Obsidianがしんどくなった研究者へ:正しく使えていない不安と、続かない自分との付き合い方

Obsidian を「第二の脳」として推す声が増えるほど、「自分は全然うまく使えていないのでは?」という不安や罪悪感も強くなります。
Reddit では「巨大なゴミ山を作っている気がする」「ADHD で 2 年頑張ってもノート習慣が 2 週間と続かない」といった声も多く、これは研究者コミュニティでも他人事ではありません。この記事では、Obsidian の機能そのものではなく、メンタル面・習慣のつまずき方に焦点を当てて、プレッシャーを減らしつつ現実的に続けるための考え方を整理します。

主なポイント

  • 「正しい使い方」は存在せず、自分にとっての“機能している状態”を定義することが先
  • 「巨大なゴミ山」のような Vault でも、検索と簡易な地図(インデックス)さえあれば十分回復できる
  • ADHD や習慣化の苦手さがあっても、「毎日続ける」より「必要なときに戻れる場」を設計する方が現実的
  • Obsidian に「人生を変えるアプリ」であることを期待しすぎると、ギャップと罪悪感だけが増える
  • メンタルを消耗させないために、「Obsidianにやらせないこと」をあえて決めるのも重要

Obsidian疲れとは?「第二の脳」ブームが生むプレッシャー

研究者・大学院生のあいだでは、Obsidian は「ライフチェンジングな第二の脳」と語られることが増えました。(B4から始める研究生活)
YouTube やブログを見ると、

  • 美しく整理された Vault のスクリーンショット
  • ツェッテルカステンやセカンドブレイン理論に沿った完璧なノート構造
  • AI や外部ツールと連携した高度なワークフロー

が次々に目に入ります。

その一方で、現実の自分の Vault は

  • 中途半端なフォルダとタグ
  • 似たようなノートが乱立
  • どこから手をつけていいか分からない

という状態になりがちです。ここに「自分はちゃんとできていない」という自己評価の低下が重なり、Obsidian 自体を開くのがしんどくなる――これがこの記事でいう「Obsidian疲れ」です。


「正しく使えていない気がして不安」なのはなぜ?

analysis paralysis で手が動かなくなる仕組みとは?

Reddit の r/ObsidianMD では、Obsidian を使おうとしても

「設定や構造を間違っていて、後で手に負えない巨大なゴミ山になりそうで怖い」

という「analysis paralysis(考えすぎて動けない)」の悩みが何度も語られています。(Reddit)

このマインドセットの裏側には、だいたい次のような前提があります。

  • 一度作った構造は後で簡単には変えられない
  • 最初から長期的に最適な構造を決めておくべきだ
  • 「正しい方法」が世の中にあって、自分はそれをまだ知らない

しかし、Obsidian のノートはただの Markdown ファイルです。

  • フォルダはいつでも作り直せる
  • 検索とリンクで、構造が完璧でなくても必要な情報には辿り着ける
  • 「今の自分にとっての仮の構造」を運用しながら、少しずつ変えていけばよい

という性質があります。ツールの設計を考えると、「最初の決断がすべてを決める」より「後からいくらでも修正できる」側に寄っていると考える方が自然です。

「巨大なゴミ山のVault」を恐れなくていい理由

「ゴミ山」メタファーの恐怖は、「後から整理し直すのが不可能なくらい大変になるのでは?」という不安から来ています。
ただし、実際に役立つのは**「すべてがきれいに整理された Vault」ではなく、「今の自分が使う経路だけは分かる Vault」**です。

たとえば、次の 3 つがあれば、かなりのカオスからでも回復可能です。

  1. 検索で辿れるキーワード
    • 実験名、プロジェクト名、論文タイトルなどを、ノートのどこかに必ず書いておく
  2. 最低限のインデックスノート(地図)
    • 「今取り組んでいる研究テーマ一覧」「進行中のプロジェクト一覧」のようなハブノートを 1 枚だけ作る
  3. 新しい構造は「ここから先」で採用する」ルール
    • 既存ノートを全部直そうとせず、「今日以降に作るノートだけ新ルールを適用する」

この 3 点さえ決めれば、過去のノートが雑でも**「これまでのカオスを抱えたまま前に進む」**ことができます。

研究ノートや文献メモの構造そのものを見直したいときは、Obsidian を研究ノート専用アプリとしてどう設計するかに特化した別記事を参考にすると、構造とメンタル面を切り分けやすくなります。
Obsidianを「研究ノート専用アプリ」にする具体的な使い方とテンプレート集

研究者にありがちな完璧主義とどう折り合う?

研究の世界では「再現性」「エビデンス」「きれいな図表」が求められるため、ノートにも同じ完璧さを求めがちです。

  • すべてのノートに同じテンプレートを適用したくなる
  • タグ体系が美しく揃っていないと気持ち悪い
  • 「このレベルで雑に書いていいのか」と自問してしまう

ここで意識したいのは、「一次ノート」と「二次ノート」を分けることです。

  • 一次ノート:思いつき・走り書き・とりあえずのメモ(雑で良い)
  • 二次ノート:論文や発表資料に近い、整理されたまとめ

一次ノートでは「雑さ」を許可し、二次ノートだけを「人に見せられるレベル」に整えると決めると、完璧主義の負荷を一気に下げられます。
二次ノートを作る段階で、必要なものだけ拾って整理すればよく、Vault 全体を磨き上げる必要はありません。


ADHD や習慣化の難しさとどう付き合う?

「2週間で途切れるノート習慣」は失敗ではない

ある Reddit 投稿者は、「ADHD で、Obsidian を 2 年近く使おうとしているが、一貫したノート習慣が 2 週間以上続かない。Vault はつぎはぎだらけで、見返しても散らかっていて気が散る」と打ち明けています。(Reddit)

ここで重要なのは、「2 週間で途切れる」ことそのものは 故障ではなくパターンだと捉えることです。

  • ADHD の特性として、興味の波・エネルギーの波が大きく揺れる
  • だから、「毎日欠かさず」型の習慣設計がそもそも相性が悪い

と考えた方が現実的です。

「いつまでも続ける習慣」を目指すより、むしろ

  • 2 週間〜1 ヶ月だけ集中して使う**「モード」**
  • モードを切っている期間でも、「戻れる場所」として Vault が残っている状態

を設計する方が、結果的に長く付き合えます。

ADHD の人が続けやすい Obsidian の考え方

ADHD 当事者の Obsidian ユーザーのコメントを読むと、共通しているのは次のような方針です。(Reddit)

  • Obsidian に「なんでもアプリ」役を押し付けない
    • タスク管理や家計簿など、他のアプリの方が楽なものは素直に外出しする
  • 「きれいなシステムを維持すること」を目的にしない
    • 目的は「必要なときに情報を取り出せること」だけに絞る
  • 一度にすべてを変えようとしない
    • プラグインやセットアップの試行錯誤は、「趣味時間」と割り切る

実際の運用としては、こんなミニマム構成から始めるのがおすすめです。

  • 1 枚の「今日のノート」(デイリーノート)
  • 進行中プロジェクトごとのフォルダ or タグ
  • あとは思いついた場所に書く(構造は後回し)

このレベルのラフさでも、「同じ場所を開けば情報がある」状態さえ維持できれば十分機能します。

継ぎはぎVaultを「役立つカオス」に変えるコツ

「つぎはぎだらけの Vault」を見返して落ち込む理由は、「これを全部きれいにしないといけない」と思ってしまうからです。

そうではなく、

  • 「散らかっていても困らない範囲」を決める
  • 「ここだけは分かりやすくしておく場所」を決める

の 2 つに分けて考えます。

具体的には次のような方針が取りやすいです。

  • 研究・学位に直結するノートだけ、専用ハブを作る
    • 例:研究テーマ_Hub.md に、関連するノートのリンクだけを貼っておく
  • 古いノートは、「アーカイブ」フォルダにざっくり避難させる
    • 内容を精査せず、「とりあえず過去のもの」というレベルで移動してしまう
  • 見返したときに初めて、タグやリンクを 1 つだけ足す
    • 「見返したノートだけ徐々に整う」仕組みにする

こうしておけば、Vault 全体はカオスでも、**「今の研究に必要な一角だけは分かりやすい」**状態にできます。


事例:世界の Obsidian ユーザーはどう折り合いをつけている?

英語圏の Obsidian コミュニティを眺めていると、ADHD を含む多くの人が次のようなスタイルで折り合いをつけています。(Reddit)

  1. 「なんでも詰め込む倉庫」として使う人
    • 研究メモだけでなく、家電の型番や設定、健康記録なども全部 Obsidian に入れる
    • 構造の美しさより、「ここを探せば何かしら見つかる」安心感を優先
  2. 研究・仕事専用に割り切る人
  3. 「波」を前提にした使い方をする人
    • 触らない週があっても気にせず、「必要になったら戻ればいい」と割り切る
    • 戻ってきたときに迷わないよう、ハブノートや簡単なインデックスだけを整えておく

どのスタイルにも共通しているのは、**「他人の完璧なシステムを再現しようとしない」**ことです。


メンタルを消耗させない Obsidian 運用ベストプラクティス

1. 「自分にとっての成功状態」を先に書き出す

まず、「Obsidian をうまく使えている状態とは何か」を 1〜2 行で書き出します。

  • 例)「直近 3 ヶ月の研究ノートと文献メモが、Obsidian 上で辿れる状態」
  • 例)「学会発表の準備に必要な資料が、ほぼ Obsidian だけで揃う状態」

この 「成功状態」から逆算して、最小限のルールだけ決めると、余分なこだわりを手放しやすくなります。

2. 「Obsidianにやらせないこと」を決める

Obsidian は何でもできそうに見える分、「これもあれも入れたくなる」罠があります。

  • タスク管理
  • ライフログ全部
  • スケジュール
  • 家計簿…

こうした領域は、専用ツールの方が圧倒的に楽なことが多いです。ADHD の人ほど、アプリごとに役割を分けておく方が混乱しにくいという報告もあります。(Reddit)

「Obsidian は 研究と長期的な思考整理担当」くらいに役割を絞ると、Vault の一貫性も保ちやすくなります。

3. プラグイン・テーマいじりは「趣味時間」に分離する

Obsidian のカスタマイズ性は大きな魅力ですが、ADHD の人にとっては「延々といじってしまう沼」でもあります。

  • プラグインを探す・試す時間
  • テーマや CSS をいじる時間

これらは、あらかじめ別枠の「遊び時間」として確保すると良いです。

  • 平日:デフォルトのセットアップで、研究ノートだけを書く
  • 週末:1 時間だけ「いじっていい時間」を作る

こう分けるだけで、「使えていない罪悪感」ではなく、「趣味として楽しむ感覚」に近づきます。

4. 「ゼロからやり直さない」リセット手順を決めておく

Vault が混沌としてきたときに「全部作り直したい」と思う瞬間がありますが、これはほとんどの場合、燃え尽きコースです。

代わりに、次のような「小さなリセット手順」を用意しておきます。

  1. 今日のノート を 1 枚作る
  2. そこに「今進行中の研究・タスク・論文」を箇条書きで書く
  3. それぞれにリンクできそうな既存ノートがあれば、1〜2 個だけ探して貼る

これだけでも、「今日やることと、関連ノートへの入口」が 1 画面に集まるので、精神的な負荷が大きく下がります。

5. 比較・情報収集は「ほどほど」で切り上げる

ブログや YouTube で他人のセットアップを見るのは楽しい一方で、「自分のやり方はダメなのでは?」という不安を増幅させる側面もあります。

情報収集をしたいときは、あらかじめ

  • 今日は「研究ノートの構造」だけ情報を探す
  • 30 分だけ他人の事例を見て、1 個だけ真似する

といったスコープと時間の上限を決めておくと、analysis paralysis にハマりにくくなります。

研究ノートや文献整理の具体的な事例を整理して見たいときは、情報源をまとめた記事を 1 本だけ起点にすると、迷子になりにくくなります。
Obsidianで研究ノートと文献整理を最適化するブログ&YouTubeまとめ


よくある質問(FAQ)

Obsidian を開くのがしんどいときは、どうすればいいですか?

「開いたらちゃんと整理しなきゃ」という思い込みが、しんどさの正体になっていることが多いです。
まずは「今日のノートを開いて、一行だけ書いて閉じていい」と決めてください。研究と関係ない一言日記でも構いません。「開く → 書く → 閉じる」の敷居を下げることで、Obsidian 自体への心理的ハードルを下げていきます。

Vault がぐちゃぐちゃです。新しく作り直すべきでしょうか?

よほど致命的な事情(研究室のルール変更など)がない限り、ゼロから作り直す必要はありません
むしろ、新 Vault を作ると、また同じパターンで散らかる可能性が高いです。既存 Vault では「ハブノートを 1 枚作る」「アーカイブフォルダを作って古いノートを放り込む」など、小さなリセットから始める方が現実的です。

ADHD でルールを守れません。最低限これだけは決めておいた方がいいことは?

全部をルール化しようとしないことが前提です。その上で、次の 2 つだけ決めておくと安定しやすくなります。

  1. 「必ずここから書き始める場所」(デイリーノートなど)
  2. 「いま進行中の研究テーマ一覧ノート」

この 2 点さえ守れば、途中でルールが変わっても、「どこを開けば現状が分かるか」は維持できます。

Obsidian 以外のツールを併用してもいいですか?

もちろん問題ありません。むしろ、タスク管理・カレンダー・家計簿などは専用アプリの方が合っていることも多いです。
研究そのものの「母艦」としてどのツールを採用するか迷っている場合は、Obsidian と Notion の役割の違いを整理した比較記事を一度読んでおくと、ツール選択のモヤモヤが減ります。
研究者目線で考える Obsidian vs Notion:個人研究の「母艦」に向いているのはどっち?

研究ノート用テンプレートがしっくりきません。どう考えればいいですか?

テンプレートはあくまで「たたき台」であり、自分の研究スタイルに合わせて壊していく前提で捉えるのがおすすめです。
「毎回必ず書いている項目」と「ほとんど埋まらない項目」を数回の実験で見極め、後者は容赦なく削ってください。テンプレートや具体的な型を試したいときは、それに特化した記事を参考にしつつ、「そのままではなく、自分用に間引く」ことを意識すると良いです。
Obsidianを「研究ノート専用アプリ」にする具体的な使い方とテンプレート集

学会発表やスライド作成のとき、Obsidian が逆に負担になります

スライド作成は「見せ方」を考える工程が多く、Obsidian のテキスト中心の世界とは少し性質が違います。
このフェーズは、Obsidian を「素材置き場」と割り切り、実際のスライド構成はプレゼン用ツール側で組み立てる方が、メンタルの負担が小さいケースも多いです。Obsidian を発表準備にどう絡めるかは、別記事で具体的な活用例を参照しつつ、自分にとっての「ちょうどいい距離」を探ってください。
Obsidianは研究発表のスライド作成にどう活かせるのか?


まとめ:Obsidian に期待しすぎず、「戻ってこれる場」を育てる

Obsidian を「人生を変える第二の脳」として理想化しすぎると、現実とのギャップが大きくなり、続かない自分を責める結果になりがちです。
大事なのは、「完璧な知識システム」ではなく、「今の自分が必要なときに戻ってこれる場」として Obsidian を育てていくことです。

今日からできる次の一歩は、例えば次の 3 つです。

  1. Obsidian を開き、「自分にとってのうまく使えている状態」を 1〜2 行で書く
  2. 「Obsidianにやらせないことリスト」を 3 つだけ決める(例:タスク管理、家計簿、日常の細かいメモなど)
  3. 進行中の研究テーマだけをまとめたハブノートを 1 枚作る

この 3 つを済ませれば、「巨大なゴミ山」への恐怖よりも、「とりあえずここを見れば何とかなる」という安心感が少しずつ上回っていきます。
Obsidian はあなたを裁くツールではなく、散らかったままでも支えてくれるワークスペースくらいに捉えておくのが、長く付き合ういちばんのコツです。

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