SEM画像を保存したはずなのに、どの試料を撮影した画像か分からない。XRDのフォルダに、sample1.rawやtest2.rawが大量に並んでいる。TG-DTAの解析結果と元データの対応も曖昧になっている。
材料系の研究では、試料数や測定回数が増えるほど、このような問題が起こりやすくなります。
研究データの命名規則で最も大切なのは、凝ったファイル名を作ることではありません。試料IDを中心に、測定方法・日付・連番を同じ順序で付けることです。
まずは、次の形を基本にすると整理しやすくなります。
試料ID_測定方法_測定日_連番.拡張子
たとえば、フライアッシュを20%置換した材齢28日の試料をXRDで測定した場合は、次のように付けます。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
この命名規則に加えて、次の4点を決めれば、卒論や修論の執筆時にデータを探し回る状況を減らせます。
- 試料IDの付け方
- 生データと解析データの保存場所
- 研究ノートとの対応方法
- 共有フォルダと個人PCの役割
この記事では、SEM・XRD・TG-DTAなどを扱う材料系学生向けに、そのまま使える研究データの命名規則と保存ルールを紹介します。
研究データに命名規則が必要な理由
ファイル名は、単にデータを区別するための名前ではありません。
数か月後に見返したとき、次のことを判断する手掛かりになります。
- どの試料のデータか
- 何の装置で測定したか
- いつ測定したか
- 同じ試料を何回測定したか
- 生データか解析後のデータか
研究データ管理に関する大学のガイドでも、命名規則を早い段階で決め、一貫して使用することが推奨されています。明確なファイル名は、自分が探しやすくなるだけでなく、研究室の他の人がデータを確認するときにも役立ちます。
命名規則がないと起こること
たとえば、次のようなファイルが並んでいる状態を考えてみます。
sample.raw
sample2.raw
sample2_new.raw
test.raw
test_final.raw
test_final2.raw
測定した直後であれば、どのデータか覚えているかもしれません。
しかし、3か月後に卒論の図を作る段階になると、次の疑問が生じます。
sample2は、試料番号2なのか2回目の測定なのかnewでは何を変更したのかfinalとfinal2のどちらが新しいのか- 測定前の乾燥条件は同じなのか
- 異常値が出たデータを除外していないか
ファイルを開けば分かる場合もありますが、装置専用ソフトが必要なデータや、似た画像が大量にあるSEM観察では確認に時間がかかります。
命名規則の目的は、ファイル名だけで実験条件をすべて説明することではありません。開くべきファイルをすぐに絞り込める状態にすることです。
材料系では試料IDが基準になる
研究データの整理方法には、日付を基準にする方法、装置を基準にする方法、実験ごとに分ける方法などがあります。
材料系の研究では、同じ試料に対して複数の測定を行うことが多いため、試料IDを基準にするとデータを追いやすくなります。
たとえば、同じ試料について次の測定を行う場合です。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
FA20-W45-28d-B1-03_TG-DTA_20260704_01.dat
FA20-W45-28d-B1-03_SEM_20260705_BSE_F01.tif
先頭に同じ試料IDが付いているため、ファイル検索でFA20-W45-28d-B1-03と入力すれば、関連する測定データをまとめて探せます。
研究ノートに残す条件や試験体番号の決め方については、研究ノートに何を書くべき?再現できない原因を減らす記録術でも詳しく解説しています。
ファイル名に入れる項目

材料系の研究データでは、次の5項目から必要なものを選びます。
| 項目 | 例 | 役割 |
|---|---|---|
| 試料ID | FA20-W45-28d-B1-03 | どの試料かを示す |
| 測定方法 | XRD、SEM、TG-DTA | データの種類を示す |
| 測定日 | 20260703 | 測定時期を示す |
| 測定箇所・連番 | F01、Area02、01 | 同じ試料内のデータを区別する |
| 処理状態・版番号 | raw、bgsub、v02 | 生データと解析結果を区別する |
基本形は次のとおりです。
試料ID_測定方法_測定日_詳細_版番号.拡張子
ただし、すべての項目を毎回入れる必要はありません。
ファイル名が長くなりすぎる場合は、試料ID、測定方法、日付、連番の4項目を優先します。配合や養生条件などの詳しい情報は、試料一覧表や研究ノートに残します。
大学の研究データ管理ガイドでも、ファイル名に入れる要素を絞り、略号の意味をREADMEファイルなどに記録する方法が推奨されています。
項目の区切り方を統一する
ファイル名では、ハイフンとアンダースコアの役割を分けると読みやすくなります。
- ハイフン:試料IDの内部を区切る
- アンダースコア:試料ID、測定方法、日付などの大きな項目を区切る
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
この例では、FA20-W45-28d-B1-03が1つの試料IDです。その後の測定方法や測定日は、アンダースコアで区切っています。
研究室ですでに別のルールが使われている場合は、無理に変更する必要はありません。区切り記号の種類よりも、研究室内で同じ規則を使うことの方が重要です。
日付は西暦8桁にする
日付は、次の形式に統一します。
YYYYMMDD
2026年7月3日であれば、次のように書きます。
20260703
次のような表記を混在させるのは避けます。
7月3日
0703
26-7-3
2026.7.3
July3
西暦、月、日の順に並べると、ファイル名で並べ替えたときも日付順になります。研究データ管理のガイドでも、YYYYMMDDまたはYYYY-MM-DD形式が広く推奨されています。
連番には先頭の0を付ける
連番は、測定数に応じて2桁または3桁に統一します。
01
02
03
...
10
11
避けたい例は次のとおりです。
1
2
3
...
10
11
数字の桁数が異なると、環境によっては1、10、11、2、3のような順番で表示されます。
SEM画像や繰り返し測定など、100個以上のファイルが生じる可能性がある場合は、最初から3桁にします。
001
002
003
スペースや記号を多用しない
ファイル名には、基本的に次の文字を使います。
- 半角英数字
- ハイフン
- アンダースコア
たとえば、次のファイル名は避けた方が安全です。
FA20% 試料③(28日)最終版.raw
次のように置き換えます。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
日本語を一切使ってはいけないわけではありません。ただし、装置PC、解析ソフト、共有サーバーなど複数の環境を使う場合は、半角英数字を中心にした方が扱いやすくなります。
材料系で使いやすい試料IDの決め方
材料系の試料IDは、次の順番を基本にすると整理しやすくなります。
材料・配合・材齢・バッチ・個体番号
具体例は次のとおりです。
OPC-W40-28d-B1-03
FA20-W45-7d-B2-01
BFS50-W35-91d-B3-02
| 部分 | 意味 |
OPC | 普通ポルトランドセメント |
FA20 | フライアッシュ20%置換 |
W45 | 水結合材比45% |
28d | 材齢28日 |
B1 | バッチ1 |
03 | 個体番号3 |
試料IDを見ただけで、実験条件の概要を判断できます。
ただし、配合条件をすべて詰め込むと長くなりすぎます。細骨材量、混和剤添加率、養生温度、乾燥条件などは、試料一覧表に記録した方が管理しやすくなります。
試料IDに入れる情報の判断基準
試料IDに入れる情報は、次の基準で選びます。
- 試料を区別するために必要か
- 研究期間中に頻繁に検索するか
- 後から変更されない情報か
- 略号を研究室内で共有できるか
たとえば、水結合材比が研究の主な比較条件であれば、W40やW45を入れる意味があります。
一方、測定時のSEM加速電圧は試料そのものの条件ではないため、試料IDには入れません。必要であれば測定ファイルや測定記録に残します。
バッチ番号と個体番号を分ける
同じ配合でも、別の日に練り混ぜた試料は別バッチとして扱います。
FA20-W45-28d-B1-01
FA20-W45-28d-B1-02
FA20-W45-28d-B2-01
B1-01とB1-02は同じバッチから作製した別の試験体です。B2-01は、別の練混ぜで作製した試験体です。
バッチ番号を省略すると、結果の違いが個体差なのか、練混ぜごとの差なのかを後から確認しにくくなります。
粉砕試料や分取試料には枝番号を付ける
1つの試験体から複数の測定試料を作る場合は、元の試料IDを残したまま枝番号を付けます。
FA20-W45-28d-B1-03-P01
FA20-W45-28d-B1-03-P02
P01とP02を、粉砕試料や分取試料の番号として使う例です。
採取位置を区別する場合は、次のような略号も使えます。
FA20-W45-28d-B1-03-C
FA20-W45-28d-B1-03-S
C:中央部S:表層部
略号は研究室ごとに意味が異なる可能性があります。必ず試料一覧表やREADMEファイルに意味を書いておきます。
SEM・XRD・TG-DTAのファイル名の実例
ここからは、測定方法ごとのファイル名を紹介します。
XRDデータの命名例
装置から出力された元データは、次のように保存します。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
同じ試料を再測定した場合は、末尾の連番を変えます。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_02.raw
バックグラウンド処理やピーク分離を行ったデータは、生データと別ファイルにします。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_bgsub_v01.xy
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_peakfit_v02.xlsx
bgsubはバックグラウンド処理済み、peakfitはピーク分離結果を示す略号の例です。
解析方法を変更した場合は、元ファイルに上書きせず、版番号を増やします。
v01
v02
v03
SEM画像の命名例
SEMでは、同じ試料から多数の画像が作られます。
少なくとも、観察方法と視野番号を入れます。
FA20-W45-28d-B1-03_SEM_20260705_SE_F001.tif
FA20-W45-28d-B1-03_SEM_20260705_BSE_F002.tif
SE:二次電子像BSE:反射電子像F001:視野番号1
倍率もファイル名から確認したい場合は、次のように追加します。
FA20-W45-28d-B1-03_SEM_20260705_BSE_x2000_F001.tif
ただし、倍率や加速電圧などの条件が画像ファイルの情報や測定記録に保存されている場合、ファイル名へすべて入れる必要はありません。
EDS分析を行った場合は、分析箇所を区別します。
FA20-W45-28d-B1-03_SEM-EDS_20260705_Area01_spectrum.csv
FA20-W45-28d-B1-03_SEM-EDS_20260705_Area01_map.tif
顕微鏡画像でも、一貫した命名規則により、画像の内容と他のデータとの関係を追いやすくなります。
TG-DTAデータの命名例
TG-DTAでは、試料ID、測定日、測定順を基本にします。
FA20-W45-28d-B1-03_TG-DTA_20260704_01.dat
同日に複数回測定した場合は、末尾を変更します。
FA20-W45-28d-B1-03_TG-DTA_20260704_02.dat
解析用にCSVへ変換した場合は、変換後のファイルだと分かる名前にします。
FA20-W45-28d-B1-03_TG-DTA_20260704_export_v01.csv
補正や基線処理を行った場合は、さらに処理内容を加えます。
FA20-W45-28d-B1-03_TG-DTA_20260704_corrected_v02.csv
測定前の乾燥条件、試料量、昇温速度、雰囲気ガスなどは、ファイル名ではなく研究ノートや測定条件表に記録します。
実験写真の命名例
試料の外観や破壊状況を撮影した写真にも、試料IDを付けます。
FA20-W45-28d-B1-03_PHOTO_20260703_before_01.jpg
FA20-W45-28d-B1-03_PHOTO_20260703_after_01.jpg
圧縮試験後の破壊状況であれば、次のようにします。
FA20-W45-28d-B1-03_COMP_20260703_failure_01.jpg
スマートフォンが自動で付けたIMG_7352.jpgのまま保存すると、試料との対応が分からなくなります。撮影当日か、共有フォルダへ移す時点で変更します。
試料IDと研究ノートを対応させる
ファイル名だけでは、試料のすべての履歴を残せません。
次の情報は、研究ノートや試料一覧表で管理します。
- 使用材料とロット
- 詳しい配合
- 作製日
- 脱型日
- 養生条件
- 材齢の起点
- 採取位置
- 乾燥・粉砕・水和停止条件
- 使用装置
- 測定条件
- 実験中に起きた異常
ファイル名、試料一覧表、研究ノートの3つを、試料IDで対応させるのが基本です。
ファイル名
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
↓
試料一覧表
FA20-W45-28d-B1-03
↓
研究ノート
NB01-p084
試料一覧表に入れる項目
ExcelやCSVで、次のような一覧表を作ります。
| 項目 | 記入例 |
| sample_id | FA20-W45-28d-B1-03 |
| parent_sample_id | FA20-W45-28d-B1 |
| project | フライアッシュ反応性評価 |
| material | OPC+FA20% |
| water_binder_ratio | 0.45 |
| batch | B1 |
| specimen_no | 03 |
| casting_date | 20260605 |
| curing | 20℃封緘養生 |
| age | 28d |
| pretreatment | アセトン置換、真空乾燥24時間 |
| notebook_ref | NB01-p084 |
| remarks | 中央部から採取 |
試料一覧表を作っておけば、ファイル名に詳しい条件を詰め込む必要がなくなります。
紙の研究ノートと対応させる方法
紙の研究ノートを使う場合は、ノート番号とページ番号を決めます。
NB01-p084
研究ノートの該当ページには、次の情報を書きます。
試料ID:FA20-W45-28d-B1-03
測定方法:XRD
測定日:2026年7月3日
生データ:FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
保存先:Project_FA/02_raw/XRD/20260703/
ファイル名だけでなく、保存先も書いておくと探しやすくなります。
Obsidianなどのデジタルノートと対応させる方法
デジタルノートでは、試料IDをノートの本文やプロパティに入れます。
sample_id: FA20-W45-28d-B1-03
method: XRD
measurement_date: 2026-07-03
raw_data: FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
生データへの相対パスも記録できます。
../../02_raw/XRD/20260703/FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
研究ノートのフォルダ構成やテンプレートを整えたい場合は、Obsidianを研究ノート専用アプリにする具体的な使い方とテンプレート集も参考になります。
共有フォルダと個人PCの役割を分ける
研究データが複数の場所に保存されていると、どれが正式なデータか分からなくなります。
たとえば、次の場所に少しずつ違うファイルが残っている状態です。
- 装置PC
- USBメモリ
- 自分のノートPC
- 研究室の共有フォルダ
- クラウドストレージ
これを防ぐため、保存場所ごとの役割を決めます。
| 保存場所 | 役割 | 注意点 |
| 研究室の共有フォルダ | 正式な保存先 | 命名規則とフォルダ構成を統一する |
| 個人PC | 解析中の作業場所 | 正式なデータと混同しない |
| 装置PC | 測定直後の一時保存 | 長期保存先として頼らない |
| USBメモリ | データの移動 | 保存先に移した後は内容を確認する |
| 外付け媒体など | 予備の保存先 | 研究室の方針に従う |
研究室や共同研究でデータを共有する場合、個人PCだけに正式なデータを置くのは避けます。
国立情報学研究所のGakuNin RDMも、研究データを閉じた環境で研究室内や共同研究者と共有するためのサービスとして案内されています。実際に使う保存先は大学ごとに異なりますが、研究室で決めた共有場所へ正式なデータを集めるという考え方は共通です。
正式な保存先を1つ決める
おすすめは、研究室の共有フォルダを正式な保存先とし、個人PCを作業用とする方法です。
共有フォルダ:正式な生データ、解析データ、図表
個人PC:作業中のコピー、一時ファイル
個人PCで解析した結果は、区切りのよい段階で共有フォルダに戻します。
共有フォルダへ戻す際は、次のような名前にします。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_peakfit_v03.xlsx
次のようなファイル名のまま共有しないようにします。
作業用.xlsx
新しい解析.xlsx
最終.xlsx
最終修正版.xlsx
装置PCは長期保存先にしない
装置PCにデータが残っていても、次のような理由で後から使えなくなる可能性があります。
- 保存容量の都合で削除される
- 他の利用者が移動または上書きする
- 装置やPCが更新される
- どのフォルダに保存したか分からなくなる
測定後は、研究室で決めた保存先へ移し、ファイルが正常に開けることを確認します。
USBメモリにコピーしただけで安心せず、共有フォルダへの保存が完了したところまでを測定作業に含めます。
生データ・解析データ・図表を分けて保存する
生データと解析後のデータを同じフォルダに入れると、元のファイルが分かりにくくなります。
次のように分けると整理しやすくなります。
Project_FA/
├─ 00_README/
├─ 01_sample_master/
├─ 02_raw/
│ ├─ XRD/
│ ├─ SEM/
│ ├─ TG-DTA/
│ └─ PHOTO/
├─ 03_processed/
│ ├─ XRD/
│ ├─ SEM/
│ └─ TG-DTA/
├─ 04_figures/
├─ 05_reports/
└─ 99_archive/
02_rawには装置から得た生データを置く
02_rawには、装置から取得したデータを原則としてそのまま保存します。
02_raw/XRD/FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
生データは、解析のために直接上書きしないようにします。
形式変換や不要範囲の削除が必要な場合は、コピーを作って03_processedへ保存します。
03_processedには処理後のデータを置く
03_processed/XRD/FA20-W45-28d-B1-03_XRD_bgsub_v01.xy
処理内容が異なる場合は、名前を分けます。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_bgsub_v01.xy
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_peakfit_v01.xlsx
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_quant_v02.xlsx
解析条件を大きく変更した場合は、古いファイルを消さずに版番号を増やします。
04_figuresには発表用の図を置く
卒論、修論、学会発表で使用する図は、元データや解析ファイルと分けます。
04_figures/
├─ Fig01_XRD_FA_replacement_v03.png
├─ Fig02_TG_CH_content_v02.png
└─ Fig03_SEM_FA20_28d_v01.png
図番号が確定していない段階では、内容が分かる仮名でも構いません。
XRD_FA_replacement_comparison_v03.png
graph1.pngやfigure_new.pngだけでは内容を判断できないため、比較条件や測定方法を入れます。
版番号の付け方
解析ファイルや図表には、v01、v02のような版番号を付けます。
XRD_FA_replacement_v01.xlsx
XRD_FA_replacement_v02.xlsx
XRD_FA_replacement_v03.xlsx
次のような表記は避けます。
final.xlsx
final2.xlsx
final_new.xlsx
final_本当の最終.xlsx
finalは、その時点では最終でも、指導教員の確認後に修正が入る可能性があります。
版番号を使えば、どのファイルが新しいかを判断できます。
生データには版番号を付けない
装置から得た生データは、原則として編集しないため、版番号は必要ありません。
同じ試料を再測定した場合は、版番号ではなく測定回数として連番を付けます。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_02.raw
解析ファイルの修正には、版番号を使います。
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_peakfit_v01.xlsx
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_peakfit_v02.xlsx
「測定をやり直した」のか、「同じデータの解析方法を変えた」のかを区別できます。
命名規則をREADMEに残す
自分の中で命名規則を決めても、文書にしていなければ、数か月後に表記が変わることがあります。
プロジェクトの最上位フォルダに、README.mdまたはREADME.txtを置きます。
ファイル管理の規則をREADMEに記録し、共有場所へ保存する方法は、複数の大学の研究データ管理ガイドでも推奨されています。
READMEのテンプレート
# 研究データ保存ルール
## ファイル名
基本形:
[試料ID]_[測定方法]_[測定日]_[詳細・連番]_[版番号].[拡張子]
例:
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
## 試料ID
[材料・置換率]-[水結合材比]-[材齢]-[バッチ]-[個体番号]
例:
FA20-W45-28d-B1-03
## 測定方法の略号
- XRD:X線回折
- SEM:走査電子顕微鏡
- SEM-EDS:SEM-EDS分析
- TG-DTA:熱重量・示差熱分析
- PHOTO:外観写真
- COMP:圧縮強度試験
## SEM画像の略号
- SE:二次電子像
- BSE:反射電子像
- F001:視野番号
- Area01:分析箇所
## 保存場所
- 02_raw:装置から得た生データ
- 03_processed:変換・補正・解析後のデータ
- 04_figures:卒論・修論・発表用の図
- 05_reports:報告書、発表資料
## 版番号
- 解析ファイルと図表はv01から開始
- 修正時は元ファイルを残して番号を増やす
- 「final」「最新版」は使用しない
研究室内で共有する場合は、研究テーマ固有の略号も追加します。
研究データ整理を始める手順
すでに大量のデータがある場合、すべてを一度に整理し直すのは大変です。
次の順番で進めます。
1. 正式な保存先を決める
最初に、どこへ保存したデータを正式な記録とするか決めます。
候補は、研究室の共有サーバー、大学指定のストレージ、研究室で利用している共有サービスなどです。
個人PCやUSBメモリだけを正式な保存先にしないようにします。
2. 試料IDの規則を決める
研究で比較する条件を整理します。
材料・配合・材齢・バッチ・個体番号
試料IDがすでに研究室で決まっている場合は、その規則を優先します。
3. ファイル名の基本形を決める
まずは、次の4項目で十分です。
試料ID_測定方法_測定日_連番.拡張子
複雑な条件は、後から必要に応じて追加します。
4. 生データと解析データを分ける
最低限、次の2つに分けます。
raw
processed
生データを残したまま、コピーしたファイルを解析します。
5. 試料一覧表を作る
試料IDと、配合、作製日、養生、前処理、研究ノートのページを対応させます。
すべての条件をファイル名に入れようとせず、詳しい情報は一覧表へ分けます。
6. 次の測定から運用を始める
過去の全データを整理してから始める必要はありません。
まずは、次に取得するデータから新しい規則を使います。その後、卒論や修論で使用する可能性が高い過去データから順番に整理します。
コピペで使える命名規則テンプレート
材料系の研究で迷った場合は、次のルールから始められます。
基本形
[試料ID]_[測定方法]_[YYYYMMDD]_[連番].[拡張子]
試料ID
[材料・置換率]-[水結合材比]-[材齢]-[バッチ]-[個体番号]
XRD
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw
SEM
FA20-W45-28d-B1-03_SEM_20260705_BSE_x2000_F001.tif
SEM-EDS
FA20-W45-28d-B1-03_SEM-EDS_20260705_Area01_map.tif
TG-DTA
FA20-W45-28d-B1-03_TG-DTA_20260704_01.dat
実験写真
FA20-W45-28d-B1-03_PHOTO_20260703_before_01.jpg
解析データ
FA20-W45-28d-B1-03_XRD_peakfit_v02.xlsx
発表用の図
Fig01_XRD_FA_replacement_v03.png
よくある失敗と改善例
| 失敗例 | 問題点 | 改善例 |
sample1.raw | 試料条件が分からない | FA20-W45-28d-B1-03_XRD_20260703_01.raw |
IMG_7352.jpg | どの試料の写真か分からない | FA20-W45-28d-B1-03_PHOTO_before_01.jpg |
最終版.xlsx | 修正履歴が分からない | XRD_peakfit_v03.xlsx |
試料A | 配合やバッチが分からない | OPC-W40-28d-B1-01 |
| 生データへ上書き | 元の測定結果を確認できない | rawとprocessedを分ける |
| 個人PCだけに保存 | 他の人が確認できない | 正式な共有先へ保存する |
| 略号を自分しか知らない | 引き継ぎ時に意味が分からない | READMEに略号一覧を書く |
| 条件をすべてファイル名に入れる | 長すぎて読みにくい | 詳細条件は試料一覧表に分ける |
研究データ整理のチェックリスト
次の項目を確認すると、最低限の研究データ管理ができているか判断できます。
- 正式な保存先が決まっている
- 試料IDの付け方が統一されている
- ファイル名の項目と順番が統一されている
- 日付が
YYYYMMDD形式になっている - 連番の桁数が統一されている
- 生データと解析データが分かれている
- 生データへ直接上書きしていない
- 試料IDと研究ノートが対応している
- 試料一覧表がある
- 略号の意味をREADMEに書いている
finalや最新版ではなく版番号を使っている- 装置PCやUSBだけにデータを残していない
- 後輩が見ても試料とデータの関係を判断できる
FAQ
すでにファイル名がバラバラですが、すべて変更するべきですか?
最初からすべて変更する必要はありません。
まずは、今後取得するデータに新しい命名規則を適用します。その後、卒論、修論、学会発表で使う可能性が高いデータから順番に整理します。
過去のファイルを一括で変更すると、研究ノートや解析ソフトに記録されたファイル名と一致しなくなることがあります。変更前の名前と変更後の名前を一覧表に残しておくと安全です。
ファイル名には日本語を使わない方がよいですか?
装置PCや解析ソフトをまたいで使用するデータは、半角英数字を中心にする方が扱いやすくなります。
ただし、README、試料一覧表、研究ノートまで英語にする必要はありません。ファイル名は短い略号にし、詳しい意味を日本語で説明する方法が現実的です。
ファイル名にどこまで実験条件を入れるべきですか?
ファイルを探すときに必要な3~5項目を目安にします。
材料系では、試料ID、測定方法、日付、連番を基本とし、必要に応じてSEMの視野番号や解析状態を追加します。
配合、養生、前処理、測定条件などをすべて入れると長くなるため、詳しい情報は試料一覧表や研究ノートへ記録します。
フォルダは日付別と装置別のどちらがよいですか?
材料系では、最初に生データと解析データを分け、その中を測定方法別にすると整理しやすくなります。
02_raw/XRD/
02_raw/SEM/
02_raw/TG-DTA/
測定回数が多い場合は、その下を日付別に分けます。
02_raw/XRD/20260703/
どの方法を選ぶ場合も、ファイル名には試料IDを残します。フォルダから取り出して別の場所へ移しても、どの試料のデータか判断できるためです。
まとめ:次の実験から試料IDをファイル名に入れる
研究データの命名規則は、細かく作り込みすぎると続きません。
材料系の研究では、まず次の形から始めます。
試料ID_測定方法_測定日_連番.拡張子
試料IDは、次の構成を基本にします。
材料・配合・材齢・バッチ・個体番号
そのうえで、生データ、解析データ、図表の保存場所を分け、研究ノートと試料一覧表を試料IDで対応させます。
今日すべてのデータを整理する必要はありません。まずは、次に取得するSEM画像、XRDデータ、TG-DTAデータから統一した名前を付けてください。
研究データの整理と文献管理は目的が異なります。実験データの保存ルールを決めた後、論文PDFや文献メモも整理したい場合は、B4向けのZoteroとNotionを使ったセメント論文データベースの作り方もあわせて確認すると、研究に使う情報全体を整理しやすくなります。

