実験データと図表はそろったのに、論文の本文を書こうとすると手が止まることがあります。
特に迷いやすいのが、次のような場面です。
- XRDのピーク変化をどこまで説明するべきか
- TG-DTAの質量減少を結果と考察のどちらに書くか
- 圧縮強度が高くなった理由まで結果に書いてよいか
- 図表キャプションと本文に同じ内容を書いてしまう
- NMRのピーク分離結果を、どこまで断定してよいか
先に結論を示すと、結果には「図表から確認できる事実」を書き、考察には「その事実が何を意味するのか」を書きます。
たとえば、次の2文は役割が異なります。
試料Bのポルトランダイト量は、試料Aよりも少なかった。
これは測定結果です。
試料Bでは、混和材の反応によってポルトランダイトが消費された可能性がある。
こちらは結果に対する解釈であり、考察です。
ただし、実際の論文では「結果」と「考察」が一つの章にまとめられている場合もあります。その場合も、文章の中では事実と解釈を区別する必要があります。科学論文で広く使われるIMRaD形式でも、Resultsは得られた結果を示す部分、Discussionは結果を研究目的や先行研究と結び付けて解釈する部分として整理されています。
この記事では、材料系の卒論・修論・投稿論文を想定し、結果、考察、図表キャプション、本文をどのように書き分けるかを具体例とともに解説します。
結果と考察の違いは「事実」と「意味」

結果と考察の違いは、次の表で整理できます。
| 項目 | 結果に書くこと | 考察に書くこと |
|---|---|---|
| 基本的な役割 | 実験で何が確認されたか | 結果が何を意味するか |
| 主な根拠 | 図、表、測定値、統計結果 | 結果、理論、先行研究、別の分析結果 |
| よく使う表現 | 増加した、減少した、検出された | 原因として考えられる、示唆される |
| 比較 | 試料間、材齢間、条件間の違い | なぜ違いが生じたか |
| 不確実性 | ばらつき、誤差、有意差の有無 | 限界、別の解釈、追加検証の必要性 |
| 避けたい内容 | 根拠のない原因説明 | 図表に示していない新しい結果 |
結果では「何が起きたか」を書く
結果の文章では、主に次の4点を示します。
- 何を比較したか
- どのような違いが見られたか
- どの程度の違いだったか
- ばらつきや例外があったか
たとえば、圧縮強度の結果は次のように書けます。
図3に材齢7日および28日の圧縮強度を示す。材齢7日では、混和材を20%置換した試料Bの圧縮強度は基準試料Aより低かった。一方、材齢28日では両試料の差は小さくなった。
この段階では、強度差が生じた原因までは断定していません。
考察では「なぜ起きたか」を検討する
考察では、結果から考えられる説明を示します。
主な内容は次のとおりです。
- 研究目的や仮説との関係
- 結果が生じた原因
- 既往研究との一致・不一致
- 別の分析結果との整合性
- ほかに考えられる説明
- 実験方法や測定上の限界
- 研究結果から言える範囲
先ほどの圧縮強度については、次のように続けられます。
試料Bの初期強度が低かった理由として、セメント置換によるクリンカー量の減少と、混和材の反応が初期材齢では十分に進行していなかったことが考えられる。一方、材齢28日で強度差が小さくなったことから、材齢の経過に伴う混和材の反応が強度発現に寄与した可能性がある。
結果では「差が小さくなった」と書き、考察では「混和材の反応が寄与した可能性」を説明しています。
結果と考察を分けるか、一緒に書くか
卒論や修論では、次の2通りの構成がよく使われます。
結果と考察を別の章にする
4. 実験結果
4.1 圧縮強度
4.2 XRD
4.3 TG-DTA
5. 考察
5.1 強度発現と水和反応の関係
5.2 混和材の反応機構複数の分析結果をまとめて考察したい研究に向いています。
たとえば、XRD、TG-DTA、NMR、強度試験を組み合わせ、最後に「混和材の反応と強度発現の関係」を議論する場合です。
結果と考察を同じ章にする
4. 結果および考察
4.1 圧縮強度
4.2 XRD
4.3 TG-DTA一つの図を示した直後に、その意味まで説明できるため、読者が内容を追いやすくなります。
ただし、同じ章にまとめる場合も、一つの段落にすべてを詰め込むのではなく、次の順番で書くと整理しやすくなります。
図表を示す
↓
図表から読み取れる事実を書く
↓
その事実を解釈する
↓
別の分析結果や先行研究で確かめる
↓
言える範囲と限界を示す投稿論文では、章の名称や順番について投稿先の指定がある場合があります。執筆前に、投稿規程と最近掲載された同種の論文を確認してください。PLOS ONEのようにResultsとDiscussionを別項目として示しながら、論文中盤の章名や順番には一定の自由を認めている雑誌もあります。
図表キャプションに書くこと
図表キャプションは、図の下や表の上に付ける短い説明です。
キャプションの役割は、本文をすべて読まなくても、読者が次の内容を把握できるようにすることです。
- 何を示した図表か
- どの試料や条件を比較しているか
- 軸や記号は何を表すか
- 誤差棒や統計記号は何を表すか
- 略号は何を意味するか
PLOS ONEの投稿規程でも、図番号と簡潔で内容の分かる題名をキャプションに含め、必要に応じて凡例を記載することが求められています。また、図表では測定単位、平均値や中央値、標準偏差や標準誤差などの表示内容を明確にする必要があります。
キャプションに入れたい基本要素
キャプションは、次の順番で組み立てると書きやすくなります。
図番号
+
図が示す内容
+
比較条件
+
必要な測定条件
+
記号・誤差棒・略号の説明圧縮強度のキャプション例
図3 高炉スラグ微粉末置換率がモルタルの圧縮強度に及ぼす影響。 養生温度は20℃、水結合材比は0.50とした。値は3供試体の平均値を示し、誤差棒は標準偏差を表す。
このキャプションから、読者は次の内容を確認できます。
- 何を比較した図か
- 水結合材比と養生温度
- 平均値を示していること
- 誤差棒の意味
- 供試体数
XRDのキャプション例
図4 材齢7日および28日におけるセメントペーストのXRDパターン。 OPCは普通ポルトランドセメント、FA20はフライアッシュを質量比で20%置換した試料を示す。CH:ポルトランダイト、Ett:エトリンガイト、Cc:方解石。
XRDでは、試料名と相の略号を示します。測定条件を方法の章にまとめている場合、キャプションですべてを繰り返す必要はありません。
ただし、次のような処理を行った場合は、図を正しく読むために必要か検討します。
- 強度の規格化
- ベースライン補正
- ピーク位置のずらし表示
- 内部標準物質の添加
- リートベルト解析結果の表示
- 実測値と計算値の重ね合わせ
TG-DTAのキャプション例
図5 材齢28日におけるセメントペーストのTGおよびDTG曲線。 測定は窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで実施した。質量は105℃乾燥後の試料質量を基準として表示した。
TG-DTAでは、次の条件が結果の解釈に関係します。
- TG、DTG、DTA、DSCのどれを示しているか
- 測定雰囲気
- 昇温速度
- 質量の基準
- 温度範囲
- 前処理方法
NMRのキャプション例
図6 材齢28日における試料Aおよび試料Bの^29Si MAS NMRスペクトル。 破線はピーク分離によって得られた各Q種の計算曲線、実線は各計算曲線の合計を示す。
NMRでは、少なくとも次の違いが分かるようにします。
- 測定核
- MASかCP/MASか
- 実測曲線と計算曲線の区別
- ピーク分離結果の表示方法
- 試料名や材齢
キャプションに考察を書きすぎない
次のようなキャプションは、説明を詰め込みすぎています。
図4 フライアッシュのポゾラン反応によってポルトランダイトが消費され、C-S-Hが増加したことを示すXRDパターン。
この表現には二つの問題があります。
第一に、XRDパターンだけで「ポゾラン反応によって消費された」と断定できるとは限りません。
第二に、「C-S-Hが増加した」という説明も、結晶性の低いC-S-Hを通常のXRDだけで定量的に確認したかのように読めます。
キャプションは、次のように事実を中心に書く方が安全です。
図4 フライアッシュ置換率の異なるセメントペーストのXRDパターン。FA20ではOPCと比較してポルトランダイトの回折ピークが低かった。
原因や反応機構は、本文の考察で扱います。
本文には何を書くか
本文は、キャプションを長く言い直す場所ではありません。
本文の役割は、読者に図表を見る順番を示し、研究上意味のある変化を取り上げることです。大学の論文作成資料でも、本文で図表を紹介し、主要な差や関係を読者に示すことが勧められています。
本文の基本形
結果の文章は、次の3文から始められます。
1文目:どの図表に何を示したか
2文目:最も大きな違い
3文目:数値、ピーク、材齢などの具体的な根拠たとえば、圧縮強度では次のように書けます。
図3に各試料の圧縮強度を示す。材齢7日では、FA20の圧縮強度はOPCより低かった。材齢28日ではFA20の強度が増加し、OPCとの差は7日より小さくなった。
キャプションに書いた水結合材比や供試体数を、本文でもう一度すべて説明する必要はありません。
図表の全数値を文章にしない
次の文章は、グラフを文章に置き換えただけになっています。
OPCの圧縮強度は7日で35.2MPa、28日で48.1MPa、FA20は7日で28.4MPa、28日で45.3MPa、FA40は7日で21.6MPa、28日で39.7MPaであった。
数値を列挙すると、読者は何に注目すればよいか分かりません。
本文では、研究上意味のある差を選びます。
材齢7日では、フライアッシュ置換率の増加に伴って圧縮強度が低下した。一方、材齢28日では各フライアッシュ試料の強度増加が大きく、OPCとの差は縮小した。
正確な数値は図表に任せ、本文では変化の方向と重要な比較を示します。
XRDの結果と考察の書き分け例
書き分けが不十分な例
FA20ではポルトランダイトのピークが減少したため、ポゾラン反応が進行した。
この一文では、結果と解釈が混ざっています。
さらに、ポルトランダイトが少ない理由として、次の二つが考えられます。
- ポゾラン反応によって消費された
- クリンカー量や水和量が少なく、生成量自体が少なかった
そのため、ピークの低下だけで反応機構を決めるのは慎重に行う必要があります。
改善例
結果
図4に材齢28日のXRDパターンを示す。FA20では、OPCと比較してポルトランダイトに対応する回折ピークが低かった。また、未水和クリンカーに由来するピークが残存していた。
考察
FA20でポルトランダイトのピークが低かった理由として、フライアッシュの反応による消費と、セメント置換によるポルトランダイト生成量の減少が考えられる。未水和クリンカーの残存も確認されたことから、XRD結果だけでは両者の影響を分離できない。ポルトランダイト量の変化を検討するには、TG-DTAによる定量結果や、フライアッシュの反応率と併せて評価する必要がある。
XRDなどの図から事実を読み取る段階で迷う場合は、セメント論文の図表はどう読む?XRD・NMR・TG-DTA、等温熱量測定の見方も参考になります。
TG-DTAの結果と考察の書き分け例
書き分けが不十分な例
試料Bでは400℃付近のピークが小さくなったため、ポゾラン反応性が高いことが分かった。
「ピークが小さい」は測定結果ですが、「ポゾラン反応性が高い」は解釈です。
また、ピークの高さだけではなく、積分範囲や質量減少量の算出方法も確認する必要があります。
改善例
結果
試料Bでは、ポルトランダイトの脱水に対応する温度域の質量減少量が試料Aより小さかった。算出したポルトランダイト量は、試料Aが18.2質量%、試料Bが12.6質量%であった。
考察
試料Bのポルトランダイト量が少なかった理由として、混和材の反応による消費が考えられる。ただし、試料Bではセメント置換率が高く、単位試料質量当たりのクリンカー量も少ない。混和材の反応性を比較するには、結合材質量基準だけでなく、クリンカー量や未反応混和材量を考慮した評価が必要である。
ここでは、測定値を示した後に、別の説明が可能かどうかを検討しています。
圧縮強度の結果と考察の書き分け例
書き分けが不十分な例
試料Bは強度が高く、緻密な組織が形成された。
圧縮強度試験から直接分かるのは、供試体が破壊に至るまでに負担した応力です。
強度が高いことから「組織が緻密になった可能性」を考えることはできますが、空隙構造を直接測定したわけではありません。
改善例
結果
材齢28日の圧縮強度は、試料Aが42.5MPa、試料Bが51.3MPaであり、試料Bの方が高かった。
考察
試料Bの圧縮強度が高かった理由として、水和生成物の増加や空隙構造の変化が考えられる。ただし、圧縮強度試験だけでは、強度増加の原因を特定できない。水和生成物の変化はXRDやTG-DTA、空隙構造はMIPなどの結果と併せて検討する必要がある。
供試体数が少ない場合やばらつきが大きい場合は、「高かった」と断定する前に、誤差棒や統計結果を確認します。
統計的な差を確認していない場合は、次のような表現が適しています。
試料Bは試料Aより高い値を示した。
試料Bで圧縮強度が高くなる傾向が見られた。
一方、有意差を確認している場合は、検定方法や有意水準を方法または図表中で示します。
NMRの結果と考察の書き分け例
書き分けが不十分な例
Q²が増加したため、C-S-Hの重合が進み、耐久性が向上した。
Q²の増加からシリケート鎖の変化を検討することはできます。
しかし、NMRの結果だけで材料全体の耐久性向上まで断定すると、結論の範囲が広すぎます。
改善例
結果
^29Si MAS NMRスペクトルのピーク分離結果では、試料Bは試料Aと比較してQ⁰の割合が低く、Q²の割合が高かった。
考察
試料BでQ⁰が減少したことは、未反応のシリケート相が減少したことを示している可能性がある。また、Q²の割合が高かったことから、生成したC-S-Hのシリケート鎖が平均的に長くなった可能性が考えられる。ただし、ピーク面積はピーク位置、幅、分離数などの解析条件に影響されるため、試料間で同じ条件を用いたか確認する必要がある。
耐久性への影響を議論する場合は、NMRだけでなく、物質移動抵抗性、収縮、強度、空隙構造などの結果が必要です。
悪い例から分かる5つの注意点
1.「増えたから性能が良い」と判断しない
測定値が大きいことと、材料性能が優れていることは同じではありません。
たとえば、累積発熱量が大きい場合でも、次のように目的によって評価が変わります。
- 初期強度には有利な可能性がある
- 温度ひび割れには不利な可能性がある
- 反応が早すぎると作業時間が短くなる可能性がある
結果には測定値を書き、性能上の評価は研究目的に照らして考察します。
2.「検出されなかった」と「存在しない」を区別する
測定でピークが見えない場合でも、物質が存在しないとは限りません。
考えられる理由には、次のものがあります。
- 検出限界より少ない
- 別のピークと重なっている
- 結晶性が低い
- バックグラウンドに隠れている
- 測定条件が適していない
そのため、結果では「検出されなかった」と書き、存在そのものを否定する表現は慎重に使います。
3.原因を一つに決めない
材料系の実験結果には、複数の要因が同時に影響します。
たとえば、強度低下には次の原因が考えられます。
- 反応の遅れ
- 空気量の増加
- 締固め不足
- セメント量の減少
- 養生状態の違い
- 供試体寸法のばらつき
最も可能性が高い説明を示しつつ、ほかの可能性を除外できているか確認します。
4.図表にない結果を考察で突然出さない
考察で次のように書いても、根拠となる結果が本文や図表に示されていなければ、読者は確認できません。
SEM観察から、試料Bでは組織が緻密化していた。
SEM画像を根拠にする場合は、結果の章に画像や観察結果を示します。
5.結果と考察で表現を変えすぎない
結果では「試料Bのピークが低かった」と書いているのに、考察で突然「試料Bでは相が消失した」と書くと、主張が強くなっています。
次の言葉は意味が異なります。
| 表現 | 意味 |
| ピークが低下した | 回折強度などが小さくなった |
| 含有量が減少した | 定量結果として量が少なくなった |
| 検出されなかった | 測定上、確認できなかった |
| 存在しない | その物質がないと判断した |
| 消失した | 以前存在したものがなくなった |
図表が支えられる範囲を超えて、強い表現に変えないことが必要です。
図表から本文を作る6つの手順
手順1.その図で答えたい問いを書く
最初に、図の目的を一文にします。
フライアッシュ置換率によって、初期強度と長期強度がどう変わるかを確認する。
目的が決まると、本文で取り上げる比較条件を選びやすくなります。
手順2.図から直接読める事実を箇条書きにする
この段階では、原因を書きません。
・7日強度は置換率が高いほど低い
・28日では7日より試料間の差が小さい
・FA40は28日でもOPCより低い
・FA20とFA40では強度増加量が異なる手順3.重要な結果を一つ選ぶ
図から読めることをすべて本文に書く必要はありません。
研究目的に最も関係する変化を選びます。
フライアッシュ置換試料では初期強度が低下したが、材齢の経過に伴いOPCとの差が縮小した。
手順4.結果の段落を書く
次の順番で文章にします。
図表の紹介
↓
全体的な傾向
↓
研究上重要な比較
↓
例外やばらつき手順5.考えられる原因を複数挙げる
一つの結果について、考えられる説明を少なくとも二つ挙げます。
説明1:混和材の反応が進んだ
説明2:基準試料の強度増加が小さかった
説明3:試料間で空気量が異なったその後、別の実験結果を使って説明を絞ります。
手順6.追加実験が必要か判断する
すべての可能性を実験で確かめる必要はありません。
論文の中心となる主張に影響する疑問かどうかで判断します。
- 主張が変わる可能性がある
- 別の原因を除外できていない
- 測定の再現性を確認できていない
- 査読で指摘される可能性が高い
- 現在のデータでは結論を支えられない
追加実験をどこまで行うか迷う場合は、追加実験のやめどきはいつ?卒論・修論で迷わない判断基準で、研究目的と図表から判断する方法を整理しています。
結果と考察で使える言い換え例
結果で使いやすい表現
- 図3に○○の測定結果を示す
- 試料Aでは○○が確認された
- 試料Bは試料Aより高い値を示した
- 材齢の増加に伴って○○は減少した
- 両試料の間に明確な差は見られなかった
- ○℃付近に質量減少が認められた
- ○○に対応するピークは検出されなかった
- 誤差の範囲内では、試料間の差は小さかった
- 試料Bの値には大きなばらつきが見られた
考察で使いやすい表現
- この結果は、○○が影響した可能性を示している
- 原因として、○○と○○が考えられる
- この傾向は、既往研究の結果と一致する
- 一方、○○については既往研究と異なる傾向を示した
- ○○だけでは、この変化の原因を特定できない
- 別の可能性として、○○の影響も考慮する必要がある
- ○○の結果と併せると、○○という説明が妥当と考えられる
- ただし、測定条件の違いが結果に影響した可能性は残る
- 本研究の範囲では、○○までを結論とするのが適切である
断定を弱めたいときの言い換え
| 強すぎる表現 | 書き換え例 |
| 証明された | 支持する結果が得られた |
| 明らかになった | 示された、示唆された |
| 原因である | 原因の一つと考えられる |
| 完全に反応した | 未反応相が減少した |
| 性能が向上した | 測定した○○の値が増加した |
| ポゾラン反応が起きた | ポゾラン反応が進行した可能性がある |
| C-S-Hが増えた | C-S-Hの増加と整合する結果が得られた |
「示唆された」を使えばよいという意味ではありません。根拠が弱い文章に付けるだけでは、考察の説得力は上がりません。
どの測定結果がその説明を支えているかまで示す必要があります。
査読者が見ているポイント
査読では、文章のきれいさだけでなく、結果から結論までの流れが確認されます。
主張を支える図表があるか
考察で述べた内容について、根拠となる図表をたどれる必要があります。
主張
↓
根拠となる測定結果
↓
図表
↓
測定方法
↓
試料条件この流れの途中が欠けると、再現性や結論の妥当性について指摘を受けやすくなります。
結果を強く言いすぎていないか
次のような表現は、根拠の範囲を確認します。
- 原因を特定した
- 反応機構を解明した
- 耐久性が向上した
- 実用化できる
- すべての条件に適用できる
限定された配合や材齢で得られた結果を、ほかの材料や環境にそのまま広げないことが必要です。
図表、本文、方法が一致しているか
次のような不一致は、修正時に見落としやすい点です。
- 図では28日、本文では56日と書かれている
- キャプションと凡例の試料名が異なる
- 方法に記載していない補正を図で行っている
- 供試体数と誤差棒の説明が合っていない
- 本文に書いた数値と表の数値が異なる
- 図の番号を変更した後、本文の参照先が残っている
ばらつきや不都合な結果を無視していないか
予想と異なる結果や有意差がなかった結果も、研究目的に関係する場合は説明が必要です。
結果の章では事実を示し、考察では次の点を検討します。
- 仮説が適切だったか
- 測定精度は十分だったか
- 試料数は妥当だったか
- 条件設定に問題がなかったか
- 既往研究と条件が異ならないか
- 別の反応や現象が影響していないか
結果の文章では、仮説に合うデータだけを選ぶのではなく、研究上関係する結果を一貫した基準で示すことが求められます。
実際に査読コメントを受け取った後の修正方法は、海外ジャーナルの査読コメントへの返答テンプレ|Response to Reviewerの書き方で確認できます。
提出前に確認したいチェックリスト
結果のチェック
- 何を比較した図表か説明している
- 重要な差や傾向を本文で取り上げている
- 図表の全数値を文章で繰り返していない
- 数値、単位、材齢、試料名が図表と一致している
- 統計的な差がない結果を「有意に増加した」と書いていない
- 検出されなかったことを「存在しない」と断定していない
- ばらつきや例外的な結果を隠していない
考察のチェック
- 研究目的や仮説に答えている
- 原因を一つに決めつけていない
- 解釈を支える図表を示している
- 別の分析結果と矛盾していない
- 先行研究との一致・不一致を説明している
- 研究条件を超えて一般化していない
- 測定方法や試料数の限界を示している
- 結果に示していない情報を突然持ち出していない
キャプションのチェック
- 図表が何を示しているか分かる
- 試料名や略号を説明している
- 誤差棒の意味を説明している
- 必要に応じて供試体数を示している
- 軸や単位を確認できる
- 記号や統計上の印を説明している
- 結果の原因を断定しすぎていない
結果と考察に関するFAQ
結果には理由を一切書いてはいけませんか?
投稿先や研究分野によって書き方は異なります。
「結果および考察」として一つの章にする場合は、結果を示した直後に理由を検討しても問題ありません。ただし、一文の中で事実と解釈を混ぜず、どこまでが測定結果で、どこからが解釈なのか分かるように書きます。
図表キャプションだけで結果を説明してもよいですか?
キャプションだけで終わらせず、本文でも研究上重要な結果を取り上げます。
キャプションは図表の内容と条件を説明する場所です。本文では、どの差に注目すべきか、その差が研究目的とどう関係するかを示します。
結果が予想と違った場合も書くべきですか?
研究目的に関係する結果であれば書く必要があります。
予想と違う結果を省くのではなく、測定上の問題、仮説の不足、別の反応機構などを考察します。予想外の結果から、次の研究課題が見つかる場合もあります。
考察が思いつかないときはどうすればよいですか?
まず、考察を書こうとせず、図表から直接読める事実を箇条書きにします。
その後、各事実について次の3点を整理します。
- なぜこの変化が起きた可能性があるか
- ほかの分析結果は同じ説明を支持しているか
- 別の原因を考えられないか
考察は感想を書く作業ではなく、結果と根拠を使って説明の範囲を決める作業です。
まとめ:最初に事実を書き、次に意味を考える
結果と考察の書き分けで迷ったときは、次の基準に戻ります。
- 結果は、図表から確認できる事実
- 考察は、その事実が生じた理由や意味
- キャプションは、図表の内容と条件の説明
- 本文は、読者に注目してほしい差や傾向の案内
- 結論は、複数の結果から最終的に言えること
最初から完成した文章を書こうとすると、結果と考察が混ざりやすくなります。
まず、手元の図を一つ選び、次の4行を書いてください。
この図で比較しているもの:
図から直接読める事実:
考えられる理由:
その理由を確かめる別の結果:この4行が埋まれば、結果の段落と考察の段落を分けて書けます。
図表が複数ある場合も、一枚ずつ同じ作業を行い、最後に共通する説明をまとめます。XRD、TG-DTA、NMR、強度試験が同じ説明を支持しているかを確認することで、単独の測定結果だけに頼らない考察になります。
参考資料
- George Mason University Writing Center, “Scientific (IMRaD) Research Reports — Results and Discussion.”
- Monash University, “Science: Lab report”および“Reporting and discussion thesis chapters.”
- PLOS ONE, “Submission Guidelines.”


