
容量・同期まわりのベストプラクティス
ここからは、ありがちな失敗を避けるための具体的なコツをまとめます。
1. Vault の役割を最初に一言で定義する
- 例:「Obsidian は“研究ログと文献メモの中枢”、生データはサーバ」
- この一言があれば、「このファイルは本当に Vault に入れるべきか?」を判断しやすくなります
2. PDF・画像は「参照用」と「アーカイブ」を分ける
- Vault には「今よく参照する PDF」「論文図表のトリミング画像」だけを置く
- 元の巨大 PDF や測定データは、サーバや Zotero 側に置き、ノートからリンクする
- 文献管理の考え方は
Obsidianでの文献管理・引用はなぜ難しい?研究者がつまずきやすいポイント整理
もあわせて読むと、設計のヒントになります
3. 同期方式は「1パターン」に絞る
- 「Obsidian Sync+Dropbox+Git」などを同時に走らせると、どこかで衝突や混乱が起きがちです
- まずは
- 「個人なら Obsidian Sync」
- 「大学公式クラウドがあるならそちら」
など、ルールを 1 行で言える構成にしておくのが安全です
4. 研究室サーバとの連携ルールを決める
- Vault ごとサーバに置くのか
- ローカル Vault を定期的にサーバへバックアップするのか
- 生データ → サーバ、ノート → ローカル、という分担にするのか
このあたりは、研究室の「データ管理ポリシー」とセットで決めておくと後々トラブルを避けやすくなります。
5. 「発表用ファイル」の扱いをパターン化する
- スライド用画像や図表の整理は、
Obsidianは研究発表のスライド作成にどう活かせるのか?
で詳しく扱われています - 発表のたびに「どこに何を置くか」を変えると、Vault がカオス化し、容量も無駄に増えがちです
FAQ:容量・同期に関するよくある質問
Q1. Vault が 4GB を超えたら、突然動かなくなったりしませんか?
いいえ、ローカル Vault のサイズと 4GB という数字は直接関係ありません。
実際には十数 GB 規模の Vault を運用している例もあり、問題になるのは容量そのものよりも、マシン性能や検索時の負荷です。(Reddit)
Q2. 研究室PC・自宅PC・タブレットの3つだけなら、どの同期方法が現実的?
- 外部クラウドが許可されているなら、Obsidian Sync か大学公式クラウドのどちらか一つに絞るのが無難です
- モバイルでの快適さを重視するなら Obsidian Sync、大学の運用ルールの一貫性を重視するなら OneDrive 等が候補になります
Q3. 研究室サーバに Vault を直置きしてもいい?
技術的には可能ですが、常時ネットワーク越しにアクセスする形だと、
- レイテンシが大きい
- VPN 越しだと接続が切れやすい
といった問題が出やすくなります。
「ローカルに Vault、サーバにはバックアップ」という構成の方が、体験としては安定しやすいです。
Q4. 実験画像や測定データはどこまで Vault に入れてよい?
- 「ノートを読む文脈で必要な図表」だけを Vault に入れ、
- 元データや高解像度版はサーバ・外部ストレージに置く
という二段構えがおすすめです。
すべてを Vault に入れると、Sync / Publish のストレージ枠がすぐに埋まります。(Obsidian)
Q5. 将来 Obsidian をやめたくなったとき、容量面で困ることは?
Obsidian のノートは Markdown ファイルなので、テキスト部分は他ツールにも移行しやすいです。問題になりやすいのは大量の添付ファイルの整理・再リンクの手間なので、今のうちから「添付ファイルの置き場所」と「パスの書き方」を意識しておくと、将来の乗り換えコストを下げられます。
研究ノートとしての構造化については、
Obsidianを「研究ノート専用アプリ」にする具体的な使い方とテンプレート集
も参考になります。
まとめ:Obsidian導入前に決めておきたい「3つのルール」
最後に、容量・同期まわりの不安を減らすために、導入前に決めておきたいポイントを整理します。
- Vault の役割を 1 行で言語化する
- 例:「個人の研究ログと文献メモのための Vault。生データや巨大 PDF は別ストレージ」
- 同期方法を 1 つに決める
- Obsidian Sync なのか、大学公式クラウドなのか、研究室サーバなのか。
- 「とりあえず全部」ではなく、「これ 1 本」を決めることで運用がシンプルになります。
- 添付ファイルの扱い方を決める
- どの種類のファイルを Vault に入れ、どれをサーバや Zotero に逃がすかをざっくりルール化する。
- 文献とノートの連携は、
Obsidianで研究ノートと文献整理を最適化するブログ&YouTubeまとめ
を眺めながら自分なりの線引きを考えてみてください。
容量や同期の不安は、「ツールが怪しい」というよりも、「自分の研究環境に合わせたインフラ設計がまだ言語化されていない」ことが原因であることが多いです。本記事をたたき台にして、自分の環境に合ったルールを 1 枚のメモにまとめておくと、Obsidian を研究の母艦として育てやすくなるはずです。