「研究で使いたい装置があるけれど、学内にない」
「SEMやXRD、NMRを使いたいけれど、どこに相談すればよいか分からない」
「共同研究や受託分析を考える前に、まず候補設備を一覧で見たい」
こうした場面で使いやすいのが、研究機器検索サービスのキキドコ?です。キキドコ?は、国立研究機関・国立大学・私立大学・高専の共用設備を一箇所で検索でき、地域別の分布を見ながら設備候補を探せるサービスとして公開されています。 (キキドコ?)
結論から言うと、キキドコ?は「予約まで全部完了するサービス」というより、研究に必要な装置を探すための入口として使うのが向いています。
特に大学4年生(B4)・修士学生・若手研究者にとっては、次のような場面で役立ちます。
| 困っていること | キキドコ?でできること |
|---|---|
| 学内に目的の装置がない | 学外の共用設備候補を探せる |
| どの地域に装置があるか分からない | 地域別に設備の分布を見ながら候補を絞れる |
| 共同研究先を考える材料がほしい | 装置を持つ機関を調べる入口になる |
| 受託分析・共用設備の候補を比較したい | 複数候補を並べて問い合わせ前の整理ができる |
| 研究計画に必要な測定手段を探したい | 装置名・分析手法から実現可能性を確認しやすい |
この記事では、キキドコ?の特徴だけでなく、研究室で実際に使うときの探し方、問い合わせ前に確認すべきこと、B4・院生が失敗しやすいポイントまで整理します。
キキドコ?とは
キキドコ?は、全国の研究機関・大学・高専などにある共用設備を横断的に探せる研究機器検索サービスです。
共用設備とは、簡単に言えば「所属機関の外部からでも、条件を満たせば利用できる可能性がある研究設備」のことです。すべての設備が誰でも自由に使えるわけではありませんが、学内だけで装置を探すよりも選択肢を広げられます。
キキドコ?の特徴は、主に次の3つです。
| 特徴 | 研究者・学生にとってのメリット |
|---|---|
| 複数機関の共用設備を一箇所で検索できる | 大学・研究機関ごとのページを個別に探し回る手間を減らせる |
| 地域別の分布を見ながら探せる | 移動可能な範囲、サンプル送付の現実性を考えやすい |
| 研究装置を探す入口になる | 研究計画、共同研究、外部分析の候補出しに使いやすい |
たとえば、セメント・コンクリート系の研究なら、XRD、SEM、TG-DTA、FTIR、固体NMR、ICP、XRF、万能試験機、耐久性試験関連の設備などが候補になります。生命科学系なら、共焦点顕微鏡、NGS、LC-MS/MS、HPLCなどを探す場面もあります。
大事なのは、「装置名を検索して終わり」ではなく、自分の研究目的に対して本当に使える設備かを比較することです。
キキドコ?が向いている人
キキドコ?は、特に次のような人に向いています。
学内にない装置を使いたいB4・M1
研究室に配属されたばかりのB4や、テーマが固まり始めたM1は、まず「自分の研究で何を測る必要があるのか」を把握する段階にいます。
この時期にありがちなのが、先生や先輩から「この測定ができるところを探しておいて」と言われるケースです。
ただ、初めてだと、
- 装置名で探せばいいのか
- 分析手法で探せばいいのか
- 近くの大学から探せばいいのか
- 受託分析と共用設備の違いは何か
が分かりにくいはずです。
キキドコ?を使うと、まず候補設備を広く見つけてから、条件を絞って比較できます。研究室配属直後の動き方を整理したい人は、あわせて新B4・新配属生が最初の土日にやること10選も参考になります。
共同研究の候補を探したい学生・若手研究者
研究では、「装置を借りたい」だけでなく、「その装置に詳しい人と相談したい」という場面もあります。
たとえば、セメント硬化体の微細構造を見たい場合、SEMがあるかどうかだけでなく、試料乾燥、樹脂含浸、研磨、低真空観察、EDS分析などのノウハウが重要になります。
設備検索は、単なる装置探しではなく、相談先を見つける入口にもなります。
研究計画書や卒論計画を具体化したい人
研究計画では、「この測定を行う」と書くだけでは不十分なことがあります。
実際には、
- その装置がどこにあるのか
- 測定にどれくらい時間がかかりそうか
- サンプルの前処理が必要か
- 学外利用できる可能性があるか
- 費用が発生するか
まで考えておくと、計画の現実味が上がります。
研究テーマの決め方や計画段階で迷っている人は、研究テーマの見つけ方:若手研究者(大学生、院生)のための実践ガイドと合わせて読むと、装置探しを研究設計の中に位置づけやすくなります。
キキドコ?の基本的な使い方
ここでは、研究室で実際に使うことを想定して、キキドコ?の使い方を手順で整理します。
1. まず「何を知りたいのか」を決める
最初に決めるべきなのは、装置名ではなく研究目的です。
たとえば、次のように整理します。
| 研究目的 | 探す装置・分析の例 |
|---|---|
| 結晶相を調べたい | XRD、粉末X線回折 |
| 表面や断面の形を見たい | SEM、光学顕微鏡、共焦点顕微鏡 |
| 元素組成を見たい | EDS、XRF、ICP |
| 官能基や結合状態を見たい | FTIR、Raman |
| 熱分解・水和物量を見たい | TG-DTA、DSC |
| ナノスケール構造を見たい | TEM、AFM |
| 分子量・成分を調べたい | LC-MS/MS、HPLC、GC-MS |
| 遺伝子配列を調べたい | NGS、DNAシーケンサー |
「SEMを使いたい」と考えるより、「空隙構造を見たい」「水和生成物の形態を観察したい」と考えた方が、必要な条件を判断しやすくなります。
2. 装置名・分析手法・試料名で検索する
次に、キキドコ?で候補設備を検索します。
検索するときは、1つの言葉だけでなく、近い表現をいくつか試すのがコツです。
たとえばXRDなら、
- XRD
- X線回折
- 粉末X線回折
- X-ray diffraction
SEMなら、
- SEM
- 走査電子顕微鏡
- 電子顕微鏡
- EDS
- 元素分析
のように検索語を変えると、候補の見落としを減らせます。
装置名が分からない場合は、まず論文で使われている分析名を確認してから検索すると進めやすいです。文献調査の精度を上げたい人は、研究に役立つ情報Wiki内の論文検索・文献管理系の記事も参考になります。
3. 地域で絞る
候補が出てきたら、次は地域で絞ります。
研究機器を探すときは、性能だけでなく「行けるか」「送れるか」「日程が合うか」がかなり効きます。
特に学生の場合、次の制約があります。
| 制約 | 確認すること |
|---|---|
| 移動時間 | 日帰りで行けるか、宿泊が必要か |
| サンプル送付 | 郵送・宅配で受け付けてもらえるか |
| 指導教員の許可 | 学外利用・共同研究として進められるか |
| 予算 | 研究室予算で利用できる範囲か |
| 日程 | 卒論・修論の締切に間に合うか |
遠方でも依頼測定が可能なら選択肢に入ります。一方、自分で装置を操作する必要がある場合は、移動のしやすさも重要です。
4. 候補を3〜5件に絞って比較する
最初から1件に決めるより、3〜5件ほど候補を出して比較する方が安全です。
比較表は、次のように作ると実務で使いやすくなります。
| 候補 | 機関・設備名 | 地域 | 学外利用 | 依頼測定 | 費用 | 予約 | 気になる点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | ○○大学 SEM | 関東 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 | セメント試料の観察可否 |
| B | ○○研究機関 XRD | 関西 | 可 | 不明 | 有料 | 予約制 | 粉末試料の前処理条件 |
| C | ○○高専 FTIR | 東海 | 要確認 | 可 | 要相談 | 要確認 | ATR測定の可否 |
ここで大事なのは、検索結果だけで判断しないことです。設備名が近くても、実際に測れる試料、測定条件、利用対象、料金、予約方法は施設ごとに異なります。
問い合わせ前に確認すべきこと
キキドコ?で候補を見つけたら、すぐに「使わせてください」と連絡するより、先に自分の条件を整理しておく方が話が早く進みます。
問い合わせ前に、少なくとも次の項目を準備しておくと安心です。
| 確認項目 | 具体例 |
|---|---|
| 測定目的 | セメント硬化体の水和生成物を観察したい |
| 試料の種類 | 粉末、薄片、固体片、溶液、樹脂包埋試料など |
| 試料サイズ | 10 mm角、粉末1 g、溶液5 mLなど |
| 前処理 | 乾燥、粉砕、研磨、コーティング、水和停止など |
| 希望するデータ | 画像、スペクトル、回折パターン、定量値など |
| 希望時期 | 卒論中間発表前、修論提出の1か月前など |
| 利用形態 | 自分で操作したいのか、測定を依頼したいのか |
| 予算 | 見積が必要か、研究室予算で支払えるか |
問い合わせ文の例
そのまま使えるように、学生向けの問い合わせ文を用意しておきます。
○○大学 ○○センター ご担当者様
突然のご連絡失礼いたします。
○○大学○○研究室の○○と申します。
現在、セメント硬化体の微細構造観察を目的として、SEM観察が可能な共用設備を探しております。
キキドコ?で貴設備を拝見し、学外利用または依頼測定の可否について確認したくご連絡いたしました。
試料は○○条件で養生したセメント硬化体で、乾燥後に断面観察を行いたいと考えています。
現時点では、以下の点を確認させていただきたいです。
・学外学生による利用または依頼測定は可能でしょうか
・試料サイズや前処理条件に指定はありますでしょうか
・EDS分析も併せて依頼可能でしょうか
・利用料金や見積取得の流れを教えていただけますでしょうか
・○月中の測定は可能でしょうか
お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。このように、装置名だけでなく「何を、なぜ、どの条件で測りたいのか」を書くと、設備担当者も可否を判断しやすくなります。
キキドコ?と大学連携研究設備ネットワークの違い
研究機器を探していると、「大学連携研究設備ネットワーク」という仕組みも出てきます。
ざっくり整理すると、キキドコ?は候補設備を探す入口、大学連携研究設備ネットワークは設備検索・予約・利用・実績確定・支払いまで含む仕組みとして理解すると分かりやすいです。
| 項目 | キキドコ? | 大学連携研究設備ネットワーク |
|---|---|---|
| 主な役割 | 共用設備の候補を探す入口 | 設備利用・予約・課金まで含む仕組み |
| 使う場面 | どこに装置があるか調べたい | 登録済み設備を実際に利用したい |
| 向いている段階 | 候補出し・比較・相談先探し | 予約・利用・支払い手続き |
| 注意点 | 最終条件は各設備に確認が必要 | 利用には登録や権限設定が関係する |
大学連携研究設備ネットワークの仕組みを詳しく知りたい場合は、大学連携研究設備ネットワークとは?使い方・申請手順・活用例まで徹底解説で、利用の流れや相互利用・依頼測定の違いを確認できます。
セメント・コンクリート研究での活用例
「共用設備を探す」と言われても、少し抽象的に感じるかもしれません。
ここでは、セメント・コンクリート系の研究を例に、キキドコ?をどう使うかを考えてみます。
例1:XRDで水和生成物を確認したい
セメント硬化体や混和材を扱う研究では、XRDで結晶相を確認したい場面があります。
この場合、検索時は「XRD」「X線回折」「粉末X線回折」などで候補を探します。
問い合わせ前には、次の点を整理します。
- 粉末試料か、固体試料か
- 水和停止は済んでいるか
- 測定範囲はどこまで必要か
- リートベルト解析まで必要か
- 標準試料や内部標準を使うか
「XRDを使いたいです」だけだと、担当者は判断しにくいです。「セメント硬化体の水和生成物の結晶相を確認したい」と書くと、測定条件の相談に入りやすくなります。
例2:SEMで微細構造を観察したい
SEMは、セメント硬化体の組織観察、混和材の形状確認、破断面観察などで使われます。
ただし、SEMは試料前処理の影響が大きい装置です。
確認したいことは、たとえば次のようになります。
- 乾燥方法はどうするか
- 研磨断面が必要か
- 導電処理が必要か
- 低真空SEMが使えるか
- EDS分析が可能か
- セメント系試料の観察実績があるか
特にセメント硬化体は水分や空隙の影響を受けやすいため、単に装置があるかだけでなく、試料調整まで相談できるかが重要です。
例3:FTIRやTG-DTAで反応や生成物を確認したい
FTIRやTG-DTAは、セメント系材料の水和生成物、有機混和剤、炭酸化、脱水挙動などを見るときに使われます。
この場合も、装置名だけでなく目的を明確にします。
| 測定 | 目的の例 | 確認すること |
|---|---|---|
| FTIR | 官能基・炭酸塩・硫酸塩などの確認 | ATRかKBr法か、粉末量、前処理 |
| TG-DTA | 水和物量・脱水・炭酸塩分解の確認 | 温度範囲、昇温速度、雰囲気 |
| DSC | 熱挙動の比較 | 試料容器、温度範囲、必要試料量 |
候補設備を探す段階ではキキドコ?を使い、測定条件は設備担当者と詰める、という流れが現実的です。
使うときの注意点
キキドコ?は便利な入口ですが、検索結果だけで利用可否を確定できるわけではありません。
特に次の点には注意してください。
利用条件は各機関で異なる
共用設備と書かれていても、利用対象、予約方法、料金、外部利用の可否は設備ごとに違います。
学生個人で申し込める場合もあれば、指導教員や研究室単位での手続きが必要な場合もあります。研究費の支払い、請求書、見積書、所属機関の事務手続きが関わることもあります。
「近い設備」が最適とは限らない
近くの設備は移動しやすい一方で、目的の測定に慣れていない場合もあります。
逆に遠方でも、依頼測定が可能で、目的に近い試料の実績がある施設なら、結果的にスムーズなこともあります。
比較するときは、距離だけでなく、
- 試料との相性
- 担当者に相談できる範囲
- 納期
- 料金
- データの形式
- 追加解析の可否
を合わせて見ます。
卒論・修論の直前に探し始めると遅い
研究機器の利用は、思ったより時間がかかります。
候補探し、問い合わせ、見積、指導教員の確認、事務手続き、サンプル準備、予約、測定、データ整理まで考えると、数日で完結しないこともあります。
卒論・修論で使う可能性があるなら、「測定が必要になってから探す」ではなく、「必要になりそうな段階で候補だけ出しておく」方が安全です。
キキドコ?を研究生活で活かすコツ
キキドコ?は、単に装置を探すだけでなく、研究計画の精度を上げるためにも使えます。
おすすめの使い方は、次の3ステップです。
- 論文を読んで、必要な測定手法を洗い出す
- キキドコ?で、利用できそうな設備を3〜5件探す
- 指導教員や先輩に、候補表を見せて相談する
この流れにすると、「どこかにありませんか?」という丸投げ相談ではなく、「この3件が候補だと思うのですが、研究目的に合いそうでしょうか?」という相談ができます。
先生や先輩も、具体的な候補がある方が助言しやすくなります。
FAQ
Q. キキドコ?だけで予約までできますか?
キキドコ?は、研究装置・共用設備を探す入口として使うサービスです。実際の利用可否、予約方法、料金、必要書類などは、各設備・各機関の案内を確認する必要があります。
Q. B4や修士学生でも共用設備を使えますか?
使える可能性はありますが、学生個人で直接申し込めるとは限りません。指導教員、研究室、所属機関の事務手続きが必要な場合があります。まずは候補設備を整理し、指導教員に相談するのが現実的です。
Q. 装置名が分からない場合はどう探せばいいですか?
まずは「何を測りたいのか」から考えます。結晶相ならXRD、表面形状ならSEM、官能基ならFTIR、元素組成ならXRFやICPなど、目的から装置候補を逆算します。論文の実験方法に出てくる分析名を手がかりにするのも有効です。
Q. 受託分析と共用設備はどう違いますか?
ざっくり言えば、受託分析は「測定を依頼して結果を受け取る」形、共用設備は「条件を満たせば設備を利用できる」形です。ただし、実際の運用は施設ごとに異なります。初回利用では、自分で操作するより依頼測定の方がスムーズな場合もあります。
まとめ|キキドコ?は研究機器探しの最初の一手になる
キキドコ?は、全国の共用設備を一箇所で探し、地域別の分布を見ながら候補を整理できる研究機器検索サービスです。
研究で装置が必要になったとき、いきなり問い合わせるのではなく、まずは次の順番で進めると失敗しにくくなります。
- 測定目的を決める
- 装置名・分析手法・試料名で検索する
- 地域や利用条件で候補を絞る
- 3〜5件を比較表にまとめる
- 指導教員に相談してから問い合わせる
特にB4・M1の段階では、「装置を探す力」そのものが研究を進める力になります。
学内に装置がないからといって、すぐに諦める必要はありません。まずはキキドコ?で研究装置を検索し、自分の研究目的に合いそうな共用設備を候補として整理してみてください。


