セメント分野の論文を読み始めると、XRDパターン、NMRスペクトル、TG-DTA曲線、等温熱量曲線が次々に出てきます。
説明文は読めても、図を前にすると次のような疑問が出てくるのではないでしょうか。
- どのピークから見ればよいのか
- 縦軸の値が大きいほど反応が進んでいるのか
- 曲線の違いをどこまで意味のある変化として扱うのか
- 著者の説明を、そのまま信じてよいのか
結論からいえば、セメント論文の図表はピークの名前を覚える前に、図の目的、軸、比較条件、変化の方向を確認すると読みやすくなります。
基本の順番は次のとおりです。
何を確かめる図か
↓
横軸・縦軸・単位
↓
比較している試料と条件
↓
最も大きな違い
↓
ピーク位置・面積・形状
↓
著者の解釈
↓
別の分析結果と矛盾しないか
XRDなら結晶相、NMRなら原子周辺の構造、TG-DTAなら加熱時の質量変化、等温熱量測定なら水和反応の速さを見ています。
同じ「ピーク」でも、測定ごとに意味が異なります。この記事では、各分析の図を読む順番と、1本のセメント論文を複数の図から追う方法を整理します。
セメント論文の図表を読む順番
1.最初に図の目的を1文にする
図を細かく見る前に、キャプションと前後の文章を読み、図の目的を1文で書きます。
例えば、次のように整理します。
フライアッシュの添加によって、セメントの初期水和が遅れるかを比較した図。
養生期間の増加に伴い、未水和クリンカーと水和生成物がどう変化するかを調べた図。
目的が分からないままピークを眺めると、「この山は何だろう」と個々の形に意識が向き、著者が検証したかった内容を見失います。
2.横軸と縦軸を確認する
同じ分析でも、表示方法によって図の意味が変わります。
| 分析方法 | 主な横軸 | 主な縦軸 | 最初に確認する点 |
|---|---|---|---|
| XRD | 回折角2θ、散乱ベクトル | 回折強度 | X線源、測定範囲、強度の規格化 |
| NMR | 化学シフト(ppm) | 信号強度 | 測定核、MASかCP/MASか、軸の向き |
| TG-DTA | 温度、時間 | 質量、質量減少速度、温度差 | TG・DTG・DTAのどれか、雰囲気、昇温速度 |
| 等温熱量測定 | 水和時間 | 熱流、累積発熱量 | 単位、基準質量、測定開始時刻 |
特に注意したいのが、縦軸の規格化です。
「セメント1g当たり」「結合材1g当たり」「クリンカー1g当たり」では、同じ配合でも値が変わります。混和材を置換した試料では、何を基準に割った値なのかを確認しないと、公平な比較ができません。
3.比較条件を表に戻って確認する
図の凡例だけでは、試料の違いを把握できないことがあります。
最低限、次の条件を確認します。
- セメントと混和材の種類
- 置換率
- 水結合材比
- 養生期間と養生温度
- 水和停止・乾燥方法
- 粉砕やふるい分けの条件
- 分析装置と測定条件
セメント系では、試料の前処理によって水和物や炭酸化の状態が変わる場合があります。そのため、図を読む作業は結果の章だけで完結せず、実験方法の章と行き来しながら進めます。
4.細かなピークより先に、大きな違いを見る
図を開いて最初に探すのは、細いピークではありません。
まず、次のような大きな変化を確認します。
- ピークが右または左に移動している
- ピークが高くなった、低くなった
- 面積が増えた、減った
- 幅が広がった
- 新しいピークが現れた
- 以前あったピークが消えた
- 曲線全体が遅い時間側に移動した
その後で、どの相や反応に対応するかを調べます。
5.図から読める事実と解釈を分ける
論文を読むときは、次の2行を分けて記録すると理解しやすくなります。
観察した事実:
試料Bでは、試料Aより主ピークが約3時間遅い。
考えられる解釈:
添加材料によって初期水和が遅延した可能性がある。
「ピークが遅い」は図から直接読める事実です。
一方、「添加材料がC₃S表面に吸着したため遅れた」は、反応機構に関する解釈です。著者がそう説明していても、別の測定結果や既往研究による裏付けが必要です。
XRD図の見方
XRDは、試料に含まれる結晶相を調べるために使われます。
ただし、セメントにはエーライト、ビーライト、アルミネート相、フェライト相、石膏、方解石など多くの相が含まれ、同じ回折角付近に複数のピークが重なります。NISTも、セメントのXRDパターンではピーク重なりが多く、単独ピークの強度だけで相を定量することが難しいと説明しています。全パターンを使うリートベルト解析は、この重なりを扱うための代表的な方法です。
XRDを読む5つの手順
1.未水和試料と水和試料を区別する
未水和セメントでは、クリンカー鉱物の鋭いピークが中心です。
水和後の試料では、未水和鉱物の減少に加えて、ポルトランダイト、エトリンガイト、AFm相などの生成を確認します。
初学者は「新しく生じたピーク」だけに注目しがちですが、原料相のピークがどれだけ残っているかも重要です。
2.ピークを1本だけで決めない
セメントXRDでは、29~33°付近などに複数の主要相が集中します。
そのため、強いピークを1本見つけても、すぐに相を断定しません。
候補となるピークを見つける
↓
同じ相に属する別のピークを探す
↓
試料の配合や材齢と矛盾しないか確認する
↓
他の相との重なりを確認する
具体的な回折角と主要相の確認方法は、セメントXRD解析入門:エーライト・ビーライトのピークの読み方で詳しく整理しています。
3.ピーク高さだけで相量を判断しない
次のような読み方は避けます。
ピークが2倍になったため、この相の量も2倍になった。
回折強度は相量だけでなく、試料の詰め方、粒径、配向、測定条件、ピーク重なりなどの影響を受けます。
同一条件で測定した試料間の傾向を見ることはできますが、厳密な相量を議論する場合は、リートベルト解析、内部標準法、外部標準法などの定量方法を確認します。解析値が示されている場合も、計算値と実測値の差や、残差曲線が妥当かを見る必要があります。
4.幅広い盛り上がりを無視しない
水和セメントには、C-S-Hなど結晶性の低い成分が多く含まれます。
鋭いピークが見えないからといって、その相が存在しないとは限りません。NISTの研究でも、水和セメントは相当量の非晶質成分を含むため、XRDだけで水和相全体を説明することには限界があるとされています。
幅広い盛り上がりを見つけた場合は、次の可能性を考えます。
- C-S-Hなど結晶性の低い水和物
- 未反応のガラス相
- 非晶質シリカ
- バックグラウンド処理の影響
5.XRDで分からないことを区別する
XRDで強く分かるのは、主に結晶相です。
一方、次の内容はXRD単独では判断しにくい場合があります。
- C-S-H中のシリケート鎖の長さ
- 結晶性の低い相の正確な量
- 水和物中のAlの配位状態
- 反応速度
- ピークが重なる相どうしの細かな区別
そこで、NMR、TG-DTA、等温熱量測定などを組み合わせます。
TG-DTA曲線の見方
TG-DTAでは、試料を加熱したときに生じる質量変化と吸熱・発熱反応を調べます。
図には、次の曲線が表示されることがあります。
| 表示 | 読み取る内容 |
|---|---|
| TG | 温度上昇に伴う質量の変化 |
| DTG | 質量減少速度。TGの変化点を見つけやすい |
| DTA | 基準物質との温度差。吸熱・発熱反応を示す |
| DSC | 試料に出入りする熱流 |
TG-DTAを読む4つの手順
1.どの曲線を見ているか確認する
TG曲線では、段差の大きさから質量減少量を読みます。
DTG曲線では、山や谷として現れる温度から、質量減少が最も速い位置を読みます。
DTAやDSCでは、吸熱・発熱ピークを読みます。論文によってピークの上下方向が異なる場合があるため、「Exo」「Endo」などの表示を最初に確認します。
2.低温側の変化をまとめて見る
水和セメントの低温側には、自由水、吸着水、C-S-H、エトリンガイト、AFm相など、複数の水を含む成分の影響が重なります。
NISTの測定例では、約150℃以下に複数の水和生成物から生じる幅広く重なった質量減少が見られています。そのため、低温側の山を1本ずつ完全に分け、単一の水和物に割り当てるのは慎重に行う必要があります。
3.ポルトランダイトの変化を見る
ポルトランダイトは、加熱によって水を失い、酸化カルシウムへ変化します。
NISTの測定例では、約425℃付近にポルトランダイトの脱水に対応する明瞭なピークが現れ、このピークを使って含有量が推定されています。実際のピーク温度は、装置、昇温速度、試料、雰囲気などによって変わるため、425℃という値をすべての論文にそのまま当てはめるものではありません。
ポルトランダイトの減少を見つけた場合は、少なくとも二つの可能性を考えます。
- クリンカーの水和が進まず、ポルトランダイトの生成量が少なかった
- ポゾラン反応などによって、生成したポルトランダイトが消費された
TG-DTAだけでは、この二つを区別できない場合があります。
未水和鉱物の残存量をXRDで確認したり、C-S-Hの構造変化をNMRで確認したりして判断します。
4.炭酸塩と前処理を確認する
高温側の質量減少には、炭酸カルシウムの脱炭酸が含まれることがあります。
ただし、試料は保管、粉砕、乾燥、水和停止の間にも炭酸化する可能性があります。方解石が原料由来なのか、試料作製後の炭酸化によって生じたのかを区別するには、未水和試料、ブランク試料、XRD結果などとの比較が必要です。
TG-DTAの温度帯や定量方法を詳しく確認したい場合は、論文の実験方法に記載された雰囲気、昇温速度、試料量、基準質量まで戻って確認します。
NMRスペクトルの見方
セメント分野では、主に固体の^29Si MAS NMRと^27Al MAS NMRが使われます。
XRDが結晶の長い範囲にわたる規則性を見るのに対し、NMRはSiやAlの周辺にどのような原子があるかを調べる方法です。C-S-Hのように結晶性が低い相でも、SiO₄四面体のつながり方を検討できます。^29Siの化学シフトは、四面体のつながり方だけでなく、周囲のCaやHの配置などにも影響されるため、ピーク位置だけで構造が一意に決まるわけではありません。
NMRを読む5つの手順
1.何の原子核を測っているか確認する
^29Si NMRでは、主にシリケート構造を見ます。
^27Al NMRでは、Alの配位状態や、Alがどの水和物またはゲルに含まれているかを検討します。
同じ「NMR」という名前でも、測定核が異なれば縦軸に現れる信号の意味も異なります。
2.MASとCP/MASを区別する
MASは、固体試料を一定の角度で高速回転させ、スペクトルを読みやすくする方法です。
CP/MASでは、水素に近いSiなどの信号が強調されやすくなります。水和相を見つける目的では有用ですが、通常のMASと同じ感覚でピーク面積を定量比較できるとは限りません。実際のセメント研究でも、通常の^29Si MAS NMRと^1H–^29Si CP/MAS NMRは、異なるSi環境を区別するために併用されています。
図を見たら、測定名に「CP」が含まれていないかを確認します。
3.化学シフトの軸を確認する
NMRでは、横軸が化学シフトを表します。
論文によって表示範囲や軸の向きが異なるため、左から右へ順番に読めばよいとは限りません。最初に横軸の数値を確認し、各ピークがどの化学シフトにあるかを読みます。
4.Q⁰・Q¹・Q²の変化を見る
^29Si MAS NMRでは、SiO₄四面体のつながり方をQⁿで表します。
- Q⁰:隣の四面体とつながっていない状態
- Q¹:シリケート鎖の末端
- Q²:シリケート鎖の内部
- Q²(1Al):隣接する四面体の一部にAlを含む状態
ポルトランドセメントの水和では、未水和のエーライトやビーライトに由来するQ⁰が減少し、C-S-Hに由来するQ¹やQ²が増えるという読み方が基本です。
Q¹が鎖の末端、Q²が鎖の内部に対応するため、Q²の割合が増えると、平均的にはシリケート鎖が長くなった可能性があります。Q²(1Al)は、Alを含むC-A-S-Hの検討に使われます。
詳しいQ種と鎖長の関係は、セメント固体NMR入門:29Si MAS NMRでC-S-Hの鎖長を読むで確認できます。
5.ピーク分離の条件を見る
NMRでは、複数の幅広いピークが重なるため、計算によってピークを分けることがあります。
このときは、算出されたQ¹やQ²の面積だけでなく、次の点を確認します。
- 何本のピークを仮定したか
- ピーク位置を固定したか
- ピーク幅に制限を設けたか
- Q²とQ²(1Al)をどのように分けたか
- 実測スペクトルと計算結果のずれが大きくないか
- 試料間で同じ解析条件を使っているか
ピーク分離の結果は、設定したモデルに左右されます。小数点以下の値まで示されていても、その数値が測定装置から直接得られたわけではない点に注意が必要です。
等温熱量曲線の見方
等温熱量測定では、セメントが水和するときの発熱を時間に沿って測ります。
横軸は水和時間、縦軸は主に熱流または累積発熱量です。
熱流は、その時点でどれくらい速く反応が進んでいるかを示します。累積発熱量は、それまでに発生した熱を合計した値です。等温熱量測定は、試料と周囲をほぼ一定温度に保ちながら、試料から流れる熱を連続的に測定します。
熱量曲線を読む5つの項目
1.測定開始時刻
水とセメントを混ぜた直後には、大きな初期発熱が生じます。
外部で練り混ぜてから装置に入れる場合、装置へ移すまでの発熱が記録されないことがあります。NISTも、初期の練混ぜ時に発生する熱をすべて捉えることが、等温熱量測定の難しさの一つだと説明しています。
初期ピークを比較するときは、練混ぜ開始から測定開始までの時間を確認します。
2.誘導期の長さ
初期ピークの後には、熱流が低い状態が続きます。
この区間が誘導期です。
誘導期が長くなっていれば、初期水和が遅れている可能性があります。ただし、温度、混和剤、硫酸塩量、水結合材比など複数の要因が影響するため、原因は配合条件と合わせて考えます。
3.主ピークの時刻
主ピークが遅い時間側へ移動している場合、反応の進行が遅くなった可能性があります。
一方、ピークが早くなっていれば、核生成の促進、細粒材料のフィラー効果、温度上昇などによって反応が早まった可能性があります。
ここでも、「早いから良い」「遅いから悪い」とは判断しません。求める性能が、早期強度なのか、作業時間なのか、発熱抑制なのかによって評価が変わります。
4.主ピークの高さと幅
高く細いピークは、短い時間に発熱が集中していることを示します。
低く幅広いピークは、発熱が長い時間に分散している可能性があります。
ただし、熱流の最大値だけでは全体の反応量は分かりません。累積発熱量も合わせて確認します。
5.主ピーク後の肩や二つ目のピーク
主ピークの後ろに肩や小さなピークが現れる場合、硫酸塩の枯渇やアルミネート相の反応が関係していることがあります。
実際の研究でも、主シリケートピークに続く小さなピークが、硫酸塩枯渇に関係する反応として扱われています。ただし、配合や硫酸塩量によってピークが重なるため、曲線だけで反応を断定せず、XRDによるAFt・AFm相の確認などが必要です。
等温熱量曲線をさらに詳しく読みたい場合は、セメント等温熱量測定入門:発熱曲線のピークから水和反応を読むも参考になります。
1本のセメント論文を図表からどう追うか
複数の分析結果がある論文では、図を1枚ずつ独立して読むのではなく、同じ仮説を別の測定方法で確かめていると考えます。
例えば、フライアッシュを混合したセメントについて、次の仮説を検討する論文があるとします。
フライアッシュの置換によって初期水和は遅れるが、長期的にはポゾラン反応によってC-S-Hが増える。
この仮説に対する各分析の役割は、次のように整理できます。
| 分析 | 確認する内容 | 仮説と一致する結果の例 |
|---|---|---|
| 等温熱量測定 | 初期反応の速さ | 主ピークが遅い、初期累積発熱量が小さい |
| XRD | 未水和鉱物と結晶性水和物 | 初期材齢では未水和クリンカーが多く残る |
| TG-DTA | 結合水やポルトランダイト | 後期材齢でポルトランダイトが減少する |
| ^29Si NMR | C-S-Hや反応生成物のSi構造 | Q¹・Q²が増え、Q⁰が減少する |
| 強度試験 | 最終的な材料性能 | 初期強度は低いが後期強度が伸びる |
論文を追う実践手順
手順1.要旨から検証したい内容を抜き出す
要旨や導入から、著者が確かめたい内容を1文で書きます。
手順2.配合と材齢を簡単な表にする
すべての試料名を覚えようとせず、基準試料との差だけを書きます。
OPC:基準試料
FA20:フライアッシュ20%置換
FA40:フライアッシュ40%置換
材齢:1日、7日、28日
手順3.各図を1文で要約する
図3:FA置換率が高いほど主ピークが遅れた。
図4:28日ではFA試料のポルトランダイトが少なかった。
図5:FA試料ではQ²の割合が増えた。
図の説明を1文にできない場合は、軸、凡例、比較条件のどれかを見落としている可能性があります。
手順4.事実と解釈を分ける
ポルトランダイトが少ないという事実だけでは、ポゾラン反応が進んだとは断定できません。
クリンカーの水和自体が遅れ、ポルトランダイトの生成量が少なかった可能性もあります。
そこで、XRDで未水和鉱物を確認し、NMRでC-S-H側の変化を確認します。複数の分析結果が同じ説明を支持したときに、解釈の確からしさが高まります。NISTのセメント系材料に関する研究でも、一つの分析法だけでは完全な説明ができず、複数の分析結果を組み合わせて判断する必要性が示されています。
手順5.著者の主張を表にする
| 著者の主張 | 根拠となる図 | 別の説明は可能か |
|---|---|---|
| 初期水和が遅延した | 熱量曲線の主ピークが遅い | 測定開始時間や温度差の影響はないか |
| ポゾラン反応が進んだ | TGでCHが減少 | クリンカー水和の遅れではないか |
| C-S-Hの鎖が長くなった | NMRでQ²/Q¹が増加 | ピーク分離条件は同じか |
| 結晶相が生成した | XRDで新ピーク | 複数ピークで確認されているか |
この表を作ると、論文の結論を受け取るだけでなく、自分で根拠を確認できるようになります。
C-S-H研究で各分析手法がどのように使われてきたかを知りたい場合は、C-S-H研究の歩みを年表で解説も合わせて読むと、分析結果と研究史の関係を整理しやすくなります。
図表を読むときによくある失敗
ピーク名をすべて覚えてから読もうとする
最初からすべてのピーク位置を暗記する必要はありません。
まずは、図が示す大きな変化を読み、必要になったピークだけを調べます。ピーク表は暗記するものではなく、確認に使うものです。
縦軸が高いほど優れていると考える
測定値が大きいことと、材料性能が良いことは同じではありません。
発熱量が大きければ初期反応が活発な可能性がありますが、作業時間や温度上昇の面では不利になる場合があります。
NMRのQ²が多くても、それだけで圧縮強度や耐久性が決まるわけではありません。
温度帯やピーク位置だけで相を断定する
TG-DTAでは複数の脱水反応が重なり、XRDでは複数相の回折ピークが重なります。
「この温度だからこの相」「この回折角だからこの相」と一つの値だけで決めず、配合、材齢、他のピーク、他の分析結果との整合を確認します。
著者の説明だけを読み、図を確認しない
結果の文章には、著者が重要だと考えた変化だけが書かれています。
図を見ると、本文で詳しく触れられていない肩、ばらつき、例外的な試料が見つかることがあります。本文を読んだ後、必ず図に戻り、説明と実測結果が一致しているかを確認します。
セメント論文の図表を読むための記録テンプレート
論文を読むときは、図ごとに次の項目を記録すると整理しやすくなります。
図番号:
この図の目的:
分析方法:
横軸:
縦軸:
単位:
比較している試料:
最も大きな違い:
図から直接読める事実:
著者の解釈:
ほかに考えられる説明:
確認に使える別の分析:
自分の研究との関係:
すべての図を詳しく記録する必要はありません。
研究目的に直接関係する図と、論文の結論を支える図に絞って使います。
まとめ|まず軸と比較条件から読む
セメント論文の図表は、ピークの名前から読み始めると難しく感じやすくなります。
最初に確認するのは、次の3点です。
- この図は何を確かめるためのものか
- 横軸・縦軸・単位は何か
- どの試料とどの試料を比較しているか
その後、大きな変化を見つけ、ピーク位置、面積、幅、時間変化を確認します。
XRD、NMR、TG-DTA、等温熱量測定は、同じ材料を異なる角度から見ています。一つの図だけで結論を出すのではなく、複数の結果が同じ説明を支持しているかを確認することが、セメント論文を読み進めるうえでの基本です。
次に読む論文では、まず一つの図を選び、「図の目的」「観察した事実」「著者の解釈」の3行を書き出してみてください。図の前で止まる時間が減り、本文とのつながりも見えやすくなります。

よくある質問
XRDのピーク位置は暗記したほうがよいですか?
最初からすべて暗記する必要はありません。
自分の研究で頻繁に扱うエーライト、ビーライト、ポルトランダイト、方解石、エトリンガイトなどの代表的な位置は、論文を読むうちに自然に覚えます。それ以外は、データベースや既往研究と照合して確認します。
TG-DTAだけで水和度を求められますか?
結合水量やポルトランダイト量から水和の進行を検討することはできますが、混和材を含む系では解釈が複雑になります。
ポゾラン反応、水和物の重なり、炭酸化、乾燥条件などの影響があるため、XRDやNMR、熱量測定などと組み合わせて判断するのが安全です。
NMRのピーク面積はそのまま相の量を表しますか?
測定条件と解析方法によります。
定量用のMAS測定で、十分な緩和時間などが確保されていれば、ピーク面積をSi環境の割合として扱える場合があります。一方、CP/MASや複雑なピーク分離を使った結果は、信号の強調や解析条件の影響を受けます。実験方法とピーク分離条件の確認が必要です。
図表は論文の掲載順に読んだほうがよいですか?
初めて読む分野では掲載順が分かりやすいですが、研究目的が明確な場合は、必要な分析から読んでも問題ありません。
先に結論と図のキャプションを確認し、重要な図を特定してから実験方法に戻る読み方も有効です。ただし、配合や測定条件を確認せずに図だけを読むと、誤った比較になりやすいため注意が必要です。

